大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

LOOX Tカラバリが絶好調の富士通直販サイト




●イタリアンレッドは、わずか2週間で完売

LOOX Tのカラーバリエーションモデル

 富士通のメーカー直販サイトWEB MARTが、LOOX Tのカラーバリエーションモデルの限定販売などによって、注目を集めている。

 2005年12月からスタートした「LOOX Tシリーズ」によるカラーバリエーション展開は、店頭販売しているオリジナルカラーのマーズレッド、レザーホワイトの2色に加えて、WEB MART限定カラーとして、イタリアンレッド、チェリーピンク、フォレストグリーン、ディープブルー、レザーブラック、オリーブグリーン、カプリブルーの7色を用意。中でも、最も人気が高かったイタリアンレッドが、発売後2週間で売り切れるという人気ぶりを見せた。また、残る6色についても、4色が3月上旬には売り切れたという人気ぶりだ。

 富士通パーソナルビジネス本部Web販売統括部プロジェクト部長 中藤慶一郎氏は、「予想を上回る売れ行きには正直驚いた。特に女性層の購入比率が高かったことが特徴といえる」と語る。

 富士通のノートPCにおける女性の購入比率は約15%。だが、LOOX Tのカラーバリエーションの場合は、25~30%が女性の購入だったという。

富士通パーソナルビジネス本部Web販売統括部プロジェクト部長・中藤慶一郎氏

 さらに、「Webでの購入の場合、使用する人が女性でも、注文者は男性といった夫婦なども多く、実際の女性の購入比率に10%程度上乗せした計算が成り立つのではないか」(中藤プロジェクト部長)と分析している。多く見積もれば、約4割が女性の利用だという見方もできそうだ。

 4月11日から発売した新モデルでは、WEB MART限定カラーの新色として、「ターコイズブルー」、「リーフグリーン」、「リネンホワイト」の3色を新たに用意した。

 「4月からの新モデルでは、人気のあったイタリアンレッドについても、品薄が起こらないように潤沢な数量を用意している。WEB MART限定のカラーバリエーションは、WEB MARTの重要な差別化製品と位置づけたい」としている。

●月間1,000人の購入者の声を反映

 実は、このWEB MART限定のカラーバリエーションは、WEB MARTの購入者の意見によって製品化されたものだった。

 WEB MARTでは、モニターキャンペーンを定期的に実施している。毎月500~1,000人の購入者を対象に、約50問の設問によるアンケートを実施。どんな用途にPCを利用しているか、ほかにどんなPCを所有しているのかといった利用シーンに関する設問のほか、WEB MARTでどんなサービスを行なってほしいかといった内容まで幅広くカバーしている。

 その中で寄せられたものが、LOOX Tにおけるカラーバリエーション展開であった。

 「ほかにもMGシリーズでノングレア処理の画面が欲しい、あるいはXGA対応にして欲しいといった要望にもWEB MART限定モデルとして対応した。LOOX Tもカラーバリエーションも、そうした要望の1つ。店頭モデルとしては需要が少ないが、WEB MART限定であれば販売できるという規模の製品、あるいは次期製品への搭載が見込まれる機能の試験的販売といったことも、ここで実施することができる」という。

 実際、WEB MARTでの試験販売後、次期製品に反映されたものも少なくない。WEB MARTは、富士通のPC事業にとって、次の施策を決定づける上でも重要な役割を果たすことになるという。

●WEB MARTが提供する3つの要素

 富士通は、WEB MARTを通じて、ユーザーに対して、大きく3つのメリットを享受できると考えている。

 1つは、店頭販売の補完という点だ。

 富士通のPCは、全国の量販店などに比較的多く展示されているものの、それでもすべての機種が、すべての販売店に潤沢に展示されているとはいえない。今年の夏モデルでも、デスクトップで3シリーズ15機種、ノートPCで5シリーズ20機種ものカタログモデルが発表されており、そのすべてを展示するのは大型量販店といえども難しい。

 WEB MARTでは地域的な格差を無くすこと、また、幅広いモデルを網羅して販売することを目指すという意味で、店頭販売を補完するというわけだ。

 「ユーザーが富士通製PCを購入する際に、購入方法の選択肢を広げるという意味で、WEB MARTが果たす役割は大きいといえる」と中藤プロジェクトマネージャーは語る。

 実は、WEB MARTでは、店頭販売とは異なる販売傾向が見られている。

 WEB MARTでの購入者のプロフィールを見ると、PCを3台以上所有しているというユーザーが、なんと7割以上を占めている。こうしたユーザーは、フルスペックの最上位機種を購入するか、すべてを取り去ったシンプルなベースマシンを購入するかのどちらに偏るという。

 「店頭販売との最大の違いは、購入者の83%がカスタムメイドモデルとして、自らが求める仕様へとカスタマイズをして購入している点。平均単価は、店頭モデルに比べて2万円程度高い」という。

 まさに、店頭販売では見られない傾向だといえよう。

 また、WEB MARTでの販売のうち、75%を占めるノートPCにおいても、店頭販売でのスタンダードモデルとされるNBシリーズの比率は極めて少なく、70%以上がLOOX TやMGシリーズといったモバイルPCだという。

 この点でも、店頭販売とは明らかに一線を画した位置づけとなっていることがわかる。

●情報発信サイトとしても利用も重視

 2つめのポイントは、情報発信サイトとしての位置づけだ。

 現在、富士通が投入しているPCはほとんどがオープンプライスとなっている。そのため、実際にどの程度の価格で販売されているのかを調べるための情報源としてWEB MARTを利用している例が多い。

 もちろん、価格の確認だけではない。製品の細かなスペックなどもWEB MARTを通じて知ることが可能だ。

 「量販店を訪れる購入者のうち、約7割がメーカーのウェブや価格比較サイト、製品ニュースサイトを閲覧してから出向いているという調査結果も出ている。当社では、FMWORLD.NETという情報提供サイトも用意しているが、ウェブ直販サイトであるWEB MARTも、店頭でPCを購入するユーザーにとっては有効な情報源になっている」というわけだ。

 さらに、富士通では、AzbyClubとの連動によって、使い方提案も行なっている。これも情報提供サイトとしての役割の1つだ。WEB MARTでPCを購入したユーザーが、デジカメを使いたいといった場合にAzbyClubにいけば、賢い使い方を知ることができる。また、逆に、AzbyClubを通じてPCに興味を持ったユーザーが、WEB MARTでPCを購入するという相乗効果も見逃せない。すでに、WEB MARTでの購入者の3割弱がAzbyClubから訪れたユーザーだという結果も出ている。

 「富士通製のPCを購入したユーザーが、AzbyClubを通じて新たな使い方を知り、また、富士通のサポート体制に対しても安心感を持っていただくことで、次も富士通のPCを購入してもらえるという繰り返しにつながることが最適。そこにWEB MARTとAzbyClub、そして製品情報や最新ドライバなどを提供するFMWORLD.NETと連動している意味がある」という。

 AzbyClubでは、Word、Excelの使い方、ホームページの作成などをメールで教える「Azbyメールセミナー」を実施しているが、WEB MARTでは、この内容を、USBメモリーに収録して販売するといった付加価値展開も開始している。この取り組みもWEB MARTならではの使い方提案の1つとして人気を集め始めている。

 富士通では、販売とサポートを明確に区分けするために、WEB MARTとAzbyClubを統合することは考えていないという。それぞれのサイトごとの特性を明確にした上で、連携を強化させていく考えだ。

●アウトレットの販売にも力を注ぐ

 3つめは、旧モデルによる「アウトレット」販売、あるいは箱に傷があったり、ユーザーのキャンセル品などを特価で販売する「クオリティオファー」といった取り組みを行なっていることだ。

 「決して価格訴求を前面に打ち出しているわけではない」と中藤プロジェクト部長は前置きしながら、次のように説明する。

 「店頭で購入した顧客から、不具合があったことを理由に返却されたPCを見てみると、実際には故障ではないにも関わらず返却されたものも少なくない。従来は、それらをすべて部品レベルにまで分解して、再利用や償却を行なっていた。だが、無駄を排除するという意味でも、そのまま動作するPCは、なるべくそのまま再販売できる仕組みとして、WEB MARTに用意したのがクオリティオファー。また、年間数百万台のPCを生産している中では、どうしても不良在庫が一部残る。それを販売するのがアウトレット。ここでも店頭販売にはできない売り方を提案できる」と語る。

●今年度は土日の出荷体制も整備

 WEB MARTでは、今後、WEB MART限定モデルのラインアップを増やしていくほか、AzbyClubとの連動によって、利用提案の強化も進めていく考えだという。

 また、今年4月から、365日の出荷体制に向けた準備を整えることで、より迅速な納品を可能にしたいという。

 「これまでは、土日は出荷作業を行なっていなかったが、今年4月からは土曜日の出荷も開始した。また、9月からは日曜日の出荷作業も開始できるように準備をしたい。受注から24時間以内での納品を目指すことで、例えば、土曜日の午前中にWEB MARTでFMVを注文していただくと、日曜日の午前中には商品が届き、午後からお使いいただけるということが可能になる。今後はユーザーのライフスタイルにあわせたセット製品の提案や、新たなサービス提案も行なっていきたい」と中藤プロジェクト部長は語る。

 現在、同社の国内PC出荷に占めるWEB MART経由の販売比率は約4%。これを飛躍的に増やすつもりはないという。むしろ、WEB MARTならではの提案を増やすことに力を注いでいきたいという。

 これからどんな限定製品やサービスが登場するのか。同社のPC事業戦略全体を俯瞰した上でも重要なものになっていきそうだ。

□富士通のホームページ
http://jp.fujitsu.com/
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【1月8日】富士通、LOOX TのカラーモデルをWeb直販で販売
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【2005年12月19日】富士通、FMV-BIBLO NB/MG/LOOX Tの新モデル
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1219/fujitsu3.htm

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(2006年5月15日)

[Text by 大河原克行]


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