山田祥平のRe:config.sys【特別編】NapaとLet'snote 新バッテリの実力現世代のIntel Coreと945系チップセットを組み合わせたNapaは、いろいろな意味で「買い」であり、ノートPCの購入という点ではベストタイミングではないかという、松下電器産業 パナソニックAVCネットワークス ITプロダクツ事業部テクノロジーセンターハード設計第一チームの谷口尚史氏の以前のインタビューでのコメントが気になって調べてみることにした。 今回の新機種は、W5とY5で、松下電池工業が2005年8月に発表した次世代リチウムイオン電池が採用されている。放電終止電圧を従来の3.0Vから、2.5Vに下げ、さらに、反応材料の変更により、電池容量の増大を実現したもので、2,850mAhセルのものが搭載されているということだ。果たして、Napa+新バッテリの実力は、どの程度のものなのだろうか。 ●エコノミーモードでバッテリの劣化を感じない1年間 一般的なノートPCの使い方として、充電したバッテリをスッカラカンになるまで使い切ってしまうことはまずないだろう。残り容量が10%を切ったあたりで、アラートなどが出るため、不安を感じて使うのをやめてしまうことも多いと思う。 さらに、Let'snoteでは、バッテリの寿命を延命するために、「エコノミーモード」という機能が搭載されている。これは、充電上限を80%に抑えることで、バッテリの劣化を防ごうというものだ。実際、手元のR4は、ほぼ1年間、このエコノミーモードのみで運用し続けているが、新品時に比べてバッテリがへたってきたという印象はない。
つまり、通常の使用においては、全バッテリ容量のうち70%分を自在に使えると考えて、その枠の中で、どのくらい運用できるのかを試してみることで、現実的な値を知ることができるはずだ。 そこで、今回は、松下電器から貸し出しを受けた「Let'snote W5」の量産試作機を使って、バッテリ駆動時間の実力を試してみた。 ●12時間の根拠
まず、この機種ではJEITAバッテリ動作時間測定法(Ver.1.0)による駆動時間が12時間となっている。条件としては、W5の製品情報ページによると 「エコノミーモード(ECO)有効に設定している時の駆動時間は、無効時の約8割になります。バッテリー駆動時間は、動作環境・液晶の輝度・システム設定により変動します。測定方法の詳細については、JEITAのホームページ( http://it.jeita.or.jp/mobile/ )をご覧ください」 とされている。 ここで、復習のために、JEITAバッテリ動作時間測定法についてカンタンに復習しておこう。 同測定法では測定法aと測定法bの2種類の測定を実施し、その平均値を動作時間としてカタログ等に記載することができるとしている。 測定法aは、画面輝度を20cdとし、指定されたMPEG-1の動画ファイルをHDDから読み出しながら測定するというものだ。 また、測定法bは、液晶ディスプレイを最小輝度にして放置した場合の時間を測定するとされている。 松下電器は、aとbそれぞれの動作時間を公開していないが、12時間という平均値を信用することを前提に、もう少し現実的な使用形態でのバッテリ動作時間を測定してみた。 評価に使用した機体は、ほぼ製品版そのものだが量産試作機である点をご了承いただきたい。また、スッピンというのも現実的ではないため、いくつかのアプリケーションソフトをインストールしたほか、Bluetooth運用のために、PCカードとそのためのドライバ、ユーティリティ類を入れてある。また、企業向けバージョンの「Windows Desktop Search」をインストールしておき、常駐ソフトの影響が多少なりとも出るようにセッティングした。 ●パターンA 最初の実験は、HDDの回転をあえて止めず、MPEG-2/4Mbpsで録画したTV番組をファイルサーバー上に置き、無線LAN経由でフルスクリーンで繰り返し再生してみた。再生に使ったアプリケーションは、製品添付の「WinDVD」だ。 Bluetooth PCカードは通信こそしていないが装着したままだ。光学ドライブはOFFにした。明るさはほぼ中間位置で最低輝度から11/20番目の位置だ。タスクマネージャで確認すると、プロセッサの負荷は25%程度を維持している。また、ヘッドフォンを端子に差し込み、音声は最大音量で流しっぱなしにした。 80%充電状態のバッテリは、1時間で60%、2時間でちょうど40%となった。ほぼリニアに減っていくので、ここで実測を終了し、30分で10%を消費すると判断した。つまり、70%のバッテリを消費するのに、約3.5時間かかる計算となる。もし、100%を使い切るとしたら、5時間ビデオ再生を楽しめるはずだ。 ●パターンB 次に、無線LANの消費電力の影響を確認するために、Bluetooth PCカードをはずし、無線LANもOFFにした。そして、HDD上にコピーしたMPEGファイルを再生してみた。それ以外の条件はパターンAと同じだ。 80%のバッテリは1時間で62%、2時間で43%と推移していった。30分で10%を消費するという点で、無線LANをONにしているときとあまり変わらない。無線LANの消費電力は思ったほど大きくないようだ。引き続き、2.5時間で33%、3時間で23%、3.5時間で13%と、結局、ほとんど変わらずにリニアに推移した。おそらくフル充電状態では、5時間持つにちがいない。この結果からわかることは、無線LANを几帳面にON/OFFしても、さほどバッテリには影響を与えないということだ。 ●パターンC 無線LANをOFFにしてもあまり影響がないようなので、再びONにした。普段の使い方ではいちいちON/OFFすることはなく、常時ONにしておき、自動で常用アクセスポイントを探して勝手につながるようになっていたほうがラクだからだ。ただし、光学ドライブはOFFにした。この状態で、ディスプレイを閉じてもスタンバイなどしないように設定して、iTunesで音楽をずっと流し続けてみた。ヘッドフォンを装着し、最大音量での再生だ。 その結果、80%のバッテリは、1時間で72%、2時間で63%、3時間で55%と推移した。けっこう持つようなので、この時点で、いったんスタンバイ状態にし10時間ほど放置したのちに、測定を再開した。この時点でバッテリは51%となり、10時間のスタンバイで4%を消費していた。そして2時間再生を続け、トータルで5時間の再生が終わったところで、残りのバッテリ容量は35%だった。 結局、iTunesでの音楽再生は1時間で10%を消費するようだ。つまり、フル充電のバッテリで10時間、エコノミーモードで10%を残すとしても、7時間はポータブルメディアプレーヤーとして使える計算だ。 ●パターンD Let'snoteでは、ディスプレイを最低輝度に設定すると、バックライトがあまりにも暗く、視認性が極端に低くなる。薄暗いカンファレンス会場などで、プレゼンテーションを見ながらメモを取るといった用途では、それでもいいのだが、さすがに、普段、この設定で使うことはない。 そこで、ディスプレイの明るさを下から5/20段階目に設定し、暗くもなく明るくもないという状態にして、何もせずに放置した。HDDの回転は止めず、無線類もONのままだ。 80%で開始、3時間経過したところで51%の残り容量となった。さらに6時間後に22%、7時間後に12%となった。結局7時間である。1時間で10%を消費する。 ●パターンE そもそも12時間という数値がある以上、Jeita bの測定ではもっと長い時間を記録しているはずだ。そこで、ほぼ同一条件の測定結果を得ようと、ディスプレイを最低輝度にして放置してみた。無線LANもOFFにし、HDDは5分で停止するように指定した。 2時間たったところで68%の残りだったが、どうもHDDが止まっていない様子。そこで、Windows Desktop Serchを終了させたところ、HDDは停止するようになった。 そのまま延々と放置し続け、4時間で56%、5時間で50%、6時間で43%、8時間で31%、10時間で18%、12時間で10%と、1時間あたり6%ずつバッテリが減っていくことを確認できた。もしフル充電から0%までを使い切れば、17時間近く持つ計算になる。 ●オマケのパターン 最大輝度で光学ドライブを使って映画DVDを再生すると、1時間で56%、2時間で35%となった。1時間あたり21~24%を消費するようだ。映画2本ギリギリといったところだが、輝度を落とせば余裕で対応できそうだ。 ●まとめ 各パターンの測定結果を統合してみると、 ・明るいディスプレイでガンガン負荷をかけたら1時間で20%のバッテリを消費 (この先は推測) ということが想像できる。この値を元に自分の使い方を積算していくとバッテリによる運用時間が推定できるはずだ。仮にフル充電からスッカラカンまでを使い切るとしたら5~10時間。エコノミーモードで充電し、80%でスタートし10%を余らせるような運用なら、3.5~7時間といったところか。 無線LANは思ったほどには電力を消費しないようで、害のない場所ではONにしっぱなしでも、バッテリ運用に大きな影響は与えそうにない。ごく一般的なアプリケーションソフトを、それなりの明るさのディスプレイで使っている分には、1時間で10%減ると思っていればよさそうだ。出先で3時間もビデオを見ることはないだろうし、5時間続くミーティングも、それほど多くはないだろう。これなら、1日使って不安になることはあっても、困ることはあまりなさそうだ。カタログスペックの12時間という数字も、それなりに説得力を持つ数値だと評価できる。 ちなみに、先代のW4は公称バッテリ動作時間が9時間だった。これが12時間になり約33%の向上を果たしたのはすごいことだ。1,199gの光学ドライブつきノートPCのバッテリ運用時間なのだから驚異的だ。 また、W4のバッテリ容量は57.5Wh(7.4V、7.8Ah:2,600mAhセル2直3列)で、W5のものは60.7Wh(10.65V、5.7Ah:2,850mAhセル3直2列)と、バッテリ容量自体は約5%程度しかアップしていない。このことから、Napaへの移行による省電力への貢献度がかなり高いことが分かる。 【お詫びと訂正】初出時に、新バッテリが30%高容量になったとしておりましたが、正しくは5%の高容量化でした。お詫びして訂正させていただきます。 □松下電器のホームページ (2006年5月8日) [Reported by 山田祥平]
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