●第3のプラットフォーム「vPro」
4月24日(米国時間)、Intelはビジネスデスクトップ向けの新ブランド、「vPro」テクノロジーを発表した。 vProは、モバイルプラットフォームのCentrino、デジタルホームプラットフォームのViivに次ぐ3番目のプラットフォームブランド。その最初のインプリメントとなるのが、これまで「Averill」というコード名で呼ばれてきたプラットフォームだ。 Averillを構成するのはIntel CoreマイクロアーキテクチャによるConroeプロセッサ、「Broadwater」という開発コード名で知られてきたQ965チップセット、開発コード名を「Nineveh」というGigabit Ethernetコントローラといったハードウェアと、これらをサポートする基本ソフトウェア(ファームウェア、ドライバなど)だ。 IDFの時点では、下位のQ963チップセットを用いたAverill Basicプラットフォームと、Q965チップセットを用いたAverill Professionalプラットフォームの2種類が言及されていたが、今回vProプラットフォームとして発表されたのは、Averill Professionalプラットフォームのみで、Averill Basicプラットフォームは全く触れられなかった。製品としてなくなったとは思いにくいが、vProのロゴはつかない、ということだとも考えられる。 なお、今回からチップセットの名称が、従来の3ケタの数字+英文字から英文字+3ケタの数字に切り替えられた。これはビジネスプラットフォームだけでなく、同じBroadwaterチップセットファミリーのコンシューマ向け製品にも該当する。グラフィックス内蔵型はG965、非内蔵型はP965と、これまでと逆の並びになる。この理由は不明だが、サーバー向けのチップセットがE7520のように英文字から始まる型番がつけられているのと統一する目的があるのかもしれない。 今回の発表は、あくまでもブランディングの発表であり、製品発表ではないため、個々の製品のスペックなど、詳細には言及されなかったが、おそらくQ965チップセットもG965同様、グラフィックス機能を内蔵していると思われる。 では、Q965とG965の違いは何か、ということになるが、Q965ではクライアント管理技術であるiAMTがサポートされる、ということが違いになるのだろう(もちろん、それでもチップのダイに実質的な違いがあるのかと言われれば、おそらく違わないのだろうが)。 また、同等のハードウェアであっても、型番が異なることで、同じハードウェアがViivにもvProにもなる、という混乱を避けやすくなるかもしれない。つまりQ965チップセットならvPro、G965チップセットならViivという具合だ。 ちなみに、Q965チップセットにつけられた英文字Qだが、ビジネス向けを示す型番であるものの、何かの頭文字といった特別の意味はない、とのことである。同様に、vProのvも意味はない、ということであった。ViivのVではないか、という話もあるが単に、Vで始まる言葉にVictory(勝利)、Vision(洞察力)、Vital(生命の)、Vivid(生き生きとした)など、ポジティブなイメージを伴うものが多い、ということなのかもしれない。 ●スペックを損なわず全体コストの削減を訴求 企業向けのプラットフォームであるvProの訴求点は、エネルギー効率の改善、管理性の改善、セキュリティの向上による、全体コストの削減とリスクの軽減にある。vProのエネルギー効率が従来に比べて向上するのは、プロセッサがTDP 100W超級のPentium Dから、65W級のConroeになることだけを考えても明らか。これによるコスト削減効果は、電気代の高い日本やドイツではより顕著に現れる。 もちろん、どんなに消費電力が低くなっても、性能まで低くなっては意味がないが、Conroeプロセッサの性能は従来のPentium Dプロセッサを上回る。発表会では、現在開発が進められている「Office 12」に含まれる新しいExcelを用いたベンチマークテストで、ConroeはPentium 4/HTの約3倍の性能を示した。すべてのアプリケーションの性能が3倍になることはないだろうが、全般に性能が向上する方向であることは間違いない。
管理性の改善という点では、現行のビジネス向けプラットフォームである「Lyndon」(Pentium Dプロセッサ、945チップセット、82573E GbEコントローラ)で、すでにiAMTの導入が始まっている。vProではiAMTのバージョンが2.0となり、さらに管理機能が強化される。 たとえば、本来クライアントで動作しているはずの管理エージェントソフトをユーザーが消去してしまっても、管理者側からエージェントソフトをプッシュして送り込むことが可能になる。このiAMTに仮想化技術(VT)を組み合わせて、仮想マシン上でユーザーOSと管理用OSを実行し、管理用OS内で管理エージェントソフトを実行するようにしてしまえば、ユーザーは管理エージェントが実行されていることさえ分からなくなる。
この管理用の技術は、セキュリティの向上にも応用可能だ。不正なパケットをネットワークに送出するクライアントが見つかった場合、このクライアントをネットワークから切り離し、セキュリティパッチをプッシュして送り込み、問題が解消したところでネットワークへの再接続を認める、といった運用が可能になる。 こうした作業を、管理者が遠隔地から、マシンの状態(シャットダウン中、OSのクラッシュによりシステム起動不可状態等)にかかわらず実施できるのがvProの特徴だ。vProはConroeプロセッサがリリースされる2006年第3四半期に登場する見込みである。 ●vProで守りのITから、攻めのITに
さて、今回日本におけるvProの発表会に出席するため、米国Intelのデジタル・エンタープライズ事業本部の副社長兼プラットフォーム・コンポーネント事業部長であるティモシー・A・ダン(Timothy A Dunn)氏が来日した。vProというブランディングについて、短時間だがインタビューする機会があったので、ここで紹介しておこう。 【Q】かつて、クライアント向けプロセッサの呼称にクロック周波数を使うことを止め、代わりにプロセッサ・ナンバを導入した際、IntelはXeonについては専門家向けだから、という理由でクロック周波数による呼称を継続しました。ここにきて、vProでIT専門家に向けたブランディングを行なう意図について教えてください。 【A】残念ながら、今も企業のIT専門家は動作不良になったマシンのメインテナンスといった、非常に基本的な問題に取り組まざるを得ない状況です。そうした問題をIntelの最新技術で解決できることを訴えるために、IT専門家に向けたブランドが必要だと認識しました。vProのブランドがつけられた製品を購入すれば、iAMTをはじめとするITの問題解決に向けたIntelの最良の技術が盛り込まれていることが保証されますよ、というメッセージを送りたいのです。 【Q】コンシューマー向けのViivなどと異なり、専門家向けのvProでは、そのマーケティングにも違いが生じるのでしょうか。 【A】やり方は若干変える必要があるでしょう。たとえば、企業内のサポートを請け負っている企業や、ISVの方々と共同でプロモーションを行なう、ということが有効かもしれません。 【Q】プロモーションに費やす資金の額は、CentrinoやViivに比べてどうなのでしょう。 【A】具体的な金額をお話しすることはできませんが、Intelは真剣に取り組む覚悟である、とだけは言っておきたいと思います。 【Q】率直に言って、企業向けのクライアントPCというのは、あまりエキサイティングな分野ではなかったように思います。大手のベンダも、サーバーでは発表会を開いても、クライアントPCで発表会を開くことは、まれです。vProは、この状況を変えられるのでしょうか。 【A】事前の調査により、企業が管理やセキュリティを向上させる機能について高い関心を持っていることが分かりました。システムの管理やセキュリティについて、企業は膨大な経費の支払いを余儀なくされています。そうした企業を助けられるvProのビジネスチャンスは大きいと思っています。また、こうした技術を示すことで、まだまだ企業向けクライアントの分野にも、イノベーションの余地は残っているのだと示すことができるはずです。 【Q】vProにより、IT部門の人的負担は軽減され、コストも削減されることは分かりました。それは企業がITに費やす経費を圧縮したい、という理解でよろしいのでしょうか。 【A】IT経費は、年率数%の割合で削減していくことを経営者は期待しています。vProはその期待に十分こたえることが可能です。が、単に経費を切り詰める以上のことができると考えています。vProにより節約できた経費と、軽減された人的負担を利用して、これまでの既存システムの保守に追われる守りのITから、企業内情報システムの積極的なイノベーションを行う攻めのIT、企業の競争力を高めるITに転じて欲しいと期待しています。
□関連記事 (2006年4月27日) [Reported by 元麻布春男]
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