NVIDIAは2月2日(現地時間)に、AGPバス用GPU「GeForce 7800 GS」を発表した。本連載でAGP接続のビデオカードを取り上げるのは実に10カ月ぶりとなるが、それだけに、もうしばらくAGP環境で過ごしたいというユーザーにとって、貴重なアップグレードパスとして期待がかかる製品である。この製品のパフォーマンスを検証してみたい。 ●GeForce 7800 GTXベースの廉価版 まずは簡単にGeForce 7800 GSの概要について触れておきたい。主な仕様は表1にまとめたとおり。これまでAGP版で発売されていたNVIDIAのGPUはGeForce6シリーズが最高スペックで、これはShader Model 3.0に対応するとはいえ、内部アーキテクチャは一世代前のものとなる。
AGPからPCI Expressへの移行が進んだ昨今においては、AGP接続の新製品はめっきり登場しない状況となっており、ここにきてGeForce7シリーズのAGP版が発売されたことはインパクトが大きい。 前回取り上げた「GeForce 7300 GS」は90nmプロセスで製造されるコアを使用していたが、GeForce 7800 GSは0.11μmプロセスで、基本的にはGeForce 7800 GTX/GTのコアをベースにしている。GeForce 7800 GTX/GTは内部にPCI Expressインターフェイスしか持っていないため、HSIを利用してAGPに変換されている。 GeForce 7800 GTとの比較では、コア/メモリクロックが変更されているほか、ピクセル/バーテックスシェーダ、ROPの各ユニット数が削減されている。そのほかの3Dエンジンやアンチエイリアス技術、PureVideoなどの機能は同等のものを搭載する。 今回試用するのは、Leadtekが発売を予定している「WinFast A7800 GS TDH」である(写真1)。ボードデザインはリファレンスカードに酷似しており、GeForce 7800 GTX/GTより一回り小さいクーラーを備えている。コアクロック/メモリクロックも仕様どおりだ(画面1、2)。 メモリチップ等はクーラーやバックパネルに覆われ確認できないが、裏面を見るとGPUがカード末端に近い位置にあり、そこからAGPインターフェイス脇に備えられたHSIへ配線が伸びていることが推測できる(写真2)。 このほか、ブラケット部はD-Sub15ピン、DVI、ビデオ出力の構成(写真3)。カード末端部には外部電源端子を備えており、PCI Express製品でおなじみとなった6ピンコネクタではなく、光学ドライブ等で利用する4ピンコネクタが用意されているのが特徴となる(写真4)。
●特に高解像度でGeForce 6800 Ultraを上回る性能 それでは、パフォーマンスの検証を行なっていきたい。テストに用意した環境は表2のとおりだ。比較対象には、「GeForce 6800 Ultra」、「GeForce 6800 GT」を搭載した各製品を使用した。また、ATIのAGP版ビデオカードとして、現時点での最高スペック製品となる「Radeon X850 XT Platinum Edition(PE)」を用意している(写真5~7)。
では順に結果を見ていきたい。まずは「3DMark06」(グラフ1~3)である。ご存知の通り、このテストはShader Model 3.0対応でないと、HDR/SM3.0テストが行なえず、スコアも算出式が異なってくる。今回のテスト対象のうち、Radeon X850 XT PEはShader Model 3.0に対応していないので、トータルスコアは若干低めだ。 だが、SM2.0だけを見ても、GeForce 7800 GSは比較対象製品を安定して上回っている。特にHDR/SM3.0テストのスコアは、GeForce 6800の2製品を大幅に上回っている。最大差となったのは、もっとも描画負荷が高くなる1,600×1,200ドット/4xAA/8x異方性フィルタの条件で、GeForce 6800 Ultraに対して25%強、GTに対しては40%以上もスコアが向上しており、そのシェーダ性能の高さを感じさせる結果になった。
ただ、次の「3DMark05」(グラフ4)の結果は、やや違った傾向を見せる。こちらは、描画負荷が小さいところでは、Radeon X850 XT PEが健闘しているほか、GeForce 6800 UltraとGeForce 7800 GSが同程度の性能となっている。ただし、ここでもGeForce 7800 GSは高負荷時にアドバンテージを見せる結果となっている。
「3DMark03」(グラフ5)や「AquaMark3」(グラフ6)は、その傾向にさらに拍車をかけたような結果が出ている。とくに低負荷時はRadeon X850 XT PE、GeForce 6800 Ultraが圧倒しており、高負荷になることでようやくGeForce 7800 GSの良さが出てくる格好だ。ただ、良さが出てくるといっても、Radeon X850 XT PEには全条件においてスコアが下回っており、こうした古めのアプリケーションについては良さが活きてこない印象を受ける。
残る3つのベンチマークのうち、「DOOM3」(グラフ7)の結果は3DMark06、「Unreal Tounament 2003」(グラフ8~9)のflybyは3DMark03やAquaMark3に近い傾向を見せた。Botmatchに関しては、今回のテスト環境では全条件においてCPUがボトルネックになってしまっている。
●AGP延命の朗報となり得る製品 GeForce 7800 GSの特徴をまとめると、やや古めのDirectX 9の初期や、DirectX 8.1などをベースとしたソフトウェアでは、低負荷時において、Radeon X850 XT PEやGeForce 6800 Ultraに対するビハインドを背負っている。 だが、プログラマブルシェーダを活用したような、最近の3D描画エンジンを採用しているソフトウェアでは低負荷でも安定した強さを見せる。また、描画負荷が高まったときの性能低下が小さいのも特徴的といえる。 つまり、これまでのAGP製品に比べると、新しいソフトウェアに対して良い性能を見せるという、違った特徴を持った製品となっている。こうした新しい世代のアーキテクチャを採用したAGP製品が登場したことは、AGPインターフェイスの延命にもつながる大きな意義を感じさせる。 振り返れば、メインストリームよりやや上の性能を持つ3万円前後のGeForce 6800 GSに続き、新アーキテクチャを採用した1万円以下クラスのGeForce 7300 GSが発売されたが、GSが付いた製品は市場のスイートスポットをうまく突いている。このGeForce 7800 GSも、その流れを受け継いでいるといえるだろう。 これからAGP製品を購入するのは、すでにAGP環境を持っている人がアップグレードする場合となるだろうが、ハイエンドクラスの製品の中でGeForce 6800 Ultra/GTは、現在入手困難になっている。これらの後継となるハイエンドのAGP製品が新製品として投入され、アップグレードの手段として用意されたことを歓迎したい。 □関連記事 (2006年2月6日) [Text by 多和田新也]
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