元麻布春男の週刊PCホットライン

新しいIntelロゴに込められた意図




プレス向けのブレックファストブリーフィングで新CIの目的について語るIntelセールス&マーケティング事業本部長Eric Kim副社長

 1月3日に発表されたIntelの新しいCIは、プロセッサやプラットフォームのブランドのみならず、プレスリリースに使われるレターヘッド、社員章、名刺、さらにはWebサイトまで、ありとあらゆる分野に及ぶ。

 責任者であるセールス・アンド・マーケティング本部のEric Kim副社長の下、この新しいCIの実務面を取り仕切ったのが、Director、Corporate Brand & Strategic Marketingの肩書きを持つKevin Sellers氏だ。氏は昨年2月まで日本のインテルでマーケティング本部長を務めていた。今回のCESで、氏から聞いた新しいCIの要点について、ここにまとめておこう。

●プラットフォーム戦略に向けた新ロゴ

 まず新しいロゴだが、基本はスォッシュ(Swoosh)に囲まれた「intel」の文字で構成される。企業ブランドの場合はそこにタグライン(英文なら「Leap ahead」、和文の場合は「さあ、その先へ。」)が加わる。このタグラインは、企業ブランドを示すロゴと一体であり、定期的に変更するような性質のものではないという(半ば恒久的)。プラットフォームやプロセッサのブランドの場合、Intelロゴの下に、それぞれのブランドが決まったパターンで描かれる。

Intelの新ロゴ 日本法人のコーポレートロゴ 新プラットフォームロゴ
新ブランドロゴ

 スォッシュというのは、太さが少しずつ太くなっていく線で、一般に勢いを表す。一番有名なのはスニーカーのNikeだが、IntelもIntel Insideロゴにおいて、1つの丸いスォッシュで囲まれた中にIntel Insideの文字が描かれていた。今回の新ロゴでは、スォッシュが2つに分割され、中に新しい書体によるIntelの文字が収められており、色もわずかだが変更されている(ちなみにジングル、TV CMで使われている「ジャンジャンジャンジャーン」というヤツも、ごくわずかだが変更されている)。

 この新しいロゴは、Intel Version 3を意味する。すなわち

1. MemoryのIntel('85年撤退)
2. CPUのIntel
3. プラットフォームのIntel

である。実際にIntelがプラットフォーム製品(汎用周辺チップ以外の、いわゆるチップセット)を手がけ始めたのは'87年(製品化は'88年)からであり、'90年代にはマザーボードの製品化を行なっている。プラットフォーム関連製品の歴史は、決して浅くはない。だが、この頃はこうした製品はCPUを売るためのものという位置づけで、プラットフォームを売る、という意識ではなかった、ということなのだろう。

 本格的に事業としてのプラットフォームを展開し始めたのは2003年3月のCentrinoから。その成功を受けて2005年1月にプラットフォームごとの組織改革を行なったあたりで、事業戦略の中核にプラットフォームが据えられるようになった。それから1年、プラットフォームを中心にしたIntelの事業戦略を明確に示すものとして、新しいCIが行なわれたというわけだ。

●イメージに統一感がなかった旧ロゴ

 従来IntelのCIとして広く認知されてきたのは、eが下にはみ出したIntelロゴ(drop-eロゴ)とIntel Insideのロゴである。これらには数10億ドルを超えるブランド価値があるとも言われているが、すべてが良いことばかりではない。2つのロゴで認知されているというのは、統一されたイメージではない、ということであり、必ずしも望ましいことではないからだ。

 また調査によると、drop-eロゴのイメージは、

1. 良いもの(Good)
2. 安定性(Stable)
3. 高品質(Quality)

といったポジティブなイメージに加え

1. ワクワク感が乏しい(Not so exciting)
2. ちょっと退屈(Kind of boring)
3. おたくっぽい(Kind of Engineering Geeky)

といったマイナスイメージもあったという。

 Intel Insideロゴのイメージは、概してポジティブであり、前向きなものが多かったというが、PCの中に入っているマイクロプロセッサと深く結びついており、プラットフォームカンパニーには必ずしも相応しいとはいえないものだった。そこで新しいロゴは、ポジティブなイメージが強かったIntel Insideのスォッシュをベースに、新しい書体による社名を組合わせたものとしている。

 プラットフォームやプロセッサに関するロゴも、この企業ブランドをベースにしたものだ。従来のプロセッサブランドは、製品ごとにバラバラで統一感に欠けており、人々に混乱を与えていた。Pentium 4とPentium Mではデザインフィロソフィーが異なっていたし、同じPentium 4系列でもHとTの文字がついたかと思えば、Extreme Editionでは色合いが全く変わったりという具合で、もはや「コントロール不可能な状態」だった。

Intelの旧ロゴ 旧Pentium 4ロゴ 旧Pentium Extreme Editionロゴ

旧Centrinoロゴ

 Centrinoブランドは、意識調査においてもポジティブで良好なイメージだったというが、一定数の割合でCentrinoとIntelのイメージが結びつかない人がいたという。これは、旧Centrinoロゴに含まれるIntel Insideロゴが小さすぎたことが原因のようだ。新しい企業CIでは、プロセッサ、プラットフォームを問わず、すべてのブランドロゴが統一されたものに一新された。

 新しいCIで大きく変わったことの1つは、これまでIntel製プロセッサの代名詞にさえなっていたPentiumブランドから、Coreブランドへの切り替えを図る方針が示されたことだ。Pentiumは非常に認知度の高いブランドで、そのブランドイメージは、

1. 高品質(Quality)
2. 安定性(Stability)
3. 高性能(Performance)
4. 安全(Safety)
5. 確実(Sure)

といったものだという。

 しかし、Intelがこれからリリースしていくプロセッサは、エネルギー効率の良い、発熱量が小さく、低騒音を実現するもの。Pentiumでは実現できなかった、セクシーな新しいフォームファクタを実現するというメッセージをブランドに込めたい、ということがPentiumを使わない理由となっている。今回発表されたプロセッサのうち、YonahのみがCoreで、PreslerがPentium Dなのは、こうした方針によるものだ。

●CPU性能だけでなく付加価値にフォーカス

 基調講演においてオッテリーニ社長は、Coreプロセッサ(Yonah)は、モバイルPC専用ではないと述べた。実際、先日発表されたAppleの新iMacに使われているのもYonahである。Coreは、Pentiumに代わるプレミアムプロセッサのブランドであり、モバイルPC向けプロセッサのブランドではない。すでにIntelのWebサイトにおいても、デスクトップ向けプロセッサの最上位にあるのはPentium Extreme Editionではなく、Core Duoである。年内にも発表される「新マイクロアーキテクチャ」のプロセッサは、Coreブランドとなる(Merom、Conroeとも)のだろう。

CES 2006の基調講演で、旧ロゴを前にCentrinoの成功を語るIntelのオッテリーニ社長 新ロゴは、ショーン・マロニー副社長兼モビリティ事業本部長のマントの背中に描かれて登場

 とはいえ、しばらくの間Intelのプロセッサブランドは、Core、Pentium、Celeronの3ブランド体制となる。まだまだPentiumは作り続けられるし、最新のデュアルコアプロセッサであるPentium Dプロセッサ900番台(Presler)や、Pentium 4 6x1シリーズ(Cedar Mill)は発表されたばかりだ。しかし3つのブランドは多すぎるとIntelは考えており、いずれは2ブランド(プレミアムブランドのCoreとバリューブランド。Celeronを将来的に継続するかどうかは現時点で明らかにされていない)に回帰するらしい。

 基本的にPentiumは高性能、クロックスピードを具現化したブランドである。以前はソフトウェアに対してハードウェアの性能が不足しており、高いクロックのプロセッサはそれだけで売れた。それを象徴するブランドがPentiumだ。しかし、今はソフトウェアとハードウェアの関係は逆転し、単にクロックが高いだけでは売れなくなった。人々は違うところ、性能に加えて、携帯性、バッテリー駆動時間、セキュリティ、グラフィックス能力など、さまざまなところに目を向け始めている。それがPentiumというブランドを徐々にフェードアウトさせていき、Core、さらにはCentrinoやViivに代表されるプラットフォームブランディングに力を入れる理由となっている。

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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0104/intel.htm

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(2006年1月16日)

[Reported by 元麻布春男]


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