元麻布春男の週刊PCホットライン

ノートPCのBluetooth接続に思う




●伸び悩むIEEE 1394、広がり始めたBluetooth

 ファッションや飲食物がそうであるように、何事にも流行というものがあるのかもしれない。PCのインターフェイスにも、そんな流行があるようだ。現在最も逆風が吹いているのはIEEE 1394ではなかろうか。

 一時は、パラレルATAとパラレルSCSIの両方を置き換える次世代ストレージインターフェイスと考えられたこともあったし、PCと家電を相互接続する夢のインターフェイスと思われたこともあった。Intelがチップセットに組み入れる意向を示したことさえあったのだ。

 それが今ではIEEE 1394の用途といえば、DVカメラの接続用というのがもっぱら。記録メディアにDVDやHDDを用いたビデオカメラの中には、接続インターフェイスとしてUSBしか持たないものも増えており、動画転送という用途も先行きは不透明だ。最近では、生みの親であるAppleの第5世代iPodがIEEE 1394をサポートしなくなった、というニュースもあった。

 では、ここにきてIEEE 1394が技術として急速に陳腐化したのかというと、決してそんなことはない。むしろ、いまだにIEEE 1394の潜在能力をすべて引き出せていない、というのが本当のところだろう。潜在能力を盛り込みすぎたのがアダになった、ということかもしれないが、流行から外れてしまった感は否めない。

 逆に、ここにきてジワジワと来始めた感があるのがBluetoothだ。確かにデータレートを引き上げたBluetooth 2.0+EDRという追加はあったものの、現時点ではPCサポート以外ほとんど普及しておらず、実際に使われるのはまだこれからというところ。リアルで使われているのは1MbpsのBluetooth 1.xだと考えられる。

 Bluetoothの用途としては、携帯電話とワイヤレスヘッドセットを組み合わせたハンズフリー環境の構築、というのがかなりポピュラーなようだが、PCでの用途としては、Bluetooth対応携帯電話と接続してのダイヤルアップが最大の用途ではないかと思われる。従来、この市場はPCカードやCFカードのデータ通信カードを利用することが常識となっていたが、メモリカード市場に占めるCFの割合が縮小する傾向にあること、PCのバスアーキテクチャがPCI Expressへの変わり目を迎えつつあり、今後ノートPCの拡張インターフェイスがPCカードからExpress Cardへ変わることなどを考えれば、いつまでもPCカードやCFカードだけに依存するわけにもいくまい。

 もちろん、Express Cardでデータ通信カードを作るというのも一案(Express CardにはPCI Expressに加え、USB 2.0の信号線が出ているので、既存のUSBアダプタベースで作ればそれほど難しくない)だが、Bluetooth携帯電話を使ってPCとBluetooth接続した方が、電話とデータ通信を1つの契約で済ませられる、というメリットもある(携帯電話機とデータカードでSIMカードを共用する、という手も考えられなくはないが)。

 それより、さっさと無線LANが面展開してくれればとか、12月7日にIEEEで認可されたばかりのモバイル向けのWiMAX(IEEE 802.16e)の実用化はまだかとか、ほかのオプションも見え始めてはいるが、1~2年内に国内の主要都市で外出先からのインターネット接続をしようと思ったら、やはり携帯電話網を使うのが一番確実だ。というわけで、auのBluetooth携帯電話である東芝の「W21T」を今でも愛用している。

 これに合わせて、筆者の手元にあるノートPCも、Bluetoothをサポートしたものが多くなっている。今でも現役であるHPの「nc4000」はBluetoothを内蔵しているし、実験環境となっている「Evo N600c」には、フタ(液晶パネルの背)にBluetoothマルチポートモジュールを取り付けてある。こうした純正の内蔵オプション、あるいはそれに準じるオプションは、アンテナが外側に出っ張ったりせず、携帯に便利だ。しかし、Bluetoothを標準搭載したノートPCは、たとえ最新モデルであっても、残念ながら多数派ではない。後付けやBTOのオプションとして追加できるものも、決して多くはないのが実情だ。

nc4000/nc4010用の内蔵Bluetoothモジュール(メモリースティックと比較) Evo 600cのリッド部に取り付けるオプションのBluetoothマルチポートモジュール。インターフェイスはUSB接続だ。Fnキー + F2キーでON/OFFできるのがさすがに純正品 ネジ止めしたBluetoothマルチポートモジュール。Bluetoothのロゴが控えめについている

●Bluetooth拡張アダプタ

 Bluetoothを後から追加する方法として、最も普及しているのは、USBのアダプタ(ドングル)を取り付ける方法だ。この方式には、デスクトップとノートで共通に利用できるというメリットがあるものの、筐体からアダプタが飛び出すという大きな欠点がある(2.0+EDR対応のドングルはさらに大きい傾向になる)。比較的安価で入手できるから、とりあえずBluetoothを使うのには十分なのだが、ノートPCでの利用が多いユーザーはもっとスマートな製品が欲しくなるかもしれない。

 ノートPCから飛び出さないBluetoothアダプタの例としては、Socket Communicationsの「Bluetoothコネクションキット」が挙げられる。CF Type1カードのBluetoothアダプタ、PCカードアダプタ、ドライバがセットになった製品で、アンテナ部がスロットから飛び出さないのが最大のウリだ。難点は価格が高いことで、日本法人の直販価格(オンライン価格)が26,000円もする(しかも、現在品切れ中)。Bluetoothを内蔵したPDAが29,400円で買える(日本HPの「iPAQ hx2110」)ことを考えると切なくなる価格である(もちろん、PDAではノートPCと携帯電話を接続できないわけなのだが)。

 現在筆者がBluetoothのないノートPCを利用する際に組み合わせて使っているのは、ずいぶん前に入手した3ComのX Jack方式のBluetoothアダプタ(PCカード)だ。バルク品のため、マーキングがない。X Jackというのは、押すと飛び出してくるジャックを持ったPCカードで、最初に製品化されたのはモデムだったように記憶する。その後、EthernetカードアダプタやBluetoothアダプタ、無線LANアダプタが製品化された。いずれの製品も、ジャック部を引っ込めた時は、ほとんど出っ張らないのが魅力だ。

ドングルタイプのBluetoothアダプタ。本体から突き出してしまうところが悩ましい X JackのBluetoothアダプタ
使わない時はピッタリしまえてジャマにならない 使うときはアンテナを伸ばして感度アップ 3ComのBluetooth Connection Managerに認識されたauのBluetooth対応携帯電話

 難点は、この引き込み式の機構が割高につくことと、時に故障の原因となること。特に、モデムやイーサネットなど、ジャック部にケーブルを接続しなければならないものは、トラブルが多かったように記憶する。Bluetoothや無線LANでは、ジャックといってもケーブルを接続する必要はなく、単にポップアップ式のアンテナになっており、ケーブル接続部をこじって壊すようなことは減少した。だが、3Comがクライアント製品から事実上撤退してしまったため、国内でX Jack製品を入手することは、困難な状況だ。

X Jack方式の無線LANカード。アンテナが電源スイッチを兼ねる

 特にBluetoothアダプタは、米国でもすでに生産中止された古い製品であり、新品で入手するのはおそらく不可能だろう。作りという点でも、無線LANアダプタに比べるともうひといきの感が否めない。無線LANアダプタでは、アンテナが電源スイッチを兼ねており、アンテナを引っ込めた状態ではOFFになるが、Bluetoothアダプタはアンテナを引っ込めても、通電したままだ。近距離無線ということで、このような仕様になっているのかもしれないが、アンテナがスイッチになっている方が良かったのにと思う。誰か3Comから特許を買って(借りて?)、もう一度2.0+EDR対応で作り直してくれないか、とも思うが、それよりすべてのノートPCが最初からBluetoothを標準内蔵することを望むべきなのだろう。

□関連記事
【9月30日】【山田】朽ちる紐と生まれる紐
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0930/config074.htm
【6月7日】【塩田】Bluetoothって便利?
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1213/pda45.htm
【4月22日】【元麻布】各種Bluetooth対応機器導入記
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0422/hot366.htm

バックナンバー

(2005年12月16日)

[Reported by 元麻布春男]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp ご質問に対して、個別にご回答はいたしません

Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.