Amazon.co.jpからメールが届いた。以前に購入したCD が、騒ぎになっているrootkitを含むため、ソニーが商品のリコールを要請しているという内容だった。 ●不具合商品としての返品返金 メールには、開封/未開封を問わず、不具合商品として返品確認後代金を返金すると記載されていた。すぐに手続きをしたのはいうまでもない。戻ってくる代金でXCPを含まない正規のCDを購入することにしよう。 現在、この商品のページを開くと、きちんと「The Body Acoustic [SONY XCP CONTENT/COPY-PROTECTED CD] [Enhanced] [from US] [Import]」と明記されていて、ソニーが販売停止を要請している旨の解説があり、購入することはできない。要請しているのはソニーと記載されているが、実際にはSony BMGだろう。少なくともメールにはそう明記されていた。 自分自身ではできるだけコピープロテクトのかかったCDは買わないようにしてきたつもりなので、これは間違って購入したものだ。実はこのタイトル、2種類のパッケージがあって、もう片方はDualDiscとなっていた。両パッケージの価格差は370円。だから、つい、安い方を買ってしまったのだ。しかも、ぼくが購入手続きをしたときには、『COPY-PROTECTED CD』という記載はなく、「The Body Acoustic [ENHANCED] [FROM US] [IMPORT]」とだけあった記憶がある。返金処理のときの商品リストでもそうなっていた。 届いたCDにはCOPY-PROTECTED CDであることを示す派手なステッカーなどは貼られていなかった。でも、iTunesを起動した状態で届いたCDをドライブにセットしても、いつものように曲目がCDDBからダウンロードされず、リッピングができなかった。おかしいと思ってジャケットをよく見て、COPY-PROTECTED CDであることに気がついたという顛末だ。 仕方がないので、別のユーティリティでCDを開き、オーディオトラックをWAVファイルとして取り込み、そのファイルをiTunesに登録したあと、AACに変換し、手動でアルバム、アーティスト情報を入力した。ぼくがPCにCDの内容を取り込むのは、iPodへの転送が主目的なので、余計なソフトのインストールは必要ない。許諾書にも同意しなかったためrootkitの常駐からは免れたというわけだ。 ●誰がどのくらい聴いたのか いずれにしても、今回の騒ぎを見ていると、レコード会社はCDを買ってほしくないと言っているとしか思えない。さらに、文化庁が文化審議会著作権分科会法制問題小委員会において、iPodなどのポータブルオーディオデバイスを指摘録音補償金制度の対象とするかどうかの結論を先送りすることが発表されるというタイミングである。 ぼくは、この補償金制度に対して、正確にアーティストにその対価が分配されるのであれば、ある程度は仕方がないんじゃないかと思っている。この話題に関しては、録音・録画を行なわない購入者からも強制的に一律に課金することになるといった論調が強いが、集まった補償金がどのように分配されるのかがとても不透明であることの方がずっと問題なんじゃないかと思う。 この調子では、コンテンツを誰がどのくらい聴いたのか、どの著作権者のコンテンツがどのくらい楽しまれたのかを公のものにしたくないんじゃないかと勘ぐられても仕方がなかろう。今どき、レンタルするのでもなく、ダウンロードするのでもなく、パッケージソフトをショップで購入する顧客がどれほど大事なのかを理解しようとせず、取りやすいところからカネをとるという論理である。 ぼくのiPodには、今、約18,000曲が収録されているが、各曲のビットレートは96Kbpsである。これを192Kbpsにすれば半分の9,000曲しか収録できなくなる。なのに一律で補償金を課金するという発想自体がもう矛盾に満ちている。もっとも、パッケージなど売れれば売れるほど損をするというのがベンダー側の論理であれば話は違ってくるのだが。 そもそも、パッケージで商品としての音楽を購入するということは、いったい何に対する対価を支払うことになるのだろうか。音楽CDには使用許諾書など同梱されていないので、詳細は謎だが、ぼく自身は、その音楽を聴く権利を購入するものだと思っていた。だが、プロテクトされたCDによってその権利が曖昧なものになり、しかも、録音すれば追加の料金が必要になるというのでは、もはや、CDを購入することの意義が揺らいできてしまいそうだ。 ●パッケージコンテンツは必要なのか 今、映画館に行くと、ひとしきり予告編やCMが流れたあとに、映画の海賊版撲滅キャンペーンの映像が上映される。女の子の瞳から流れた涙が墨色に染まるというもので、最後に「私は見ない、私は買わない」というコピーで締めくくられる。 ぼくは、あの映像を見るたびに不快になる。こちらは、わざわざ代金を払って映画館に足を運んでいるのだ。ある意味での優良顧客に対して、この映像はないだろうと思う。これから始まるおもしろそうなコンテンツにワクワクしているときに、こういう映像を見せられると、せっかく高まった高揚感も萎えてしまう。 HD DVDとBDの騒ぎもまだ続いている。既存のCDやDVDの今の状態を見ていると、本当にパッケージメディアの存在が、ぼくらの未来にとってそれほど重要なことなのかという気持ちにさえなってくる。ただ、その問題を解決し、バラ色の未来を提示できるほどには、ネットワークは育っていない。そんなパッケージコンテンツなら「私は見ない、私は買わない」と言われるようになる前に、やることはたくさんあるんじゃないだろうか。 □関連記事
(2005年11月25日)
[Reported by 山田祥平]
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