松下電器のLet'snoteが依然として好調な売れ行きを見せている。2005年度上期は、前年同期比2桁増前後の伸び率で推移しており、国産他社が1桁台の成長率に留まる中、安定した成長を維持している。 今年度からPC事業において陣頭指揮を執っている松下電器パナソニックAVCネットワークス社システム事業グループITプロダクツ事業部 高木俊幸事業部長に、今年度の松下電器のPC事業への取り組みを聞いた。 --PC事業が順調のようですね。今年度上期の状況をお聞かせください。 高木 9月末に閉めるまでは予断を許しませんが、ここまでの経過では、前年同期比2桁前後の成長率で推移しています。今年5月の段階では、国内モバイルノートPC市場において、今年度、18.7%のシェアを取ると宣言しましたが、それに向けてはほぼ予定通りに進捗しています。 --牽引役となっている製品はどれですか。
高木 4機種のラインアップのうち、ドライブを内蔵したW4が4割強を占めています。ついで、小型軽量のR4が25%程度、T4とY4がそれぞれ15%強といったところです。 W4は、法人からの需要が増加しているのが最近の特徴です。特に、シェルドライブに対する評価が高くなっていますね。机の上でも場所をとらずにドライブを利用できるという点が法人から評価されています。これは、松下のグループ会社が独自に設計したドライブであるという強みとともに、オーディオ部門との連携によって得た、シェル型のドライブを、機器に組み込むためのノウハウが製品化につながっており、オーディオ部門が強い当社ならではのものだといえます。 また、R4は、他社に直接バッティングするモデルがないということから、指名買いが多いようです。さらに、Y4は立ち上げまでには苦労しましたが、今では一時期前のヒット商品ぐらいの数字が出ていますし、Webでも購入が多い。A4モバイルという使い方も少しずつ広がってきたといえます。 --好調の要因はなんだと分析していますか。 高木 もともとLet'snoteは、モバイルPCの領域にフォーカスし、そこで軽量、長時間駆動という、モバイルPCに必要される要件を追求しつづけてきた。この点では、他社の追随を許さないと自負しています。この軽量、長時間駆動という2つの課題は、これからも引き続き追求しますが、これに加えて、今年から新たに「タフ」というテーマに取り組んできた。これが少しずつ評価を得始めているのではないでしょうか。外で利用するということを考えると、タフというのは極めて重要なテーマです。モバイルPCは、デスクトップPCや、机に設置して利用することが多いノートPCに比べても、タフという要素に対しては高いレベルが求められています。 例えば、モバイルユーザーの声を聞くと、身に覚えがないのに気がついたら液晶が割れていたなどというケースがあります。よくよく聞いてみると、満員電車のなかで押された際に液晶が割れてしまったようだというのです。このように、持ち歩いていると、PCは常に危険な状況にある。外で持ち運んで使うには、軽量、長時間だけの要素だけでなく、タフということが大変重要になってくる。モバイルで利用している人ほど、タフの重要性をご認識いただいていると思います。 5月以降に発売した製品では、耐100kg級のタフボディなどを採用しており、いまのところ液晶が割れたという報告はありませんし、HDDがクラッシュしたという報告も他社に比べて極めて少ないようです。 もう1つ、タフという点では重要な要素があります。それはセキュリティという点から見たタフです。セキュリティチップの搭載をはじめ、各種セキュリティ対策によって、仮に盗難にあってもデータが読まれないといった機能が搭載されています。これも、モバイルPCに必要とされるタフの1つです。 --Let'snoteはタフである、という認識は浸透していますか。 高木 いや、それはまだまだです。まだ広く浸透しているとはいえません。とにかく、今年度は、Let'snoteはタフであるということを繰り返し訴えていきたい。秋モデルについても、まだ詳細は言えませんが、「タフ」ということを改めて前面に打ち出したい。モバイルPCは、軽量化と長時間駆動だけでは完全とは言えない。タフという機能が加わってこそ、本当の意味でのモバイルPCが完成する。これは、数多くのユーザーの声をもとに、導き出した回答ですから、方向性は間違っていないと考えています。 --長時間駆動、軽量化という点では、さらに進化するのですか。 高木 例えば、T4で実現した12時間連続バッテリ駆動や、Y4で実現したクラス最軽量という点に関しては、秋モデルで飛躍的に改善されるというわけではありません。しかも、来年には、ノートPCもデュアルコアCPUになってきますから、長時間駆動という点では、さらに厳しい条件が突きつけられることになる。デュアルコアCPUでありながら、数値の上では横ばいか、若干短くなるというのが最終的な着地点になるでしょう。カタログ上では、どうしても駆動時間の数字ばかりに目がいきますから、性能が劣るように見えますが、これを実現するためには、技術的に大変な進化が図られている。しばらくの間は、現在のLet'snoteが実現した数値を、デュアルコアCPUでありながらも、いかに実現することができるかが鍵になるでしょうね。 --今年度下期のポイントはなんでしょうか。 高木 繰り返しになりますが、まずは「タフ」という認知度をさらに高めたい。これは下期の重点課題となります。もう1つのポイントは、購入していただいた後に対しても力を注ぐということです。買う前の期待感ばかりを煽るのではなく、ご購入していただいた後も、「やっぱり買ってよかった」と思ってもらえることを目指したい。タフということも、液晶が割れたり、HDDが壊れたりといったことがなく、購入後も安心してご利用いただくための取り組みだと言えますが、加えて、サポート体制も強化していく。 今年春モデル以降は、保証期間内であれば無償での引き取り、および工場に到着してから24時間から72時間以内での修理完了を実現しています。これも神戸で生産しているという国内生産体制のメリットが生かされています。 8月1日には、サイトをリニューアルして、この点からもサポートを強化しました。ウェブで提供しているFAQの内容は、年内には、現在の登録件数に比べて3割程度増やしますし、さらに、修理進捗状況の確認や、各種情報提供の強化、法人モテルではWebを通じた3年保証の登録受付なども開始します。 --モバイルPCでのトップシェアは獲得できそうですか。
高木 ぜひ目指したいですね。JEITAの統計では、今年度上期は、モバイルPC市場がやや停滞しているようですが、Let'snoteの動き見る限り、そんなことはない。むしろ、生産体制を強化して、増産へとシフトしたいと考えています。神戸工場のラインも一新して、現在、年間50万台の体制を、来年度には60万台程度には引き上げたい。今はその準備に入っていまして、10月末には、新たな生産ラインが完成することになるでしょう。また、神戸工場内に電波暗室を新たに設置し、より品質の高い製品作りに取り組みます。 --電波暗室を自前で設置するというのは、今後、デジタル放送対応など、TVチューナ機能をLet'snoteに搭載するということですか。 高木 いいえ、違います。Let'snoteは、あくまでもモバイルに特化した製品であることに変わりはありません。むやみにTVチューナ機能を搭載するようなことはしません。電波暗室も、モバイル環境で利用する際に、より安定した品質を維持するためには不可欠な施設であると考えたからです。Let'snoteのみならず、堅牢性を追求したタフブックも国内向けにラインアップを強化する予定ですから、これだけの機種数をカバーするには、やはり自前で電波暗室を持った方がいいと判断したのです。生産ラインの強化もラインナップの強化と密接につながっています。 今年度は182万台と予測される国内モバイルPC市場において18.7%のシェアを目指しますが、2006年度には200万台の市場において、20%のシェアを獲得し、ぜひトップシェアを獲得したいですね。
□関連記事 (2005年9月5日) [Text by 大河原克行]
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