購入後、一度も部屋の外に連れ出されたことがないノートパソコンが少なくないと聞く。デスクトップではなくノートを選ぶのは、省スペースが理由かもしれないし、もしかしたら持ち出すこともあるだろうという念のためが理由かもしれない。こうした理由によって、全パソコンに占めるノートパソコンの割合はどんどん増えていく。 ●PCカード型端末の故障の顛末 以前、ここで書いた松下製のPCカード型端末「P2401」だが、ようやくその故障の顛末がはっきりした。3回に1回くらいしかつながらないという中途半端なトラブルでドコモショップに持ち込んだところ、不具合は再現し、修理不可能という回答をもらった話だ。 修理をする場合、35,000円程度は必要なので、新しいものを買った方がいいという話だったが、それでは納得がいかないので、子細に検査を依頼することにした。ところが、10日ほどで連絡があり、異常なしという結果とともにカードが戻ってきた。実に不可解だ。自分の環境で不具合が発生し、窓口に持ち込んで見てもらったところ、そこでも同じ不具合が再現したのだから、異常なしというのはどうにも不思議な結果である。窓口の人の話によると、クルマでいうところのオーバーホールのようなことをした結果、調子が戻ったのではないかということだった。 ただ、あまりにもおかしな話なので、いったいどんな処置をしたのかを尋ねてみた。あくまでも一消費者としての疑問解消が目的で取材等ではない。ドコモではこうした経緯を公開することはしていないそうなのだが、できる限りの情報は出しましょうということで、20日ほど経過した今日、文書での回答が得られた。 ●カードは壊れていなかった 受け取った文書によれば、検査に回された機体は、下記のような7段階の故障修理フローに流されるという。 1. 外観・再現の確認:端末の外観と申告内容の再現性を確認 1から順に試験を行ない、どの段階であれ、エラーが起こればそのまま通常障害修理にまわることになるという。これは異常が確認できた場合に、その異常個所に対しての修理を実施する。 一方、7までの段階をクリアしたものは、試験結果異常なしとなり、顧客に戻される。そして、ぼくの機体は1から7のテストをすべてクリアし、修理の必要なしということで手元に戻ってきたわけだ。ショップでの話では、いったん分解しての再組み立てということだったが、このフローを見る限り、分解が行なわれたようには見えない。が、一部の試験のためには、分解が必要だったこともありうる。 いずれにしても、1と2の試験を最初からクリアできているというのなら、ぼくの手元ではもちろん、ショップの窓口でも再現した不具合はいったい何だったのだろう。 こうした不具合に遭遇したとき、ぼくは、必ず複数のプラットフォームで再現することを確認してからサービスに持って行く。今回も、3台のノートパソコンで試して状況が同じだったので、不具合を申し出たわけだ。あまりにもおかしいので、故障より先に、環境の異常を疑った。ドコモに対して、FOMAのネットワークや最寄りの基地局に、何か、トラブルがないかをメールで問い合わせたくらいだ。何の異常もないということで、ハードウェアの不具合を確信した。そして、窓口に持ち込んだら、それが再現したというわけだ。 でも、この結果には、窓口の人も困っただろう。不具合が再現したと客にいった手前、実は異常はありませんでしたという回答では、まるで、適切な処置ができなかったみたいだからだ。まあ、故障を言い渡されても、新しいものに食指が動かない限りは、多少はジタバタしてみるのが吉という教訓になった。とはいえ、こんなことをするユーザーが多くなっては、端末のコストがはねあがりそうで、悩ましいところだ。 ●どこまで乱暴に扱われることを想定しているのか モバイル機器は、毎日持ち歩いて使う以上、腫れ物をさわるようには扱えない。普段持ち歩いているノートパソコンも、特に、インナーケースには入れず、デイパックに裸で放り込む。そうでないと、カバンから出してすぐに使えないからだ。 剛性の低いノートパソコンでは、携帯を続けていくうちに、筐体に歪みが出てくることもある。たとえば、平らな机の上でゴム脚がうまく接地せず、キーボードを叩こうとすると、カタカタと揺れるのだ。これは使っていて気分が悪い。そういう場合は、ノートパソコンの筐体を注意深くねじる。たいていはそれで治る。 購入直後のノートパソコンがそういう状態だったことがあった。外に持ち出してもいない。買ってきたその日のことだ。さすがに、販売店に持ち込んで、新品に交換してもらった。新しいノートパソコンを自分の使いやすいようにセットアップするには半日以上かかるのだが、そのときは、セットアップが終わってからそのことに気がついたので、かなりショックだった。 さて、不具合が発生したPCカード端末は、ノートパソコンに装着しっぱなしのことが多かった。これはこれで、カードに強い力がかかったときに、カードではなく、パソコンの基板に負担がかかり、最悪の場合は、パソコンが破損してしまうという話も聞くが、やはり、便利さには変えられない。 気分的には、モバイル機器は、携帯電話感覚で使っているというイメージだろうか。携帯電話は裸のままで、ポケットに入れたり、ストラップで首からかけたり、ハンドバックに入れたり、あるいは、ジーンズのおしりのポケットにつっこんだりと、いろいろな携帯のされ方を見かけるが、ぼくは、パンツの右ポケットに入れている。左のポケットには鍵などがジャラジャラと入っているので、それといっしょにしては、いくらなんでも外装が傷だらけになってしまうだろうという判断で、左右のポケットに分散させている。 たぶん、携帯電話をケースなどに入れて持ち運んでいる人は少ないと思う。携帯電話が精密機器であり壊れ物であるという意識はけっこう低いのではないだろうか。もっとも、携帯電話の場合、早い人では1年以内に機種変更してしまうだろうから、持ち運びによる経年劣化や損傷などが故障に結びつく事態は、あまり、表に出てこないのかもしれない。モバイル機器という名目の製品である以上は、そのくらいのタフさを持っていてほしいと思う。 ●いつまで続く冬の時代 今はまだ、モバイル冬の時代が続いているが、個人的には、将来的にノートパソコンを1人1人が持ち歩くというのは、ごく普通のことになっていくんじゃないかと信じている。ぼくは、携帯電話を持つようになって10年ちょっとになるが、当時、携帯電話を持っている人は、今ほど多くはなかった。携帯電話よりずっと前からノートパソコンを持ち歩いていたのに、アッという間に携帯電話に追いつかれ、追い越されてしまった。 携帯電話は、どうして、パソコンのようにコモディティ化の道を歩むことなく、遊びの要素たっぷりに市民権を得ることができているのだろう。その理由のひとつが、肌身はなさず持ち歩く対象であり、身につけるものであるからだ。 今のパソコンが4ナンバーの商用バンであるとすれば、携帯電話は小さくても快適な5ナンバーの自家用車だ。そのくらいの違いがある。デジカメもついたし、今度は、ポータブルオーディオプレーヤーにもなる。 ぼくは今、携帯電話とは別に、デジタルカメラとiPodを持ち歩いているが、十分な性能が得られるなら、これらはいっしょになってほしいと願っているし、きっとそうなるだろう。毎日、3種類の機器を充電するのはたいへんだし、持ち歩きもめんどうだ。携帯電話の将来はいろいろと思いつくのに、パソコンはどうかというと、あまり、ときめかない理由は、いったい何なのだろう。 バックナンバー
(2005年7月22日)
[Reported by 山田祥平]
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