バッファローが、サプライ関連製品の品揃えを一気に強化する。 昨年6月に、サプライ事業への参入を表明して以来、ちょうど1周年。マウス、ケーブルなどの製品を投入していたものの、当初計画を下回る実績に留まっていたバッファロー。ここで改めて、サプライ事業のテコ入れに乗り出し、先行各社との差を縮める考えだ。
「やめることは一度も考えたことがない。むしろ、事業拡大に向けて一気にアクセルを踏み込む」と語る斉木邦明社長に、バッファローにおけるサプライ事業に対する本気ぶりを聞いた。 ●初年度は思わぬ不覚
周辺機器メーカートップのバッファローが、エレコムやサンワサプライといった競合がひしめくサプライ市場において、どんな製品を投入するのか、そして、どんな影響を市場に与えるかが関心を集めたからだ。 バッファローが投入した製品群は確かにインパクトがあった。 当初投入した製品は、バッファロー独自のオリジナリティにこだわり、マウス1つとっても独自の金型を用意し、利用者の手のひらのサイズにあわせてL、M、S、USの4種類をラインナップするという、他社にはないこだわりを見せた。 また、中国の生産拠点を20カ所以上も訪問して、高い品質で製品を提供できる生産体制を整えるといった点にもこだわった。 そして、価格面でも他社に比べて2割程度安い設定とし、競合他社を慌てさせた。販売店に対する価格対策(実売価格の改定など)が頻繁に行なわれたことからもそれはわかるだろう。 当初の売り上げ計画は、初年度10億円。新規事業の地盤づくりの1年として捉えても、全社売上高1,000億円を超えるバッファローにとって、それは十分射程距離内の計画のように見えた。 だが、蓋を開けてみると、実際には、初年度実績はその半分の約5億円の売上高に留まった。
なぜ、バッファローのサプライ事業参入は、計画を下回る結果となってしまったのか。
「商品ラインナップが不足していたこと、そして、オリジナリティにこだわりすぎたことに尽きる」。 サプライ事業は、店舗における「棚取り」が売れ行きを左右する。サプライで先行するメーカー各社は、販売店に対する手厚い支援体制を敷きながら、サプライコーナーの展示を充実させる。壁一面をマウスで埋め尽くすという光景を、大型量販店やカメラディスカウンターで目にするが、これも、販売店とサプライメーカーとの親密な協力関係によって実現されるものである。 だが、バッファローの品揃えは、ケーブルこそ競合他社並の品揃えとなっていたものの、マウスなどのペリフェラルの領域では約半分の品揃え、マウスパッドやパソコン用バックなどのアクサセリーは皆無という状況。これでは、他社との差は歴然だった。大型店舗の場合、他社は棚が埋められるのに、バッファローは埋められないという事態に陥っていたのだ。 この品揃えの遅れの要因は、もう1つの理由として斉木社長が指摘した「オリジナリティにこだわりすぎた」ことが影響している。こだわったことで、製品化に時間がかかり、市場への製品投入の遅れにつながったのだ。
もう1つ付け加えるならば、昨年度後半から同社の事業の柱であるストレージ、メモリー、ネットワークに全社のリソースを集中したことも影響しているといえそうだ。このリソース配分が、同社の2004年度の全社業績を好調なものとした。だが、その裏返しとして新規事業であるサプライ事業への注力が遅れたというわけだ。 ●勝つための製品ラインナップ こうした初年度の反省を踏まえて、斉木社長は、「この6月から、サプライ事業で勝つための製品ラインナップの強化に乗り出す」と意欲を見せる。 6月23日から新製品を順次投入。ペリフェラル分野においては、マウス、キーボード、USBハブ、ヘッドセットマイク、スピーカー、ゲームパッドなどの製品群を強化。これまで約100製品だった品揃えを、7月末時点には、185製品へと増やす。競合他社が約200製品であることに比べても、遜色がないレベルの品数だ。 また、これまで参入していなかったアクセサリー分野では、インナーバック、マウスパッド、ジェルパッド、盗難防止セキュリティロック、耐震防止グッズなど約70製品を新規に投入。さらに、従来から投入しているケーブルでは約250種類の品数を継続する。 これによって、棚割提案でも他社との差が無くなるというわけだ。
「まずは品数を揃える。そして、今年10月以降には、オリジナリティを再度追求することになる」(斉木社長)と、今年度は二段構えで品揃えを強化する考えだ。 10月以降の新製品では、すでに実績があるマウスにおいて、バッファローとして再度オリジナリティを追求した品揃えを強化するほか、USBフラッシュメモリで高い評価を得ているキャラクター戦略による他社との差別化、好調な売れ行きを見せているIP電話「Skype(スカイプ)」関連製品の強化などを予定しているという。
「Skypeならばバッファロー、というイメージを早期に定着させたい」(斉木社長)として、同社サプライ事業の柱の1つに、Skypeを位置づけることも考えているようだ。 ●事業部独立で背水の陣、100億円規模を目指す
今年4月からソフトバンクBBと提携して、大型量販店の支援体制を大幅に強化したほか、5月には、これまでDHS(デジタル・ホーム・ソリューション)事業部に置かれていたサプライグループを、サプライ事業部として分離独立。「より戦略的に投資していく体制を整えた」という。 斉木社長は、「この1年間の経験によって、見えなかった部分が見えてきた。物づくりにこだわりすぎた一方、製品の品揃えや、販売店支援などの点で他社と差があったことを謙虚に反省をし、課題の解決を図る。苦しんだこの1年を、次の成果へとつなげたい」とし、サプライ事業での巻き返しを、今年度の重点課題の1つと位置づけている。 今年度のサプライ事業の売り上げ計画は30億円。初年度の約6倍の計画だ。そして、2006年度には前倒しで100億円規模へと成長させ、全社売上高の1割弱、市場シェアという意味ではベスト3入りを目指すという。 「今年4月以降、スピーカーなどのサプライ製品が好調な出足を見せており、年間30億円の計画に向けては予定通りの進捗を見せている。6月の新製品、10月の新製品投入によって、さらに事業を加速させたい」と斉木社長は意気込む。 同社がサプライ事業に参入した背景には、これまでバッファローブランドに触れてこなかったユーザーに対する裾野拡大の狙いがある。一方、サプライ最大手のエレコムが、周辺機器メーカーであるロジテックの買収によって、バッファローの主戦場である周辺機器分野に乗り出してきたことへの対抗という意味も見逃せないだろう。 「2004年度は導入の年、2005年度は飛躍の年、そして2006年度は完成の年」(斉木社長)とするバッファローのサプライ事業にとって、今日から投入する新製品群は、まさに勝負に打って出るための試金石となる。
果たして、バッファローのサプライ事業「第2幕」は、どんな影響を市場に与えることになるのだろうか。その本気ぶりは昨年の参入時を上回っている。
□関連記事 (2005年6月23日) [Text by 大河原克行]
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