●CLIE用Bluetoothアダプタ「HNT-BT1」を購入 3月下旬、ハギワラシスコムはソニーのCLIE用Bluetoothアダプタ「HNT-BT1」を発表した。この時点でソニーはCLIEの打ち切りを発表していることを考えると、異例の発表ともいえる。開発を進めてきたら、突然ソニーからハシゴを外された、ということなのかもしれないが、とりあえず製品としてリリースしてくれたことに、PEG-TH55の1ユーザーとして感謝したい気分だ。 この発表の時点で、筆者の手元にあったBluetooth機器というと、HPのノートPC(nc4000)にBlueTake Technologyのマウス(BT500)程度。マウスをBluetoothにして操作性が良くなるか、と言われると困ってしまうが、ノートPCのUSBポートからマウスを開放できるのがありがたい。HDDや記録型DVDドライブなど電源を要するデバイス、あるいはPDAや携帯電話の充電など、ノートPCが備えるUSBポートのバスパワーを必要とするデバイスが最近増えているので、できればマウスにはUSBポートの利用を遠慮して欲しかった。
HNT-BT1がサポートするプロファイルは、GAP/SDAP/SPP/DUNというところだが、「本製品を利用して出来ること」として明記されているのは
の2つだけで、Bluetoothを用いたPCとの同期(HotSync)には対応していないと明記してある。筆者の場合、母艦との同期は充電とほぼ同義であり、Bluetooth経由での同期は特に必要としていないが、この機能が欲しかった人もいるかもしれない。最初からBluetoothを内蔵したCLIE(PEG-UX50など)なら、HotSyncをはじめ、さまざまなことができるだけに残念な気もするし、ヨーロッパでは最初からBluetoothを内蔵したPEG-TH55が販売されたことを思うと悔しくもある。が、冒頭でも述べたように、親が見捨てた? 子に服を買ってくれるハギワラシスコムに文句など言えない。
それはともかく、この時点で筆者の手元に、HNT-BT1と組み合わせて使えるBluetooth機器はなかった。が、この手のものはあるうちに買っとけということで、とりあえず買ってから使い道を考えることにした。購入したのはソニーの直販サイトであるソニースタイル。税込み9,240円に送料300円だったが、以前取り上げたPSP用のMPEG-4変換ソフトであるImageConverter2(1,500円)を購入した際にもらったクーポンで1割引きとなり、最終的な購入金額は8,616円である。 ●Bluetooth携帯に乗り換え さて、GPSユニットを買わないとしたら、HNT-BT1を使うために買うべきBluetooth機器は携帯電話しかない。筆者がこれまで使ってきたのは、京セラのAIR-EDGE PHONEであるAH-K3001Vだが、ベストエフォート32kbps(1xパケット)の通信速度は、Bluetooth 1.xのデータレートを大きく下回り、メリットを享受できない。 そこで、もっとデータ通信速度の速い、3Gケータイを検討してみよう、と考えたのである。現状、最も高速なのはauのCDMA 1x WINの2.4Mbpsだ。これもベストエフォートだから、この通りの速度が出るとは思えないが、32kbpsよりは格段に速いだろう。というより、逆に2.4MbpsだとBluetooth 1.xのデータレート(1Mbps)を上回り、Bluetoothがボトルネックとなる。どこまで2.4Mbpsの真価が発揮されるのかは状況しだいだが、現状を考えると、Bluetoothがボトルネックになるくらいの速度が出るのなら万々歳だ。このCDMA 1x WINでBluetoothをサポートした端末、ということで探すともう検討の余地はない。東芝のW21Tが、唯一この条件を満たす製品であり、これを買うしかないのだ。 少なくとも今のところ京セラは解約せず(ただし料金プランはつなぎ放題から安価なパックに切り替えた)、安価なパックにパケット割WINミドルの組合せ、という料金プランでW21Tを契約した。心積もりとしては、W21TをBluetooth接続のPDA/ノートPC兼用のポータブルワイヤレスモデムとして使う、という方針である。 W21Tそのものではデータ通信(EZweb、ケータイでのEメール)も通話も原則的にはしないつもりだ。とりあえず年割をかけるのは待っておいて、W21Tの様子を見つつ、ウィルコムからAIR-EDGE PHONE PROなんてのが出ないか、auがPC接続を含めた定額料金プランを出さないか、状況を見極めて夏くらいまでに結論(現状のまま併用で年割追加、出るかもしれぬ京ぽん後継機に一本化、W21Tに一本化で年割)を出そうと思っている。 W21Tを買ってきて、一通り設定を行ない、まずPCとの接続を試みた。とりあえずウィザードで特定のBluetoothデバイスを検索し、W21Tを探させる。と同時に、W21T側も探索モードにしてnc4000を探させる。お互いに見つけられたら、4桁のパスキーを双方に入力すれば、お互いが相互の接続リストに登録(ペアリング)され、準備が整う。セキュリティ目的で入力が認められる時間が30秒に限られている(W21T)ため、最初は失敗したが、ほどなくペアリングに成功した。ペアリングは最初にデバイスを相互登録する場合にのみ必要で、次回以降は不要だ。 ペアリング済みのnc4000のデスクトップに用意されたMyBluetoothPlaceを開くと、そこにダイヤルアップ接続(BluetoothConnection)が登録されていた。そこにダイヤルナンバー、ユーザー名やパスワードを登録してダイヤルしたら、あっさりとインターネットに接続された(もちろん対応プロバイダとの契約が必要)。 ためしに写真とテキストで約1MBのZIPファイルを帝国ホテルからメールしてみたが、だいたい6分ほどで送信が完了した。どうも、バックグラウンドでNortonのLiveUpdateが動いていたみたいなので正確ではないが、少なくとも送ってもいいかな、という所要時間で済んだことは間違いない。これくらいのファイルでも、AIR-EDGE PHONEでは送信する気にならなかったことを考えれば大幅な進歩ではある。が、この間の通信料を考えると、のんびりWebのブラウズなんてことはやってられなさそうだ(時間は料金に関係ないと分かっていても、金額を見るとつい急いでしまう)。
肝心のHNT-BT1だが、こちらも特に難しいことはなかった。添付CD-ROMのドライバをHotSync経由でPEG-TH55にインストール、BT Adapter Setting UtilityでW21Tの検索とペアリングを行なったら、環境設定のネットワークで新規のサービスを作成、そこにW21Tを使った設定を記述してやれば、それでOKだ。次からはメールクライアントのCLIEメールや、ブラウザのNetFrontを起動し、オプションのネットワーク環境を必要に応じて切り替えれば(W21Tと無線LANなど)良い。電車の中でも、CFカード大のアダプタを取り出してPEG-TH55に挿し、後は数回タップしてやればメールが取得できる。
PCにしろCLIEにしろ、ペアリングさえ済めば接続は確実でほとんど不安はない。ならばと考えて、次に試したのがMac miniだ。以前に取り上げたように筆者はMac miniをBluetooth付きで購入し、マウスとキーボードを接続している。ここにW21Tをつないでみようというわけだったのだが、ついに敗北? を喫することになった。W21TとMac miniで、なかなか相互に認識できない。W21Tが認識したかと思うとMac miniが見つけられず、あるいはその逆、というパターンだ。 ようやく両方で認識できたかと思ったら、Mac mini(MacOS X)側が6ケタのパスコードを要求してきた。パスコードはPC(Windows)やPDAの時も相互認証に必要だったのだが、W21Tがサポートするのは4ケタ。PCやPDAは4ケタのパスコードでうまくいったのだが、Mac miniは6ケタのパスコードを指定してきて、これをW21Tに入力しろという。W21Tは5ケタ以上のパスコードはサポートしていないから、とりあえずここで断念してしまった。うまくいくことばかりではないようだ。 ●Bluetooth対応ヘッドセットでは帯域が問題に
これに懲りずに新しく追加したBluetoothデバイスが「mClip Audio」だ。mClip AudioはBluetoothのステレオヘッドセットである本体(リチウムポリマー充電池内蔵)と、ポータブル音楽プレイヤーのヘッドフォン出力に接続するドングル(mDongle、単4電池駆動)がセットになったモバイルキャストの製品。インナーイヤー方式のステレオヘッドフォンの「MPX1000」と、ヘッドフォン部が別売の「MPX1100」の2種類がある。筆者が購入したのはMPX1000だ。 mClip Audioの特徴は、mClipとドングル間をA2DP(AVプロファイル)で接続しながら、同時に携帯電話ともヘッドセット/ハンズフリープロファイルでマルチコネクトする点にある。つまり、携帯電話のヘッドセット兼ポータブル音楽プレイヤーのワイヤレスヘッドフォンになる、というわけだ。しかも、通常は音楽を聞きながら、電話が着信すると自動的に携帯電話に切り替わる。電話を切ると、またヘッドフォンに復帰するというスグレものである。 このmClip Audioは、ディスプレイ等を持たないため、ステータスの表示は本体のLEDと音に依存する。操作はヘッドフォンのイヤープラグに設けられた小さなスイッチで行なう。したがって、最初は今本体がどのような状態にあるのか分からず、またボタンの押し具合も良く分からずとまどったが、慣れるにしたがって、使い方がのみこめてきた。一度分かってしまえば、このmClip Audioも動作は確実で、安心して使える。 難点は音楽の再生品質が、5,000円級のカナル型ヘッドフォンと比べてもやや聴き劣りすることだ。音楽が楽しめないクオリティではないものの、5,000円の普通のヘッドフォンをCDクオリティとすれば、FMラジオのような感じになる。MPX1100で別売のヘッドフォンを使えば違う印象になるのかもしれないが、そもそも本格的なHiFi用途にはBluetooth 1.xでは帯域が不足している、という事情が無関係ではないだろう。一般にBluetooth 1.xの帯域は1Mbpsといわれるが、実際にはピークでも723.2kbpsしかない。ここに非圧縮のオーディオを流すのだから限界はある。ワイヤレスの利便性、自動的に電話を着信しハンズフリーで話せる利便性を重視させるべきものだろう。 このように、CDMA 1x WINといい、mClip Audioといい、そろそろBluetooth 1.xの帯域では足りないアプリケーションが出始めている。2004年11月に、2Mbpsと3Mbpsのデータレートをサポートした、新しいBluetooth 2.0 +EDR規格がリリースされ、対応PC本体はすでに出ているが、周辺機器の製品化が待たれるところだ。3Mbpsあれば、とりあえずCDMA 1x WINもHiFiも(片方だけなら)まかなえる。そのためには、PC/PDA、電話端末、ヘッドセットのすべてがBluetooth 2.0 +EDR対応する必要があるが、来年には出揃って欲しいと期待している。4月13日の答申で5GHz帯無線LANの周波数変更とチャンネル数増加も本決まりになったことだし、次のノートPCの買い替えはこの2つの動向しだいかなぁ、などと思っていたりする。 □関連記事 (2005年4月22日) [Reported by 元麻布春男]
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