元麻布春男の週刊PCホットライン

Bluetooth付き「Mac mini」を寝室用PCに




●衝撃だったMac mini

 新年明けての恒例イベントというと、ラスベガスのCES、サンフランシスコのMacworld Expoと相場は決まっている。あいにく、筆者は両方とも参加したことはないのだが、毎年どちらが盛り上がるのか楽しみにはしている。ただ、このところはラスベガスの圧勝という印象が続いていた。

 もちろんこれには筆者がPC畑の人間であるというバイアスがかかっているせいもあるわけだが、その筆者でさえも、今年はサンフランシスコだったなぁと思わずにはいられなかった。もちろんそれはiPod ShuffleとMac miniの発表があったから。中でもMac miniには強いインパクトを受けた。

 Mac miniのどこがそんなに気になったのか。コンパクトでありながらきちんとデザインされた筐体はもちろんだが、それだけならフーンで済ませるところ。Power Mac G4 Cubeだって、それほど気にはならなかった。やはりMac miniのインパクトが強かったのは、価格が安かったからだ。

 米国で499ドルから、日本でも58,590円から、という価格設定は驚きだった。米国の一部メディアで、Windowsベースの低価格PCと比較して、それほど安くはない、という論調も見られたが、標準パーツを使ったmicroATXのミニタワーと比べてどうする、と思わず突っ込みを入れたくなったほどだ。

 実際、Mac miniと比べるのなら、Mini-ITXベースの省スペースPCとでも比べるよりないだろう(実際にはMini-ITXはMac miniより一回り大きい)。が、現在秋葉原等で売られているMini-ITXベースのPCやマザーボードは本来、大量生産を前提にした組み込み機器用に開発された製品のサンプル品を単体販売していることもあって、価格が非常に高い。CPUやドライブ類などハードウェア単価を積み上げるだけでMac miniを上回ってしまうし、ましてやWindowsのライセンス料などとてもまかなえそうにない。

 台湾の一部報道では、Mac miniの月産数量は10万台以上(PC同様、Apple製品の多くも台湾メーカーの中国工場で量産される)とされているのだが、それが眉唾には聞こえないし、OSを含むソフトウェアが自社製品であるからこその価格設定のようにさえ感じられる。Mac miniのOSは、OSベンダのサポートのあるOSであり、OEM版のWindows XPとは違うのである(OSベンダとハードウェアベンダがいっしょ、というのがAppleの弱みであると同時に、強みでもあるわけだが)。

●メモリとBluetoothを追加

 筆者としてまず感じたのは、このMac miniを見てみたい。できれば中をこの目で見てみたい、ということだ。この価格を実現するための作りはどうなっているのか、この小さな筐体にどうやって各種のパーツを詰め込んでいるのか確かめたくなったのである。

 また、ちょうどタイミング良く? 筆者は寝室に置くPCを検討していたところだった。昨年暮れ、それまで使っていたTVが急に故障したため、バーゲンになっていたデルの17型ワイドTV、デル流にはワイド液晶ディスプレイ(TV機能付)を購入した(TVの絵が音からごくわずかに遅れるのが難点なのだが、まさか筆者の買った個体の問題じゃないよね)。これが備えるDVI端子に、キューブPCでも接続しようと思っていたのである。Mac miniならキューブPCよりはるかに小さいし、邪魔にならないことは間違いない。というわけで、日本で製品発表があった日、オンラインストアでポチっと予約のボタンを押してしまった。

 予約する際に悩んだのは2種類あるモデルのうちどちらにするかと、オプション類をどうするか、ということ。すでに述べたように、筆者にとってMac miniの価値の1つは安価であることだから、やはりベースになるのは58,590円の下位モデル。オプション類は実用性を踏まえて選びたいが、これまた価格が跳ね上がっては困る。

 どんなPCでもメモリはあるに越したことはないが、1GBのメモリで本体並みの金額はあんまりだ(その後米国で1GBメモリオプションの価格が100ドル引き下げられたのを受け、国内価格も37,590円に値下げされた)。しかし万が一、PC用のジェネリックなDIMMが動かないと困る(最近はあまりないらしいが、昔はAppleというと独自仕様のハードウェアであることが少なくなかった)、というわけでメモリは8,610円のオプションである512MBにしておくことにした。

 ストレージは、TV録画に使う予定がない(一応、外付けのTVチューナユニットがアイ・オー・データ機器やピクセラから出ているらしいが、Windows PCほどポピュラーではないようだ)ので、40GBのHDDとコンボドライブで済ませる(どうせ搭載するならオプションの80GBドライブより100GBドライブに、という話もある)。

 悩みどころはワイヤレスオプションだったが、キーボードとマウスをワイヤレスにするには、Bluetoothを内蔵させておくしかない(少なくとも純正のオプションを前提にする限り)とのことなので、5,670円追加してBluetoothの内蔵を選んだ。寝室PCにヒモつきのマウスやキーボードは避けたい。この2つのオプションで購入価格は72,870円。価格から受ける衝撃は薄れてしまったが、高くはないというところだろうか。とにかく、このカスタマイズはちょっと油断するとすぐに価格が10万円近くになる。10万円というのは、液晶ディスプレイがついたiBookがほとんど買えてしまう金額なので要注意だ。

 以上のようなカスタマイズをしたMac miniだが、発売日に予約したせいか納期は1月29日。日本におけるMac miniの正式発売日である。実際、Mac miniは、まるでApple Storeの開店時間に合わせたかのように、ほぼ10時ピッタリに筆者宅に届けられた。もちろん届けられたMac miniでまずやりたいのは、中を見ることだ。分解の手順や、大まかな中身については、すでにPC Watch編集部による速報が出ているので、ここで繰り返すことはしない。が、筆者のアドバイスを少々。

 筆者がMac miniの分解に使ったのは、100円ショップで売られている「木柄付きスクレーパー」というやつ。柄を持って作業したのでは、刃の強度が足りないので、刃先をケース左右の隙間のどちらかに突っ込んだ後は、金属製の刃の部分(ケースに近いところ)を握って、じんわりとこじ開ける。この時、シャーシとカバーをとめるプラスチックのツメがはずれる感触を頼りに、ギリギリではずれる程度にしておく(Web等の情報では、絵としての分かりやすさのためか、大きく持ち上げている例が多い)。そうしないと、逆側が締まってスクレーパーを突っ込めなくなる。

 逆側もツメをはずしたら、リアパネル側からそっと持ち上げれば、パカッと開く。閉めるときも、いきなりパチンと閉めるのではなく、ツメがかみ合わないギリギリまでカバーを均等に閉じておいて、その状態で背面のI/Oパネル部のかみ合わせをちゃんと出してから、残る三辺を押さえていく。そうしないと、I/Oパネル部に隙間ができて悲しいことになる。

●合理的な内部設計

 こうやって対面したMac miniの内部だが、かなり合理的に作られていて、標準部品を多用したPCとはかなり違った印象だ。PCというよりゲーム機に近い、という編集部の印象は当を得ている。

 編集部のMac miniと違っていたのは、カバーを開けると、いきなりBluetoothのアンテナが目に飛び込んできたことだ。このアンテナは光学ドライブとその取り付けフレームの間の溝を利用して上から差し込まれているだけで、簡単に上方に引き抜くことができる。Bluetoothアダプタは、マザーボードと平行のドータカード上に取り付けられており、マイクロ同軸コネクタでアンテナが取り付けられている。ドータカードにはAir Mac Extremeカード用とおぼしきコネクタが用意されており、ここにカードを挿すのだろう。今回、筆者はAir Mac Extremeカードを購入していないので、こちらのアンテナ処理は分からない。

トップカバーをはずしたMac mini。左手前に見えるのがBluetoothのアンテナ ストレージユニットを持ち上げると、アンテナに接続されたBluetoothモジュールがチラッと見える。ちなみにメモリは、やはりDDR400(オーダー上はDDR333)で、Micron純正のモジュールであった
マザーボードから分離したドータカード。左端がマザーボード接続用のコネクタで、中央がAir Mac Extreme用の空きスロット 取り外したBluetooth用のアンテナ

 つまりMac miniのワイヤレスオプションは、

1. Air Mac Extremeカード
2. Bluetoothアダプタ
3. Bluetoothアンテナ
4. 1と2を取り付ける専用ドータカード

の4つで構成されている(ひょっとすると加えてAir Mac Extremeカード用のアンテナ)。Webの情報では、これらのオプションは後日、Apple認定のサービスプロバイダにより追加料金で増設可能になるということだが、今のところ直営のApple Storeでもこのサービスは行なわれていない。Air Mac Extremeカードの追加価格が8,820円、Bluetoothの追加価格が5,670円、両方セットが11,340円であることを考えると、両方セットで追加するのがお得なようだ。筆者のように有線LANで接続するというユーザーも、背面のUSBポートが2つしかないことなどを踏まえると、Bluetoothだけでも追加しておいた方が良いだろう。ある意味、自分で増設することが不可能ではないメモリより、優先順位は高いかもしれない。

 マザーボードは、基板の両面にパーツが取り付けられているのが大きな特徴で、チップセット(DDRメモリをサポートしたしたPowerBook G4で共通に使われているIntrepid)やグラフィックスチップ(ATIのRADEON 9200)は、プロセッサとは逆の裏面にある。こうした工夫もマザーボードの小型化に貢献している。また、ドライブユニットとの接続をライザーカード(超小型のバックプレーン?)で済ませて、ケーブルを使っていないあたり、良くできているとも感じる。

●良くできたLinux?

 ひとしきり内部を見せてもらったら、実際に使ってみることにした。どうやら最初の設定はBluetoothキーボードではなく、USBキーボードで行なう必要があるようだ。編集部注:初期セットアップ中にBluetoothデバイスの検出を行うタイミングで、マウス、キーボードを認識させていればセットアップ中に使用可能です。ご教示に感謝するとともに、お詫びして訂正させていただきます。

 筆者の場合、Windowsでも日常的に英語キーボードを使っており、今回も英語配列のHappy Hacking Keyboardをつないでみたが、特に問題なく利用できた。Happy Hacking Keyboard自体が、Macでの利用も考えたものだけに、しごく当然のことではある。

 設定が終わった後、ソフトウェアアップデートでBluetooth関連の更新を行ない、Bluetoothのキーボードとマウスを接続した。キーボードは純正の英語キーボード(ワイヤレス)なので、これまた接続できて当然。デザイン的に美しいキーボードだが、Mac miniには大きすぎる。どんな種類でもいいから、ポインティングデバイスを内蔵したテンキーレスの小型Bluetoothキーボードが欲しい。

 ディスプレイは、上述したデルの17型液晶TVに加え、19型のSXGA液晶ディスプレイも用いたが、いずれもDVI-Dにより問題なく利用できた。Webのブラウジング、あるいはメールの読み書き、といった程度の作業であれば、ほとんどノイズが出ることもなく静かだが、DVD-ROMで添付されているiLife'05のインストール時は、コンボドライブのシーク音も含め、一般的な2スピンドルノートPC並みのノイズが発せられた。ハードウェアに注文をつけるとしたら、前面にUSBポートが1つ欲しいこと(iPod Shuffleを背面のUSBポートに突き刺すのは面倒)、できればオーディオのデジタル出力(S/PDIF)をサポートして欲しい、というところだろうか。

 さらにサードパーティに期待したいのは、Mac miniと同じデザイン、サイズで、Mac miniと積み重ねられる周辺機器の提供だ。たとえばフラッシュカードリーダー、増設ハードディスク、TVチューナユニット、USB Hubといったデバイスはすぐに思い浮かぶ。これらをお重のように、Mac miniと積み重ねられれば、コンパクトで魅力的なシステムになると思う。

 残念ながら、筆者はMacintoshは初めてで、Mac OS Xには詳しくないし、まだMac OS Xについてあれこれ言えるほど使い込んでもいない。が、ほぼPCだけを使ってきた人間として率直な感想を言えば、変な言い方だが、良くできたLinuxのデストリビューションみたい、ということになる。もちろん、Mac OS XはMachカーネル+BSDフレーバーのUnixをベースにしており、Linuxとは細かい部分、特にカーネルは大きく異なるわけだが、上っ面を触る分には、それほど違わない印象だ。それでもMac OS Xの方がよりUnix/Linuxのスパルタンな部分をうまく隠蔽していると思うし、全体に角が取れているとも感じる。何より、LinuxにはiLife'05に相当するような、コンシューマー向けのマルチメディアスイートが存在しない。これだけでも大分違うし、その気になれば業界標準のMicrosoft OfficeやAdobeのアプリケーションだってMac OS Xには用意されている。こうしたアプリケーションが揃っているだけでも、Mac OS Xの敷居は低い。

 だからといって、WindowsからMac OS Xに今すぐ仕事環境を移そうとも思わない。アプリケーションやハードウェア資産の蓄積が比較にならないし、Mac miniでの日本語入力は現状でのローエンドモデル(最新版に比べると1世代前のCPU)ということもあってか、カナ漢字変換のレスポンスなどが普段使っているWindowsより若干悪いように感じる。が、筆者宅のWindowsネットワークにも共存できるし、意外といい子、居場所は見つけてあげられる、というのが今の気持ちだ。

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【1月29日】Mac mini速報レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0129/apple2.htm
【1月12日】アップル、5万円台からの低価格Mac「Mac mini」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0112/apple1.htm

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(2005年1月31日)

[Reported by 元麻布春男]


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