3月1日から3日間にわたって開催されたIDFのため、しばらく仕事場を離れることになったのは、先週のコラムでご存知の通り。この留守中を利用して、1つテストを行なっておいた。それは、以前取り上げたバッファローの「TeraStation」と、同社製USB接続TVチューナ&MPEGキャプチャBOXである「PC-MV7DX/U2」を組み合わせた、PCレス予約録画である。 この2つを組み合わせた機能は、「Link de 録!!」と呼ばれ、「後日、ダウンロードサービスにて提供」と予告されていたもの。2月14日に正式リリースが行なわれ、TeraStationでも利用可能となった(それまで提供されていたベータ版は、HD-HGLANシリーズの「LinkStation」のみ対応)。 ダウンロード可能なLink de 録!!のパッケージは、LinkStation用とTeraStation用の2つに分かれており、それぞれのデバイス用のファームウェアと、録画データをPCで視聴したり予約録画を行なうアプリケーションである「PCast Link」が含まれている。 Link de 録!!の基本は、ネットワーク接続型のHDDであるHD-HGLANシリーズ(Gigabit Ethernet対応のLinkStation、HDDを1台内蔵)あるいはHD-HTGL/R5シリーズ(HDDを4台内蔵したTeraStation)のいずれかが備えるUSBポートに、PC-MV7DX/U2を接続してTV録画をしようというもの。前者は2ポート、後者は4ポートのUSBポートを備えており、このポート数だけPC-MV7DX/U2を接続しての、マルチチューナによる複数番組同時録画が可能だ。 Link de 録!!は録画だけでなく、単にリモートクライアントからTVを視聴するだけ、という使い方も可能だ。が、PCast Linkは前回利用したチャンネルを覚えてくれない上、チャンネルの切り替えに大きなタイムラグ(25秒程度)があるため、かなりフラストレーションがたまる。ローカル接続時に比べ、ネットワークやPCの状態によりコマ落ちしやすいのも難点だ。やはり録画を中心に考えた方が良いのではないかと思う。 予約録画は、iEPG(テレビ王国)の番組表をクリックするだけ(FAQを見ると、iEPG予約がうまく行かない例があるようだが、筆者の環境では全く問題は生じていない)。ただ、予約時に指定できるのはデバイス選択(複数接続時にどのチューナを使うか)と録画形式の選択のみで、繰り返しの指定等は、1回予約を設定した後、その予約データを編集する形で行なう必要がある。
録画されたデータは、Link de 録!!PCで再生することはもちろん、同社のネットワーク接続型ファイル/DVDプレーヤーであるLinkTheaterの最新版「PC-P3」シリーズでも再生できる。この場合、TVへの出力となるほか、LinkTheaterからの予約録画も可能だ(残念ながら筆者の手元にLinkTheaterはないので、これらの機能は確認していない)。 Link de 録!!で利用可能なビデオCODECはMPEG-2とMPEG-4の2種類。PC-MV7DX/U2を直接PCのUSBポートに接続した場合に用いるアプリケーション(PCastTV)と異なり、MPEG-1はサポートされていない。また、PCastTVではカスタム設定を用いることで、録画時のビットレートを細かく設定できるが、Link de 録!!で用いるPCast LinkではMPEG-2、MPEG-4ともに高画質、標準画質、低画質、ストリーミング画質の4プリセット値のみの設定となる。それぞれのプリセット値のビットレートは表の通りだが、MPEG-4とMPEG-2の差が小さいため、MPEG-4を選択する意義が今ひとつ薄いように感じる。
というのも、PCast Linkで録画したデータは、拡張子が.mpgのファイル(MPEG-4とMPEG-2で区別なし)となるものの、CODECにMPEG-4を選択した場合、そのまま視聴できるのはPCast LinkおよびPCastTVだけで、Windows Media Playerなど一般的なプレーヤー等で視聴することはできない。一般的なプレーヤーで再生するにはPCastTVに付属のMPEG-4 to AVI変換ツールで変換しなければならず、1手間余分にかかる。 また、MPEG-2であれば録画中も追いかけ再生できるのに対して、MPEG-4ではそれもできない。MPEG-4のビットレートが表の半分程度なら、少なくともMPEG-2とは異なるものとして利用価値があるように思うのだが、リアルタイムのシングルパスエンコードでは、ビットレートを落とすと画質的に辛いのかもしれない。 もちろん、再生互換性、編集時の互換性が異なることを考えれば、MPEG-2とMPEG-4でファイル拡張子は違ってしかるべきだろう。とりあえずPCast Linkのリスト表示でMPEG-2かMPEG-4かを判断することは可能だが、録画モードまで確認しようと思うと設定メニューから「Link de 録!!」のWeb表示を選択する必要がある。 ●TeraStationのRAID5では制限あり このようにPCast Linkの使い勝手は、まだ荒削りな部分が多く、PCastTVに完成度的に及ばない。が、それ以上に厄介なのは、TeraStationで用いた時、TeraStationの動作モードによっては制限を受けることだ。具体的にはTeraStationをRAID5で運用している場合、サポートされている録画モードは低画質あるいはストリーミング画質で、しかもMPEG-4では音声がとぎれて録画される場合がある、とされている。つまりTeraStationをRAID5で運用していると、動作保証があるのは、MPEG-2で低画質あるいはストリーミング画質に設定した場合のみ、ということになる。 実際に、MPEG-2の標準画質や高画質、あるいはMPEG-4で録画してみたところ、筆者がテストした範囲では録画は可能だった。これは、テストが1台のTeraStationに1台のPC-MV7DX/U2を接続した状態で行なったこととも関係があるだろう。Link de 録!!はスペック上、最大4台のPC-MV7DX/U2を接続し、同時に4ストリームの録画が可能であり、上記の制限はこのスペックを満たすために必要なものと考えられるからだ。 ただ、動作保証は動作保証であり、RAID5運用時MPEG-2の低画質およびストリーミング画質以外での録画が保証外となるのも事実。一方TeraStationのウリは、RAID5を用いることにより少ない容量ペナルティで、データの冗長性が得られることにある。これはHDDビデオレコーダーとしても、1度録画したデータを失う確率が低い、という形の利点として現れる。 単に冗長性だけを重視するならRAID1でも良いが、容量が半分になるRAID1はビデオ録画にはオーバー過ぎるというもの。かといって、JBODや250GB×4では、データの冗長性がなくなるため、ビデオの録画以外にTeraStationを使いにくくなる。TeraStationのRAID5動作と、Link de 録!!が両立しないのは痛い。4ストリームの同時録画をサポートしようとすると、TeraStation側のCPUが間に合わなくなることがある、ということなのだろうが、とても厳しい制約だ。 というわけで、RAID5の制約を考えるとLink de 録!!を使うのにTeraStationを用意するメリットはあまり感じない。マルチチューナやGigabit Ethernetの高速性というメリットも、現状では十分引き出すことができていないように思う。 加えて、最近、東芝から極めて強力なライバルが出現した。ネット直販のみで、あっという間に2,000台という予約台数を売り切った「RD-H1」がそれだ。RD-H1は250GBのHDDを内蔵したHDDビデオレコーダーだが、フリーソフトを組み合わせると、PCとの間でデータのやりとりが可能になる。価格は31,990円(送料、消費税込み)と、極めて安価だ。PC-MV7DXだけで25,000円前後することを考えれば、この価格は破格ともいえる。 本来、Link de 録!!には、拡張性、データの安全性、Gigabit Ethernetの高速性など、いくつかの点でRD-H1に対しても差別化のポイントがあるはず。それを打ち出すためにも、次のハードウェアでは、なんとかRAID5と高画質モード録画やMPEG-4録画を両立させて欲しい。 さて、冒頭で触れた筆者のIDF不在期間中の留守番録画だが、これはすべて問題なく完了していた。PC側のソフトには、まだ落とさなければならない角は残っているように思うが、動作の安定度という点では一定の評価をして良いように思う。 □関連記事 (2005年3月14日) [Reported by 元麻布春男]
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