槻ノ木隆のPC実験室

2種類のSonomaベアボーンキットを試してみる




 既報の通り、IntelはSonomaプラットフォームを発表し、同時にプロセッサとチップセットの発売を開始した。これに合わせて多くのベンダーがSonomaプラットフォーム対応製品を発売開始、あるいは発表しているが、ベアボーンキットにも早速Sonomaプラットフォーム搭載の製品が出てきている。今回は2種類のベアボーンを試す機会があったので、まとめてレポートしてみたい。

●ASUSTeK M7A

 まずはASUSTeKのベアボーンである。この製品、今のところ正式名称は不明である。これはOEM向け製品を予定しているようで、ロゴすら貼られていない状態。裏面を見るとZ7100なる型番こそついているが(写真02)、メーカー名も記載されていない。このZ7100という型番にしても正しいものか謎である。

 が、BIOSのデータを見るとASUSTeKの製品で、型番にはM7Aが割り当てられている(写真03)事がわかる。おそらくこのM7Aは内部の製品コードだろうとは思うが、正式名称も不明なので(Z7100はOEM先の型番と思われる)、ここではM7Aで通すことにする。

 全体としての大きさは、A4サイズよりも二回りほど大きい印象。特に液晶がかなり横長な事が目立つ。全体の寸法は360×276×41mm(幅×奥行き×高さ)で、周囲を丸めてやわらかい印象を与えてはいるが、ゴツい事に変わりはない。

 前面にはCDプレーヤーのイージーアクセスボタンが用意され、本体の電源を入れなくてもCDプレーヤーとして利用が可能である(写真06)。DVD-ROM/CD-RWコンボドライブは向かって右側に配置されている(写真07)。右側はドライブがあるだけのシンプルなレイアウトだ。

 逆に左側には、PCカードスロットとExpressカードスロット、SDカード/MMCスロットが各1つずつ備えられ、ほかにIEEE 1394ポートとUSBポート×1、マイク/ヘッドフォンジャックが並ぶ。ただし、Expressカードスロットはふたがされていて利用できない(写真08)。背面は左からACアダプタジャック、PS/2マウスポート、D-Sub15ピン、USBポート×4と続き、右端にEthernetとモデムポートが並んでいる(写真09)。本体サイズを考えれば、モバイルというよりもDTR(DeskTop Replacement)用途は明白であり、周辺機器をあれこれつなぐ事を考えれば、この程度のインターフェイスは必須だろう。

【写真01】とにかくデカいというのが第一印象 【写真02】HDDは別に剥き出しなのではなく、ここにもカバーが付いている(撮影の都合で外した状態) 【写真03】ちなみにDOS/V PowerReportは本機をM7Zと呼んでいたが、実はそちらが正式名称なのかもしれない
【写真04】液晶下のロゴ部も現在は空白 【写真05】タッチはこのサイズのものにしては良好 【写真06】右下のスイッチは左からPlay/Pause、Stop、Rew、Fwd、Powerとなっている。まずPowerで電源を入れ、CDをセットしてからPlayを押せば再生が出来る。ただ、音量はふたを開けてキーボード(Fn+F11/F12)で調整しなければいけないのがちょっと不便
【写真07】ドライブだけが配置されていてシンプルであるが、逆に左側がちょっと混雑気味。USBポートはこちら側にあったほうが便利な気がする 【写真08】Expressカードスロットは、ふたがされていて使えない。どうもカードコネクタの実装もまだのようだ 【写真09】電源コネクタが排気ファンを避けて比較的中央に位置しているのが珍しい

 ベアボーンである以上、CPUやメモリなどは変更する事が前提となる。M7Aの場合このあたりは全部底面に集中している。HDDを抜いてから中央のカバーを外すと、CPUソケットやDIMMスロット、Mini PCIのインターフェイスなどが顔を覗かせる(写真10)。

 まずメモリに関しては、DDR2ではなく旧来のDDR用のSO-DIMMが2スロット用意される(写真11)。ちなみに搭載されていたのはApacerのものだが、ASUSTeKのP/Nが付いていることから分かるとおり、単に評価用で付属したというレベルのものではないようだ(写真12)。

【写真10】ふたを外すとこんな具合 【写真11】SO-DIMMソケットは2スロット。高さを抑える両開き式のコネクタになっている 【写真12】メモリチップ自体はInfineonのHYB25D256800CC-6(2.5-3-3)を16個搭載している

 またMini PCIスロットにはアンテナ用の配線が2本用意されており、これを無線LANカードに装着できるようになっている(写真13)。試用機に無線LANカードは装着されていなかったが、別パッケージでIntel PRO/Wireless 2915AGBが付属してきた(写真14)。

 さてCPUクーラーはというと、4本のネジで止められたプレートからヒートパイプを伝ってヒートシンクがつながり、これをシロッコファンで冷却するという形 をとっている(写真15)。吸気は底面(写真02の左上)から行なわれ、排気は主に背面(写真09の一番左のスリット)だが、一部は側面(写真07でコンボドライブの右)からも出てくる構造だ。一方GMCHにも大型ファンが装着されるが(写真16)、こちらは通常のプロペラファンとシロッコファンの中間の様な構造。ファンの下にはモバイルIntel 915GMが隠れていた(写真17)。

 ちなみに本機に装着されていたHDDは、HGSTのTravelstat 4K40 40GB(HTS424040M9AT00)。コネクタ部にはボディへの着脱を容易にするアダプタがつけられている(写真18)。

【写真13】ソケットの下に位置するのは、CONEXANTのFAX/モデムモジュール 【写真14】これが無いとCentrinoのロゴが使えなくなるという点で重要なモジュールである 【写真15】回転音は静かで、ノイズはほとんど聞こえない。2ピース構成なのが面白い
【写真16】こちらも似た構成だが、チップセットの熱をファンのシャーシ全体に伝えて冷却するスタイルになっている。上に伸びている排気口への導風ダクト 【写真17】ヒートシンクの下にはモバイルIntel 915GMが 【写真18】このアダプタはワンタッチで着脱できて便利

 光学ドライブにはTSST(Toshiba Samsung Storage Technology)のTS-L462が装着されていた(写真19)。またバッテリは14.8V/4,400mAhのリチウムイオンタイプとなっている(写真20)。

 最後に付属品だが、ACアダプタとACケーブル、モデムケーブル、Sビデオ/コンポジット変換ケーブル、マニュアルのほかライティングソフトウェアとして「Nero Ver6.3」、それに「ASUS Multimedia 3-in-1 Package」が付属していた(写真21)。

 ちなみにこのASUS Multimedia 3-in-1 PackageはASUSDVD(DVDプレイヤー)、PowerDirector Pro(オーサリング)、Medi@Show(マルチメディアプレゼンテーション作成)のキットだが、肝心のドライバCDがなぜか付属しなかった。そういうわけでドライバ類はIntelのサイトから入手して使うことになった。

 画面サイズは1,280×800ドットというワイド液晶である。縦が768ドットではなく800ドットのため、通常のワイド液晶よりもやや幅広く見えるが、使ってみるとこの解像度はなかなか快適であった(写真21_1)。

【写真19】光学ドライブは本体背面のロックを外すと簡単に取り外しできる。本体の中を覗き込むと、爪をホールドする部分に電源コネクタらしいものが覗いているので、おそらくはセカンドバッテリがここに装着できるのだろう 【写真20】パームレストの下に装着されるバッテリ。幅は270mm(実測値)もある 【写真21】写真には入っていないが、ACケーブルは地域にあわせて3種類も同梱されており、世界での販売を想定しているのが良くわかる
【写真21_1】これをXGAなどにすると、妙に横長になって見にくくなる。また1,280×768ドットにすることも出来るが、これも微妙に縦長が気になるところで、この解像度で使うのが正解だろう

●AOpen E2V

 次は、AOpenのE2Vを紹介する。

 こちらもデカい事はデカいが、全体の寸法は330×273×37~48mm(幅×奥行き×高さ)。M7Aより少し厚みがあるが、幅が3cmほど詰まっている分まだ小さく感じる(写真22)。吸気口が底面にあるのはM7Aと同じで、吸気を確保するためもあってか、底面がフラットではない点も良く似ている(写真23)。

 ただ、それでもM7Aは机に置いたときに水平になるように脚部で調整しているが、E2Vは前下がり形状になっている点がやや異なるところか。シールには小さくAOpenのロゴが入っていた(写真24)。BIOSの表記によれば、本機の型番はE2Vという事になっているので、M7A同様、本機もE2Vとして紹介することにする(写真25)。

【2月4日編集部追記】本記事で扱っているのは海外向けのバージョンで、国内ではエーオープンから「1558-JL」という製品名で発売予定です。

 液晶は通常のXGAサイズなので、それほど違和感はない(写真26)。キーボードはM7A同様の英語キーボードで、打ちやすさは同等である。レイアウトに関しては(Ins/Delキーの配置とかCtrl/Fnキーの位置などが)筆者はM7Aよりも使いやすかった。これで最上段のキーがもう少し大きければ文句なしだったのだが(写真27)。CDプレーヤーの機能は本機にも搭載されているが、その操作ボタンとインジケータがキーボード上部にまとめられているのも面白いところだ。

【写真22】このアングルだとややパースがついているが、実際は単なる長方形 【写真23】M7Aもそうだが、名刺ホルダーがついているあたりがこの製品の性格を物語っている 【写真24】AOpenのロゴは入っているが、型番などはなし。「1558」があるいは型番なのかもしれないが、単なるラベルの整理番号の可能性もある
【写真25】BIOSにManufactureの記載はないが、Product NameはE2Vとなっている 【写真26】開くとこんな感じ。液晶下はロゴを張る場所ではなく、インジケータ 【写真27】キーボードの上にあるのは、CDプレーヤーの操作画面。曲順を示す小さなLEDが付いているあたりがちょっと便利だが、液晶を開かないと操作できないのは微妙

 本機の場合DVD-ROM/CD-RWコンボドライブが前面取り出しの形で位置している(写真28)。この結果、右側面は排気口とケンジントンロックだけが配置されるという、M7Aよりさびしい構成(写真29)。

 左側面はというと、PCカードスロットとExpressカードスロット、SDカード/MMC/xD-Picture Card/メモリースティックのマルチカードスロット、それとボリュームスイッチが配置されている(写真30)。

 その他のインターフェイスはすべて背面、ということでACアダプタのほかPS/2マウスポート、D-Sub15ピン、モデムポート、Ethernet、IEEE 1394、USB 2.0、マイク入力/サウンド出力がまとめて配置されている(写真31)。

 底面にはメモリとHDD、バッテリが配されている(写真32)。メモリに関しては2段重ねのメモリスロットが用意されており、ここに装着する形だ(写真33)。搭載されていたメモリには特に型番などは記されていなかった(写真34)が、チップ表面のFBGA Part Marking(写真35)をDecoderで確認すると、Micronの256Mbit DDR2-SDRAMであるMT47H16M16BG-37E:Bが搭載されている事がわかる。これを搭載したSO-DIMMと言えば、同じMicronのMT8HTF3264HDY-53Eが該当する。おそらくこの製品を2枚装着で512MBという構成だろう。

【写真28】前下がりになっているため、手前にものを置いておくと光学ドライブのオープン時にぶつかりやすいのがこの場所の欠点かも 【写真29】右利きの場合、ちょうどマウスを操作するあたりに排気口が来るのはちょっと残念。もう少し後ろにあればよかったのだが
【写真30】ボリュームスイッチがアナログなのがちょっと古めかしい。ヘッドフォンジャックもこのあたりに配置して欲しかった 【写真31】USBポートは3カ所。特に左側のは、コネクタがやや奥まった場所にあるため、シャーシにUSBコネクタがぶつかりやすいので注意。IEEE 1394が6ピンというのは珍しい
【写真32】赤丸の意味は後述 【写真33】ジャンパ線が1本飛んでいるのが、試作機ならではといった感じ。かなり大きなスペースだが、ここはメモリスロット「だけ」が置かれている 【写真34】同梱されていたSO-DIMM。元々のラベルの上に別のラベルを貼り付けてあって、下のラベルは見えない

 それではCPUはどこにあるか? という話だが、キーボードの裏である。ここへのアクセスは、これも定番の方法だ。

 まず写真32の赤丸部の3カ所のネジを外す。ついで液晶を少しだけ浮かせた状態で、ヒンジ部のカバーを爪などで押し開ける(写真36)。この状態から液晶を開ききり、ヒンジ部カバーを完全に外す(写真37)。その状態でキーボードをていねいにはがすと(写真38)、CPU部があらわになるというわけだ(写真39)。CPUクーラー上側のストッパーを外すと(写真41)CPUクーラーユニットを完全に取り外し出来る(写真42)。ちなみに裏側の構造は、M7Aのそれと似ているが、ファンと一体化しているあたりが違いだろうか(写真43)。

【写真35】Micron独特の省略したPart Markingがわかる。中央に位置するのはSPD用のレジスタであろう 【写真36】カバーを割らない程度にこちらの側から押し上げるとロックが外れる。ここであまり大きく持ち上げると、パネルを開くときに引っかかるので注意 【写真37】このカバーが結構ひずみやすい。ちなみに裏にはケーブルがついているので、無理に外さない様に注意が必要
【写真38】キーボードを外してずらした状態。裏にはフラットケーブルがあるので、無理な力を加えないこと 【写真39】撮影のために完全にカバーとキーボードを取り外したが、実は取り外さなくてもCPUの装着は可能である
【写真40】ヒートシンクは、上の板バネ状のロックだけで留められている。このあたりの細工はM7Aよりも見事 【写真41】板バネの左中央を押し下げながら、全体を右にずらすとロックが外れる。その状態で左に移動するとこの状態に。工具は一切不要 【写真42】CPUクーラーを取り外すとこんな感じになっている
【写真43】主にヒートパイプで熱を逃がすが、シャーシ全体もヒートシンクとして働く構造。ファンはやはりシロッコファンタイプ

 本機に搭載されていたHDDは富士通のMHT2040BHで、ご覧の通りシリアルATAを採用した製品である(写真44)。本体の側もシリアルATAのインターフェイスしか持っておらず(写真45)、HDDの交換にはシリアルATAドライブが必須という事になる。現状で流通しているのは富士通の40/60/80GBのみで、扱っている店も極めて限られる。秋葉原でも2004年9月に発売になったものの、あまり取扱店は増えていないようだ。この点はHDDの交換を考える場合に厄介だ。

 光学ドライブにはQuanta StorageのSBW-242Bを搭載する。あまりなじみのある製品ではないが、CD-ROM/CD-R/CD-RW/DVD-ROMがそれぞれ24x/24x/10x/8xでアクセスできる(写真46)。バッテリはM7A同様、14.8V/4,400mAhのものを搭載している(写真47)。

 最後に付属品だが、ACアダプタとACケーブル、モデムケーブル、マニュアル、ドライバCDとNero、PowerDVD、Norton AntiVirusといったごく一般的な構成で、特に過不足は感じなかった(写真48)。

【写真44】PCに搭載されているのは初めて見かけたMHT2040BH。5,400rpm動作なので、性能は高いと思われる 【写真45】本体の側もシリアルATAのインターフェイスしか用意しておらず、現時点ではこれがネック 【写真46】こちらは取り外す事を考えていないようで、M7Aと異なりネジ止め式。本体側にも電源コネクタは来ておらず、セカンドバッテリの利用は不可能なようだ
【写真47】電源容量はM7Aと同じ 【写真48】マニュアルにメーカー名が入っていないのはOEM/ODM向けとしては当然か

●PentiumM 740/760/770

 ベアボーンだけあっても比較は出来ないので、同時にPentium Mも借用した。今回利用したのはPentiumM 740/760/770の3製品(写真49~51)。動作クロックはそれぞれ1.73GHz/2GHz/2.13GHzとなっている(写真52~54)。

【写真49】Pentium M 740はES品をお借りした 【写真50】SPEC Finderによれば、間違いなく533MHz FSBでC0ステッピングのPentium M 760である 【写真51】同じくC0ステッピングのPentium M 770
【写真52】Pentium M 740はWCPUID 3.30によれば、13倍動作の1.73GHzを示している 【写真53】こちらはPentium M 760。15倍動作となる 【写真54】Pentium M 770では16倍動作

 ここまではいいのだが、ちょっと謎な現象があった。533MHz FSBをサポートしたPentium Mは、基本的にすべてExecution Disable Bit(NX bit)をサポートしているはずである。そこでこれを確認しようとしたところ、なぜかNX bitがEnableになっていない(写真55)。写真55はM7A+Pentium M 770の組み合わせだが、E2Vを使ったり他のCPUを選んだりしても、全く状況は変わらなかった。

 考えられるのは、まだM7A/E2V共に試作機のため、BIOSがNX bitをサポートしていない可能性だ。実際BIOS画面を見ても、それらしい項目は一切無し(写真56~59)。当然ながら、Windows XP SP2を入れてみてもDEP(Data Execute Prevention)が有効にならなかった(写真60)。NX bitの有無が性能に影響する事はないが、ちょっと気になる部分ではある。

【写真55】Crystal CPUID 4.2.2.234での画面。下に並ぶFeatureの中で、NX bitを示す表示がグレーのままな事に注目 【写真56】M7AのMain画面。CPUの設定項目などはなし 【写真57】Advanced Setting画面でも、やはりCPUの制御を行なえる項目はない
【写真58】こちらはE2VのInformation画面 【写真59】Main Menuも何もないし、Advanced Menuでもご覧の通り。ちなみにSATA Function Modeを[Enhanced]にしておくと、ブートしないのはドライバが読み込まれないせい。ところがこれを読み込ませるためにはフロッピードライブが必要。というわけでせっかくのEnhanced Mode選択も現状では役に立たない 【写真60】画面下部の“Your computer's processor does not support hardware-based DEP....(あなたのコンピュータのCPUはDEPをサポートしていない)”に注目

●性能比較

 ざっと紹介が終わったところで、いくつかのベンチマーク結果をご紹介したい。両方のマシンにWindows XP Professional 英語版+SP1aをインストールしてのテストである。

 なお、ASUSTeK M7Aはメモリ512MB(PC2700)、HDD 40GB(4,200rpm)を搭載。AOpen E2Vはメモリ512MB(PC2-4300)、HDD 40GB(5,400rpm)を搭載している。チップセットはいずれもモバイルIntel 915GMで、ビデオ機能を内蔵している。

 まずはスタンダードにSandra 2005の結果である。表1は2種類のCPU Benchmarkの結果であるが、当然同じCPUを使っているから、結果も同じようなところで推移している。また動作周波数による性能差もほぼクロック並ということで、ここまでは順当な結果である。

【表1:Sandra 2005 CPU Benchmarks】
  Dhrystone
ALU
(MIPS)
Whetstone
FPU
(MFLOPS)
Whetstone
iSSE2
(MFLOPS)
Integer x4
iSSE
(it/sec)
Float x4
iSSE2
(it/sec)
Pentium M 740 ASUSTeK M7A 7029 2380 3070 16442 18167
AOpen E2V 7069 2379 3070 16438 18212
Pentium M 760 ASUSTeK M7A 8106 2747 3545 18976 20966
AOpen E2V 8159 2746 3543 18971 21015
Pentium M 770 ASUSTeK M7A 8705 2930 3781 20243 22426
AOpen E2V 8704 2930 3780 20236 22408

 ところが表2に示すメモリ回りは、やはりPC2700とPC2-4300の差が大きく出ているようだ。モバイルIntel 915GMの場合、DDR333はシングルチャネル、DDR2-400/533はシングルないしデュアルチャネル動作が可能である。M7Aの方はPC2700を使っているのでDDR333のシングルチャネルであるが、E2Vはというと結果を見る限りシングルチャネルとして利用しているようだ。

 狭いノートだから、デュアルチャネルのメモリの引き回しが大変だったのだろうということは容易に想像がつく。それでも333MHz:533MHzで、1.6倍近い帯域が利用できることになる。実際RAM Bandwidthとか256MB Blockの転送では1.3~1.5倍の性能差となっており、メモリの性能がそのまま効果的に結果に反映されていることがわかる。

【表2:Sandra 2005 Cache & Memory Benchmarks】
  RAM Bandwidth
Int
Buff'd iSSE2
(MB/sec)
RAM Bandwidth
Float
Buff'd iSSE2
(MB/sec)
32KB
Block
(MB/sec)
1MB Block
(MB/sec)
256MB
Block
(MB/sec)
Pentium M 740 ASUSTeK M7A 2221 2222 16803 8566 1091
AOpen E2V 2985 2997 16805 8562 1608
Pentium M 760 ASUSTeK M7A 2223 2226 19384 9886 1097
AOpen E2V 2995 3004 19380 9884 1613
Pentium M 770 ASUSTeK M7A 2223 2225 20691 10546 1098
AOpen E2V 3000 3009 20678 10546 1615

 ではもう少し実アプリケーションに近いとどんな結果になるか? ということでPCMark04の結果を表3に示す。ご覧のように、ほぼすべての項目でE2Vが優位に立っている事がわかる。

【表3:PCMark04】
  PCMark CPU Memory Graphics HDD
Pentium M 740 ASUSTeK M7A 2992 3398 2820 865 2256
AOpen E2V 3136 3435 3283 810 3130
Pentium M 760 ASUSTeK M7A 3360 3903 2978 874 2247
AOpen E2V 3499 3937 3486 843 3115
Pentium M 770 ASUSTeK M7A 3541 4132 3045 894 2227
AOpen E2V 3676 4179 3580 852 3102

 もっとも、PCMarkとHDDのスコアに関しては、単にメモリだけではなくHDDの違い(M7AのTravelstarは4,200rpm、E2VのMHT2040BHは5,400rpm)もあるので、単純にメモリだけとは言えないが、CPU/Memory/Graphicsに関しては純粋にメモリだけということになる。そのGraphicsがなぜかE2Vの方がスコアが低いが、結果を詳細に見ると3D Fill Rate「以外」の5テスト(Transparent Windows/Graphics Memory - 16 lines/Graphics Memory - 32 lines/3D - Polygon Throughput Single Light/3D - Polygon Throughput Multiple Lights)に関してはやはりE2Vが30%~50%のスコア差で優位に立っている。

 なぜかFill Rateに関してはM7Aの方が高速に動作しており、これが性能の逆転につながっているようだ。この原因は色々考えられるが、モバイルIntel 915GMのメモリコントローラがDDRで動作する時とDDR2のシングルで動作する時のレイテンシなども関係してくるのかもしれない。

 次は定番のSYSMark2004である。結果は表4の通りで、やはりメモリ性能が大きく影響していることがわかる。もちろんHDDの性能も影響するから、メモリだけというわけではないのだろうが、逆に言えばPentium MであってもメモリやHDDの違いが性能に大きく影響する、という事だろう。

【表4:SYSMark04】
  SYSmark 2004
Rating
Internet Content
Creation
Office
Productivity
Pentium M 740 ASUSTeK M7A 125 144 103
AOpen E2V 147 160 135
Pentium M 760 ASUSTeK M7A 133 159 111
AOpen E2V 162 181 145
Pentium M 770 ASUSTeK M7A 140 169 116
AOpen E2V 168 191 147

 MobileというよりはTransportableというか、限りなくDTRのマシンでMobileMarkを取る意味があるか? といえば微妙なところであるが、4,400mAhもの大容量バッテリーを積んでいる以上、これを使うとどの位の運用が可能か? という結果は確かめておく必要があるだろう。

 さて問題はM7Aで、何しろSpeedStep Appletも何もない、チップセットドライバをインストールしただけの状態だから、省電力機構が一切動かない。この状態でMobileMarkをかけてもあまり意味がない。そのためテストはE2Vでのみ行なった。

 結果は表5に示す通りだが、MobileMark程度の負荷であれば1.73GHzでもおつりが来るほどで、むしろクロックを上げると無駄が大きくなるという事になる。結果としてクロックを上げるほど性能が下がるという結果になっているわけだが、それでも140台のPerformance Ratingと5時間超のバッテリ寿命だから、そう悪くない結果であることがわかる。少なくともUPS代わりとしてはお釣りが来るレベルで、出先でのプレゼンテーションとかも十分こなせる範囲であることがわかる。

【表5:MobileMark 2002】
  Performance
rating
Average response time
(sec)
Battery life rating
(min)
AOpen E2V Pentium M 740 145 1.36 336
Pentium M 760 144 1.37 330
Pentium M 770 142 1.39 323

 一応3Dも、ということでまずは3DMark2001 SEである。表6はいずれも1,024×768ドット/32bitカラーでの結果だが、やはり3Dをフルに使い始めるとメモリの影響はかなり大きい事がわかる。とはいえ、E2Vですら5000台だから、いかにPixel Shaderを内蔵したとは言え、モバイルIntel 915GMのグラフィックス性能に多きを求めてはいけない、というあたりが良くわかる。

【表6:3DMark2001 SE】
  3DMark
Pentium M 740 ASUSTeK M7A 3775
AOpen E2V 5079
Pentium M 760 ASUSTeK M7A 3826
AOpen E2V 5363
Pentium M 770 ASUSTeK M7A 3842
AOpen E2V 5432

 もっと最近のものは? ということで3DMark03を実行した結果を表7にまとめる。こちらも1,024×768ドット/32bitの結果だが、DDR2の威力でE2Vが大きく性能を伸ばしているものの、それでも1100そこそこという低い数字が、DirectX 9のアプリケーションを本気で動かすのは無茶だということを示している。CPUMarkのスコアも大差があって、まるっきり別の動作周波数の製品を比較しているかのごとき差である。M7Aを使う場合、DirectX 9相当のグラフィックはおまけだと割り切るべきであろう。

【表7:3DMark03】
  3DMark CPUMark
Pentium M 740 ASUSTeK M7A 690 398
AOpen E2V 1116 524
Pentium M 760 ASUSTeK M7A 703 410
AOpen E2V 1135 571
Pentium M 770 ASUSTeK M7A 704 412
AOpen E2V 1136 589

 最後にFFXI Official Bench Ver3の結果を表8に示す。E2VはLowに落とせばそこそこ使い物になる程度、M7Aではかなり厳しいというのが正直なところだろう。適切なGPUを組み合わせればそれなりの性能が出るはずだから、逆に言えば内蔵グラフィックでやってはいけない、という事だろうか。

【表8:FFXI Official Bench Ver3】
  Low High
Pentium M 740 ASUSTeK M7A 2535 1517
AOpen E2V 2971 1900
Pentium M 760 ASUSTeK M7A 2724 1490
AOpen E2V 3285 2055
Pentium M 770 ASUSTeK M7A 2805 1517
AOpen E2V 3428 2115

●雑感

 個人的な感想で言えば、「この構成でPentium Mを使う場合、内蔵グラフィックではきつい」というところだろう。これがモバイルIntel 915PMにGPUならば、仮にDDR333でもそこそこの性能が出たと思うのだが、グラフィック機能が以前のIntel 855GM/GME等より高性能化した分、メモリへの要求も厳しくなっているようで、結果としてバランスが崩れている印象がある。

 もちろんGPUを積むと高価(特にPCI-Express接続に変わったので、安価な製品があまり存在しない)になるという事情はあるが、メモリ帯域をカバーすべくDDR2のSO-DIMMを使うくらいなら、メモリはDDRのままにしてGPUを積んだ方がバランスが良いだろう。

 それをわかった上であえて選ぶなら、E2Vの方がまだCPU性能を引き出しやすそうだ。

 ただ、その代償としてかなりシステム構成が高くつきそうなのが悩みどころ。それに、個人であればそれなりに3D性能も必要なケースがあるだろうが、今回の2製品はどちらも満足な3D性能を出しえていない。リテール向けのベアボーンキットというよりは、企業向けベアボーンというのが今回の評価にふさわしそうだ。

□関連記事
【1月19日】インテル、「Sonoma」こと新Centrinoプラットフォームを正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0119/intel1.htm
【1月8日】FSB 533MHzの新型Pentium M発売、730から760の4製品(AKIBA)
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20050108/etc_sonoma.html

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(2005年2月3日)

[Reported by 槻ノ木隆]


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