ビジネス用途以外でもPCを長時間駆動させることが珍しくなくなったためか、デスクトップPCでも消費電力を気にする傾向が強くなった。これは、最近のハイエンドPCのコンポーネントが多大な電力を必要とすることも影響しているのだろう。 こうした世間のニーズを反映してか、ThermaltakeからPCの消費電力をモニターできることを売りとする電源が発売された。今回はこの製品を利用して、最近のPC環境が消費する電力をチェックしてみたい。 ●5インチベイユニットに消費電力を表示
Thermaltakeから発売された「Total Watt Viewer 480」(以下、TWV480)は、480Wの電源ユニットに、消費電力をモニターできる5インチベイユニットを付属した製品だ。こうした製品は、COMPUTEX TAIPEI 2004のクーラーマスターブースでも見かけており、「RS-450-ACLY」の製品名で間もなく登場するようだ。こうしたPCの消費電力を知ることに対するニーズが少なからずあることを感じさせる。 TWV480の電源部は、同社らしいオレンジのファンが顔をのぞかせたもので、黒い筐体が印象的な外観になっている(写真1)。各系統のスペックは写真2のとおりで、Pentium 4やAthlon 64環境でとくに重視される12V系統が弱めで、18Aしか確保されていないのが気になる点だ。 電源ケーブルは役割ごとに色の違うネットで束ねられており好感が持てる(写真3)。ちなみに、各電源端子の個数は、ATX20ピン×1、ATX12V×1、ペリフェラル用×9、FDD用×2、シリアルATA用×2となっている。ATX電源コネクタは20ピンが標準だが、24ピンへの変換ケーブルが付属している(写真4)。
このほかの付属品としては、本製品最大の売りである消費電力モニターが可能な5インチベイユニット(写真5)、8cmファン(写真6)といったところ。5インチベイユニットには2チャネルのファンコントローラも内蔵されている。 ちなみに、電源部には2個のファンが内蔵されているが、このファン制御用のケーブルも写真7のとおり、2本が伸びている。1つは一般的なファンコネクタの形状をしているのでマザーボード側で回転数モニターやファン制御を行なえるが、もう1個は2ピンの形状になっているので、マザーボードへは接続できない。
この2ピンのコネクタは、付属のファンコントローラ用のものであり、写真8のとおり付属の8cmファンにも2ピンのコネクタが装備されている。つまりファンの制御を行ないたい場合、電源部のファンの1つはマザー側で制御、残りの1個と付属の8cmファンはファンコントローラで制御、という仕組みになるわけだ。 さて、肝心の消費電力モニター部分だが、これは専用のケーブルが電源部から伸びており、5インチベイユニット背面の指定の個所に接続する(写真9)。必要な作業はこれだけで、あとは電源を投入すれば、約5秒間隔で消費電力が表示されるようになる。 このように消費電力を測るさいに手軽に利用するアイテムとして、コンセントとプラグに挟み込んで使う汎用的な製品が1万円前後から入手できる。TWV480を使用して気づいたのは、こうした汎用機器で表示される数値と、TWV480で表示される数値には大きな隔たりがあることだ(写真10)。 この差が生まれる原因としては、TWV480ではPC-電源間で消費電力をモニターしているのではないかと想像される。電源出力の一部は、電源回路自体でロスされてしまうが、コンセント側で測定する機器の場合は、このロスの分も含まれた電力が表示される。一方、TWV480では電源ユニットでロスする電力をのぞいた数値が表示されているのでは、ということだ。 (この想像が正しければという前提はあるが)例えば電力を調べて、どの程度の電気代がかかるか、など実用的な面では電源部を含めた消費電力を調べたほうがいい。だが、CPUやマザーなどPCを構成する主要部分のみの電力を測定したい場合は、TWV480のほうが有用となる。 そのモニターされる数値の値の精度がいかほどか、という問題はあるものの、少なくとも相対評価には使えるだろうと思うので、いくつかの環境を用意し、その消費電力を比較してみたい。
●各環境の消費電力の違いをチェック 今回用意した機材は表のとおり。CPUクーラーはいずれもリテール品に付属のものを使用している。また、構成外で消費する電力を最小限に抑えるため、マザーボードに特別に搭載されているデバイスについては、可能な限りBIOSで無効にしてテストを行なっている。
テスト内容は、これらの機材を組み合わせて動作させ、消費電力を10秒ごとにトレース。3DMark03実行時と前後25秒の値をグラフ化することにした。 それでは、まずはCPUやプラットフォーム別の消費電力の違いである(グラフ1)。グラフを見ると、ざっくり2つのグループに分かれるのが見て取れる。PrescottコアのPentium 4 3.20E GHz/550の環境のグループと、NorthwoodコアのPentium 4 3.20 GHz/Athlon 64 3800+の環境のグループだ。Prescottコアの消費電力の高さについては、以前から指摘されているが、このグラフを見ても確かに高い電力を必要としているのが分かる。 なお、最近になって消費電力を抑えたD0ステッピングのPresocttコアも出回っているが、今回使用しているのは初期のC0ステッピングのものである。このほか、Pentium 4 3.20E GHzよりもTDPが高いはずのPentium 4 550のほうが低い消費電力となっているのは、ビデオカードの違いが大きいと想像される。
続いてテストしたのは、クロックが違う製品間の比較だ。テストには、Socket 478向けPentium 4の3製品を用意した。いずれもPrescottコアを採用した製品だ。結果はグラフ2に示したとおりで、負荷がかかっていない状態の消費電力はほとんど差が見られないが、ピーク時には多少の電力差が現れた。また、平均でも10Wに近い差が生まれている。高クロックCPU使用時には電源にも余裕を持たせたほうがよいことが明確に分かる結果といえる。
次に試したのは、ビデオカードごとの消費電力差である(グラフ3)。用意したのは現行のハイエンドであるGeForce 6800 Ultra。一世代前のハイエンドであるGeForce FX 5950 Ultra。メインストリーム向けのGeForce FX 5700 Ultraの3種類である。結果はもっとも消費電力が高いのはGeForce FX 5950 Ultraという、ちょっと意外な結果となった。GeForce 6800 Ultraは電源を2コネクタ持つという仕様が登場時に話題となったが、この結果を見るとGeForce FX 5950 Ultra以下か、多少の誤差を加味したとしても同等といったところだろう。もっとも、GeForce FX 5700 Ultraのようなメインストリーム向けと比較すれば、消費電力が高いことに変わりはないのだが。
さて、最後にAthlon 64で採用されているCool'n'Quietが、どの程度全体の消費電力に影響するかもテストしてみた(グラフ3)。結果は平均で約5W。ただし、このテストは3DMark03実行中の消費電力であり、CPUに負荷がかかる状態が長い。アイドル時だけ見れば15W以上も低いし、無効時でも極端に下がるケースはあるものの、Cool'n'Quietを有効にした場合のほうが、消費電力の上下幅が大きいことが分かる。
●低コストで消費電力を調べられるTWV480 以上のとおり、4パターンのモデルケースを用意して消費電力を比較してきた。Prescottコアの消費電力の高さやAthlon 64のCool'n'Quietの効果など、実際に数字を見てみると度合いが分かる。逆にGeForce 6800 Ultraのように、言われるほどではないな、という結果もあり、なかなか面白いテストとなった。 PCを長時間駆動させる人だと電気代も気になってくるが、消費電力を調べることで、新しいパーツを取り付けたことでどの程度電力消費量が増えたか、また逆に減ったかを見ることができ、節電に向けての意識作りをすることができるだろう。 ちなみにTWV480の実売価格は15,000円前後で、480W電源としては高価な部類に入る。ただ、汎用のワットチェッカーが安いもので1万円前後することを考えると、電力モニター付きでこの価格なら納得できる価格であり、手軽に消費電力を調べる手段として、今後もこうした製品が登場することに期待したい。 □関連記事 (2004年9月8日) [Text by 多和田新也]
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