多和田新也のニューアイテム診断室

15型でUXGA表示が可能な
アイ・オー「LCD-AD152U」




 6月中旬にアイ・オー・データ機器の液晶ディスプレイ「LCD-AD152U」の販売が開始された。本製品は15型液晶ディスプレイながら、1,600×1,200ドット(UXGA)の解像度を表示可能な製品である。この15型というサイズのなかに、UXGAの解像度を表示し利用するのが、果たして現実的なのかどうか、レポートしていきたい。

●コンパクトでオーソドックスな液晶ディスプレイ

 UXGAの表示が可能な液晶といえば20型以上の製品がほとんどであるなか、15型というサイズのメリットは2つ考えられる。

【写真1】アイ・オー・データ機器の「LCD-AD152U」。外観はシンプルなホワイト筐体

 1つは、コンパクトさだ。PCの処理能力の向上で同時に開くウィンドウ数が増えている点や、高画素デジカメの普及で高解像度への要求が高まっているわけだが、それでも20型液晶となると机上のスペースが割かれてしまう。その点、15型液晶であれば省スペースで済む。実際、本製品のサイズはスタンド込みで338×152×322mm(幅×奥行き×高さ)と、一般的な15型液晶の枠組みからは外れないサイズに収まっている。

 もう1つは価格だ。UXGA対応の20型液晶の価格は最安値レベルでも12~13万円。この価格がネックとなって、UXGAを望む人はCRTへ走るケースも多いと思われるが、本製品は実売価格8万~9万円のオーダーである。この価格帯であれば、10万円を切るという精神的な拍車もあり、購入も現実的ではないだろうか。

 一方、15型というサイズにUXGAの解像度を、いわば押し込んでいるとも言えるわけで、果たして実使用の面での現実味はどうなのかをチェックしてみることにしたい。

 まずは外観から眺めておこう。本製品のパッと見の印象は、いたって普通の15型液晶といった感じだ(写真1)。最近では液晶の額縁が細い製品が増えているが、本製品は15mm前後と、とくに広くも狭くもない。前面下部に用意されているOSD操作ボタンなども数が少なくシンプルである(写真2)。

 側面も特筆すべき事項のない、無骨な作りだ(写真3)。1点だけ挙げておくと、スタンドは完全に折りたたむことができる(写真4)。裏面の金具は、VESAマウント規格に対応しているので、VESA規格に対応したアームや壁掛けキットなどに、そのまま取り付けられる。

 インターフェイス類は背面に集中しており、DVI-I、D-Sub15ピンの2系統の入力を持つ(写真5)。入力系統の切替は、MENUボタンから操作して切り替える(画面1)か、もしくは+ボタンを長押しすることで切り替えられる。

【お詫びと訂正】初出時に、入力系統の切替はOSDメニューからの切替のみとしておりましたが、+ボタンを長押しすることでも切り替えられます。お詫びして訂正させていただきます。

 インターフェイスの脇にはACアダプタの接続口も設けられている。ACアダプタはACケーブルと分離するタイプで、大きさも標準的なものとなっている(写真6)。

【写真2】フロントのOSDメニュー操作ボタンも、[Menu][+][-]とシンプル。[Auto]は自動調整ボタン 【写真3】側面も特に目立ったところはない。写真はおおよそ最大傾斜となる角度だ 【写真4】スタンドは完全に折りたたみが可能で、75mmピッチのVESAマウント規格に対応したアームなどを取り付けられる
【写真5】インターフェイスはDVI-I+アナログRGBの2系統 【画面1】DVIとD-Sub15ピンの入力切り替えはOSDから行なえるほか、+ボタンの長押しでも変更できる 【写真6】ACアダプタはアダプタとACケーブルが分離するタイプ。本体色に合わせた白色のものが付属する

●さすがに文字は小さいがSVGA利用という選択肢も

 それでは、実際の使い心地などをレポートしていく。まずは表示品質について触れておきたい。本製品のスペック表を見てみると、最大輝度が180cd/平方m、コントラスト比が350:1となっている。最近の液晶の平均的なスペックといえば、輝度が300cd/平方m以上、コントラスト比は450:1以上が当たり前だ。それに比べるといささか見劣りするスペックになっているもの。

【画面2】UXGAサイズでデジカメ写真を表示したところ。写真もさることながら、上下のメニューバー、ツールバーの色合いにもメリハリを感じない

 特に、コントラスト比の低さは見るからに分かり、全体に白っぽく、メリハリのない感じの画面になる(画面2)。ただ、輝度についてはスペック程の低さは感じられず、十分な輝度を持っている。個人差はあるだろうが、筆者としてはちょっと明る過ぎると感じるほどだった。

 スペック面でもう1つ気になるのが応答速度だ。本製品の応答速度は60ms。最近では10ms台の製品が普通だし、ちょっと遅いものでも30msには収まっている。60msというのは、かなり遅い部類に入る。

 このスペックが大きく影響したのが、Webやテキストを閲覧するときで、画面スクロール時の画面の書き換えが、目で見て分かるほどなのである。一方でDVD-Videoで動きの激しいアクション映画も流してみたのだが、こちらは思ったよりも普通に見れる。そのためゲームなどの用途には問題なく使えるだろう。

 さて、本製品で最大のポイントが、冒頭でも述べた15型にUXGAの表示が本当に現実的かどうかだ。実際に見てみると、かなり文字は小さい。画面に定規をあてて文字の大きさを測定したものを画面3~5に記しているが、Windows終了の各機能アイコンが約7mm。

 Internet Explorerの文字サイズを「中」に設定し本連載を表示させると、1文字の文字幅は約2~3mmといったところ。Explorer上のファイル名に至っては、筆者は普段「詳細表示」に設定しているのだが、フォルダ名やファイル名の文字幅が1mmあるかないか、といったサイズになる。

【画面3】Windowsの終了ダイヤログの各ボタンは約7mmとなる 【画面4】Internet Explorerの文字サイズ「中」で本稿を読むと、一文字あたり約2~3mmの幅 【画面5】Explorerの画面。フォルダ名などの半角英語部分は1mm前後の大きさ

 筆者の場合だと、だいたい目の位置から1m弱ぐらいの場所にディスプレイを置いて原稿を書く。この距離であれば、このサイズでも何とかなり、(慣れていないので違和感はあるものの)これで原稿を書いてみても、スクロールが頻繁に起こらない状況であれば、それほど問題は感じなかった。とはいえ、この1m弱という位置関係は、かなり近めで決して目に優しいとはいえない。

 以前に元麻布氏がレポートしている、デルの20型UXGA液晶「UltraSharp 2001FP HAS」だと、本製品と比較して、およそ1.4~1.5倍ぐらいの大きさで表示される(画面6)。1cm以下の文字サイズとなると1mm、2mmのサイズ差は大きい。

 そこで、本製品の表示解像度をSVGAにして、文字のサイズをチェックしてみたものが画面7~8だ。こちらだとInternet Explorerでの表示サイズは3~4mm、Explorer上のファイル/フォルダ名は1~2mmといったところ。このぐらいのサイズになると、一気に実用性が増す印象で、多くの人が納得できるのではないだろうか。

【画面6】デルの20型UXGA液晶「UltraSharp 2001FP HAS」だと、Windowsの終了ダイヤログのボタンが約1cm。約1.4倍となる 【画面7】SXGA表示でInternet Explorerの表示をチェック。だいたい1mmほど大きくなる 【画面8】Exlorerのフォルダ表示も1mmほど大きくなる。実際に見ると、一回り大きくなっただけで見易さがずいぶんと変わってくる

 最後に、本製品が持つOSDメニューについて簡単に紹介しておきたい。OSDメニューのトップは画面9のとおりで、機能ごとに分けられた理解しやすいメニューとなっている。輝度やコントラストはトップメニューから直接指定が可能(画面10)で、利用頻度の少ないであろう水平/垂直位置や画面サイズの微調整などは「LCD調整」メニューからは子メニューが表示される形態となる(画面11)。もちろん、カラーマッチングに欠かせない色温度の指定も可能だ(画面12)。

【画面9】OSDメニューのトップ。左側にメニュー、右側に現在の表示モードなどが表示される 【画面10】輝度、コントラストの両項目については、トップメニューから直接実行できる。変更頻度が高い設定だけに、これはありがたい
【画面11】一方、水平/垂直位置やサイズなどの設定は子メニューが用意される 【画面12】色温度の設定も可能。プリセットが3種類用意されるほか、任意に設定も可能だ

 もう1つピックアップしておきたいのが、トップメニューの「その他」内の子メニューとして存在する「スムージング」機能だ。この機能は画面表示のジャギーをやわらげる機能で、0~15段階の指定が可能(画面13~14)。使ってみた感じでは、UXGAのときはスムージングをかけるとかえって見づらくなるが、SXGAやXGA表示のときに使うと効果的な印象である。

【画面13】ジャギーを消す「スムージング」機能。0~15までの指定が可能。この画面は適用しない状態
【画面14】最大の15レベルに適用した画面。ジャギーを埋める、といった感じの処理なので文字が太くなる

●省スペースで高解像度“も”表示可能と割り切れば便利

 以上のとおり、短期間ながら試用した印象をレポートしてきたが、印象としてはUXGAはちょっと苦しいといった感じだ。文字が小さいので距離を詰めるか、目を凝らすか、のどちらかになるのは当然のことながら、テキストなどのスクロールでチラつきが大きいのが気になる。そうした理由から、UXGAで常用のするのであれば、価格や省スペース性では劣るものの、素直に20型クラスを購入したほうが無難だと思われる。

 それでも本製品は、独特の魅力を備えている印象を受けた。XGAはもちろん、SXGAサイズまでなら文字の視認性は悪くないし、それでいて15型液晶ならではの省スペース性を持っている。15型液晶の製品はXGA表示が当たり前なのだが、画像表示やデータ確認などで広い解像度が欲しくなるときは多い。そんなときに、ちょっと設定を変更するだけでUXGAの解像度が得られるわけだ。

 15型液晶に広い解像度が得られるというプレミアが付いたと考えれば価格も高くは感じない。使い手を選ぶのは確かだが、ここで紹介したようなメリット/デメリットを納得したうえで利用すれば、かなり便利なアイテムとなるだろう。

□関連記事
【5月12日】アイ・オー、UXGA対応の15型液晶ディスプレイ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0512/iodata1.htm
【2003年12月17日】【元麻布】11万円台でUXGA対応の20.1型液晶「デルUltraSharp 2001FP HAS」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1217/hot293.htm

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(2004年7月16日)

[Text by 多和田新也]


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