●20型液晶が普及価格帯に降りてきた2003年 PC売り場をのぞいていて、この数年で一番変わったのは、ディスプレイがCRTから液晶へ急速にシフトしたことだろう。ディスプレイ売り場で売られる単体ディスプレイはもちろんのこと、PCとセット販売されるディスプレイもほとんどが液晶ディスプレイに置き換えられた。 ウサギ小屋に暮らす日本人には、場所をとらない液晶ディスプレイがウケルのか、と思っていたら、米国でも日本より少し遅れて液晶シフトが起こっている。どうやらCRTから液晶へ、という動きは真空管から半導体へ、というシフトと同じで避けられないらしい(とすると、数年後に一部のマニアがCRTディスプレイは良かったと言い出すのかもしれない)。 それはともかく、まず中~小型の液晶ディスプレイが手ごろな価格に降りてきて普及に弾みがつく中、大型・高解像度のディスプレイは歩留まりの関係で高値が続き、なかなか普及が進まなかった。特に20型クラスでUXGA(1,600×1,200ドット)解像度のディスプレイとなると非常に高価で、特殊な用途に限定される印象だった。それが変わり始めたのは、昨年あたりではなかったかと思う。そして、20型クラスの液晶ディスプレイが、普通のユーザーにも手の届く範囲に降りてきたのが2003年だった。
今年の春、日本IBMが発売した「ThinkVision L200p」は、UXGA解像度の20.1型液晶ディスプレイでありながら、178,000円という価格(IBMダイレクト価格。正確にはL200pはオープン価格の製品)で衝撃を与えた。筆者も借り出して試用させてもらい、このコラムで取り上げたことを覚えている人もいることだろう。当時、20型クラスの液晶ディスプレイはもうちょっと高価だったのだが、ThinkVision L200pの発売を受けて、多くのベンダが実売価格の見直しを行なった(ように筆者には思えた)。一種のIBMショックみたいなものがあったのではないだろうか。 そして年末、今度はデルがやった。115,000円の20.1型の液晶ディスプレイ、「UltraSharp 2001FP HAS」を発売したのである。ただし話をよく聞くと、確かに115,000円になったのは11月26日からなのだが、以前から同社では20型液晶ディスプレイを12万円を切る価格で販売していたらしい。だが、PCワークステーションのオプションとしての販売が主だったため、単体で購入可能だとはなかなか認知されなかったようだ。日本IBMもそうだが、システムベンダが販売する周辺機器にはありがちな話である。 筆者も言われてみると、いつだったかデルのPCワークステーションの発表会か何かで、ずいぶん安い値段(といっても20万円は切っているが、12万円を切るほどではなかったハズだが)でオプションの20型液晶ディスプレイを売るのだなぁと思い、単体販売はあるのか、ということを聞いた記憶がある。
確かその時の答えは、当初は数量が限られるのでオプション販売のみになるが、将来的には単体販売も行なう予定である、といったようなものだったと思う。どうやらデルはこの言葉どおり、人知れず20型級液晶ディスプレイの単体販売を始めていたらしい。 気づかない筆者も悪いが、オンラインストアでパッと見てすぐ分かるような売り方をしなかったデルもちょっともったいなかったのではなかろうか。今回、このディスプレイの存在に気づいたのも、同社初の家電品ということで話題になったチューナ内蔵の17型ワイド液晶ディスプレイ「W1700」に関する説明会で、さりげなく脇においてあったからだったりする(この17型ワイド液晶もDVI端子とD4端子の両方を備えるなど、コストパフォーマンスの高い製品である)。 いずれにせよ今は、同社の日本語トップページから「PC・関連製品・サービス他」のリンクをクリックし、さらにソフトウェア&周辺機器を選べば、すぐに分かるところで単体販売されている。これなら、誰でも単体でこのディスプレイが115,000円で買えることが分かる。 ●115,000円の実力を検証
さて、115,000円で買えることは分かったが、いくら安くても実用に耐えないものでは困る。まさかそんなことはないとは思うが、一応試してみたい。そう思って試用してみることにした。 届けられたUltraSharp 2001FP HASは、やや大きめの段ボール箱(ThinkVision L200pの経験があるから驚きはしなかったが)に、ディスプレイパネル部とスタンドが分かれて収められていた。パネル部はそのままVESAの100mmタイプのアームにネジ止めできるようになっているが、付属のスタンドには、ロックボタン1つで簡単に取り付けられるようになっている。 スタンドは「HAS(Height Adjustment System)」の名前どおり、高さ調節可能なもので、高さで130mm、前後チルト(前5度、後ろ25度)、左右それぞれ45度づつ動かすことができる。加えて液晶ディスプレイを回転させ縦表示にするピボット機能も備えるが、ピボット切り替え用のソフトウェア等は添付されていない。 また、ピボットに対する余裕と、オプションのスピーカー(Dellサウンドバー、ただし現時点でオンラインショップでの販売は確認できなかった)をディスプレイ下部に取り付け可能という仕様から、ディスプレイを目いっぱい下げてもそれほどベッタリと下には下がらない。ディスプレイを下に下げて使いたいユーザーは、VESA準拠のアームを予算に含めておいた方が良いだろうとは思うものの、外観デザイン的な部分にコストを優先したような部分は見当たらない。 ディスプレイの機能として特筆されるのは、計4系統もの入力を備えていること。PC接続用のD-Sub15ピンとDVI-Dの2系統に加え、コンポジットビデオとSビデオの2系統を備える(コンポジットビデオとSビデオは独立)。DVDプレイヤーやゲーム機の接続もバッチリだ。 しかもPC用の表示画面には、ビデオ入力のいずれかをPicture-in-Pictureで窓表示することさえできる(大きさは大/中/小の3段階、表示位置も調整可)。USB 2.0に対応したHub(4ポート)を内蔵していることも併せ、かなり多機能な液晶ディスプレイだ。ここでも、安さによる省略や妥協は見られなかった。 ディスプレイとして最も気になるのは表示画質だが、ここでも特に欠点は見当たらない。基本的には反応速度16ms、コントラスト比400:1、輝度250cd/平方m、視野角上下左右とも176度というスペック通りの見え方だ。動画を表示しても、残像が残るようなことはもちろんない。 嬉しかったのは、TVゲームがちゃんとできたこと。これは単に残像がないということだけでなく、筆者の弱った目でも問題なかった、ということも含めての話だ。最近、TVに映し出したTVゲームをするのが辛くなっているのだが、本ディスプレイのビデオ入力なら、TVゲームも目に優しい。
●今後もデルの液晶は要注目 というわけで、115,000円の20.1型液晶ディスプレイに特に問題は見られなかった。強いていえば、ベゼルに使われている樹脂の質感がもうひとつ、という気はするが、業界で最も安価な製品にそこまで求めては酷というものだろう。ベゼル自体は18mm幅で、15~6万円前後の他社製20型ディスプレイと比べても、幅が狭く置き場をとらないタイプだ。 デルのような直販を主力とするベンダが20.1型の液晶ディスプレイを115,000円で販売するということは、日本全国どこからでもこの値段で購入することができる、ということにほかならない。他のベンダ、特にディスプレイ専業のベンダはこのデルの製品に対してどのように対抗するのか。実際には、本製品の価格は米国では749.25ドルにまで値下げされている(12月16日現在では899ドルに値上げされた)。まだ値下げ余地がありそうなのだから恐ろしい。 上述した17型ワイド液晶も悪くない製品だし、米国では30型ワイド液晶TVもラインナップに加わっている。液晶ディスプレイやTVの購入を考える場合、デルのラインナップをチェックしておくことが必要になったようだ。 【追記】なお、本製品のデフォルトのカラー設定はsRGBモードとなっており、OSDでは“Normal Preset”という表示がそれにあたる。もちろん、テキストアプリ向けの“Blue Preset”とイメージ表示用の“Red Preset”が用意されており、RGB別のカスタマイズも可能だ。 詳細は、http://support.jp.dell.com/docs/monitors/2001fp/ja/controls.htm#cctrlをご覧いただきたい。
□関連記事 (2003年12月17日)
[Text by 元麻布春男]
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