6月22日に発表されたIntelのLGA775プラットフォーム。その目玉の1つはPCI Expressへの対応で、ビデオカードもPCI Express x16接続となる点だ。すでにショップでもPCI Express接続のビデオカードが販売されているが、これまでのところハイエンドと呼べるものは姿を表していない。今回、PCI Express接続としては初めてハイエンドと呼べるビデオカード「GeForce 6800 GT」を入手できたのでレポートをお届けしたい。 ●1チップでPCI Expressに対応するGeForce 6800 GT NVIDIAの「GeForce 6800 GT」は、NVIDIAからの正式リリースの前に、すでに搭載製品がベンダーから発表されたGPUである。すでに秋葉原ではAGP版が発売されているので、チップについてご存知の方も多いだろう。
そのスペックは石井氏のレポートにもあるとおり、GeForce 6800 Ultraの下位モデルにあたる。GeForce 6800がコア/メモリクロックのダウンに加えてパイプラインもカットされているのに対し、GeForce 6800 GTはコア/メモリクロックが下げられるのみで、レンダリングパイプラインはGeForce 6800 Ultraと同数が維持されるのが特徴である。 PCI Express版のGeForce 6800シリーズは「NV45」の開発コードネームで知られているチップ。ただし、コア内部はAGPインターフェイスとなっており、GPU上のブリッジチップである「HSI」を介した接続となる。 コアとHSI間はAGP 16X相当の帯域幅を持つ。片方向の通信だけであれば4GB/secとなり、PCI Express x16における片方向の帯域とマッチする。ただし、双方向通信が発生した場合は、PCI Express x16では上り/下りそれぞれで4GB/secの帯域を持っているので、上り/下り合わせて4GBのAGP 16Xでは不足することになる。 このあたり、完全にPCI Expressにネイティブ対応するATI製のGPUと比較してどう違いが出るかは興味深いところなのだが、これは製品が出そろい次第、テストを行ないたい。 それではNVIDIAから借用したリファレンスカードの外観から見ていくことにする。まず表面だが、大型のクーラーが目に留まる。これはGeForce 6800 Ultraとは異なるデザインで、1スロットで装着可能になっている(写真1)。騒音については、GeForce 6800 Ultraよりは幾分静かに感じたが、それでも耳障りな印象は拭えなかった。 裏面にメモリチップは実装されておらず、クーラーを固定するためのパネルが目立つ程度だ(写真2)。バックパネルの部分がGPUの裏面にあたるが、そこからPCI Express x16インターフェイスへ向けて直接配線が伸びていることが分かる。ちなみにHSIをチップ上に持たない「GeForce PCX 5300」の裏面は写真3のように、GPU-HSI-PCI Expressインターフェイスと配線が伸びている。 続いて、ブラケット部を見てみると、こちらはGeForce 6800 Ultraと同様の配置で、DVI-I×2/Sビデオ端子の構成だ(写真4)。基板の末端側を見ると、右端に2×3ピン配列のコネクタが見える(写真5)。これは電源コネクタで、専用のケーブル(写真6)を介して2個のペリフェラル用電源コネクタを接続する。PCI Expressになってスロットからの供給電圧も増えたにもかかわらず、2個の電源コネクタを必要とするのである。 また、すでに後藤氏のコラムで紹介された、ビデオカードを複数接続するための「SLI」端子も本製品は装備している(写真7)。現時点では使い道がないが、将来的にこのインターフェイスを使ってマルチGPU環境を構築できることになる。 ●AGP接続のハイエンドビデオカード2製品と比較
それでは、GeForce 6800 GTのPCI Express版のパフォーマンスをチェックしていこう。とはいえ、現段階ではPCI Express接続で本製品と同セグメントのビデオカードが存在しないため、今回はAGP接続のビデオカード2製品を用意して比較することにする。インターフェイス以外の環境は極力揃えているが、今回の結果が純粋なGPUの性能比較と言い切れない点にはご注意いただきたい。環境は表に示したとおりである。 ちなみに、今回テストするGeForce 6800 GTのリファレンスカードのコア/メモリの各クロックを調べてみたところ、350MHz/1GHz(500MHzのDDR動作)とスペック通りの動作クロックとなっている(画面1)。
まずは「3DMark03」の結果である(グラフ1)。インターフェイス的に有利になるとはいえ、さすがにGeForce 6800 Ultraには劣る結果となっている。負荷が上がったときの減り幅を見てみると、まず1,024×768ドットでフィルタを4xFSAA、4xFSAA/8x異方性フィルタと追加した場合のスコア推移は GeForce 6800 GT:10982→7949(約28%減)→6509(約19%減) となる。また解像度が1,024×768から、1,280×1,024→1,600×1,200と上がった場合は、 GeForce 6800 GT:10982→8696(約21%減)→7018(約20%減) となる。コア/メモリクロックが下がった影響と思われるが、減り幅がわずかながら増えていることになる。全体のパフォーマンス傾向は非常によく似ている印象はあり、単純にパフォーマンスが低下しただけといった結果となっている。 続いては「AquaMark3」の結果だ(グラフ2)。こちらもGeForce 6800 Ultraと比較すると、フィルタの適用を行なっていない場合こそ良い勝負ではあるが、フィルタをかけた場合に差が開くことが見て取れる。それでも、その差は最大でも8%強とわずかなもので、3DMark03に比べて性能差が出ていないテスト結果となっている。 ちなみにRADEON X800 XTとの比較では、傾向はGeForce 6800 Ultraと同じである。低負荷のテストではGeForce 6800 GTが勝るものの、高負荷のテストとなるとRADEON X800 XTが逆転し突き放す、といった傾向である。
ここからはDirectX 8.1ベースのベンチマークを実行したい。まずは「3DMark2001 Second Edition」である(グラフ3)。このテストは、今回のテスト中唯一、GeForce 6800 GTがGeForce 6800 Ultraを上回る結果を出したテストである。 しかしながら、この結果は非常に不可解である。接続インターフェイスの違いによってGeForce 6800 GTが好結果を出したとは考えにくい。なぜならPCI Express x16によって有利になると思われるのは、テクスチャ転送量が多く、広い帯域幅を必要とするテストである。3DMark03やAquaMark3のように、3DMark2001以上に高負荷なテストの結果を見ても、GeForce 6800 Ultraの性能を上回るほど、PCI Express x16接続が効を奏した結果は見受けられなかった。それでいて、3DMark2001だけがPCI Expressのメリットを発揮したとは考えにくいわけだ。 ほかに考えられるのは、ドライババージョンの違いである。「今さら3DMark2001に合わせてチューニングするか? 」という疑問は感じるものの、この可能性が一番高いように思える。理由に関しては推測の域を出ないのだが、描画内容によってはPCI Express版のGeForce 6800 GTは、AGP版のGeForce 6800 Ultraを上回る可能性がある、ということを示す一例となった。 続いては「FINAL FANTASY Official Benchmark 2」を見てみたい(グラフ4)。このテストは異なる解像度、フィルタ適用環境のすべてで、ほぼ同程度のスコアが出た。CPU側の処理がボトルネックとなり、ビデオカードのフルの性能が出ていないことは明らかである。GeForce 6800 Ultraとの比較は約5%の性能差で、これは解像度が変わっても同じである。
最後に「Unreal Tournament 2004」である(グラフ5~9)。これもBotと呼ばれるキャラクターを動かすテストであるために、CPU側の負担が大きく、ビデオカードによる性能差は出にくい。しかし、GeForce 6800 Ultraは、ほとんどテストで1,600×1,200ドット/4xFSAA/8x異方性フィルタになって初めてスコアが低下し始めるのに対し、GeForce 6800 GTは1,600×1,200ドット/4xFSAAの段階でスコアの低下が見られる。ここに、GPUの性能差により、ボトルネックの位置が引き上げられていることが見て取れる。 ●同じGeForce 6800でも異なる描画品質 描画品質の比較も行なっておきたい。3DMark03のImageQualityテストを利用し、Game4の1,669フレーム目を比較する。解像度は1,024×768ドットである。 同じGeForce 6800同士で見てみると、フィルタの適用をかけない状態ではまったくといっていいほど同じ描画を見せる。しかしながらFSAAや異方性フィルタを適用すると、まったく別の描画となる。 以前のテストでも触れたとおり、GeForce 6800 Ultraはジャギーが残るが葉の先々まで描画をする、という特徴だった。GeForce 6800 GTでは、このジャギーがかなり消えているのだ。これはGPUの違いもさることながら、過去の例から言えば、むしろドライババージョンの違いが影響している可能性が高いだろう。 RADEON X800 XTは葉の先のほうや、枝の太さなど、描かれていない部分も見受けられるのだが、GeForce 6800 GTは細かい部分までよく描画されている。今回比較した3製品で見る限り、GeForce 6800 GT(+ForceWare 61.45)の描画品質はかなり高いといっていい。 ●比較対象が出てきたときが真の勝負どころ 以上のとおり、PCI Express版のGeForce 6800 GTをテストしてきた。今回はあくまでAGP版のビデオカードとの比較ではあったが、それでもGeForce 6800 Ultraとの性能差がはっきり表れた。とはいえ、GeForce 6800 GT以外でPCI Express接続のハイエンドビデオカードが入手できない状況では、今回のテストに参考値以上の役割を持たせるのは難しい。本製品の位置付けや、お買い得感などについては、今後、本製品と同等のセグメントに向けた製品と比較してから結論を出すことにしたい。 なお、いち早く借用できたということは、販売開始も近いと想像できるので、PCI Express接続のハイエンドビデオカードでは店頭販売一番乗りを果たす可能性が高い。もちろん、その後にはPCI Express版のGeForce 6800 Ultraや、RADEON X800シリーズといった存在も控えているわけで、これらのビデオカードが出てきたときこそが、本製品の真の評価の場といえるだろう。 □関連記事 (2004年7月9日) [Text by 多和田新也]
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