富士写真フイルム株式会社のスクエアタイプコンパクトデジタルカメラの新製品、FinePix F440とFinePix F450を試用することが出来たので、レポートする。 このような兄弟機種が同時発売されるケースは時折見かけるが、レンズの画角が違っていたり、一部機能が省略されていたりなど、撮像素子以外にも多少の違いがあるものなのだが、F440とF450についてはボディカラーと撮像素子以外は違いが見あたらない。このレポートにおいても、画質以外の部分は両機種ともに共通であると理解してお読み頂きたい。
●ハニカムでなくなった撮像素子 基本仕様だが、FinePix F440の撮像素子は1/2.5インチ、正方画素CCD、原色フィルター採用の総画素数423万画素、有効画素数410万画素。最大記録画素数は2,304×1,728ピクセルである。FinePix F450は、1/2.5インチ、正方画素CCD、原色フィルター採用、有効画素数520万画素、総画素数536万画素、最大記録画素数は2,592×1,944ピクセルである。 残念なのは、撮像素子が前機種 FinePix F420のハニカムから変更されると同時に、連写機能が無くなり、動画の機能も大幅に低下してしまったこと。F420では320×240ピクセルで30fps、メディア容量いっぱいまでの動画が可能だったのだが、F440、F450では最長60秒までに制限され、10fpsでしか撮影できなくなってしまった。さらにF420にあった0.3秒間隔で4コマまでという連写機能もなくなり、単写しかできない。 要は動画や連写をどこまで使うかと言うことで省く選択をすることになったのだろうが、これらの機能は、カメラマンの工夫や努力で補うことが出来ず、ハードウェアが対応していないことにはどうにもならない部分である。機能が無くなってしまうと、頑張ってもどうしようもないため、残念なところ部分だ。サイクル連写やMEGA連写、オートブラケティングも出来なくなっている。 ●大きくなった液晶
スクウェアタイプというふれこみだが、正方形ではなく若干横長の74.5×21.3×62.3mm(幅×奥行き×高さ、突起部含まず)と言うサイズだ。ちなみに既存のF420は77mm×26.4×69mmなので、メーカー公称値で3割ほど小さくなっている。 パワースイッチは、ボディ前面のグリップ様のパーツがスライド式のスイッチとなっている。スイッチを入れると、電動のレンズカバーが開いて、3段沈胴式レンズがのびてくる。起動はスムースで高速だ。ただレンズを保護するという点ではレンズカバー方式の方ががっちりしており安心できるため、おしゃれなこの方式とどちらがよいのかは、一長一短がある。パワースイッチの操作性は大変良いが、鞄の中でオンになってしまうことがあるので、鞄につっこんで持ち歩くにはケースも一緒に購入した方がよい。 光学ファインダーは実像式光学ズームファインダーで、視野率約78%。液晶モニターは2型、低温ポリシリコンTFTカラー液晶モニターで、約15.4万画素、視野率 約97%。液晶が大きくなったことは、歓迎したい。一時の、ボディサイズの小型化に伴って液晶もその犠牲となって小型化されてしまう流れはほぼ無くなってきたようで、良いことである。屋外でのファインダーとして使用する場合はLCDの明るさを最大にしておくのがおすすめ。室内で画像を再生して鑑賞するには大変きれいに表示される。再生の場合は、明るさは標準のままでよい。 記録媒体はxD-Picture Card。出力フォーマットはJPEGのみで、RAWやTIFFはないが、このカメラの性格を考えればこれでよいだろう。 ●望遠側に伸びたズームは、手ブレに注意 レンズはフジノン光学式3.4倍ズームレンズで、焦点距離 f=6.3mm~21.6mm。35mm版換算で38mm~130mm相当の画角。F値はF2.8~F5.5である。F420が36mm~108mm/F2.8~4.8相当であったのに対し、望遠側が長くなり、ISO感度が低くなり、その上にレンズが暗くなっているので、トータルで手ブレする確率は高くなる。望遠側を使うときには手ぶれに対して慎重に配慮したい。 メニュー設定で撮影モードをオートにすると、ISO感度設定でオートの項目が選べるが、マニュアルモードにするとオートが選べず、ISO80、100、200、400の固定から選択することになる。どうせなら良い画質で撮影したいという気持ちは有るので、ISO80を選択していると、望遠側でブレてしまうことが頻繁に起きた。 テスト試用の際は梅雨時で天気が悪く暗いこともあるのだが、オートモードではホワイトバランス設定も露出補正も行なえないため、どうしてもマニュアルモードで撮影せざるを得なかった。ISO感度設定は注意してこまめに変更し、手ぶれを防ぐ必要がある。開発陣がもう少し柔軟に発想して、マニュアル撮影モードでもISO感度オートを選択できた方が望ましかった。 撮影可能範囲は標準が約60cm~∞。マクロにすると広角端で約9cm~80cm。望遠端で約39cm~80cmである。大きめの花であればアップで撮影できるが、マクロに強い機種ではない。露出制御方式はプログラムAEと人物/風景/スポーツ/夜景のシーンポジション。絞り優先AEやシャッター速度優先AE、マニュアル露出は出来ないのだが、よく言われる背景をぼかすという撮影は、この手のデジカメはどのみち大してボケないので、プログラムAEでも実質的な問題はないだろう。ただ無限遠(遠距離)モードがないこと、シャッター速度の最長が2秒までであることと併せて、これからの季節、打ち上げ花火の撮影は苦しそうだ。日常のスナップ用途と考えたい。
●わかりにくい蛍光灯ホワイトバランス設定 露出補正は-2.1EV~+1.5EVまでで、0.3EVステップ。多くのメーカーが0.3EVといっても1/3ステップで、0.3、0.6の次は1.0になってしまうのに対し、フジはきっちり0.3EVを刻んでいる。シャッタースピードは2秒~1/2,000秒。AFフレームはセンター固定の1カ所。 ホワイトバランスはシーン自動認識オートとプリセット(晴天/日陰/昼光色蛍光灯/昼白色蛍光灯/白色蛍光灯/電球)。蛍光灯が3種類有るのは同社製デジカメの特徴だが、使い勝手としてはわかりにくく、選びようもない。自宅であればどの蛍光灯か選択して購入している人もいるだろうが、出先ではわかりようもなく、迷うばかりだ。 蛍光灯の場合、雰囲気を出すために色を残す撮影はかなり特殊なケースと思われるので、蛍光灯向きオートホワイトバランスのような設定にしてくれた方が、ユーザーとしては便利だろう。 そのほかPCに接続して、Webカメラとして使用もできる。付属のクレードルにセットしても、USBケーブルで直結してもよい。クレードルは液晶面を手前にして、鑑賞に適するよう角度をつけてカメラを設置するようになっている。逆にレンズ面は斜め下に向いてしまうのだが、Webカメラとして使用する場合、棚の上に設置して部屋の中を見下ろすような使い方ならちょうど良い。 バッテリーはNP-30へ強化されている。CIPAの基準で150枚の撮影が可能としているが、この基準は割に厳しい基準のため、筆者の感覚ではもう少し使用できるように感じた。F420で使えたニッケル水素の単4電池は使用できない。本体質量は約150g。撮影時質量は約165g。FinePix F440/F450兼用で、水深40m以内の防水プロテクターも発売されている。 メニュー構成も、F450とF440でほぼ同一。違うのは画素数選択の場面のみである。露出補正、ストロボモードはパワーオフにしてもリセットされないが、マクロモードはリセットされる。このあたりは正しい仕様の選択だと考えるが、ディスプレイに9分割の水平、垂直のガイドを出す機能(ベストフレーミング機能)がリセットされてしまうのは残念。このガイドを出す人は、それなりにこだわりを持って撮影する人だろうから、リセットされない方が好ましいだろう。Fマークのファインピックスボタンに画素数、ISO感度設定、カラーモード。メニューボタンにセルフタイマー、撮影モード、ホワイトバランス、明るさ、各種設定と割り振られている。フラッシュ強度の調整や連写モードの設定はない。
●ともに良好な画質で魅力的 撮像素子がハニカム1/2.7インチ有効310万画素から、通常タイプへ変更されたことをどう評価するのかが、この機種の最大のポイントだ。ハニカムは出力画素数に対する解像力不足が問われるが、ISO感度の高さ、発色の豊かさ、ノイズの少なさ、ラチチュードの広さなど解像力以外のメリットが多い。処理の速さも特徴的だ。確かに作品制作をする上では、画素数アップでより高解像が期待できるメリットはあるが、家庭用のスナップ機種としては使いにくくなってしまったのではないだろうか。 ただし同じベイヤー配列の通常タイプCCDを使うコンパクト機種の中では、操作性や画質面でも十分対抗できるものがある。これから選ぶコンパクトデジカメならば、十分魅力的な一台である。やはり2型の大きな液晶は重要なポイントで、慣れてしまうと1.5型ではどうにも物足りない。特に子どもを撮影するような場合は、撮れた画像を子どもに見せてあげることが重要なので、デジカメ選びのきわめて大きな要素と考えたい。 ちなみに筆者は、ボディカラーはシルバーよりもホワイトの方が魅力的であると感じた。 ●F440の作例
●F450の作例
●F440とF450
□富士写真フイルムのホームページ ■注意■
(2004年7月12日) [Reported by 安孫子卓郎]
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