9月17日に発売されるサイバーショットDSC-P150を試用する機会を得た。特徴は、小型ボディのPシリーズに共通するデザインに、有効720万画素1/1.8型CCDとカール ツァイス3倍ズーム「バリオ・テッサー」の搭載で、小型軽量ながら高精細・高画質記録を可能としたモデルだ。 ●概要 撮像素子として1/1.8型、原色フィルター、インターレーススキャン方式の有効720万画素CCDを搭載している。500万画素クラスの約1.5倍の画素をもっており、250dpiでA4サイズをやや上回る大きさの用紙に高画質プリントが可能だ。 そしてレンズには、高解像度・高コントラスト・優れた色再現性で高い評価を得ているカール ツァイスの38~114mm(35mm判換算)3倍ズームレンズ「バリオテッサー」が採用されている。そして画像は「リアル・イメージ・プロセッサー」で処理され、高画質を忠実に再現するだけでなく、高速レスポンス、低消費電力化などで快適な撮影をサポートしてくれる。 基本的に先に発売されて好評なDSC-P100をベースに、有効720万画素CCDを搭載したもので、より精細な画像の提供を目的としている。そしてこの性能を基にシャープネス・彩度・コントラストの設定など作画に関する機能や、動画などの楽しむための機能も満載されている。 操作は、ボタンやダイヤルなどがうまくレイアウトされており、背面の1.8型TFT液晶モニターの使用と合わせて、高性能と多機能を簡単に使える配慮がなされている。またボディカラーは、P100のシルバー、ブルー、レッドの3色に代わって、シルバーとブラックの2色が用意されている。 ●7.2MピクセルSuper HAD CCD DSC-P150の最大の興味は、有効720万画素(総画素数740万画素)のCCDだ。最大3,072×2,304ドットの高精細画像で、35mm判レンズを使う一眼レフのものより大きい。反面、CCDのサイズはデジタル一眼レフで一般的なAPS-Cサイズと比べて面積で約1/10となり、単純計算はできないがCCDの1画素もおおむね1/10の面積しかないことになる。この大きさで、どのくらいの高画質が実現できるのであろうか? 今夏は例年にない暑さで昼間の太陽も非常に強いように感じる。5月に鮮やかな色で花をつけたツツジも、この時期には栄養を蓄えるためか葉だけになってしまい誰も振り向いてはくれない。この葉は3×2cm程度で決して大きくないので、あとで拡大して見るにはいい大きさかもしれない。もちろん葉脈も見え、表面は太陽の強い光を受けて反射しており、撮影したときは赤い部分もあり面白そうだ。 結果はOKだ。PCの画面とプリントを見てみたが、高精細でなおかつ色のバランスなどもよく、このCCDの特徴をもののみごとに出してくれた。 そしてこの時期の全国的なイベントといえば「花火大会」だろう。夜になればマンションの自室から数カ所の花火大会をきることができ、しかもこのDSC-P150が我が家に届くのは土曜日で、「花火モード」もあるのでうってつけと思っていた。しかし届いたのが午後で、ちょっとタイミング悪く充電が間に合わず撮影は断念せざるを得なかった。その代わりというわけではないが、月が出て夏には珍しく空気も澄んでいたので、この月を撮影してみた。 どうだろう。やはりというわけではないが、撮像感度を上げるとザラついた画像になってしまった。現段階において、この大きさのCCDで有効720画素とすると、撮像感度をあげた場合にはノイズ成分が多くなって、画質は悪くなってしまうようだ。
●バリオ・テッサー カール ツァイスレンズは、優れた色再現性と豊富な(濃淡の)階調、フレアやゴーストに強いことなどが特徴だ。そのなかでテッサーといえば、3群4枚構成のレンズのお手本ともいうべきもの。カール ツァイスのレンズ群の中にあって、優れた切れ味で「鷹の目」といわれているほどの名レンズだ。このP150に搭載のバリオ・テッサーは、5群7枚構成で35mm判換算で、38~114mmの3倍ズーム。小型デジタルカメラで最もポピュラーな倍率で、高精細な720万画素CCD搭載機には適したものだろう。 銀塩写真の場合の画質はレンズとフィルムで問われたが、デジタルカメラではレンズと撮像素子(フィルターなども含む)、画像処理システムでが決まる。そのため、レンズ単体の評価は大変難しく、色の再現性や階調も画像処理システムの設計や調整によって変わってしまい、単純な評価はできない。 前置きが長くなってしまったが、従って今回は撮影時にレンズに太陽光をあたるようにしたときどう写るか? レンズに起因するゴーストやフレアがどうなるか? ということだけがチェックポイントだ。 結論からいうと、太陽が画面の中に入ると大きなゴーストイメージが発生する。今回のバリオテッサーは、非常に小型なためにゴーストやフレアには不利で、またゴーストやフレアの防止に有効とされるカール ツァイスのT*コーティングがないのも一因かもしれない。 順光や曇りの日の撮影であれば、もちろんゴーストイメージの発生はなく、また夏場以外の柔らかい太陽光であれば、もっと少ないはずだ。またフードなどが用意できれば、ちょっと違った結果になったかもしれず、この小さなレンズに多くを望むのは無理があると思う。 ●レスポンス 「シャッターチャンス」は一瞬しかなく、そのためにシャッターレリーズボタンを押して、すぐにシャッターが開いて画像を写し込みたい。しかしカメラ側では、AF(オートフォーカス)、AE(自動露出)、WB(ホワイトバランス)を調整してから、シャッターを開くため時間が必要だ。その時間は短いほうがよいが、昨今の高画素化で長くなる傾向があった。今回のP150の公表値はシャッターラグ0.3秒、レリーズラグ0.01秒となっている。もちろん起動時間も1.3秒と短く、全体的にストレスを感じさせない撮影が可能だ。 鉄道を撮影するときには連写も使うが、列車の速度やアングル、撮影距離によって速いシャッター速度や連写能力が要求される。フィルムカメラでは、8コマ/秒などの速さで36枚撮りフィルムを一気に撮影できる一眼レフカメラもあるが、デジタルカメラの場合は、画像を電気的に処理してバッファーや記録メディアに書き込むために、意外と時間がかかる。 P150も連写は可能だが、最大画像サイズだと約1.5秒間隔となっており、動いているものを連写するには最大画像サイズでは難しい。60km/hで走っている電車は、1秒間で16.6m移動するので、1.5秒間隔の連写では列車の先頭部を約25m間隔で撮影することになる。画像サイズを3Mとか1Mなどに小さくすると多少は連写速度も上がるが、いずれにしても列車を撮影するのには実用的ではなかった。
●操作感 使ってみて最もよかったのは電池の持ちで、3日間に渡って撮影したが、全く気にしないで撮影できた。「そろそろかな」と思っても半分程度残っており、液晶モニターを使って画像を何回も再生したが、減り方が少なかった。強力なバッテリーと省エネ設計は高く評価される。 バッテリーの持ちと対照的に使いづらかったのが、ボタンやダイヤルだ。押しても反応しないとか、クリック感がよくないというのではない。試用した機材がシルバータイプで、外では太陽の、室内では蛍光灯などの光をよく反射して、文字や絵柄が非常に見づらいのだ。金属ボディで質感があるのはいいが、操作するときに困った。 ソニーのホームページに掲載されているP150の製品写真は、もちろんスタジオで整ったライティングのもとでプロカメラマンによって撮影されたものだが、それでも光っている部分が多く文字などは読みにくいのがわかるだろう。文字部分が光ったら読むのは不可能で、また文字以外のところが光っていても眩しくて文字が読みづらい。 撮影時に使う機能として、AFのモードの切り替えや露出補正があるが、いずれもメニューボタンやコントロールボタンでの操作となる。P150の操作に慣れてしまえば、被写界深度の深さとフォーカスロックで、どのような状況でもフォーカシングができるが、露出補正はボタンを何回か押したり、モニターを見ながら操作する必要があり、とても大変だった。撮影時に使うAFのモード切り替えや露出補正などを機能として付けるのならば、独立させてもっと使いやすくしてほしかった。電気的に早いレスポンスを可能にしたのに、見づらかったり、操作しづらかったら意味がないと思う。 ●総合的に P150は順光でのスナップ撮影や記念撮影など、写真を楽しむにはよくできたデジタルカメラだが、少し厳しい条件で使おうとすると使いにくいかもしれない。しかし、この小型・軽量ボディにこの性能は評価されるべきであろう。
□製品情報 ■注意■
(2004年8月12日) [Reported by 小山伸也]
【PC Watchホームページ】
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