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NVIDIAチーフサイエンティスト デイビッド・カーク氏来日会見
6月21日 実施 米NVIDIAのチーフサイエンティスト デザイン・設計担当副社長のデイビッド・カーク氏が21日来日し、会見を行なった。 デイビッド・カーク氏は、'97年にリリースされた「RIVA 128」以来、同社GPUの設計にチーフサイエンティストとして携わってきた人物。前半のセッションは、デジタルメディアやPCと人との関わり合いの変化などについて説明がなされた。 ●“ゲーマー”というものはもはや存在しない カーク氏は、娯楽メディアとしてPCが家庭の中でもっとも重要な地位を占めつつあることについて言及。'60年代、'70年代は音楽はラジオやステレオで、映像はTVで視聴していたが、昨今ではPCがそれらの代替機器となりつつある。
また、PCやデジタル機器の普及にともない、ゲーム文化が広く浸透し、以前のようないわゆる“ゲーマー”と、それ以外の人との垣根がなくなりつつあることを指摘。 カーク氏が引用した直近の資料によれば、100%の大学生がなんらかのゲームをプレイしたことがあり、ゲームプレイヤーの平均年齢は29歳で、そのうち30%が女性という。 このように普及しつつあるゲームにとって、もっとも重要な要素としてプレイヤーがとらえているのが、グラフィックのリアルさ。 カーク氏は、ムーアの法則に従い、CPUは18カ月ごとに性能を倍加させているが、GPUは6~9カ月で性能を倍加させてきており、これにより最近のゲームが絵のリアルさだけでなく、臨場感など繊細な表現ができるようになったとした。 さらに、娯楽以外の面でも、医療や地質調査、製造などの業務において、高精度な3Dグラフィックを用いることで、効率や生産性が向上している点や、NASAの火星調査に同社の技術が採用されたことなどを挙げ、高性能なグラフィックが一部の人間だけでなく、社会全般に広く恩恵をもたらしていることを印象づけた。
●RIVA 128からGeForce 6800までの歴史 後半のセッションは、より技術的な面について説明が行なわれたほか、同社製品のロードマップについても新たな情報が追加された。 まず、カーク氏は「A Little History」として、これまでのGPUの軌跡を振り返った。'97年にリリースされた「RIVA 128」は300万トランジスタを内蔵し、「Virtua Fighter」をPCにもたらしたことで話題を呼んだ。 続く'98年の「RIVA TNT」ではトランジスタ数が700万に倍増。'99年の「GeForce 256」ではその3倍の2,300万トランジスタまでに増え、ハードウェアT&Lという新機能を搭載した。 このGeForce 256により、同社は初めて一定レベルのリアルさを持つ人物キャラの表現ができるようになり、「Wanda」という女性キャラのテクノロジーデモを作成した。 余談としてカーク氏は、Wandaの服が黒いのは当時まだ服の繊維感などを表現できなかったためで、またサングラスをかけているのはリアルな目を作成できなかったからという裏話を明かした。
その後、「GeForce 2」では、ピクセルシェーダーによるプログラマブルマルチテクスチャを、「GeForce 3」では、プログラマブルバーテックスを実現した。 プログラマブルバーッテクスシェーダーにより、ポリゴンのディフォームが可能となったことで、それまで不自然だった関節のつながりや、曲がり具合がより自然なものとなった。また、カーク氏によればこの頃から同社はオンラインレンダリングムービーの取り組みに注力するようになったという。 「GeForce 4」では、バーテックスシェーダーと4組のピクセルシェーダーを複数個搭載。「GeForce FX」ではトランジスタ数は1億へと達し、DirectX 9への完全対応と、スケーラブルアーキテクチャを実現した。 そして最新の「GeForce 6800」では、2億2千万トランジスタを内蔵し、Shader Model 3.0、64bit(16bit×4チャネル)浮動小数点演算ならびにHDR(High Dynamic Range)レンダリングに対応した。 ●Shader Model 3.0 & 64bit小数点演算 Shader Model 3.0はGeForce 6800が他社に先行して搭載した機能で、シェーダープログラムのループや分岐が可能となった。これにより、それまでは複数のパスに分けていた複雑な表現も、1つのプログラムにまとめることができ、プログラムを簡素化できる。
実際、ゲーム「Far Cry」では、GeForce 6800上で現行のShader Model 2.0版を走らせると良い性能が発揮できないが、Shader Model 3.0パッチをあてることで、実行するシェーダーパスが減ることから、性能が向上するという。 ジオメトリのインスタンス化も性能の向上をもたらす新機能。Shader Model 3.0に対応したプログラムでは、データをインスタンス化することで似たようなオブジェクトを表示する際にデータを再利用できる。カーク氏が実演したデモでは、インスタンス化を使わない場合は9FPS前後だったものが、ONにすることで24FPS前後に向上した。 また、ディスプレースメントマッピングなどバーテックスシェーダーの機能が大幅に強化されたことで、ゲーム開発の際に、最初に1キャラ数百万ポリゴンクラスの高精度モデリングを行なっておき、それを最終的にポリゴン数を減らした低解像度版に落とし込むことも容易になった。 なお、Shader Model 3.0を実装するDirectX 9cのリリース時期についてカーク氏は、「Microsoftの製品なので私の口からは言えないが」と断りながらも、「現時点でファイナルベータとなていることから、年末よりは前に登場するのでは」との見込みを示した。
64bit浮動小数点演算は、端的に言うと、HDRレンダリングと呼ばれる、人間の視覚の感知範囲と同等レベルのレンダリングを可能にする技術。 これまでは各チャネル8bit(=256段階)で計算していたため、明るいところが白飛びしたり、暗いところがつぶれたりといった問題が生じていたが、16bitで計算することで、この問題を解消できるほか、より繊細な光の表現が可能となるという。
●GeForce 6800の8/4パイプライン版も予定
最後にカーク氏は今後の製品のロードマップを紹介した。これによれば、近々GeForce 6800シリーズのPCI Express対応版が発表。現在GeForce 6800シリーズはハイエンドモデルだけが用意されているが、下半期中にメインストリームやバリュー向けにもラインナップを拡充するという。 詳細については語られなかったが、カーク氏は「GeForce 6800シリーズはスケーラブルアーキテクチャにより、現行の16/12パイプラインのほか、8/4パイプライン版もリリース予定」としており、メインストリーム向けが8パイプライン、バリュー向けが4パイプラインになるものと推測される。 性能については「4パイプライン版でもGeForce 5950に匹敵するレベル」としている。 質疑応答では、熱問題などについて質問が及んだ。CPUやGPUでは熱問題が取り沙汰されることが多いが、カーク氏は「GeForce 6800シリーズが当社の今後の対策を示す好例だ」とした。 「GeForce 6800は、同5950と比べて、クロックとコア電圧を下げることで、ワットあたりの性能は8倍近くまで向上させつつも、熱は8倍になっていない。これは熱が電圧の2乗に比例するためだ。今後も同様の方法で熱問題には対策していく」と答えた。 GeForce 6800相当のコアを内蔵したチップセットについては、未発表の製品については答えられないが、将来的には出す予定という。 □NVIDIAのホームページ(英文) (2004年6月21日) [Reported by wakasugi@impress.co.jp]
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