●松下電器産業 SV-AP30 松下電器産業の「SV-AP30」(写真29)は、一見すると外付けストレージにも思えるようなスタイルが特徴的な製品。サイズは約180×280×68mm(幅×奥行き×高さ)で、縦置き・横置きの両方に対応する。このスペックからも分かるとおり、奥行き方向はかなり長い(写真30、31)。さらに前面にペーパーカセットを装着することになるので、キヤノンのCP-300や後述するソニー製品とほぼ同等の奥行きを確保する必要がある。ただし、背面への用紙の飛び出しは少なく、ポストカードサイズを使用したときに数mmはみ出す程度。電源ケーブルのコネクタに要するスペースよりも短いほどなので、この点は気にする必要がないだろう。 対応用紙サイズは、ハガキ、L判、Kサイズ(100×150mm)の3種類。カセットは1種類ですべての用紙サイズに対応する(写真32)。印刷は2辺フチなしとなり、両端をミシン目に沿って切り取ることで4辺フチなし状態となる。
本体周りは、ここまで紹介した2製品と比べると格段ににぎやかだ。前面はペーパーカセットの装着口、デジカメ接続用のUSB A端子のほか、PCカード(Type2)とSDカード/MMCのスロットを装備する(写真33)。つまりPictBridgeによるカメラを接続してのダイレクトプリントほか、メモリカードからのプリントもサポートしているわけだ。また、写真からはボタン類やスティック状のカーソルキーなども見て取れると思うが、これらはビデオ出力を行なった場合の操作キーである。背面にビデオ出力端子が装備されており(写真34)、TVに出力してメモリカード内の画像の選択や簡単なレタッチ、各種設定などを行なえるのである。また、この操作のためのリモコンも付属している(写真35)。このほか、背面にはPCと接続するためのUSB B端子と、AC100V電源を接続するコネクタを装備。インクカートリッジは、本体上面にセットされる(写真36)。
本製品の特徴の1つであるカードスロットからのダイレクトプリントだが、外観を見ても分かるとおり液晶ディスプレイは搭載されておらずオプションも用意されていないので、ビデオ出力しないことには使いようがない。だが、このビデオ出力で表示されるメニューはなかなか高機能だ。普通に使うだけなら画面5のように表示されるサムネイルから写真を選んで印刷するだけなのだが、1枚の用紙への分割印刷やカレンダー作成機能(画面6)、わりと高機能なレタッチ機能(画面7)、トリミング&回転機能(画面8)など、TVという広い画面を活かした数々の機能が用意されている。これらはリモコンで操作でき、家電感覚で、PC上に近い作業を行なえると言ってもいいだろう。
印刷品質についてだが、解像度は259dpiで、CMY+オーバーコートの印刷となる。解像度が他製品に比べ劣ることもあって、実際の印刷サンプル(サンプル4)でも、全体にジャギーの目立つプリントとなる。コントラストは高いが鮮やかすぎない、落ち着いた色合いとなっている。また、2辺フチなしの製品のなかでもトリミング量が少ない点は特筆しておきたい。PCで利用する場合はICMによるカラーマッチングに対応するが、色合いなどの細かい調節は行なえない仕様となっている(画面9)。 L判印刷時の速度についてだが、PictBridgeでデジカメ側の操作完了から排紙までが約2分2秒。もう少し速度アップを図って欲しいところではある。騒音は非常に小さく、キヤノンと同等レベル。 最後にコスト面だが、本体価格は26,000円前後。36枚のL判用紙&インクカートリッジ(VW-APLC36SY)が1,600円前後なので、1枚当たり約44.4円。L判用紙の選択肢は36枚セットのみであり、若干高めの印象はぬぐえない。 ●ソニー DPP-EX50 ソニーの「DPP-EX50」(写真37)は、SV-AP30に似た縦置きスタイルの製品だが、サイズは約83×290×199mm(幅×奥行き×高さ)と、SV-AP30より一回り大きくなっている。とはいえ、その差は数ミリで、必要な設置スペースも大差ない印象だ(写真38、39)。また、前面にペーパーカセットがセットされる点、ポストカードでの利用時に背面側にわずかに紙がはみ出す、といった特徴も同様である。 対応用紙サイズはハガキ、L判、スモールサイズ(90×101.6mm)となっており、カセットは1種類で全用紙に対応できる。このカセットは縦方向と横方向のガイドが連動して動くものとなっており、他社製品より使いやすい印象だ(写真40)。なお印刷は2辺フチなしとなり、専用用紙は2箇所にミシン目が入る。
本体周りに目を向けてみると、まず前面はペーパーカセットの挿入口、デジカメ接続用のUSB A端子、メモリースティックスロット、CFスロットが並ぶ(写真41)。カメラと直接接続も可能で、メモリカードからのダイレクトプリントにも対応する点もSV-AP30に似ている。CFスロットである点は賛否が分かれるだろう。筆者個人としてはCF対応デジカメをメインに使っているので本製品のほうが好ましく感じるのだが、スロットを装備しないメモリカードへの対応が容易という点では、PCカードスロットを用意してあったほうが好ましいと思う人も多いように思う。 本製品は上面に液晶ディスプレイを搭載する(写真42)。ここでは、メモリカードから印刷を行なう際に、印刷する写真のフォルダと番号を指定できるほか、インデックスプリントやDPOF指定した写真、メモリカード内の全写真の印刷を実行できる。ただし、写真の参照を行なうことはできない。写真を参照しながら印刷したい場合は、背面に用意されているビデオ出力端子を通じてTVに出力して行なうことになる(写真43)。背面にはPCと接続するためのUSB B端子も装備されている。インクカートリッジは本体上面にセットされることになる(写真44)。 ここまでの紹介で分かるとおり、メモリカードからのダイレクトプリントを行なう場合、写真を選びながら、液晶ディスプレイを使ってインデックスプリントを出力してから選択する方法と、ビデオ出力端子を利用してTVなどに表示させて選択する方法の、2通りのユーザーインタフェースを持つのが本製品の特徴といえる。そのビデオ出力で提供される機能だが、これは先に紹介したSV-AP30と画面イメージこそ違えど似通っている。サムネイルから選択した写真の印刷を実行(画面10)、カレンダーやシールなどへのクリエイティブ印刷機能(画面11)、レタッチ機能(画面12)などである。もちろん回転やトリミングなども可能で、家電感覚でPC並のことができるというメリットは同じだが、本製品にはリモコンが付属しないのが残念なところである。
印刷については403dpiと、ここまで紹介してきたの昇華型プリンタではもっとも高い解像度を持つ。色はCMY+オーバーコートと、これは他製品と変わりない。実際の印刷サンプル(サンプル5)を見てみると、さすがに高い解像感を持つだけあり、ジャギーなどが目立たない。また程よくシャープネスがかかっており、曇りのないスカッとした印象の仕上がりとなる。色合いは、右下のガードレール部の滲みが気になるものの、全体に彩度やコントラストが高い鮮やかな発色だ。こういう写真が苦手な人もいるかも知れないが、現場を見たときの記憶色と大きくブレることなく、素直に鮮やかになった感じを受け、個人的には好印象を抱いている。 PCと接続したときは、拡大・縮小印刷が可能なほか、ICMによるマッチングやEXIFからのデータを取得することも可能なオートフォトファインプリント3などの色再現機能、赤目補正機能、色合いとシャープネスの調節などが行なえる、他製品と比較しても高機能な部類に入るドライバを持っている(画面13、14)。
印刷速度はPictBridge接続によるダイレクトプリントで、L判が約1分9秒。高速な部類に入るものの、騒音は大きめだ。今回試した昇華型プリンタ4機種を見る限り、速度が速いと騒音が大きくなり、逆に速度が遅いと騒音が小さくなる傾向にあり、ユーザーによってどちらを優先させるかで製品選びが変わってきそうだ。 最後にコスト面だが、本体価格は25,000円前後。30枚入りのL判用紙&インクカートリッジ(SVM-30MS)が1,100円前後なので、1枚当たり約36.6円。単位が30枚と少ないながら30円台に収まっているのは印象が良い。
□関連記事 (2004年5月27日) [Text by 多和田新也]
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