ATIは、最新ビデオチップ「RADEON X800シリーズ」を5月4日に発表した。NVIDIAの「GeForce 6800シリーズ」から3週間遅れての発表となったが、16パイプのピクセルシェーダ、256bit幅のGDDR3メモリを採用するなど、ライバルと呼ぶに相応しいスペックで登場した。 現在のコンシューマ向けビデオカードの頂上対決といえる、この2製品のパフォーマンスを比較してみよう。なお、今回試用するカードは製品版ではなく評価用カードであるため、実際にリリースされる製品とは外観、パフォーマンスなどが異なる可能性があることを、あらかじめご了承いただきたい。 ●静音性が向上したシンプルなクーラー 今回発表されたRADEON X800シリーズは、「RADEON X800 PRO」と「RADEON X800 XT Platinum Edition」の2製品。前者はすでに秋葉原でも販売が開始されているが、今回試用するのは後者である。 RADEON X800 XT Platinum Editionは、RADEON X800シリーズの上位モデルで、コアクロック520MHz、メモリクロック1.12GHzで動作。メモリはGDDR3を使用し、256bit幅のインタフェースを持つ。16パイプのピクセルシェーダユニットと、6パイプのバーテックスシェーダユニットを装備しており、ライバルとなるGeForce 6800 Ultraと酷似した仕様となっているが、ピクセル/バーテックスともにシェーダバージョンは2.0に留まっている。 評価カードの外観は、前モデルのRADEON 9800 XTから大きくは変化していない(写真1)。裏面にもヒートシンクなどは装着されておらず(写真2)、表裏ともにメモリ上にヒートシンクは設置されていない(写真3)。 もちろん1スロットで装着可能で、銅製ヒートシンクを採用したクーラーはRADEON 9800 XTより小型化されている(写真4)。クーラーの小型化については、製造プロセスが0.13μmへと変更されたことと、メモリをGDDR3へと変更したことによって、消費電力および発熱が減少したのではないかと想像される。 ファンの動作音もRADEON 9800 XTと変わらず、起動直後は最大回転数で動作するためにかなりの騒音となるが、数秒たてば回転は落ち着き、非常に静か。3D描画中も、ベンチマーク中に何度か回転数が上がることはあったが、最大回転へ達することはなかった。 このほか、ブラケット部はDVI、Sビデオ出力、VGAと一般的で、基板の末端にはペリフェラル用電源コネクタが装備されているのも最近のハイエンドビデオカードとしては一般的な仕様である(写真5、6)。 なお本評価カードには、電源コネクタ脇に、ビデオ入力コネクタが装備されていた。試用したキットには対応したケーブルなどが付属しなかったためテストできていないが、どのような接続形態となるのか、ちょっと気になるところではある。 ●GeForce 6800 Ultraと甲乙つけがたい優れたパフォーマンス テスト環境は表にまとめたとおり。基本的には前回のGeForce 6800 Ultraのテストと同様であり、GeForce 6800 UltraとRADEON 9800 XTの結果についてはそれを流用している。 【表】テスト環境
RADEON X800 XT Platinum Editionのドライバは、試用したキットに付属していたものを使用している。このドライバはバージョンが「6.14.10.6444」となっており(画面1)、現在ATIのホームページで提供されている最新のCATALYST 4.5と同一のようだ。 ドライバの詳細な設定もRADEON 9800 XTと大差はなく、FSAAは最大6点サンプル、異方性フィルタリングは最大16点サンプルという点も同一である(画面2)。ただし、RADEON 9800 XTで搭載されていたATI OVERDRIVE機能がなくなったため、その画面はドライバの設定画面から省略されている。
それでは実際にパフォーマンスをチェックしていきたい。まずはDirectX 9の描画性能ということで、おなじみの3DMark03の結果を見てみたい(グラフ1)。 1,024×768ドットでフィルタを何も適用しない場合のスコアは、RADEON X800 XTがGeForce 6800 Ultraを上回る見事な結果が出ている。ただ、4xAAをかけた場合はGeForce 6800 Ultraのスコアが大幅に上回り、そして8x異方性フィルタリングを適用すると、再度RADEON X800 XTが上回るという結果になっている。後に示す画質テストではRADEON X800 XTのFSAAの方が滑らかさでは上回っており、このあたりは、おそらくドライバの特性の違いによるものだと思われる。
続いてはAquaMark3の結果だ(グラフ2)。こちらの結果は3DMark03とは大きな違いを見せており、解像度が小さくフィルタリングも少ない低負荷状態ではGeForce 6800 Ultraが、負荷が大きくなるにつれてRADEON X800 XTの方が優秀になる傾向が表れている。 こうした傾向がここまでハッキリと表れたのはこのAquaMark3のテストだけなのだが、アプリケーションによっては、高負荷であるほどRADEON X800 XTが優位となるケースがあることを示唆している。 FSAAのみを適用した場合と、異方性フィルタリングを適用した場合のスコアの差は、3DMark03の結果同様に小さい。DirectX 9ベースのアプリケーションで利用する場合、異方性フィルタリング適用時のパフォーマンスの良さが一つの特徴といえそうだ。
続いてDirectX 8.1ベースのアプリケーションをチェックしていくことにする。まずは3DMark2001 Second Editionだ(グラフ3)。 このテストはRADEON X800 XTの完勝といった雰囲気である。シェーダの処理能力がスコアに直結するようなテストでは、3DMark2001や3DMark03のフィルタなしの結果が物語るように、低負荷時の性能が良いように見受けられる。
一方で、FINAL FANTASY Official Benchmark2の結果(グラフ4)や、Unreal Tournament 2004の結果(グラフ5~9)を見ると、こちらは全体的にGeForce 6800 Ultraが優秀な性能を発揮している。Unreal Tournament 2004に関しては、前回のRADEON 9800 XT同様、RADEON X800 XTでも1,600×1,200ドットのテストが選択できなかったため割愛している。 Unreal Tournament 2004では、FSAAのみを適用した場合よりも、異方性フィルタリングを適用したほうがスコアが良いという一見不思議な結果が見受けられる。これは、1,024×768ドットと1,280×960ドットのスコアでほとんど差が出ていないことからもわかるように、ベンチマークソフト側が頭打ちになってしまっているためで、両社の新製品とも、従来のビデオカードとは一線を画するパフォーマンスであることを物語っている。 ●描画品質チェック 最後に3D描画の画質について見ておこう。画質テストについてもパフォーマンスチェックと同じように各種フィルタリングを適用した場合の結果も掲載している。 まず、RADEON X800 XTと、前モデルであるRADEON 9800 XTの間の差だが、木の葉の表現などにわずかな差はあるものの、大きな違いは見受けられない。FSAA適用時のジャギーの消え方、異方性フィルタリングを適用した場合の岩や川面の表現などで高いクオリティを感じさせる。 GeForce 6800 Ultraの差については、前回テストでのRADEON 9800 XTとの比較同様、GeForce 6800 Ultraの方は、芝生の先端の細かいところまで描画する傾向にはあるが、FSAAの効果については、RADEON X800 XTの方が綺麗にジャギーが消えている。 ●パフォーマンス“プラスアルファ”の部分にも高い魅力 冒頭で述べた通り、評価用カードであるため、製品版でもこのとおりのスコアが出るとは限らないが、とりあえず今回のテストから見た印象では、異方性フィルタリング適用時のパフォーマンスの良さに一目置くことができる。 そのパフォーマンスがGeForce 6800 Ultra以上と呼べるかは、アプリケーション次第という感じだが、数週間前に衝撃を受けたGeForce 6800 Ultraの驚異的なパフォーマンスに対抗できる製品であることは確かだ。 また、画質の高さ、1スロットで装着可能なシンプルなカード、クーラーの静音性の高さといった、パフォーマンス以外の面で優れている部分が多く、トータルでのビデオカードとしての良さはRADEON X800 XT Platinum Editionに軍配が上がると言っていいだろう。 しかし、である。GeForce 6800 Ultraがピクセル/バーテックスシェーダ バージョン3.0に対応している点は見過ごせない。アプリケーションがシェーダ2.0にすら移行したとは言い切れない現状で、今後シェーダ3.0ベースのアプリケショーンが続々と登場という状況がすぐに到来するとは考えにくい。が、シェーダ3.0のアプリケーションが立ち上がり始めたときに備えるという意味ではRADEON X800 XTにない魅力を持っている。 ということで、パフォーマンスは甲乙つけがたく、現状のゲームを楽しむために、製品的魅力の高いビデオカードを求めるならRADEON X800 XT Platinum Edition。この先シェーダ3.0への移行も見据え、長く使用できるビデオカードを求めるならGeForce 6800 Ultra。という選択肢が、前回と今回のテストから見た結論だ。 □関連記事 (2004年5月17日) [Text by 多和田新也]
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