3.4GHz動作のPentium 4が発表された2月3日から1カ月半以上が経過し、ようやく実際の製品を触る機会を得た。このタイミングより一足速い3日前に、AMDからはAMD64の最高クロックを更新したAthlon 64 FX-53が発表されたばかり。3~4月という四半期および年度の節目を迎えて、両社ともに体制が整ったという状態だ。今回は、新たな頂上決戦となるPentium 4の3.4GHz動作3製品とAMD64勢を比較してみたい。 ●Prescott 3.40GHzはC0ステッピングでデビュー 2月3日の発表から1カ月半以上も経って、ようやく手にすることができた3.4GHz動作のPrescottとNorthwood。とくにPrescottにおいては、発表からわずか10日後の2月13日に新たなステッピングへ変更するというニュースも流れており、90nmプロセスの熟成に苦労している感がある。
そのような背景のなか登場した3.4GHz動作のPentium 4。CPUは3製品とも今までどおりのmPGA478パッケージである(写真1)。ただ、裏面には気になるポイントがある。 写真2は3.40GHzの3製品に3.20E GHzと3.20GHzを加えて撮影したものだが、Northwoodコアの3.40GHzの裏面が同一コアの3.20GHzと大きく異なっているのだ。コンデンサが一気に増え、どちらかというとExtreme Editionに近い印象になっている。 3.20GHzから3.40GHzへクロックアップするに当たり、TDPが82W→89W、ICC Maxが67.4A→71.6Aへとそれぞれ増加しており、トータルの消費電力が上がっていることが分かる。それを安定させるための対処だろう。 ちなみに、各CPUにおけるCrystalCPUIDの実行結果を画面1~5に示したが、Northwood、Prescottともに3.20E GHzと3.40E GHzのステッピングは同じである。NorthwoodコアはD1ステッピングで、PrescottコアはC0ステッピングだ。PrescottはD1ステッピングが発表されてはいるものの、C0ステッピングでも3.4GHz動作が可能であることを示している。 【表1】Pentium4 3.4GHz駆動製品の仕様
●Pentium 4 3.40GHz製品の違いをベンチマークでチェック それでは、パフォーマンスをチェックすべくベンチマークテストを実施することにしよう。テスト対象とテスト環境は表2に示したとおりで、前回のAthlon 64 FX-53のレポートに、3.40GHzの3製品とNorthwoodコアの3.20GHzを加えて結果を示している。 【表2】テスト環境
●CPU性能 まずはSandra2004を使ったCPU演算性能をチェックしてみよう。グラフ1に「CPU Arithmetic Benchmark」、グラフ2に「CPU Multi-Media Benchmark」の結果をそれぞれ示している。 ここではPrescottよりもNorthwoodのほうが演算性能が良いことを確認できる。以前のPrescottのテストでも同様の結果だったが、当然ながらクロックが上がったところで傾向は変わらない。 しかも、ほとんどのテストで、3.20GHz>3.40E GHzという結果になっているほどであり、整数演算に至っては1GHzもクロック差のあるAthlon 64 FX-53にすら劣るわけで、Prescottのクロックあたりの演算性能は相当低いように感じられる。
続いて、PCMark04の「CPU Test」の結果を紹介しておきたい(グラフ3、4:テスト対象が多くグラフが煩雑なったため2つに分けている)。PCMark04では演算性能以外のファクター(キャッシュ容量やHyper-Threadingの改良など)も結果に反映されてくるので、演算性能で劣るはずのPrescott製品が、XE 3.40GHzやNorthwood製品を上回る例も多い。 また、グラフ3はマルチスレッドでのテストとなるため、Athlon 64には不利な傾向になっているが、グラフ4で示した動画や音声のエンコード系のテストでは、3.40GHzの3製品とAthlon 64 FX-53が互角といった様相だ。ただし、Athlon 64 FX-53がとくに優秀な性能を発揮したのがAudio ConversionとDivX Video Compressionだが、前者はExtreme&Northwood、後者はPrescottがそれぞれ互角といった感じであり、Pentium 4の3製品はどれも決定力に欠ける印象は否めない。
●メモリ性能 続いてメモリ性能をチェックしてみたい。Sandra2004の「Cache & Memory Benchmark」を用い、グラフ5に全結果、グラフ6に一部結果を抽出したもの示している。 まずグラフ5のPentium 4製品の結果を見ると、大きく3つに分かれることが分かると思う。16KBと1~4MBの間で速度が変化するExtreme Edition、16KBと1MBで速度が変化するNorthwood、32KBと4MBで速度が変化するPrescottの各製品だ。 グラフ6でもう少し具体的に見てみると、3製品すべてがL1となる4KB、同じくすべてがL2となる256KBでは、明らかにPrescottが遅い。これは以前のレポートでもお伝えしたとおりである。 今回始めて検証する、Prescott対Extreme Editionの違いだが傾向は変わらない。ただし、Extreme EditionはL2が512KBのため、1MBのテストではPresocttが優位に立つ、ただしNorthwoodと違って2MBのL3キャッシュがあるのでExterme Editionもふんばっている、という構図になっている。 なお、実メモリのアクセスに関しては、チップセット、使用メモリと設定が同じであるため、Pentium 4の5製品間で大きな差はない。
●アプリケーション性能 ここで、アプリケーションを使ったベンチマークへと駒を進めたい。まずは「SYSmark2002」(グラフ7)、「SYSmark2004」(グラフ8~10:PCMark04と同様の理由でグラフを分けている)、「Winstone2004」(グラフ11)である。
さすがにこうした実アプリケーションレベルとなると、XE 3.40GHzの強さが光る結果になってはいる。ただ、SYSmark2004のInternet Content Creation Ratingほか一部テストで3.40E GHzと大差ない、もしくは逆転されているのは気になる結果だ。先のPCMark04のDivXもそうだったが、作業内容によってはPrescottコア製品のほうが優位になる場合もあるわけで、Extremeの名をもつCPUとしてはちょっと寂しい気もする。 Athlon 64勢との比較となると、これまた得手不得手があって比較が難しいのだが、SYSmark2004-Office Productivity-CommunicationテストでAthlon 64 FX-53が、Winstone2004の2つのテストではAMD64の2製品ともにXE 3.40GHzを上回っている状況。ただトータルで眺めてみると、Athlon 64 FX-53については3.4GHz動作の3製品と互角かやや劣る程度、Athlon 64 3400+は3.2GHz動作の2製品と互角程度といったあたりが妥当な評価に思える。 さて、次に動画エンコードのテストとして、「TMPGEnc」の結果を見てみよう。グラフ12がVer.2.512、グラフ13がβ版3.0.0.7である。ここも大方XE 3.40GHzがトップの成績となっているのだが、Ver.2.512のMPEG-2エンコードのみ、3.40E GHzに劣ってしまっているほか、β3.0.0.7のMPEG-2についても同等に近い成績である。 XE 3.40GHzが3.40E GHzに勝る部分といえば、L1/L2キャッシュの帯域幅と演算性能であり、逆に512~1,024KBの帯域幅と改良型Hyper-Threadingが活きる状況であればPrescottが有利である。いってみれば、一長一短というのがこの2製品の現状であり、アプリケーションの動作がマッチすれば、Extreme Edition<Prescottというパフォーマンスもあり得ることを、これらのアプリケーションベンチマークでは示している。
●3D性能 それでは最後に、3D性能をテストしておくことにする。テストは、「Unreal Tournament 2003」(グラフ14)、「3DMark03」(グラフ15)、「AquaMark3」(グラフ16)、「3DMark2001 Second Edition」(グラフ17)、「FINAL FANTASY Official Benchmark 2」(グラフ18)の5種類である。 3D性能は前回のAthlon 64 FX-53のレポートでもAMD64勢の強さが光ったが、今回も同様に3DMark03を除いてはAMD64勢が飛びぬけている印象だ。Athlon 64 FX-53が頭1つ抜け出し、次点にXE 3.40GHzとAthlon 64 3400+がいい勝負で並ぶといった構図である。 先のアプリケーション性能では、3.40GHz動作の3製品と互角かやや劣る程度と評したAthlon 64 FX-53だが、ハイエンドユーザーやゲーマーに向けたワンランク上の位置付けの製品としてみれば、かなり高いレベルのCPUだといえよう。
●決定力に欠ける3製品、最後に選ぶならPrescottが好適 以上のとおり、Pentium 4の3.40GHz動作製品をチェックしてきた。率直に言えば、最強のSocket478向けCPUは決めかねる、という印象だ。気になるのはXE 3.40GHzの中途半端さである。パフォーマンスが出ているテストでは、比較対象CPUがまったく追いつけないほど驚異的な性能を発揮しているものの、逆に3.40E GHzに負ける場面も見られるからだ。 製品カテゴリからすれば、アプリケーションベンチでXE 3.40GHzが3.40E GHzに負けることがあってはならないと思うのだが、現実はそうした場面が見られてしまっている。価格が倍以上(1,000個ロット時、XE 3.40GHzが108,420円、3.40E GHzが45,250円)も違う製品ということもあって、このテスト結果ではXE 3.40GHzはお勧めしにくい。 逆に、3.40E GHzのコストパフォーマンスはなかなか良いのではないかと思う。単純な発想ではあるが理由は上述の逆であり、半分以下の価格でXE 3.40GHzを抜く場面も見られるからだ。もちろん、Northwoodコアの3.40GHzという選択肢もなくはないが、アプリケーションベンチで優秀な成績を出す傾向がある3.40E GHzのほうが、実使用での性能向上が期待できるのではないかと思う。 だが、この3.40E GHzにしても、Socket478にとっては本当に最後のアップグレードパスであると発想すると決定力不足を感じ、「好適」という表現が妥当ではないかと思っている。価格相応の満足感は得られるだろう。 ただし、製品間の性能が一長一短という状況では、Prescott登場時のレポートでも述べたとおりマザーボードから何からすべて買い直して導入するほどのインパクトは、3.40GHz動作の3製品とも持っていないように思える。もしPentium 4環境にこだわって新規導入を検討するなら、次のLGA775を待って将来性を買うべきだと思う。 最後にまとめると、「Socket478のアップグレードパスにはコストパフォーマンスに優れる3.40E GHzが好適」、「新規に導入を考えるなら将来性・性能ともにバランスが良いAthlon 64 FX-53がお勧め」、「この2つに該当しないならLGA775またはNewCastleを待つのが吉」というのが今回のテスト結果に見る結論である。 □関連記事 (2004年3月22日) [Text by 多和田新也]
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