マイクロソフトから昨年の10月に発表されたWindows XP Media Center Edition 2004(MCE)だが、華々しい発表会が行なわれて複数のPCベンダからマシンが登場した割には、正直言って大成功を納めたとは言い難い状況だ。 例えば、発表と同時に大手PCメーカーは対応マシンをリリースしたが、他のラインナップは冬モデルとしてリフレッシュされたのに対して、MCE搭載製品はその後新製品が投入されていないケースがほとんどだ。 このように、日本の市場ではそれほど注目されているとも言い難いWindows XP Media Center Edition 2004だが、1月のInternational CESではHDDレコーダの対抗製品として、米国で大変な注目を集めていたというのも事実だ。 米国では日本よりもPCの普及が早かったが、デジタル家電の普及は日本より遅れているという違いはあるものの、この温度差には正直びっくりさせられた。そこで、筆者ももう一度Windows XP Media Center Edition 2004をPCユーザーの視点で見直してみることにした。 ●ことごとく失敗してきたリビングPCへの取り組み
“PCをリビングに置こう”という話題は、実に古くから取り上げられてきた。本誌でも、元麻布春男氏が以前連載で取り上げていたのを覚えておられる読者も少なくないのではないだろうか。 筆者もリビングにPCを置こうとして何度も挫折してきた。その理由はいくつかあるが、最大の理由は、リビングにあるディスプレイ、すなわちアナログのテレビは、PCを接続するのに解像度が十分でないことがあげられる。 いわゆるハイビジョンと呼ばれるHDTV(High Definition TV)に対して、SDTV(Standard Definition TV)と呼ばれるアナログテレビは、PCの解像度で言えばVGA程度にすぎず、インターレース表示(半分の走査線しか表示しない表示方式)となっており、XGAやSXGAなど高解像度表示が当たり前のPCを接続するには十分な解像度をとは言えない。 SDTVにPCを接続するには、XGA程度の解像度をダウンスキャンコンバートして表示する必要があり、文字がつぶれて見えなくなったりしてしまう。 結局リビングにPCを置いても、別途PC用のディスプレイを用意するようなスペースを確保できず、挫折してきた。リビングの中心にあるTVに接続できるようになるまではPCがリビングに入るのは難しいと言えるだろう。 だが、そうした状況は大きく変わりつつある。それが、薄型の大画面TVの急速な普及という新しいトレンドだ。 ●2004年“こそ”、リビングにPCを置く条件が整う年になる?
昨年の年末商戦の量販店の合い言葉は“新三種の神器”だったらしい。念のため解説しておくと、「DVDレコーダ」、「薄型TV」、「デジタルカメラ」という、デジタル家電3製品のことを意味しており、昨年末の年末商戦では飛ぶような売れ行きを見せたらしい。今年の夏にはアテネでオリンピックも予定されており、それに向けて大画面の薄型TVは今後も売れ続けると見られている。 薄型TVは、液晶TVやプラズマTVなどで、いわゆるハイビジョンテレビと総称されるHDTVとなっている。つまり、高解像度が表示可能なものだ。すべての製品にではないが、液晶TVの一部機種にはアナログRGB入力が用意されており、ここにPCを接続してPCの画面を表示することができる。XGA、WXGAなどの高解像度表示が可能だ。 デジタル接続が可能なDVI端子がついた液晶テレビはまだまだ数は多くないが、先日シャープが発売したAQUOSの最新機種(Gシリーズ)ではDVI-I端子が用意されており、PCのグラフィックスカードのDVI端子から接続できるようになっている。 こうした動向はなにも家電メーカーだけではない。PCメーカー側もこれらに呼応するように、大画面液晶テレビと組み合わせた製品をリリースしている。 例えば、NECのVALUESTAR TのVT900/8Dに添付されている23型液晶は、TVチューナも内蔵しており液晶テレビそのものだ。23型と大型であるのに、WXGA(1,280×768ドット)というPCの大画面液晶ディスプレイとしてはやや低めの解像度にとどまっているのは、この液晶パネルが元々テレビ用として設計されたものを利用しているからであるという。 このほか、富士通もキムタクの宣伝でおなじみのFMV-DESKPOWER TシリーズのT90Gというモデルで、22型液晶テレビを採用している。また、日本では発売されていないが、デルも米国で23型の液晶テレビをPC用の周辺機器として販売している。 RGB入力やDVI入力などを備えたHDTVが普及することで、リビングへPCを持ち込む障害が1つ減ることになる。もうテレビにPCをつなぐことは一部のマニアだけが行なう“特殊なこと”では無くなってきているのだ。
●リビングにおけるPCの使い勝手を改善する「10フィートGUI」とリモコン
しかし、読者が書斎などで使っているPCをそのままリビングに持って行ったとしたら、家族からブーイングを受けることは必至だろう。 そこに問題は2つある。1つは単純で、家電とは異なり、PCはたくさんのファンがついており、静音の点で家電に比べるとやや不利だ。最近ではPCでもNECの水冷PCのように、下手な家電より静かな製品もあるので、一概には言えないが。どちらにせよ、仮にPCをリビングに持って行く場合には、“静音”という点にはこだわりたい。 もう1つは使い勝手の問題だ。いくらTVが高解像度になり、PCのディスプレイとして利用できたとしても、誰でもPCを使いこなせるかどうかは別問題だ。 まだまだ、家族の中にPCを使いこなせない人がいる家庭の方が多いのではないだろうか。そうした人に、“キーボードやマウスを使え”とか、“TVの録画にはこのソフトを起動して……”という要求をするのは無理というものだろう。せめて、とりあえずビデオデッキ、今だったらHDDレコーダと同じような感覚で利用できなければ厳しいと言える。 ビデオデッキが使えない人はどうするんだ、という議論はあると思うが、今回はあくまでHDDレコーダぐらいは使える人という前提で考えたい。 では、HDDレコーダとPCの違いはなんだろう、と考えてみると、主に次の2点に集約されるのではないだろうか。 (1)10フィートGUI
10フィートGUIとは、テレビから10フィート(約3m)離れた距離でも見やすいグラフィックユーザーインターフェイスのこと。大きめのフォントとリモコンで、操作しやすいような操作体系が特徴となっている。 Windows XPのGUIはマウスとキーボード、さらには高解像度で3フィート程度(約90cm)で操作することを前提に、小さなフォントから構成されていいるのに比べると、その違いは明らかだろう。単体製品としてはInterVideoがHome Theater、CyberLinkがPowerChinemaをリリースしており、現在のWindowsにアドオンして利用可能だ。 もう1つがリモコンだ。すでに述べたように、10フィートGUIはすべての操作がリモコンで行なえるようになっている。リモコンと組み合わせて利用することで、リビングのソファーなどに座りながら、あるいは寝っ転がりながら操作できるのだ。 これら2つを追加することで、Windowsマシンも、ある程度はHDDレコーダに近づけることが可能になる。 ●Windows XP Pro+10フィートGUI+リモコン=Media Center Edition
そうした2つの要素をWindowsに“標準機能”として追加するのがMedia Center Edition(MCE)だ。 Windows XP Media Center Edition 2004は、Windows XP Professionalをベースにしてコードネーム“Freestyle”で知られる10フィートGUIをかぶせ、WindowsをHDDレコーダやオーディオプレーヤーのようにリビングで利用することを意識して設計されたものだ。 MCEのシェルは5つの基本機能を有している。 (1)ライブTVをタイムシフト再生/録画(iEPG機能) これらの5つの機能が基本的にはMCEのシェルだけで完結している。このため、後述するMCEのリモコンだけでこれらの操作を行なえる。 機能自体は、PCとして当たり前の機能で特に目新しいものではないが、大きな違いは従来のPCでは機能ごとに独立したソフトウェアで構成され、ユーザーインターフェイスなども異なっていたのに対して、MCEではそれらが1つに統合されているところにある。これにより、ユーザーは家電製品を操作しているような感覚でPCを利用できるのだ。 マイクロソフトは、MCEをリリースするにあたり、Windows用標準リモコンの仕様を決定し、米国のMSDNのライブラリでその仕様を公開している。 これによれば、マイクロソフトが規定したWindowsリモコンはServicePack1適用後のWindows XPないしはWindows XP Media Center Edition 2004と組み合わせて利用できるという。また、Windows Media PlayerなどのWindowsのキーコードを介するメディアアプリケーションなどで利用できる。 いわゆるMCE対応リモコンというのは、このWindows仕様のリモコンを意味している。今後はメディアアプリケーションがこの仕様のリモコンをサポートしていくことになると思われる。今後Windowsで長期間利用されることを考えると、この仕様のリモコンを入手しておきたいところだ。
●利用できるTVチューナボードを選ぶMedia Center Edition
マイクロソフトは現在、MCEをOS単体で外販していない(OEMメーカー向けのみに提供)。 今回は評価目的で、MSDNオペレーティングシステムサブスクリプションと呼ばれる開発者向けパッケージで提供されている、Windows XP Media Center Edition 2004を利用した。念のためお断りしておくが、MSDNは開発者などが評価目的に利用するパッケージであり、エンドユーザーが常用する目的で購入するものではない。 なお、リモコンはeBayのオークションで販売されていた、マイクロソフトのリファレンスデザインのリモコンを49ドル+送料(15ドル)で購入した。なお、筆者が試した限りではサイバーリンクのPowerDVD 5 Deluxe リモコン版に付属してきたリモコンも、最初のリモコンの認識を除き利用できた。つまり、PowerDVD5のリモコンはWindows標準のリモコン仕様に準拠しているのだろう。 MCEは実にユニークなアーキテクチャを採用しており、ライブTVの表示にはMPEG-2ハードウェアエンコード機能を有するTVチューナカードを必要とする。しかも、ただMPEG-2ハードウェアエンコーダボードであればいいのではなく、WDM Streaming Capture Deviceとして動作するWDMドライバを持っている必要がある。 NECのSmartVisionなどはWDM Streaming Capture Deviceとして動作しないので、MCEで利用できない。余談になるが、NECのMCE搭載PCであるVALUESTAR Uは、同社のTVチューナカードではなく、ピクセラ製のTVチューナカードを搭載しているが、その理由はおそらく同社のTVチューナカードがWDM Streaming Capture Deviceではないためだろう。ちなみに、カノープスのMTVシリーズはFEATHERから対応になった。 筆者が調べたところ、日本で販売されているMPEG-2ハードウェアエンコード機能を持つTVチューナカードで、WDM Streaming Capture Deviceに対応したドライバを持つものはあまり多くない。 筆者の手持ちでは、エルザのEX-VISION 1000TVとバッファローのPC-MV5DX/PCIぐらいで、カノープスのMTVシリーズもNECのSmartVisionも利用できなかった(念のためお断りしておくが、両社ともMCEでの利用はサポートしていない)。 もし、MCEを単体で発売するとすれば、この問題は小さくないだろう。TVチューナカードのベンダにWDM Streaming Capture Deviceとなるためのドライバを開発してもらう必要があり、ちょっとした混乱になるのではないだろうか。このあたりもMCEを単体販売することが難しい理由の1つかもしれない。 なお、MCEではTVチューナカードからの映像をMPEG-2にエンコードし、OSが管理する。このとき、ライブでTVを表示する場合にはMPEG-2をデコードしてディスプレイに出力する必要がある。Windowsは標準ではMPEG-2デコード機能を持っていないので、別途DVDデコーダを用意する必要がある。WinDVDやPowerDVDなどをインストールしただけはだめで、レジストリにMCEと互換性があることを追加するレジストリキーが必要になる。 NVIDIAがNVDVDという同社のDVDプレーヤーソフトでMCEサポートを公式に明らかにしているほか、筆者が試した限りではPowerDVD 5 Deluxe リモコン版もMCE互換のレジストリキーがCD上に用意されていて利用できた(繰り返しになるがメーカーが公式に対応を明らかにしているわけではない)。 ●複数チューナがサポートされないのは日本向けとしては要改善
さて、Media Center Editionを使い始めてから1カ月ぐらいだが、とりあえずのところTVの横においてマルチメディアビューアとして試用している。テレビは内蔵のTVチューナを利用してタイムシフトで見て、気になる番組はiEPGの機能を利用して録画している。 ただ気になっていることはMCEではTVチューナを1つしかサポートしないため、別の番組を見ながら裏番組を録画という使い方ができない。また、外部のチューナも、内蔵のTVチューナも1つという数え方をしているので、内蔵のTVチューナとビデオ入力端子の共存ができないという問題もある。 たとえば、地上波とスカパー! を同時に見ているというユーザーの場合、Sビデオ端子にスカパー! チューナを接続し、地上波は内蔵チューナで受信し、それらを適宜切り替えるという使い方はできない。 MCEの設定時に、内蔵チューナないしは外部入力端子を選択させられるが、基本的にはその選択したチューナしか利用できないのだ。 米国では、多くの家庭がチューナは1つしかないことが多いという。というのも衛星放送を見ているユーザーでも地上波放送は必ずリダイレクトされるそうなので、こういう仕様でも特に問題ない。だが、日本では内蔵チューナと外部入力端子の両方を使い分けるというのは全然珍しいことではない。本気で日本向けに売りたいと思うのであれば、この点は改善して欲しいと思う。 なお、2月にサンフランシスコで行なわれたIntel Developer Forumでは、次期バージョンのMCEでは複数チューナサポートを行なうことを検討していることが明らかにされており、改善される可能性は高いことを付け加えておく。
●細かい設定はMCEからは行なえずWindowsに降りる必要がある
使ってみて便利だなと思ったことの1つとしては、ネットワーク越しにメディアファイルを再生できる点だ。例えば、MCEでは標準でMy DocumentsのMy Videoフォルダに格納されている動画ファイルを再生できる。 再生できるのはWindows Media Playerで再生可能な、*.mpg、*.mp2、*.avi、*.wmvなどのファイルで、DivXファイルもコーデックをインストールしておけば再生できる。なお、日本のTVチューナカードの多くが作成する*.m2pに関してはMCEでは再生することができない。 ローカルのファイルだけでなく、ネットワークフォルダにあるファイルも再生可能だ。ネットワークドライブへのショートカットをMy DocumentsのMy Videoフォルダに作っておくことで、ネットワーク経由でメディアファイルを再生できる。 これは、音楽に関しても同様で、Windows Media Playerでネットワークフォルダを監視対象にしておけば、ホームネットワークにある*.mp3や*.wma、*.wavなどの音楽ファイルを再生できる。 ただ、これらの操作に代表されるように、ネットワークフォルダへのリンクや音楽ファイルのプレイリストへの登録は、MCEからは行なえない。ネットワークフォルダへのリンクやWindows Media Playerでのファイルリストへの読み込みなどは、MCEを一度終了し、WindowsのGUIに降りて作業する必要がある。 WindowsのGUIに降りた時には、どうしてもマウスとキーボードは必要だ。このため、何か複雑な作業を行なおうと思ったときに備えて、やはりキーボードとマウスは用意しておく必要がある。
●PCユーザーにとってはHDDレコーダの替わりにMCEというのは十分にある選択肢
このように、MCEをビデオデッキやHDDレコーダの替わりとしてPCユーザーでない人に使わせるというのは難しいだろう。少なくとも電源周りの設定を行なうのに“コントロールパネルを開いて……”としなければいけないうちは、PCユーザーでない人にHDDレコーダの替わりとして利用させることは不可能といえる。 筆者宅は幸いにして、家族がみなPCを使えるため問題になっていないが、PCを使えないユーザーが1人でもいる家庭では、MCEをHDDレコーダの替わりに、なんて夢物語にすぎない。この点は、ぜひとも将来のバージョンでなんとかして欲しいと思う。 そうした問題はあるにせよ、PCでありながらiEPGによる予約も、TVのタイムシフトも、ビデオ再生も、オーディオ再生も、DVD再生も、写真の再生も、すべて1つのリモコンでできてしまうというのは慣れると非常に快適だ。正直に言って欲しいかと言われれば、(あくまで)PCユーザーである筆者は欲しいと言いたい。 理由は3つある。1つには、ネットワーク経由で他のPCなどに保存されている動画ファイルを再生できるというHDDレコーダは今のところないことだ。単にiEPGを搭載し録画したテレビ番組を見られるというHDDレコーダの機能だけでなく、MCEではネットワーク上にある動画ファイルを再生できる。筆者宅では、リビングにソニーのバイオが、筆者の仕事部屋に自作PCがあり、そちらでもTVを録画しており、それらの動画ファイルをネットワーク越しに見れると非常に便利だ。 もう1つは、テレビ/ビデオだけでなく、+αの機能があることだ。MCEではDVDの再生、PCに保存している写真の再生、音楽ファイルの再生なども行える。現時点ではこれらすべてが行えるようなHDDレコーダはあまり多くない。 そして最後に、MCEはPCであるから、PCとして利用できる。例えば、HDDレコーダなどと違いユーザーが自分で機能をアップグレードできる。HDDの容量が足りなければHDDを交換したり、追加することができるし、ソフトウェアを追加することで機能を増やすこともできる。 ●普及の壁となるのは価格、日本市場ではフォーカスをチャネルへと切り替えるべき
実際に使ってみると、意外と便利だというのが正直な筆者の感想だ。しかし、冒頭でも述べたように、市場においてMCEを搭載したPCは売れているとは言えない。一体何が悪かったのだろうか? 筆者は最も大きな要因は価格だと思う。昨年の10月に発売されたMCE搭載PCは、大手PCメーカー製品の多くが30万円前後のハイエンドモデルとなっていた。NECのVALUESTAR Uは発表時点での店頭予想価格が33万円前後、富士通のFMV-DESKPOWER Cシリーズ(FMVC90EWC)で発表時の直販サイトでの直販価格が299,800円となっており、いずれも30万円前後の価格となっている。 HDDレコーダがハイエンドモデルでも10万円台の前半であることを考えると、PCとして利用できるとしても、決してコストパフォーマンスが高い値段とは言えない。 また、そもそもMCEはリビングに置いてTVに接続して利用するはずの製品であるのに、ほとんどのメーカーの製品が標準で液晶ディスプレイがバンドルされていた。やはりリビングにあるTVのほかに、もう1台のディスプレイを置く、というのは普通の家庭では難しいのではないだろうか。最初から液晶テレビやプラズマテレビのような大画面テレビの横において使ってもらうことを前提にするとか、製品のコンセプトにも問題があると思われる。 もう1つ言えることは、PCメーカー側の取り組みを見ている限り、各メーカーがMCEを次世代のソリューションと位置づけているように見えないことだ。 「うちはマイクロソフトにお願いされたのでMCEを搭載したPCをラインナップに加えた」と話すPCメーカーの関係者は少なくないことを考えると、各メーカーがMCEに対して本気かと言えば疑問符を付けざるを得ない。 各メーカーとも統合された10フィートGUIは別として、TV機能、ビデオ機能、音楽機能などは、各社独自のアプリケーションですでに実現している。メーカーはそれぞれにカスタマイズしており、今更マイクロソフトの標準化を受け入れられるのかと言えば、やはりそれは難しいと思う。NECがMCEを搭載したPCで自社のチューナカードを使えなかったのはその端的な例と言える。 こうして考えていくと、これから日本のPCメーカーにMCEを受け入れてもらおうと思っても正直難しいのではないだろうか? だから、マイクロソフトのマーケティング担当者もぜひ頭を切り換えて見て欲しい。日本ではもうメーカー製PCへの普及はスッパリとあきらめ、まずはチャネルマーケット、具体的には自作PCやホワイトボックスPCなどにフォーカスを切り替えてはどうだろうか。 IntelはEntertainment PCというビデオデッキライクなPCの構想を推し進めていて、まもなくベアボーンキットという形でAV機能オリエンテッドなPCケースなどが登場することになる。そこに、Windows XP Media Center Edition 2004をOSとして採用してもらう、あるいは単体のOSとして販売し、ユーザーを徐々に増やしていくのだ。 エンドユーザーにしても、安価に自分だけのEntertainment PCを作り、PCユーザーでなくとも(ある程度は)操作できるMCEを利用できれば、リビングにPCを設置することも可能だろう。そこである程度受け入れられれ、日本市場に合うように洗練されれば、PCメーカー側も受け入れやすくなると思う。 MCEの方向性自体は間違っていないと思うし、PCユーザーの筆者にとってはPCが家電の機能を持ってくれるのは大歓迎だ。この連載でも何度も繰り返しているが、ホームネットワークが構築され、その上ですべてのデバイスが繋がっているという状況では、家電かPCかという議論は無意味で、ユーザーは家電でも、PCでも自分の好みに応じて使えばよい。 ただ、今以上に家電もPCの要素を取り入れていかなければいけないし、その逆もしかりだ。PCがより家電に近づくという意味で、今のMCEには不十分なところもあることは事実だが、それでも第一歩としては悪くないと思う。現在開発中と言われる次世代MCEであるコードネーム“Symphony”(シンフォニー)では、筆者があげたような不満点が改善されることを期待したいところだ。 □関連記事
(2004年3月18日) [Reported by 笠原一輝]
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