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IDFを舞台にNVIDIAとATIがPCI Expressで激突




●対照的なNVIDIAとATIのPCI Expressソリューション

 PCI Expressへの移行で、NVIDIAとATI Technologiesの選んだ戦略は、全く逆のものだった。GPUのPCI Express化を一気に行なうATIに対して、NVIDIAはまずブリッジチップソリューションで導入する。

 NVIDIAはIntel Developer Forum(IDF)で第1世代のPCI Expressソリューションについて説明。既に伝えられている通り、ブリッジチップを使った4製品を投入することを明らかにした。AGP-PCI Express変換のブリッジチップを、既存のAGP系GPUと組み合わせることで、第1世代のPCI Express対応製品にする。PCI Expressインターフェイスを、全ラインナップのGPUに直接組み込んでしまうATIとは完全に異なるソリューションだ。

 ATIもIDFでプレゼンテーションを行ない、トップツーボトムでネイティブPCI Expressソリューションを提供することを強調。ネイティブPCI Expressのソリューションだけが、HDビデオコンテンツの編集を可能にすると強調した。ATIは、NVIDIAとは逆にAGPソリューションの場合にPCI Express-AGP変換のブリッジチップを使う。

 両社のPCI Express GPUの最初の世代は次のようになる。

 ATINVIDIA
EnthusiastR423GeForce PCX 5950
PerformanceRV380GeForce PCX 5750
MainstreamRV370GeForce PCX 5300
Value--?GeForce PCX 4300

 見ての通り、ATIの方は新GPUに代替わりするのに対して、NVIDIAは今発表されているラインナップのままだと既存のGPUコアのままになる。ATI GPUは多少コードネームが変わっている可能性はあるが、上から下までPCI ExpressネイティブのGPUで行く路線で、3チップが存在することは確かだ。また、ATIの、Enthusiast向けのR423は新アーキテクチャとなる。

 それに対してNVIDIAの各GPUは、名前からわかる通り、それぞれGeForce FX 5950(NV38)、GeForce FX 5700(NV36)、GeForce FX 5200(NV34)、GeForce4 MX 460(NV19)にブリッジチップをつけたものだ。NVIDIAがブリッジチップを使うのは、昨年10月のレポート「NV40は8ピクセル出力/16バーチャルパイプで来年頭に登場」で伝えた通りだが、現在の製品プランはその時とは大きな違いがある。NVIDIAは次世代GPUとして「NV4x」ファミリを開発していることを以前のインタビューで明らかにしている。だが、IDFでNVIDIAが説明した“最初の波”には、新GPUは入っていない。

 そのため、ATIが新GPU R42xを提供する時までにNVIDIAが新GPUを登場させることができるかどうかはまだわからない。

●NVIDIAのブリッジチップはAGP 16x相当

 NVIDIAはブリッジチップを「HSI(High-Speed Interconnect)」チップと呼ぶ。最大の特徴は、GPUとHSIチップ間をAGP 16x相当で接続することにある。AGP 16xの帯域は両方向で4GB/sec。それに対してPCI Express x16の帯域は片方向4GB/secで、双方向でピーク8GB/secとなる。データの流れがチップセット→GPUへの一方向だけなら、PCI Express x16とAGP x16の帯域は4GB/secで一致することになる。通常のグラフィックス処理の場合、データの流れはホスト→GPUへの一方向なので、NVIDIAはこのソリューションならフルの帯域を確保できるとしている。

 NVIDIAのアーキテクチャの場合、HSIチップを挟む分だけデータ転送にレイテンシは発生する。しかし「グラフィックスではアーキテクチャ的にレイテンシは許容できる」とNVIDIAのTony Tamasi氏(Vice President, Technical Marketing)は説明する。通常のグラフィックスオペレーションではホスト→GPU間のレイテンシの許容度は高いため、HSIの分を吸収できると思われる。

 NVIDIAのソリューションではGPU-HSI間のAGPインターフェイスを高速駆動しなければならない。しかし、HSIでのAGP 16x接続はコネクタを介さずインターコネクト距離も極めて短い。そのため、広帯域化が可能だとしている。モバイルではMCMを使うことでワンパッケージに納めるソリューションが登場する可能性もある。その場合は高速化はさらに容易となる。

NVIDIAのHSIの仕組み
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NVIDIAのHSIの帯域問題
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●ブリッジチップに疑問を示すATI

 こうしたNVIDIAの主張に対して、ATI側は問題点を指摘する。あるATI関係者は「AGPの部分の帯域がネックとなりPCI Expressの利点である双方向性を活かすことができない。ブリッジチップでは、PCI Expressのパワーマネージメントも使えないはず」と言う。アイソクロナス(Isochronous)転送にも対応できないという指摘もある。

 実際、グラフィックス業界関係者の多くは、PCI Expressの利点は双方向に帯域を確保できる点にあると言う。NVIDIAのソリューションの場合、ホスト→GPUはピーク4GB/secでPCI Express x16とAGP 16xで一致するが、GPU→ホストへのデータ転送を同時に行なおうとすると帯域は減ってしまう。

 ATIは、特にHDビデオの編集のようにGPUとホスト間で双方向に太い帯域が必要となるケースでは問題が発生すると指摘する。また、ブリッジによるレイテンシの増大も、リアルタイム性が重要なHDビデオ編集などでは問題になるとIDFでは説明が行なわれた。

 消費電力では、PCI Expressの省電力制御が直接コントロールできない他、GPU側とHSIのAGP回路とAGPバスの電力消費が余計となる。そのため、相対的にグラフィックスカードの消費電力が増えてしまう。

 しかし、NVIDIAの戦略にも意味はある。それは、製品提供のスピードだ。ブリッジチップさえ完成すれば、PCI Expressボードを市場に投入できる。また、PCI Express化への勢いは、ここへ来て明らかに落ちているため、AGPソリューションを優先するNVIDIAの方が賢明な選択なのかもしれない。

 とはいえ、PCI Expressネイティブソリューションを持ってくるATIの方が、PCI Expressの先進性を強くアピールできるのも確かだ。技術的な点だけでなく、マーケティング的にもNVIDIAの方が不利だ。

●PCI Expressに注力するATI

 では、ATIはPCI Express世代に、どんな戦略で向かうのか。

 ATIは過去1年半、デスクトップGPU分野で快進撃を続けてきた。その余勢を駆ってPCI Express/Shader 3.0世代でもパフォーマンスリーダーシップを狙う。

 ATIは次世代フラッグシップとして「R420」を開発中で、今冬中に発表する予定であることを、昨年10月のアナリストミーティングで明らかにしている。ATIでデスクトップ製品を統括するRick Bergman氏(リック・バーグマン、Senior Vice President & General Manager, Desktop Business Unit)も、昨年のインタビュで「6~7ヶ月毎に新しい製品を出すという我々の基本戦略は変わっていない。これまでの製品発表を見ると、RADEON 9700が2002年9月、9800が2003年3月、9800XTが2003年10月だった。今回も、この周期を大きく外れることはないだろう」と答えている。

 ATI関係者は、現在もこの路線は大きくは変わっていないとIDFで語った。R420はAGP版GPUで、対応するPCI Express版GPUは「R423」となる。ATIのラインナップでは、R423が新アーキテクチャで、その下のクラスのRV380/RV370は現行アーキテクチャのPCI Expressチップとなるという。

 ATIは、IntelがPCI Expressチップセットを出す時には、同社のPCI Express GPUもアベイラブルになっていると説明する。IntelのPCI Express世代の915/925チップセットファミリは、5月にOEM出荷、6月に発表のスケジュールで動いていると言われる。つまり、ATIも遅くとも5月までにはOEMへの量産版を出荷する計画でいることになる。

 また、ATIの場合は、PCI Express GPUでAGP 8xカードをサポートするためにブリッジチップを使う。

 「2004年中はレガシー(AGP)システムのサポートも必要になる。そこでは、ブリッジチップを使う方法(PCI ExpressチップをAGPに変換する)は理にかなっている。なぜなら、ブリッジチップでもAGP 8xの帯域はフルに使えるからだ」(Bergman氏)

 つまり、ATIは2004年春を境に、デスクトップGPUを一斉にPCI Expressに移行。そのPCI Express GPUに、ブリッジチップを組み合わせることでAGPカードも実現する戦略でいるわけだ。

 対極的なPCI ExpressソリューションのATIとNVIDIA。NVIDIAも、第2波ではネイティブPCI Express GPUを投入することを示唆する。ATIとNVIDIAのどちらのアプローチが市場に受け入れられるのか、結論は今春に出る。

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【2003年4月8日】【海外】ATIの次世代GPUは「Programable Shader 3.0+PCI Express x16」
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【2003年2月21日】【海外】IntelがAGP 8X後継のグラフィックスバス「PCI Express x16」を説明
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0221/kaigai01.htm

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(2004年2月23日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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