会場:McEnery Convention Center, San Jose, 米 会期:9月16~18日(現地時間)
Intelが開発者向けに開催しているIntel Developer Forum(IDF)は、現地時間の16日に開幕し、初日には基調講演やテクニカルトラックなどが開催された。また、夕方にはIDFに参加している各企業が展示を行なう“Demo Showcase”が開催され、各社が注目の新製品を展示している。本レポートでは注目製品に関するレポートをお届けする。 ●ATI TechnologiesはPCI Express X16対応の次世代ビデオカードをデモ
GPUベンダのATI Technologiesは、自社ブースにおいて「PCI Express X16」に対応したビデオカードのデモを行なった。PCI Express X16は、次世代のPCIバスであるPCI Expressのグラフィックス用として使われるバスアーキテクチャで、現行のAGP 8Xの倍の帯域幅である4GB/secを実現する。 Intelも2004年の第2四半期にリリースする予定の次世代チップセット「Grantsdale」において、このPCI Express X16をサポートすることをすでに明らかにしており、ATIのみならず各GPUベンダでは、PCI Express X16に対応したGPUの開発に取りかかっている。 今回ATIが展示したのは実際に製品化されるものではなく、Intelや他のチップセットベンダなどがバリデーションに利用するためのリファレンスボードで、具体的な製品名などは特にないようだ。 ATIのブースでは、「Tumwater」と呼ばれるIntel E7505の後継となるワークステーション用チップセットを搭載したサンプルマザーボード上でデモを行なっており、実際に3Dアプリケーションが動作する様子などが公開された。 なお、ATI以外にも、PCI Expressに対応した拡張カードは多数展示されており、来年の前半に迫ったPCI Expressの立ち上げに向け、業界が一丸となって進んでいる様子がアピールされていた。
●次世代Xeon向けチップセットTumwaterとLindenhurstが公開 Intelブースには、同社ワークステーション/サーバー向け製品であるXeonプロセッサ向けの次世代チップセット「Tumwater (タムウォーター)」、「Lindenhurst (リンデンハースト)」の2製品が展示されていた。 Tumwaterは、ワークステーション向けチップセットで、現行のE7505の後継となる製品。Tumwaterは、CPUとしてPrescottのXeon版である「Nocona (ノッコナ)」、TejasのXeon版である「Jayhawk (ジェイホーク)」をサポートする製品になる。 これに対して、Lindenhurstは同じくNocona、Jayhawkをサポートするが、PCI Express X16は用意されない。いずれの製品も、システムバスは800MHz、メインメモリはデュアルチャネルのDDR333ないしはDDR2-400のいずれかをサポートし、PCI Express X8/X4のスロット、64bit PCI-X、64/32bit PCI、Serial ATA、USB 2.0というスペックになっている。 なお、OEMメーカー筋の情報によれば、いずれの製品も2004年の第2四半期のリリースが予定されているという。
また、同時にPCI Expressに対応したGigabit Ethernetコントローラも展示されていた。これは開発コードネーム「Northway」で呼ばれる製品で、PCI Express X1に対応している。サイズ15×15mm、196ピンのBGAパッケージになっており、クライアントやワークステーションなどに採用される。 また、Gigabit Ethernetのポートを2ポート搭載した「Dual Northway」も展示されていた。いずれも、IntelのPCI Express対応チップセットが出揃う2004年の第2四半期に投入される予定となっている。
●Grantsdaleと思われるチップセット向けのデザイン用PCB
今回の展示会では、Grantsdaleそのものは展示されていなかったが、Grantsdaleと思われるチップセット向けのデザイン用のPCBがいくつかのブースで展示されていた。ボード上にはPCI ExpressのX16とX1のスロットが1つずつ用意されており、32bit PCIバスが1つという構成になっている。 メモリスロットは、4スロット用意されており、デュアルチャネル構成であることが予想される。そして、CPUソケットと思われる部分にはLGA775とかかれており、LGA775のソケットが採用されていることが分かる。 IntelのCPUでLGA775が採用されるのは、Prescottないしはその後継となるTejasであり、チップセットはGrantsdaleとなる。そうした意味で、これはGrantsdaleのデザインのために利用するシステムであることは間違いないだろう。 そもそもこの展示は、熱設計のための展示で、Intelが提案している新しいヒートシンクをアピールするためのもの。Prescott、Tejasでは、熱設計に関する要求がさらに厳しくなるので、より高度な熱設計が必要になる。 特に、CPUクーラーは、これまでよりもさらに巨大なものが採用される予定で、ヒートシンクのフィンの数も増やされ、ファンの大きさもより巨大なものに変更される。ただ、取り付け金具は現状のものに比べて若干高さが低いものが採用される予定になっているほか、ファンの速度をより厳密にコントロールするため、現行3ピンの電源ピンは4ピンに拡張されることになる。 こうした改良により、低ければ低いほどより“冷える”クーラーであることを意味する熱抵抗値は、ファンの回転速度が3,000rpm程度で0.2C/Wを切り(現行のファンではおおむね0.28C/W程度)、騒音に関してはほぼ同等か、やや静かである程度に収まる見込みであるという。
●Intelは、TPMチップを搭載したマザーボードを展示 また、IntelはTCGで規格化されているセキュリティチップ「TPM (Trusted Platform Module)」を搭載しているmicroATXマザーボード「D865GRH」を展示している。TPMは、日本IBMのThinkPadシリーズなどにも搭載されている業界標準のセキュリティチップで、プラットフォームの正当性を検証や、暗号鍵の保護など、高いセキュリティを確保するのに必要な機能が搭載されている。 D865GRHには、このTPMが搭載されており、付属のミドルウェアを利用して、ファイルの暗号化や、パスワード保管などの機能を実現できる。実際、デモではファイルの暗号化や、TPMにより暗号化されて保管しておいたパスワードやクレジットカードの番号などの呼び出しを行なう様子などが公開されていた。 D865GRHはチップセットにIntel 865Gを採用しており、デュアルチャネルのDDR400が利用可能で、内蔵グラフィックスないしはAGP 8Xスロット、および3つのPCIスロットという仕様となっている。出荷はまもなく行なわれるとのことで、第4四半期中には市場に投入される予定。 これが登場すれば、自作でTPMチップ搭載というマシンを自作することも可能となる。
●IDFにVIAが、と驚きの声……新チップセットPT880を展示 Intelを何かとライバル視し、実際にPentium 4のバスに関する訴訟に発展してしまったVIA Technologiesだが、その訴訟が終了したこともあってか、IDFの展示会場に出展。関係者を驚かせている。 VIAは、新チップセットのPT880を展示。PT880は、7月にリリースされたDDR400をサポートしたPT800の後継となるチップセット。PT880は、VIAのチップセットとして初めてデュアルチャネルメモリコントローラを採用しており、DDR400を利用した場合、メモリの帯域幅は6.4GB/secに達し、Pentium 4のシステムバス帯域幅とマッチする。 PT880のもう1つの特徴は、「QBM (Quad Band Memory)」と呼ばれるモジュールのバンクを切り替えてアクセスすることで、倍の帯域幅を実現する技術を搭載していること。例えば、DDR400をQBMで利用すると、シングルチャネルで6.4GB/secの帯域幅を実現できる。 ただし、今のところは対応を表明したDRAMベンダはなく、実際に製品として登場するかどうかはかなり微妙なところだ。 いずれにせよ、PT880が登場することで、VIAもようやくデュアルチャネルのチップセットを持つことになり、Intel 865/875や、SiS655などと対等に戦うことができるようになる。なお、PT880の正式な発表は、来週台湾で開催されるComputex Taipeiにおいて行なわれる予定だ。
●SonomaプラットフォームでサポートされるExpressCardも展示 17日のアナンド・チャンドラシーカ副社長の基調講演において、Centrinoの次世代プラットフォーム「Sonoma」でサポートされると明らかにされた「ExpressCard」がIntelブースに展示されていた。 ExpressCardは、これまで「NEWCARD」の開発コードネームで呼ばれてきたもの。次世代PCカードと位置づけられており、内部バスとしてPCI ExpressないしはUSB 2.0で接続するため、転送速度が高速である点がメリットとなっている。 今回展示されたExpressCardには、横幅が34mmのものと、54mmの2種類が用意されていた。どちらのカードもコネクタ部は同等であり、カードの先の部分が54mm幅か、34mm幅であるのかというのが大きな違いになっている。会場では、メモリカードアダプタをUSB接続されたExpressCardスロットに挿入し、高速に読み取るデモが行なわれていた。 なお、ExpressCardに関しては、現地時間の18日にテクニカルセッションが用意されており、そこでより詳細が明らかにされる予定。
□IDF Fall 2003のホームページ(英文) (2003年9月18日) [Reported by 笠原一輝]
【PC Watchホームページ】
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