[an error occurred while processing the directive] |
Intel CEOバレット氏が「デジタルホーム」に関する講演
|
クレイグ・バレットCEO |
2月24日 実施
インテル株式会社は24日、報道関係者向けに「インテル デジタルホーム プレスセミナー」と題した説明会を開催。この中で、米Intel CEOのクレイグ・バレット氏は、PCを含めたデジタル機器が今後どのような発展を遂げるかについて、多数のデモを交えながら展望を語った。
●スタンドアロンツールから、家電との融合へと進化したPC
バレット氏はまず、これまでの20年間のPCの進化、そしてPCとコミュニケーションやコンテンツがどのように関わってきたかについて解説した。
'81年、IBMが初めての個人向けPCを開発。当初のキラーアプリケーションはワープロや表計算ソフトで、これらは個人に新たな能力をもたらした。その後、メールや、CD-ROMに代表されるマルチメディアコンテンツが登場した。
続いて、歴史的なステップとしてインターネットが登場。インターネットによりPCは、単なる個人的な生産ツールから脱却し、GoogleやAmazonなどインターネット関連企業が登場するなど、より社会や商業を巻き込んだ存在へと発展した。
また、PCだけでなく、オーディオシステムやビデオシステムなども、デジタルコンテンツを扱うようになり、インターネットへ接続できるようになった。ただし、データのやりとりを行なうには、PCへ有線で接続する必要があった。
インターネットの登場はPCの地位を一層高めた |
続いて、現在進行形で起きている進化が無線化だ。無線化は現在、急速に進んでおり、高速な無線通信により、PCやデジタル機器は、リッチコンテンツを無線で転送できるようになった。
これらの進化は、新しい能力、新しいアプリケーション、新しい機器の登場、新しいビジネスモデル、向上する性能、標準、これらのサイクルを経ることで生じてきた。
そして、バレット氏が、これから起きる次なる進化として掲げるテーマが「デジタルホーム」だ。デジタルホームとは、家庭の中でPCと家電とコンテンツとがシームレスに融合する姿を示す。
●家電、ブロードバンドで先行するが、コンテンツに欠ける日本
バレット氏によれば、デジタルホームの実現に向けた基盤として、家電とPCの相互接続、ブロードバンド接続、デジタルコンテンツの3つの要素が必須だという。
デジタルホーム実現に向けた3つの基盤 |
これらの基盤形成、そしてデジタルホームの成長において、もっとも可能性を秘めているのは日本だという。
それまでコンピュータ然としたものばかりだったPCに、スタイリッシュさを最初に持ち込んだのは、世界有数の家電メーカーを多数有する日本だった。家庭、特にリビングへの進出を図るにはデザインも重要な要素となるとバレット氏は語る。
また、周知のようにブロードバンド接続についても、日本は、他国より圧倒的に安い価格で高速な回線が広く提供されている。
しかしバレット氏は、「コンテンツの面では日本は世界をリードしていない」と続けた。日本でのPCの用途は、大半がメールやWebでの検索などにとどまっており、高画質ビデオの視聴やオンラインゲームの利用は米国の半分だという。
そこでバレット氏は、ブロードバンドと高性能PCの組み合わせによるリッチコンテンツがどのような体験をもたらすのか、実際のデモを交えて紹介した。
●コンセプトノートPC「Florence」などが日本初公開
ステージでは、エイベックスが配信する音楽コンテンツや、ウォルト・ディズニー・ジャパンらが提供する子供向けオンラインゲームなどがデモされた。また、スクウェア・エニックス代表取締役社長の和田洋一氏がゲストとして登場し、PCの性能向上と無線LANの普及により、いつでもどこでもオンラインゲームをプレイできる環境が整いつつあるなどと語った。
また、ここから壇上に登場したインテル代表取締役共同社長の吉田和正氏が、「映画館で観るよりも高品質な映像や音楽を想像したことはあるか?」との問いかけを投げ、PCを使ったハイビジョン画質の映像を披露した。
このほか、DVカムで撮影した動画を、バイオに取り込んでMPEG-2に変換し、それをアイ・オー・データ機器のメディアアダプタ「LinkPlayer」を通じて、リモコン操作で松下製の大型TVに映し出すデモが行なわれ、簡便な操作で家電からコンテンツにアクセスできる様子がアピールされた。
ステージ上で対談したスクウェア・エニックス代表取締役社長の和田洋一氏(左)とインテル代表取締役共同社長の吉田和正氏(右) | MPEG-2より高圧縮かつ高品質というH.264コーデックを用いた映像 |
ソニー、松下、アイ・オー・データという異色(?)の取り合わせによる、相互接続性のデモ |
最後に、デジタルホーム時代の姿を象徴したコンセプトノートPC「Florence(フローレンス)」、「Entertainment PC」、そしてIntelのLCOS(Liquid Crystal on Silicon)技術を採用した65型大型TVが公開された。いずれも日本初公開。
Florenceは、無線キーボードを採用したノートPC。その中で採用されている技術はノートPCのもので、持ち運びも可能だが、液晶を据え置きして使うことから、利用スタイルはバイオVやバイオWに似通ったものとなる。
仕様の詳細については語られなかったが、キーボードには脱着可能なリモコンとIP電話が装着されており、液晶ディスプレイにはカメラと指紋認証装置が装備されている。OSはWindows XP Media Center Editionベースのようだ。家庭内での利用を想定しているため、指紋認証は、セキュリティというよりも、タッチして簡単にユーザー環境を切り替えるという用途に用いられる。
Entertainment PCは、メディアサーバー的存在で、AVラックに収まるような形状・外観をしており、本体正面に小型の液晶パネルを装備しているのが特徴。デモ機には2枚のハイビジョンチューナーが装備されており、2画面同時再生などが大型TVでデモされた。
●コピーワンスの制約について言及
これらの技術的側面に続いてバレット氏は、接続技術の標準化への取り組みや著作権保護の観点について語った。
コンテンツをPCや家電製品で共有するには、相互接続性の確保が必要となる。Intelは、IBM、MicrosoftといったPCメーカーのほか、ソニー、松下、シャープ、NEC、富士通など家電にも関連の深いメーカーらと共に「Digital Home Working Group(DHWG)」を結成。
DHWGでは、デジタルコンテンツを機器間でやりとりするための接続ガイドラインを策定。これにより、メーカー・機器を問わず、データの転送や、コンテンツ作成が可能となる。
このガイドラインでは、接続に関するベース部分のみを定めており、各メーカーがある程度の拡張をできるよう余地を残しているという。最終的な仕様は第2四半期に決定される見込み。
コンテンツにおける制約 |
また、バレット氏は著作権保護について触れ、コンテンツの保護は重要だが、デジタルホームの発展にとって制約にもなりうると指摘。
日本の地上デジタル放送では、コンテンツ保護のため「コピーワンス」を採用しており、1度までのコピーはできるが、データを他の機器に移動することはできない。
バレット氏は、コンテンツ作成者だけでなく、利用者の立場も考慮する必要があるとし、「DTCP(Digital Technology Contents Protection)」など、より柔軟な著作権保護技術の採用を促した。
ソニーの木村敬治NCプレジデント(左)、米Microsoftの古川亨副社長も自社のデジタルホームへの取り組みを語った |
●PCがデジタルホームの中心ではない
今回のセミナーで行なわれたデモや講演の内容は、これまでも語られてきたものであり、新鮮味には欠けるものがあった。
しかし、米国でのIntel Developer Forum終了直後ながら、CEO自らが来日し、このようなセミナーを開催していることから、Intelがこの分野に、中でも日本市場に対し、大きく期待していることが伺える。
また、この業界における同社の立場も注目に値する。現在、リビングでの主役の覇権をかけ、PC業界と家電業界では激しい競争が繰り広げられている。しかし、バレット氏が質疑応答の場で、「デジタルホームにおいて、我々はPCを必要以上に強調するつもりはない。ここで重要なのは相互接続性であり、PCがすべての中心となるわけでない」とコメントするなど、他社・業界との協調性を重視した姿勢であることを訴えた。
□インテルのホームページ
http://www.intel.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press2004/040224.htm
□関連記事
【1月20日】インテル、デジタルホーム開発セミナーを開催
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0120/intel.htm
【1月9日】【CES】Intel ポール・オッテリーニ講演レポート
ムーアの法則、ついに家電へ
~家電業界にチャレンジするIntel
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0109/ces07.htm
【1月9日】【CES】ビル・ゲイツ基調講演レポート
リビングにPCセントリックを持ち込むMicrosoft
~Media Center Edition用デバイスで家電化を目指す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0109/ces03.htm
(2004年2月24日)
[Reported by wakasugi@impress.co.jp]
|