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インテル、デジタルホーム開発セミナーを開催
~相互接続性確保が実現への第一関門

インテル株式会社 代表取締役共同社長の吉田和正氏

1月20日開催



 インテル株式会社は、都内のホテルにおいて機器ベンダのエンジニアなどを対象にした「デジタルホーム開発セミナー」を開催した。この中で、インテル 代表取締役共同社長の吉田和正氏は「相互接続性確保がデジタルホーム実現への最大の課題だ」と述べ、集まった機器ベンダのエンジニアに対して、相互接続性の実現を訴えた。

 また、テクニカルセッションでは、UPnPなどの各種プロトコルに関する説明や、インテルのネットワークメディアデバイスに関するデザイン要件(NMPR:Network Media Products Requirements)に関する解説などが行なわれた

●相互接続性確保がデジタルホームの最大の課題だ

 テクニカルセッションに先立ち、吉田和正氏による講演が行なわれた。吉田氏は「先々週、米国で行なわれたInternational CESでもたくさんの機器がデモされたように、すべての機器をデジタルにという動きは止まりそうにない。今後、無線LANなどの普及により家庭内にネットワークが構築されていくにしたがい、家庭内の異なる機器を利用してコンテンツにアクセスしたいというニーズが高まっていく」と述べた。

 吉田氏は、インテルでは4種類のコンテンツが家庭で利用されるという見通しを持っていると説明した。「ブロードバンドで配信されるコンテンツ、ユーザーがデジタルカメラなどを利用して作成したパーソナルコンテンツ、携帯電話やPDAなどで利用されるモバイルコンテンツ、さらに地上波デジタルなどの放送によるコンテンツの4つがあり、これらをユーザーが自由に視聴できたり、場合によっては加工したりして利用することが大事だ」と述べ、PCはPCとしてのコンテンツを加工したり編集したりという強みを生かし、デジタル家電は簡単に使える安価であるなど、それぞれの長所を生かしつつデジタルホームを構築していくことが重要だと指摘した。

 しかし、そうしたデジタルホームを構築するために、いくつか克服しなければいけない課題もあると吉田氏は指摘する。「現在のところ、相互接続性に問題を抱えている。今後はこれらの問題を克服していくことがデジタルホームの普及にとって最も重要になる」とし、異なるメーカー間で接続することができないなどの相互接続性に関する問題を解決していく必要があると指摘、インテルが業界団体のDHWG(Digital Home Working Group)による標準化活動や、NMRPなどのデザイン要求ガイドなどの活動を通じて問題の解決に努めていくと説明した。

 また、もう1つの課題として、吉田氏は「ユーザー、コンテンツ所有者の両方が納得する著作権管理の方法を策定することが重要だ」と指摘する。その例として、まもなくコピーワンスの著作権管理が始まる地上波デジタル放送を例に挙げ、「著作権を保護しながら流動的にコンテンツを利用することができるようにならなければ、魅力が減ってしまう」と述べ、コンテンツ所有者の権利を守りつつも、ある程度ユーザーに自由度を与える仕組みの導入が必要だと訴えた。

 最後に吉田氏は「デジタルホームにはビジネスチャンスがある。相互接続性と著作権管理のスキームが重要だ」とのべ、第一段階としてDHWGやNMRPなどの活動を通じて相互接続性の実現を、第2段階としてエンドユーザーにも、著作権所有者にもメリットがある使いやすい著作権保護の仕組みを目指すというインテルのデジタルホームのビジョンを説明した。

課題は相互接続性とコンテンツ保護 DHWGにより相互接続性を実現し、NMRPにより、より強力な製品開発を行なう

●相互接続性を実現するための基礎としてUPnPを利用

 その後行われたテクニカルセッションでは、インテルのエンジニアによる、UPnPに関する説明や、NMPRに関する説明などが行なわれた。

 UPnPに関する説明では、UPnPの取り組みのうち、特にAVに関する部分の説明などが行なわれた。UPnPは、IPネットワーク上においてデバイスを発見し、それを利用できるようにする仕様のことで、プロトコルなどについてはすでに業界標準として利用されている。メーカーはUPnPを利用するのにライセンスなどは必要なく、ロイヤリティフリーで利用できることなどが説明された。

 今回は特にUPnPのうちUPnP AVと呼ばれるAV機器をコントロールする仕様についての説明が中心となった。すでにUPnP AVは昨年の6月に仕様が策定されており、現在Chater2と呼ばれるコンテンツ保護や著作権管理に関する追加仕様の策定がな行われているという。Chater2に関しては今年の第2四半期に仕様の策定が完了する予定であるという。

 また、UPnPでは、UPnP Remote I/Oと呼ばれる仕様の策定を行なっているという。Remote I/Oでは、PCやHDDクレコーダなどのユーザーインターフェイスを、リモートとなるデバイスでも利用できるための仕様のことで、ちょうどMicrosoftがCESでデモした「Windows Media Center Extender」のように、PC側のユーザーインターフェイスをリモートデバイスでも利用することができるようにする。この仕様も現在Ver.0.8が策定されており、第2四半期には最終的な仕様が策定される予定だ。

 なおインテルでは、UPnP仕様に対応した機器を設計するためのツールとして、Intel Tools for UPnP Technologiesなどのプログラマのためのツールを用意しており、これらを利用することで、容易にUPnPに対応したデバイスなどの設計が可能になると説明が行なわれた。なお、インテルのツールはインテルのWebサイトでダウンロードが可能となっている。

現在UPnPでもコンテンツ保護を実現する仕組みを検討中 UPnP Remote I/Oでは、サーバー側のユーザーインターフェイスを利用可能 コンテンツ保護、Remote I/Oともに最終仕様は第2四半期に策定予定

●DHWG上位互換のデバイス設計を可能にするNMRP

 ネットワークにおいてデバイスを発見する手順などとしてUPnPを利用したとしても、どのようにメディアファイルを転送するかなどの点では若干の差違が残り、相互に接続できない場合も出てきてしまう。あるいは、どの形式のファイルをサポートするかなども問題として残る。そうした“方言”の部分を、“標準語”として規定していくのが、インテルも加入しているDHWG(Digital Home Working Group)のガイドラインだ。DHWGのガイドラインはVer.1が現在策定の最終段階で、第2四半期には最終的な仕様が登場する予定となっている。

 インテルは、デジタルホームに対応したデジタル機器を作るためのガイドラインとしてNMPRと呼ばれる仕様を用意しており、この仕様通りに製品をつくることで、DHWGに準拠した製品を作ることができるという。というのも、NMRPはDHWGのガイドラインを包含した仕様になっており、DHWGの上位互換といってよい仕様になっているからだ。DHWGでは、インテル以外にマイクロソフトや、ソニー、松下などの家電メーカーなども複数加盟しており、その利害関係の調整により紛糾することを避けるため、必要最低限の仕様となっている(例えば、WMAやATRAC3は奨励仕様になっており、必要要件にはなっていないなど)。NMRPでは、そうした奨励仕様となっている部分も含めて仕様としており、DHWGの上位互換となっているのだ。

 インテルでは、今回のセミナーにあわせてNMRPのVer.1の日本語版仕様を策定し、今回の参加者に配布したほか、相互接続性を確認するためのツールなどもCD-ROMの形で配布された。

●家庭内でプレミアムコンテンツのポータビリティを実現するDTCP over IP

DTCP over IPを説明するスライド。コンテンツが家庭に来るまでは、コンテンツホルダーなどが用意する著作権保護の仕組みを利用し、家庭に入った後で著作権保護を損なうことなくコンテンツの配信などを可能にするのがDTCP over IP。このため、既存のDRM(デジタル著作権保護)の仕組みと共存することができる

 今回のセミナーでは、インテルなどが推進しているDTCP over IPに関する説明も行なわれた。DTCP over IPは、家庭内で著作権保護されたデータをデバイス間で共有する技術で、著作権保護機能を侵害することなく、データを家庭内の他のデバイスへ転送することができるようにするための技術だ。

 DTCP over IPでは、既存の著作権保護の仕組みを生かしつつ、家庭内にあるデジタル機器が相互に保護されたコンテンツを利用することができるようにする。例えば、ブロードバンドを経由してダウンロードしたDRMによりコピー不可となっているコンテンツも、DTCP over IPを利用することで家庭内の他のデバイスにストリーム転送したりということが可能になる。

 すでに、DTCP over IPはハリウッドのSony PicturesやWarner Brothersが対応を表明するなど、コンテンツ所有者側にも受け入れられ始めており、今後日本でも導入が検討されていくことになる可能性が高い。

 例えば、4月から地上波デジタル放送はコピーワンスになるが、もしDTCP over IPの仕組みが放送局側に認可されれば、家庭内の機器に限ってはストリーム配信することが出来るようになる可能性がある。現時点では、日本の地上波デジタル放送でDTCP over IPが許可されるかは明確ではないが、今後検討される可能性を指摘する関係者もあり、今後日本でもその動向には注目が集まることになるだろう。

□インテルのホームページ
http://www.intel.co.jp/
□関連記事
【1月11日】【CES】多数登場したネットワークメディアプレイヤー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0111/ces12.htm
【1月11日】【笠原】Windows Media Connect発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0111/ubiq41.htm

(2004年1月20日)

[Reported by 笠原一輝]


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