富士通は、ソフト・サービス事業の戦略拠点として、東京・蒲田に「富士通ソリューションスクエア」を開設。先頃、この内部を報道関係者に公開した。11月27日の拠点開設以来、ソフト・サービス事業に関わる4,000人の社員が従事。同社の中核事業と位置づけられるソフト・サービス事業の戦略拠点として、すでに本格的な稼働が始まっている。本コラムで、恒例となりつつある新オフィス紹介シリーズのひとつとして、富士通ソリューションスクエアの模様を紹介する。
●ソフト・サービス事業の一大拠点
富士通関係者の間では、「蒲田のシスラボ」の名称で呼ばれており、竣工から約30年を経て、老朽化した建物を壊し、新たに生まれ変わったのが、この富士通ソリューションスクエアということになる。 同ソリューションスクエアも、シスラボ時代からの伝統を受け継ぎ、4,000人のソフトウェア技術者を収容するソフトウェア事業の一大拠点として位置づけられる。
今年5月に移転した汐留新本社、ハードウェア(プラットフォーム)事業の拠点である川崎工場とともに、同社の3大拠点の1つという位置づけは、これまでとは変わらないといえよう。
●シスラボは、黒川社長の出身地?
その黒川社長は、富士通ソリューションスクエアを、「ビジネススピード」、「ナレッジマネジメント」、「セキュリティ」の3つのポイントを実現する拠点だとする。
ビジネスのスピードアップという点では、京浜地区に点在していた4,000人のSEおよびコンサルティングチームを集結することで、Face To Faceによる業務推進が可能になり、コミュニケーションの円滑化を実現できるほか、意思決定の迅速化を図るためのオフィススペースが実現されているのが特徴だ。
社員の自席を固定しない「ノンテリトリアルオフィス」の考え方を採用し、社内のどこにいてもデスクにいるのと同等の業務環境を実現しているのが特徴で、そのために、社員固有の番号での内線呼び出しおよび通話が可能なロケーションフリー電話方式を採用。外出時にも情報を共有するためのPDAとして「PocketLOOX」を導入している。 また、オープンスペース、集中ブース、コラボレーションゾーンといったワークプレイスを執務スペースとは別に用意することで、それぞれの用途に応じた利用を可能としている。オフィスの中央部には、ウッドデッキスペースも用意され、晴れた日には青空を見ながら仕事をすることもできる。
オフィス・コンシェルジェと呼ばれる場所も用意され、ここでは、文具や各種機器の手配、電話の取り次ぎなどを行ない、社員はこれらの作業から解放されることで自らの業務に集中できるようになっている。
ナレッジマネジメントとしては、「従来のデータやドキュメントををベースにしたナレッジマネジメントではなく、人を核としたコラボレーションを創出した」というように、文書の電子化を徹底した上で、専門知識をもつ人材を容易に検索できる人的ネットワークの「Know-Who情報検索」、外出先や自分の席からでも参加できるWebコラボレーションなどを実現。「智恵の流通の活性化を行なえる環境を実現している」としている。
3つめのセキュリティに関しては、情報管理、ネットワーク管理、人の管理の3つの観点から進めているが、中でも人の管理については、セキュリティゾーニングの考え方をベースに、大きく3段階のセキュリティを実現している。
一方、情報漏洩に関しては、無線LANにおいてデータを盗聴されても解読が困難な暗号キー切り替え方式の採用や、パソコン上のデータ、顧客情報の印刷およびプリンタからの出力に関してもそれぞれのレベルでセキュリティが施されているという。
なお、こうした富士通ソリューションスクエアで実践する新たなワークスタイルについては、「ほっとオフィス」の名称で商品化し、顧客に提供していくことになるという。
●環境に配慮した工事方法を採用
富士通グループの環境に対する取り組みは先進的であるのは周知の通りだが、富士通ソリューションスクエアについても環境配慮がなされている。 世界初の取り組みとしては、建設の際に、場内に再生プラントを設置。旧シスラボの解体廃材を新築建物に利用するコンクリートリサイクル工法を採用。4.6万トンに及ぶ解体コンクリートすべてを現場内で再利用することで、廃棄物削減を達成した。これは現場に搬入するトラックの台数を延べ11,000台削減(全体の3分の1を削減)することにもつながり、近隣に住居が並ぶ地域だけに、通過車両の騒音をはじめとする影響を大幅に抑制することができたという。
さらに、屋上緑化への取り組みや、社員食堂およびレストランの厨房バックヤードには厨芥処理設備による生ゴミの再資源化、トイレ洗浄水に雨水を利用するといったリサイクルにも取り組んでいる。
●これからも変わるソリューションスクエア このように最先端設備を導入している富士通ソリューションスクエアは、同社の中核事業であるソフト・サービス事業の中核拠点にふさわしい設備となっている。 黒川社長は、「この建物は、建ったときがスタートポイントであり、これからは仕事に合わせて、どんどん中身が変わっていくことになるだろう」と期待を寄せる。
果たして、これから富士通ソリューションスクエアは、どんな風に変わっていくのであろうか。富士通の成長を支えるソフト・サービス事業の拡大とともに、何度も姿を変えることになりそうだ。 【お詫びと訂正】初出時に社員用のPDAの名称を誤っておりました。正しくは、「PocketLOOX」です。お詫びして訂正させていただきます。
□富士通のホームページ (2003年12月9日)
[Text by 大河原克行]
【PC Watchホームページ】
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