森山和道の「ヒトと機械の境界面」

2003国際ロボット展レポート
~夢の現状を確認する場所



 ロボットと言えば、ゆったりのんびり動くものだと思いこんでいる人は、是非、産業用ロボットの展覧会である「2003国際ロボット展」に行ってもらいたい。11/19~11/22日までの日程でビックサイトにて開催中である。テーマは「『RTが未来を拓く』-モノづくりからパーソナルまで-」。


【まずは産業用ロボットを少々】

 2年に一度開かれるこの展覧会、15回目となる今年は不況のアオリのせいか、会場は若干窮屈(プレスルームさえ削られてしまった!)。だが腕をぶんぶん振り回したり、空中の一点に「指先」を止めたまま腕関節を物凄いスピードで動かす産業用ロボット群は健在。さすがロボット大国・日本である。117社27団体が参加している。

バイクを運搬する川崎重工業のロボットは壮観の一言。軽々とバイクを乗せた腕を振り回す様子は、まるでバイクを「たかいたかいー」しているみたい 川崎重工業はマスタスレーブのコントロール装置も出展。本誌で何度かレポートしているHRPに使われていたものと同じだ。ロボットの操縦に興味がある人は必見かも

ファナックの搬送ロボット。ハンドの先につけられたカメラで積み荷を認識、位置決めを行なって運ぶ。だから段ボールの山を崩されても、自動認識しなおして作業を続けることができる。モニタを見るときちんと認識して中心を割り出して掴んでいることが分かる。ファナックはそのほかにもビジョン技術を使ったロボットを出展していた

【やっぱり見たいヒューマノイド&エンタメロボット】

 とはいっても、一般人として興味があるのはやはりエンタテインメント・ロボットや大学研究室開発のロボット群。今回は大学・公設研究機関において開発中のロボットは「RT交流プラザ」にひとまとめにされている。

産総研のアザラシロボット。癒し系 東京理科大・小林研のマッスルスーツ。奥には「SAYA」が見える

筑波大学・山海研では最近はテレビでもおなじみになりつつあるパワードスーツ「HAL」 産総研の生活支援ロボット。将来、誰でも、意図する動作をロボットに教えられるシステムの研究。三次元CADにヒントを得て開発した「Titi(Teaching Tablet Interface)」というシステムを使い、PC画面上にお絵かきすることでロボットを操ることができるという 産総研ブースでは三次元視覚システムVVVも展示されている。是非、本連載第一回を読んでから見に行って欲しい

東京大学・池内研究室の多眼ロボット。多眼は立体視の精度を上げるため 防衛大のブースでは白線を認識してグルグル走るロボットを展示 芝浦工大・ヒューマンロボットインタラクション(水川)研究室の遠隔操作ロボットシステム(Physical Agent System: PASと呼んでいるそうだ)の研究用ロボット。LAN経由で動作する

明治大学・武野研はロボットの立体視システムと、ヒューマノイド開発のための人工骨格素材としてアルミ製の人工骨格を展示。頭蓋骨重量は950g。顔表情の研究などを行なっているそうだ

電気通信大・松野研究室の「ねじ推進型ロボット」。ねじのような推進ユニットで全方向に動ける。災害時のレスキューを目的とする 千葉大学・野波研究室の大型ロボット群。地雷除去を目的とする。右は地雷把持用マスタースレーブハンド

東工大・北川研究室による跳躍・回転ロボット。瓦礫などを跳躍で乗り越えるためのロボット。圧縮空気を使う NAIST(奈良先端大)の松本吉央助教授によるヒューマンモデリングのための顔情報計測システム。PCの画面上でCGの顔が動いているのが見えるだろうか。リアルタイムに人の視線を図り、表情を読むことができる。ドライバの注視行動の測定、視線で操縦する車椅子などへの応用研究が行なわれている。またヒト型ロボットとのアイコンタクトの実現においても使われる技術だ

 このほか、既におなじみになりつつある東大・舘(たち)研の「光学迷彩」や、電通大・青山研の小型ロボット、日本文理大の蒸気ロケット(ロボット)、芝浦工大・福祉ロボット研究室によるリハビリロボットなどがある。

【企業のサービスロボットも要チェック】

 RTプラザ近くのブースも要チェックだ。「Robo Life」という展示のほか、セイコーエプソンのブースには小型ロボット「ムッシュ」のほか、先日発表されたばかりの小型ヘリ・ロボット「μFRプロトタイプ」がデモンストレーションを行なっている。

μFRプロトタイプはプロペラの横幅13cm、高さ7cm、総重量は8.9g(回路部:2.5g、センサ:0.9g、カメラ:0.4g)の超小型ロボット。二重反転機構の超小型スタビライザを持ち、超薄型超音波モーターによって回転する二重反転プロペラは13gの揚力を発生する。電源は外部供給 飛んでいるところ。後ろにうつっているのはデモンストレーションのスケジュール。見たい人は要チェック ALSOK(綜合警備保障)の警備ロボットC4。普段は受付ロボットとして活躍。実際にタッチパネルに触ることもできる。これはもうほぼ実用である

ビジネスデザイン研究所のイフボット NECのパペロ。少し認識精度が上がったそうだが、ハード的には変化なし。今回はロボット開発支援ツール「RoboStudio」のアピールに力が入れられていた

こちらは同じくロボスによる参考出品の「KOZOH-III」。「ソフト次第でジャンプができます」という。ただし、まだこれは動かない ロボスの顔ロボット。バリエーションいろいろ

トキ・コーポレーションは金属系人工筋肉“バイオメタルファイバー”を使ったホビーロボットを展示。通電加熱によって伸縮する(70度に加熱すると収縮、冷却すると伸張)、0.1mmのアクチュエーターで柔らかい動きを見せる。これはこれでアリかも

バンダイは22日に「ROBO-ONEバンダイカップ」を予定している。現在は前回優勝の「はじめロボット」を展示中

ATR(国際電気通信基礎技術研究所)、ヴィストン、イクシスリサーチ、ロボガレージの共同ブースはRobovie-M、Robovie-Rを展示。Robovie-Rのデザインは「マグダン(右端)」で知られる高橋智隆氏(ロボガレージ)。マグダンも展示されている。Robovie-M(中央)はROBO-ONE大会の準優勝ロボット「OmniHead」と同型。
2004年に大阪で開催される「ロボカップ・ジャパンオープン」では、OmniHeadをベースに高橋氏が外装デザインを施したロボットが登場する予定だという

イワヤコーポレーションによる「IPロボットフォン」。声と同時に動きを伝えることができるIPフォン。相手側はロボットを持っていなくても、通話ソフトをコピーして渡せば、画面上で送話側のぬいぐるみの動きが伝達されて動く。Windows 2000/XP対応、USB1.1とRS232Cをサポート。専用サーバーを使うので通話は無料。右はロボットの中身。東大・舘研からの技術移転 テック・エキスパーツによる、空圧を使った「ユニバーサル・ハンド」。自由度7。肩部からハンド部分までの重量は3.2kg、可搬質量は1kg以上だという。筑波大学・星野聖研との共同開発

大阪市都市型産業振興センターブースの「アクトロイド」。大阪大学と株式会社ココロが開発した案内用ロボット。理科大のそれとは違って、至ってナチュラル。さすがは恐竜ロボット等で超有名なココロである。大阪市ブースはロボット技術にかなりの夢を抱いているらしく、力の入った展示となっていた 福岡市ブースではロボカップ用のロボットを展示。ロボカップが面白くなる日は来るのだろうか いろいろなロボットの関節部に入っていることで有名な減速機・ハーモニックドライブのブースでは、東大・石川研の高速ハンドを展示

【HRP-2も健在】

 本誌読者にはおなじみの「Promet」ことHRP-2は、<新材料・新機能・新展開>をテーマに、東4ホールで同時開催された「SAMPE Japan 2003」でデモンストレーション。国際ロボット展が22日(土)までの開催なのに対し、こちらは21日(金)までの開催。

 なお次世代機HRP-3の進行状況を聞いてみたが、実用をキーワードに、さらに防塵防滴性を上げるためのサーボ構成そのほかを検討中とのことだった。

【迷えるロボット産業の姿が垣間見える】

謎の漫才ロボット

 さて、全体の展示を見ての感想だが、前回の2001年に比べるとだいぶ様変わりした印象はあるものの、一般客からすれば、これといった目玉が見られないように感じた点は否めない。ホンダやソニーが出展してないことと、ROBODEXのようなパーソナルロボット専門のイベントが開催されていることによって、見る側の意識が変わってしまったためだろう。

 もちろん国際ロボット展は基本的に産業用ロボット展だ。だがその一方で、RTプラザやサービスロボットゾーンなどを設けていることから分かるように、一般客へ目を向けている点もまた事実。このあたりに、現在の迷えるロボット産業の姿が垣間見える。

 今後、エンターテイメント、あるいはサービス産業へロボット技術が進出していける可能性はあるのか。誰もが未来に夢を抱いている。その夢の現状を見る場所として、ロボット展を見てみるのもまた一興だと思う。


□2003国際ロボット展
http://www.nikkan.co.jp/eve/03robot/
□関連記事:
【2001年11月14日】世界最大級のロボット専門展示会「2001国際ロボット展」
エンターテイメントロボットもちょっとだけ出展してました
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011114/robot.htm

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(2003年11月21日)

[Reported by 森山和道]


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