●行き着くところまで行ったソフトウェアDVDプレーヤー ほんの数年前、PCでDVD-Videoを再生するということは、それ自身が1つの大きなチャレンジだった。平均的なPCが搭載するCPUの動作クロックは500MHzに満たず、DVD-Videoの安定的な再生にはハードウェアデコーダを用いた方が現実的ではないかと言われたのは、わずか4年ほど前のことである。 当時はソフトウェアDVDプレーヤーも発展途上で、DVD-Videoフォーマットが持つすべてのオプションに対応するどころか、特別なハードウェアなしにDVD-Videoが再生できるだけで奇跡のようなことであり、フレームレートを落とさないことが精一杯のような状況であった。 それが今では、PC上でDVD-Videoをソフトウェア再生することは当然となり、特殊な目的を除いて、わざわざハードウェアデコーダを搭載するものなど誰もいない。もちろんこの間、PCの環境はハードウェア、ソフトウェアともに劇的に変化した。CPUの動作クロックは3GHzを突破し、DirectXをはじめとするソフトウェア環境も大幅な進歩を遂げた。 この間、ソフトウェアDVDプレーヤー市場でも激しい競争が繰り広げられた。この競争により、数年前は非常に多くの製品が乱立していたソフトウェアDVDプレーヤー市場に淘汰がもたらされ、今では有力どころは2~3社と言えるほどだ。そしてこの競争と淘汰により、ソフトウェアDVDプレーヤー自身の完成度は著しく高まっている。
実際、この1年ほどの間にリリースされたソフトウェアDVDプレーヤーは、機能、再生品質のいずれをとってもきわめて優秀。PCが苦手とするインターレースコンテンツの再生品質の向上はもちろん、バーチャル再生も含めたマルチチャネルオーディオ(ドルビーデジタル、DTS)への対応など、さまざまな点で強化がはかられた。逆に、ソフトウェア製品として、行き着くところまで行き着いてしまったのではないか、製品の差別化が難しくなったのではないか、と思わせるほどだ。
●DVD-Audioを聞く こうした疑問に対する1つの回答となっているのが、インタービデオの「WinDVD Platinum 5 for DVD-Audio」だ。ソフトウェアDVDプレーヤーベンダ最大手の1つに数えられる同社の最新作であるWinDVD 5は、ベーシックなプレーヤーソフトであるWinDVD Gold 5を基本に、機能拡張を加えることで上位版のWinDVD Platinum 5、最上位のWinDVD Platinum 5 for DVD-Audioへとグレードアップしていく。 機能拡張の多くはAudio Boosterパック、Mobile Technologyパック、DVD-Audioパックなど、拡張パックとして追加購入可能な形となっており、上位製品にはより多くの拡張パックが標準で添付される仕組みだ。ただし、その構成は国によっても異なり、米国で売られているWinDVD Gold 5にはMobile Technologyパックはバンドルされていないが、ノートPCユーザーの多いわが国で市販されているパッケージにはバンドルされる、といった具合である(OEM版ではまた構成が異なるものと思われる)。ここで紹介するWinDVD Platinum 5は現時点での最上位版であり、いわば「全部入り」とでもいうべき内容となっている。 本製品の最大の特徴は、その名前でも明らかなように、DVD-Audioの再生に対応した点にある。が、上述したようにDVD-Audioの再生専用ソフトというわけではなく、ソフトウェアDVDプレーヤーの上位版であるWinDVD Platinum 5に、DVD-AudioパックとAdvanced Resolutionパックを追加したものであり、WinDVD Platinum 5が持つDVD-Video再生機能すべてを包含する。 DVD-Audioパックは、DVD-Audioを再生するためのベーシックな機能を付与するアドオン。これを利用することで、WinDVDでDVD-Audioタイトルの再生が可能になる。この「再生」には、DVD-Audioタイトルが持つ動画や静止画(バイオグラフィ、ディスコグラフィ、歌詞など)といった情報に加え、グラフィックベースのナビゲーション機能も含まれる。 ただし、DVD-Audioパックがサポートする音声出力機能は、基本的にはサンプリング周波数48kHz、量子化bit数16bitにダウンサンプルされたものとなる。つまり最大で6チャンネル(96kHz/24bit)のマルチチャネル音声や192kHz/24bitの高精細ステレオ音声といった、DVD-Audioならではのフォーマットを、そのまま取り出すことはできない。これを解決するのがAdvanced Resolutionパックで、クリエイティブのSoundBlaster Audigy 2シリーズと組み合わせることで、96kHz/24bitのマルチチャネル音声や192kHz/24bitの高精細ステレオ音声の再生が可能となる。
筆者も実際にAudigy 2(と6.1チャンネルスピーカー)をインストールしたPCを用意して、本製品を試してみたところ、最初は画面1のようなダイアログが表示され、Advanced Resolutionパックを追加購入するよう求められてしまった。どうやら原因は、Audigy 2のドライバ/サポートソフトウェアが最新版になっていなかったことのようだ。ドライバなどは最新の状態にしていたつもりだったのだが、サポートソフトウェアの一部が古いバージョンのままだったらしい。まずクリエイティブのWebサイトで、完全に最新の状態であることを確認した上で(画面2)、本製品のインストールへと進んだ方が良い。
こうした画像コンテンツの一部は、DVD-Video互換トラックを備えたタイトルであれば、DVDプレーヤー(PC上のソフトウェアDVDプレーヤー含む)でも見ることができるが、すべてのコンテンツにアクセスできるわけではない。たとえば今回用いた「ある愛の考察」の場合、通常のDVDプレーヤーでは曲リストや楽曲再生中の静止画表示は可能だが、ディスコグラフィやバイオグラフィを表示させることはできない。WinDVD 5 Platinum for DVD-Audioは、PC上にDVD-Audioプレーヤーと同等の環境を構築するものであり、すべてのコンテンツにアクセスできるのが魅力だ。DVD-Audioプレーヤーとしても、充分に満足のいく製品となっている。
□インタービデオのホームページ (2003年11月7日)
[Text by 元麻布春男]
【PC Watchホームページ】
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