最新ミドルレンジビデオカード対決
~GeForce FX 5700 Ultra vs. RADEON 9600 XT



 ビデオカード市場の2強であるATI TechnologiesとNVIDIAでは、ほぼ年2回のペースで新製品を投入している。

 今回は、ATI TechnologiesとNVIDIAから登場した最新ビデオカードの中から、ミドルレンジに位置するRADEON 9600 XTとGeForce FX 5700 Ultraを取り上げて、そのパフォーマンスを比較してみることにしたい。

GeForce FX 5700 Ultra搭載リファレンスカード。メモリチップもヒートシンクで覆われている。右端には、周辺機器用電源コネクタが用意されている RADEON 9600 XT搭載リファレンスカード。メモリチップは剥き出しとなっている。また、外部電源供給用コネクタは装備していない



●新コアを採用したGeForce FX 5700 Ultra

 NVIDIAのGeForce FX 5700 Ultraは、コードネームNV36と呼ばれていたビデオチップで、GeForce FX 5600 Ultraの後継として位置づけられる。GeForce FX 5700 Ultraと同時に発表されたハイエンドモデル「GeForce FX 5950 Ultra」は、GeForce FX 5900 Ultraの単なる高クロック版であるのに対し、GeForce FX 5700 Ultraは、GeForce FX 5600 Ultraの単なる高クロック版ではない。

 GeForce FX 5700 Ultraでは、GeForce FX 5600 Ultraではサポートしていなかった「Cine FX 2.0」や「Ultra Shadow」、「Intellisample HCT」といった機能を搭載しており、機能的にはハイエンドモデルのGeForce FX 5900 Ultra/5950 Ultraと同等である。また、Vertex Shaderが強化されており、ジオメトリ性能は従来のGeForce FX 5600 Ultraの3倍になるという。

 GeForce FX 5700 Ultraの製造プロセスルールは0.13μmだが、従来のTSMCではなく、IBMのFabで製造されていることも特徴である。GeForce FX 5700 Ultraのコアクロックは475MHzで、メモリクロックは900MHzとなっている。メモリバス幅は128bitなので、メモリ帯域幅は14.4GB/secに達する。

 ちなみに、GeForce FX 5600 Ultraのコアクロックは350MHzで、メモリクロックは700MHzなので、GeForce FX 5700 Ultraでは、コアクロックは約36%、メモリクロックは約29%向上していることになる。GeForce FX 5700 Ultraでは、メモリとしてDDR/DDR2をサポートするが、基本的にDDR2メモリが利用される。

GeForce FX 5700 Ultra搭載リファレンスカードの裏側。裏側に実装されているメモリチップもヒートシンクで覆われている GeForce FX 5700 Ultra搭載リファレンスカードのブラケット部。アナログRGB端子とDVI-I端子、S端子を装備している


●Low-k採用で500MHzという高クロックで動作するRADEON 9600 XT

 ATI TechnologiesのRADEON 9600 XTは、コードネームRV360と呼ばれていたビデオチップであり、RADEON 9600シリーズの最上位となる製品である。RADEON 9600 XTは、アーキテクチャ的にはRADEON 9600 PROとほぼ同一であるが、層間絶縁膜にLow-kを採用していることが特徴だ。Low-kの採用によって配線遅延を小さくできるので、より高クロックでの動作が可能になる。

 RADEON 9600 XTでは、コアクロック500MHz、メモリクロック600MHzが定格となっているが、RADEON 9800 XTと同様に動的にオーバークロックを行なう「ATI OVERDRIVE」機能が搭載されている。ATI OVERDRIVEは、内蔵サーミスタによりチップの温度を計測しチップに余裕がある場合、自動的にコアクロックを550MHzまでの範囲で向上させるというものだ。

 ちなみに、RADEON 9600 PROのコアクロックは400MHzで、メモリクロックは600MHzなので、RADEON 9600 XTでは、コアクロックは25~37.5%(ATI OVERDRIVE有効時)も向上していることになるが、メモリクロックは変わっていない。メモリバス幅はGeForce FX 5700 Ultraと同じく128bitなので、メモリ帯域幅は9.6GB/secとなる。RADEON 9600 XTも、メモリとしてDDR/DDR2をサポートするが、基本的にはDDRメモリを採用することになる。

RADEON 9600 XT搭載リファレンスカードの裏側。裏側にもメモリチップが4つ実装されている RADEON 9600 XT搭載リファレンスカードのブラケット部。アナログRGB端子とDVI-I端子、S端子を装備している


●ともに1スロットしか占有しない

 今回は、GeForce FX 5700 Ultra搭載リファレンスカードとRADEON 9600 XT搭載リファレンスカードを入手したが、両製品とも冷却機構は比較的シンプルであり、特別な機構は採用されていない。そのため、AGPスロットの1スロット分しか占有せず、隣接しているPCIスロットの利用も可能だ。

 GeForce FX 5700 Ultra搭載リファレンスカードでは、ビデオチップだけでなく、メモリチップもヒートシンクで覆われているのに対し、RADEON 9600 XT搭載リファレンスカードでは、メモリチップは剥き出しとなっている。GeForce FX 5700 Ultraのほうが、RADEON 9600 XTに比べてメモリクロックが1.5倍も高いため、その分メモリチップの発熱も大きいためであろう。

 また、GeForce FX 5700 Ultra搭載リファレンスカードでは、AGPスロットからの電源供給では足りず、周辺機器用電源コネクタからも電源を供給してやる必要があるのに対し、RADEON 9600 XT搭載リファレンスカードでは、RADEON 9600 PRO搭載ビデオカードと同様に、AGPスロットからの電源供給だけで動作する。

下がGeForce FX 5700 Ultra搭載リファレンスカード、上がGeForce FX 5600 Ultra搭載ビデオカード(Leadtek製)。GeForce FX 5700 Ultra搭載ビデオカードの方が、カードの長さがやや長くなっている 左から、RADEON 9600 XT搭載リファレンスカード、RADEON 9600 PRO搭載ビデオカード(クリエイティブメディア製)、RADEON 9500 PRO搭載ビデオカード(XIAi製)。カードの長さはほぼ同一である。また、RADEON 9500 PRO搭載ビデオカードのみ、外部電源供給用コネクタを装備している


●DirectX 8ベースのベンチマークでは、GeForce FX 5700 Ultraが優位

 それでは、GeForce FX 5700 UltraとRADEON 9600 XTのパフォーマンス検証に移りたい。比較対照用に、GeForce FX 5600 Ultra搭載ビデオカードとRADEON 9600 PRO搭載ビデオカード、RADEON 9500 PRO搭載ビデオカードを用意した。搭載ビデオメモリ容量はすべて128MBである。

 テスト環境は、以下に示したとおりで、ディスプレイドライバのバージョンは、RADEON 9600 XT/PROがCATALYST 3.8(6.14.10.6387)、GeForce FX 5700 Ultra/FX 5600 UltraがForceWare v52.16である。ちなみに、Detonator FX v45.23ではAquaMark3で飛行体の影が描写されないというバグがあったが、ForceWare v52.16では、影が正常に描画されるようになっている。

 なお、RADEON 9600 XTでは、ATI OVERDRIVE機能を装備しているはずだが、CATALYST 3.8では、ATI OVERDRIVE設定用のタブが表示されず、ATI OVERDRIVEを有効にすることはできなかった。

 CATALYST 3.8のリリースノートには、本バージョンではRADEON 9800 XTのみATI OVERDRIVEが有効にできると書かれており、おそらくRADEON 9600 XTにおけるATI OVERDRIVE機能は、今後のバージョン(CATALYST 3.9以降)でサポートされるものと思われる。そのためここでは、ATI OVERDRIVEはオフにした状態(コアクロック500MHzの定格動作)でベンチマークを行なっている。

 ベンチマークテストとしては、DirectX 8環境でのパフォーマンスを計測する3DMark2001 SEとUnreal Tournament 2003のFlyby、FINAL FANTASY Official Benchmark 2、DirectX 9環境でのパフォーマンスを計測する3DMark03とAquaMark3を用いた。

 3DMark2001 SEと3DMark03、AquaMark3は、1,024×768ドット/1,280×1,024ドット/1,600×1,200ドットの3種類の解像度で、それぞれFSAA無効/FSAA 4X有効/FSAA 4X有効+異方性フィルタリング8X有効(Aniso 8X)という条件で、Unreal Tournament 2003は、1,280×960ドット/1,600×1,200ドットの2種類の解像度で、それぞれFSAA無効/FSAA 4X有効/FSAA 4X有効+異方性フィルタリング8X有効(Aniso 8X)という条件で計測を行なった。

 また、FINAL FANTASY Official Benchmark 2については、Lowモード(640×480ドット)とHighモード(1,024×768ドット)の2種類の解像度で、それぞれFSAA無効/FSAA 4X有効/FSAA 4X有効+異方性フィルタリング8X有効(Aniso 8X)という条件で計測を行なった。

 ちなみに、テスト環境およびベンチマークプログラム、テスト条件は、前回掲載したRADEON 9800 XTの記事(http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1017/hotrev232.htm)と同一なので、今回のスコアを前回の結果と直接比較することも可能である(ただし、GeForce FX系のみ、前回の記事とはディスプレイドライバのバージョンが違う)。

【テスト環境】
CPUPentium 4 3.20GHz(HTテクノロジ有効)
マザーボードASUSTeK P4P800(Intel 865PE搭載)
メモリPC3200 DDR SDRAM 256MB×2
HDD日立GST Deskstar 180GXP IC35L060AVV207-0 (60GB)
OSWindows XP Professional日本語版 SP1a+DirectX 9.0b

 まず、DirectX 8ベースのベンチマーク結果から見ていこう。3DMark2001 SE(グラフ1)のスコアは、すべてのテスト条件においてGeForce FX 5700 Ultraがトップとなっている。ビデオチップへの負荷が比較的低い状態では、RADEON 9600 XTとRADEON 9500 PROがほぼ互角のスコアで2位グループを形成しているが、高解像度でFSAA 4Xや異方性フィルタリングを有効にした状態では、RADEON 9500 PROがRADEON 9600 XTを大きく上回るようになる。GeForce FX 5600 UltraとRADEON 9600 PROが3位グループを形成しているが、ビデオチップへの負荷が低い状態ではRADEON 9600 PROが優位で、負荷が高くなるとGeForce FX 5600 Ultraが優位となる。

 Unreal Tournament 2003 Flyby(グラフ2)のフレームレートは、すべてのテスト条件において、RADEON 9500 PROがトップとなっているが、GeForce FX 5700 Ultraも僅差でそれに続いている。RADEON 9600 XTも低負荷時はGeForce FX 5700 Ultraとほぼ同等のフレームレートを実現しているが、1,600×1,200ドットモードでFSAA 4Xや異方性フィルタリングを有効にすると、GeForce FX 5700 Ultraに比べて、かなりフレームレートが低下する。GeForce FX 5600 UltraとRADEON 9600 PROの比較については、3DMark2001 SEと傾向はよく似ており、低負荷時はRADEON 9600 PROが優位だが、負荷が高くなるとGeForce FX 5600 Ultraが逆転する。

 FINAL FANTASY Official Benchmark 2(グラフ3)のスコアは、GeForce FX 5700 UltraとRADEON 9500 PROがほぼ同スコアで1位グループとなり、RADEON 9600 XTが僅差で続いている。次がRADEON 9600 PROで、GeForce FX 5600 Ultraは、他の4製品に比べるとかなりスコアは低い。

 以上の結果から判断して、DirectX 8ベースのアプリケーションで、GeForce FX 5700 UltraとRADEON 9600 XTのパフォーマンスを比べた場合、GeForce FX 5700 Ultraが優位だといえる。

 なお、RADEON 9500 PROのパフォーマンスがRADEON 9600 PROよりも高いのは、RADEON 9500 PROがRADEON 9700コアをベースにメモリバス幅を128bit幅に制限したバージョンであるため、8本のピクセルパイプラインを搭載しているのに対し、RADEON 9600 PRO/XTでは、その半分の4本しかピクセルパイプラインを搭載していないためである。RADEON 9500 PROのコアクロックは275MHzで、メモリクロック540MHzと低いが、クロックあたりに描画できるピクセルの数がRADEON 9600 PRO/XTの2倍になるため、RADEON 9600 PROの性能を上回るのだ。

 しかし、GeForce FX 5700 Ultraは、そのRADEON 9500 PROと比較しても、互角以上の戦いを繰り広げていることに注目したい。

■ベンチマーク結果

【グラフ1】3DMark2001 SE 【グラフ2】Unreal Tournament 2003 Flyby

【グラフ3】FINAL FANTASY Official Benchmark 2




●DirectX 9ベースのベンチマークでも、GeForce FX 5700 Ultraがやや優位

 次に、DirectX 9ベースのベンチマーク結果を比較してみる。3DMark03(グラフ4)のスコアは、すべての条件において、GeForce FX 5700 Ultraがトップの成績をおさめており、次がRADEON 9500 PROとRADEON 9600 XTとなっている。

 RADEON 9500 PROは、ビデオチップへの負荷が高くなってもスコアがあまり落ちていないが、RADEON 9600 XTは、低負荷時はRADEON 9500 PROを上回り、GeForce FX 5700 Ultraに迫るスコアを出しているものの、負荷が高くなるとRADEON 9500 PROに逆転されている。

 GeForce FX 5700 Ultraは、FSAA 4X有効時でもスコアがあまり落ちていないが、GeForce FX 5700 UltraはRADEON 9600 XTに比べて、ビデオメモリの帯域幅が広いことと、高速なFSAAを実現するIntellisample HCTの威力が現れているのであろう。それに対して、GeForce FX 5600 Ultraのスコアはあまり振るわない。

 AquaMark3(グラフ5)の結果は、条件によってトップが入れ替わっている。FSAA 4Xや異方性フィルタリングをかけない状態では、GeForce FX 5700 Ultraが僅差でトップとなり、RADEON 9600 XTとRADEON 9500 PROがそれに続いているが、FSAA 4X有効時やFSAA 4X+異方性フィルタリング有効時は、RADEON 9600 XTとRADEON 9500 PROがGeForce FX 5700 Ultraのフレームレートを上回る。1,024×768ドットモードと1,280×1,024ドットモードで、FSAA 4Xや異方性フィルタリングを有効にした場合は、RADEON 9600 XTがRADEON 9500 PROをわずかに上回っているが、1,600×1,200ドットモードでFSAA 4Xや異方性フィルタリングを有効にした場合は、RADEON 9500 PROが優位となる。

 DirectX 9ベースのベンチマークプログラムはまだあまり多くないため、この2つのテスト結果だけで、優劣をつけるのは難しいが、3DMark03のスコアから判断すれば、GeForce FX 5700 UltraはRADEON 9600 XTと少なくとも同等以上のパフォーマンスを実現しているといえる。ただし、FSAA 4Xや異方性フィルタリングを有効にしていない状態での差はわずかなので、ATI OVERDRIVEをオンにすることで、スコアが逆転する可能性もある。

【グラフ4】3DMark03 【グラフ5】AquaMark3




●ハイエンドではRADEONが優位だが、ミドルレンジではGeForce FXが優位か

 GeForce FX 5700 Ultra搭載ビデオカードとRADEON 9600 XT搭載ビデオカードの米国での実売価格はどちらも199ドル程度とされており、価格的にも真っ向からぶつかる。ATI TechnologiesとNVIDIAの戦いは、ハイエンドからミドルレンジ(メインストリーム)、バリューまで、すべてのレンジで行なわれているのだが、ハイエンドモデルについては、RADEON 9700 PROの登場以降、ATI Technologiesが性能的に優位に戦いを進めてきている。

 最新製品のRADEON 9800 XT対GeForce FX 5950 Ultraでは、性能差は大きく縮まっており、ベンチマークテストによっては、GeForce FX 5950 Ultraが上回る場合もあるが、総合的に判断するとややRADEON 9800 XTが優位である。

 それに対して、ミドルレンジクラスのGeForce FX 5700 Ultra対RADEON 9600 XTでは、今回のテスト結果から判断して、GeForce FX 5700 Ultraのほうが性能的にやや優位だといえる。前世代のGeForce FX 5600 Ultra対RADEON 9600 PROでは、RADEON 9600 PROがかなりの差をつけて上回っていたことを考えると、今回のGeForce FX 5700 Ultraには、ATI Technologiesには性能面でなんとしても負けたくないという、NVIDIAの意地が感じられる。

 もちろん、RADEON 9600 XTのパフォーマンスも、このクラスのビデオカードとしては十分高く、ATI OVERDRIVEを有効にすることで、さらにパフォーマンスの上乗せが期待される。RADEON 8500やGeForce3あたりから乗り換えるのなら、どちらを選んでも十分満足できるだろう。

 実売価格は両製品とも、GeForce FX 5950 UltraやRADEON 9800 XTの半分以下になると予想されるので、3Dゲームを快適に遊びたいが、コストパフォーマンスも重視したいというユーザーにもお勧めできる。

□関連記事
【10月24日】NVIDIA、GeForce FX 5950 Ultra/5700 Ultraを発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1024/nvidia.htm
【10月2日】ATI、RADEON 9800 XTとRADEON 9600 XTを発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1002/ati.htm

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(2003年10月31日)

[Reported by 石井英男]


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