元麻布春男の週刊PCホットライン

本格的なデスクトップ用OSを目指す「TurboLinux 10 Desktop」


●Windowsとの互換性を高める姿勢

冒頭で挨拶に立ったターボリナックの渡邊肇会長兼CEO

 ターボリナック株式会社は2日、デスクトップ向けの新しいLinuxパッケージとして「TurboLinux 10 Desktop」の発表を行なった。

 位置づけとしては、これまで発売されてきた「Turbolinux 8 Workstation」の後継となるものだが、名称が「Desktop」に変わったことでも明らかなように、ワークステーション指向からもっと一般的なデスクトップPCでの利用を目指す方向にシフトしている。

 それを最も端的にあらわすのが同社の造語である「Windowsability」という言葉。1台のマシン(HDD)内でのWindowsとの共存性、1つのネットワーク内でのWindowsとの共存性を高めると同時に、Windowsユーザーにも違和感のない操作性を提供しようという試みだ。

 Windowsがプリインストールされたシステムに対し、WindowsのブートパーティションをリサイズしてTurboLinuxのインストール領域を確保するパーティショニングツール「Acronis PartitionExpert 2003(製品版)」を同梱したほか、同一ハードディスク内のWindowsパーティションの自動マウントによるアクセス、Windowsネットワークとのシームレスな統合はもちろんのこと、ローカルディスク、ネットワークのいずれの場合においても日本語のフォルダ名やファイル名に完全対応しており、データの移行や共有が容易になっている。また、リコーの日本語TrueTypeフォントの搭載により、WindowsでポピュラーなMSゴシック、MS明朝との高い互換性を確保したほか、ビットマップフォントを併用することでWindowsと同等レベルの視認性を実現した。

 システムのアップデートも、Windows Updateに慣れたユーザーなら違和感なく操作できるTurboアップデートを用意する(無償。提供期間は未定だが最低3年間は提供する予定であるという)。同時に、追加ソフトウェアの簡単インストールを実現する「Cuick In」デリバリーサービスも提供される。こちらも無償のサービスであるため認証等は不要で、マウスのクリックでソフトウェアパッケージのダウンロードからインストールが可能になるという(どれくらいの数のソフトウェアが提供されるのかは現時点で不明)。

 こうしたシステム面での工夫だけでなく、アプリケーション環境という点でも日本語入力ソフトに「ATOK X for Linux」を採用したことに加え、最新版の「StarSuite 7」を搭載した。StarSuite 7は、これまでのStarSuite 6に比べてもMicrosoft Office XPとの互換性が向上したほか、PDFへの書き出し、Macromedia Flashファイル書き出し機能を備えるなど、機能が拡張されている(Windows版StarSuite 7の優待価格による提供も予定)。

 印刷についてもキヤノンおよびエプソンのインクジェットプリンタ、沖データのMICROLINEプリンタ用のドライバを収録し、日本語での印刷環境をWindowsに近づけようという努力が払われている。マニュアルも通常のユーザーガイド等に加え、Windowsからの移行ガイドを用意するなど、Windowsユーザー(特にサポート期間の切れたWindows 95やWindows 98のユーザー)を獲得しようという意気込みが見える。


●kernel 2.6を採用。電源管理にも期待

 Linuxとしての最大の特徴は、商用パッケージとしてはおそらく世界初のkernel 2.6ベースの製品であること。現時点でkernel 2.6は正式リリースされておらずTest 5ベースとなっているが、正式リリース後、上述のTurboアップデートにより対応する予定だ。今度TurboLinuxは、United Linuxベースのエンタープライズサーバと2系統に分かれて進化していくことになる。

 kernel 2.6の採用により、Gigabit EthernetやUSB 2.0の正式対応を含めたパフォーマンスの向上が図られたほか、ACPI対応によりノートPCの省電力管理機能への対応が向上、電源スイッチによる自動シャットダウンも可能となる。ただし、一部の古いACPI BIOS搭載システムでのトラブルのため、ACPIはインストールデフォルトでは無効になっている。

ターボリナックスが参考資料として発表した価格比較。すべてを鵜呑みにはできないが、追加サポートコストがない点は評価できる

 また、kernel 2.4のAPMベースの電源管理では、HyperThreadingに対応できなかった(HyperThreadingを有効にするとAPMによる電源管理をあきらめなければならなかった)が、kernel 2.6ならばこの問題も解消すると思われる。

 このTurboLinux 10 Desktopは、通常版(これまでのTurboLinux 8 Workstationと同じ本体価格15,800円)に加え、リコーフォント、プリンタドライバ等を除く商用ソフトを省略することで3,980円という低価格を実現したBasicの2パッケージが用意される。Basicはサポート期間も短縮されており、すでにLinuxを利用中でATOK X for Linuxを持っているパワーユーザー向けの製品という位置づけだ。このBasicから通常版へのアップデートも、差額で可能になる見込みである。

 もちろん、OSの価格は初期導入価格だけでなく、ライフサイクルコストで考えなければならない。図は発表会で提示された3年間の企業ユースにおけるコスト比較だが、TurboLinux 10 Desktopが群を抜いて安いのが分かる。もちろん、この図にツッコミを入れようと思えば、1,000ライセンスの企業なら普通ボリュームライセンスするだろうとか、企業でWindows XP Home Editionはないだろうとか、アンチウイルスソフトの7,200円は高すぎないかとか、WindowsにOpenOfficeならどうなるとか、いくらでも入れられる。だが、2年目以降に追加コストがかからない、という同社の主張は汲んであげるべきだろう。


●好感が持てる細やかな配慮

 このTurboLinux 10 Desktopは、これまで“Suzuka”という開発コード名で呼ばれていたもの。8月には公開ベータテストも行なわれた。

 筆者もこのベータをインストールしてみたが、GUIベースのインストーラのインストールオプションでキーボードのCtrlとCapsを入れ替えられたり(CUIベースではすでにサポートされていたようだが)、付属のエディタのひとつは1行の折り返し文字数を指定できたりと、日本人が開発に参加していることが実感できる芸の細かさを感じていた。

 ベータテスト時には含まれていなかった商用ソフトもバンドルされたTurbo Linux 10 Desktop、機会を改めて実際にインストールして評価してみたいと思っている。


□ターボリナックスのホームページ
http://www.turbolinux.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.turbolinux.co.jp/news/2003/oct/tl1002.html
□製品情報
http://www.turbolinux.co.jp/products/desktop/10d/
□関連記事
【10月2日】9,800円で5台までインストールできるOfficeスイート「StarSuite 7」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1002/source.htm

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(2003年9月24日)

[Text by 元麻布春男]


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