●IDFの裏番組ではDDR2の秘密会議? Intelの長期的なメモリ戦略と、次々世代チップセット「Lakeport(レイクポート)」の姿が、Intel Developer Forum(IDF)で明らかになりはじめた。 Intelは、1年に一段ずつのペースでのメモリ高速化を今後も続ける。2004年第2四半期にDDR2-400/533メモリをサポートするのに続き、2005年には早くもDDR2-667をサポートする。さらに、次世代メモリモジュールとして、Intelが標準規格に推している「Fully Buffered DIMM(FB-DIMM) 1」も2005年にサポートする計画だ。これらのフィーチャは、2005年前半に投入される第2世代のPCI ExpressチップセットLakeportで実現される見込みだ。 Intelは、IDFのメモリセッションで、これらの計画の一部を公表した。もっとも、Intelのメモリ戦略の全容は、IDFでの発表内容だけでは把握できない。Intelは、IDF前日にメモリ関連のベンダーを集めて、DDR2バリデーションの計画を説明するイベントを開催しており、全容はそちらでしか明かされなかったようだ。 しかし、JEDEC(米国の電子工業会EIAの下部組織で、半導体の標準化団体)でのDRAM標準化の動きや、IDFでの各社の説明、業界筋からの情報を総合すると概要はつかめてくる。また、メモリ回りと同時に、チップセットLakeportの姿も見え始めた。
●2005年のチップセットLakeportの姿は Lakeportのメモリサポートは、すでに伝えたようにデュアルチャネルインターフェイスのDDR2-667で、FB-DIMM 1もサポートする計画ようだ。デュアルチャネルDDR2-667では、メモリ帯域は10.7GB/secに達する。そのため、CPU側のFSB(フロントサイドバス)もそれに合わせた1,333MHz(帯域10.7GB/sec)になる可能性がある。ちなみに、2004年のチップセット「Grantsdale(グランツデール)」は800/1,067MHz FSBをサポートする。 複数の情報筋によるとLakeportはIntelの次々世代CPU「Tejas(テハス)」と、Tejas後継の65nmプロセス世代CPU「Tejas-C(Tejas Compaction)」に対応するという。Tejas-Cは、「CederMill(シーダーミル)」というコードネームになったという情報もある。Grantsdaleが、0.13μm版Pentium 4(Northwood:ノースウッド)からPrescott(プレスコット)への橋渡しのチップセットであるのと同様に、LakeportはTejasからTejas-Cへの橋渡しをするらしい。 一方、内蔵グラフィックスの強化は、Lakeportでは比較的小規模に留まる可能性が高い。Grantsdale-Gは完全に新設計のDirectX9 Shader 2.0相当のハードウェアを備えたGPUコアを内蔵するが、LakeportのGPUコアもその発展型になると見られる。2005年という時期を考えると、Shader 3.0に対応する可能性もある。 では、Lakeport時代のメモリはどうなるのだろう。 ●DDR2-667は2005年で確定 IDFでの公式なメモリ戦略アップデートは以下の通り。
2005年にDDR2-667というのは、すでにDRAM業界の合意事項だと言ってもいい。実際、Intelに続いてプレゼンテーションを行なったDRAMベンダーの多くは、2004年中からDDR2-667を採れると主張していた。
例えば、DDR2製品化で先頭を切るエルピーダメモリの示したチャートでは、256Mbit品で2004年前半の段階でスピード派生は60%程度、512Mbit品で2004年前半が30%程度となっていた。DRAMの場合、30%以上派生するのなら製品化してもビジネスになると言われている。また、標準化を行なうJEDECでもDDR2-400/533に続けてDDR2-667のスペックの策定を行なっている。 DDR2はPrefetch 4アーキテクチャ(1サイクルに4n個づつデータをフェッチする)を採るため、DDR2-667の場合はインターフェイスの転送レートが667Mtps(transfer per second)でも、DRAMセルの周波数は167MHzで済む。つまり、DRAMセル自体のパフォーマンスはDDR333(Prefetch 2でDRAMセルは167MHz)と同等でもいいわけだ。そのため、DRAMベンダーにとって、DDR2-667は比較的ハードルが低いと推測される。 こうした背景から、2005年前半ならDDR2-667の製品化は十分に間に合うと見られる。DDR2は、デスクトップでは2003年春にDDR2-533でスタート、2004年春にDDR2-667へとステップアップして行くと思われる。つまり、DDR266(2002年頭)→DDR333(2003年秋)→DDR400(2003年)と継続してきた1年1回のメモリ高速化は継続されることになる。 ●ようやく輪郭が見えてきたFB-DIMM
このコーナーで何回か紹介したFB-DIMMも、いよいよ表に出てきた。IDFのチャートでは、FB-DIMMは2005年のサポートになっていた。FB-DIMM自体は、IntelがDRAMベンダーと策定していた次世代DRAM「ADT(Advanced DRAM Technology)」で検討した技術をベースにしていると言われる。FB-DIMMについては、これまでほとんど概要がわからなかったが、IDFの3日目(木曜日)のセッションで、多少の情報が明らかにされる見込みだ。 現時点でプレゼンテーション資料からわかる事項は少ないが、非常に興味深い。FB-DIMMはDDR2とその先のメモリのためのロングタームのソリューションだ。どうやらIntelはDDR2だけでなくDDR3も同じFB-DIMMインターフェイスでカバーすることを考えているらしい。 対象としているのはDDR2-667以上。そのため、DDR2-667は従来のDIMMとFB-DIMMの2種類が並存することになるようだ。基本的にはDIMM上のbufferチップをポイントツーポイントで接続する。チップセット-DIMM間を接続するだけでなく、bufferチップ同士をリンク状に接続することで、最大8DIMM/チャネルまで接続できるようにする。ちなみに、DDR2-400でODT(On-Die Termination)を使う場合にはサーバーでRegistered DIMMを使う場合でも最大4Ranks(1Bank×4DIMM、2Bank×2DIMM、1Bank×2DIMM+2Bank DIMM)に制約される。 ちなみに、IDFのプレゼンテーションではFB-DIMMはサーバー向けのような説明となっている。しかし、実際には標準化ではPC向けメモリも含めた話がされているらしい。また、IntelのPC向けチップセットもLakeportで、FB-DIMM対応すると言われている。サーバーはDDR2-400からFB-DIMMでのDDR2-667へ移行、デスクトップはDDR2-533から667へそのまま移行して、DDR2-800以上でFB-DIMMへ持って行くつもりなのかもしれない。 ●温度差があるDDR2メモリへの対応 今回のIDFでは、エルピーダ、Samsung Electronics、Micron Technology、Infineon、Hynixなど主要DRAMベンダー各社もプレゼンテーションを行なった。DDR2に対しては、実際にはDRAMベンダーで温度差はあるものの、各社とも発表ではDDR2への強いサポートを表明した。また、DDR2が2004年に限られた量(10%まで)で立ち上がり、2005年に一気にDDRを抜いてDRAMの主流になるという点でも、共通認識を見せた。 つまり、発表を見る限り、各社とも2004年にDDR2を立ち上げ、2005年に一気に普及させるという戦略を採っていることになる。もっとも、IDFでのプレゼンテーションは事前にIntelから流れを指示されるため、Intelの意向に沿ったものになっていると指摘する業界関係者もいる。 温度差が明確に見えるのはDDR2とDDR3のパーティショニングの部分。エルピーダがDDR2-667までと示し、800Mtps以上はDDR3に塗り分けたのに対して、他のDRAMベンダーはDDR2を800Mtpsまで引っ張るロードマップを見せた。
その一方、共通していたのはFB-DIMMに対する姿勢。どのベンダーも、FB-DIMMへの明確な支持は表明しなかった。その理由は、以前このコラムで紹介した通り、FB-DIMMの標準化を巡っては、JEDEC内部でIntelとAMDが激しく争っており、まだ標準規格にもなっていないためだと思われる。 いよいよ見え始めたIntelのDDR2戦略。本格的なバリデーションも始まり、来春スタートに向けてようやく動き始めた。 □関連記事【7月29日】【海外】次世代メモリモジュール規格で激突するIntelとAMD http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0729/kaigai007.htm 【7月11日】【海外】2006年にはDIMMスロットはたった1スロット/チャネルに? http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0711/kaigai002.htm (2003年9月18日) [Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]
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