筆者は怠け者なので、プリンタというものが苦手だ。満足のいく出力を得るためにトライ&エラーを繰り返したり、紙やインクやトナーを補給したり、メカのメンテナンスをするのが面倒で、極力プリンタを使わずにすむよう、心がけてきた。 だが、子どもが生まれて状況が変わった。写真やビデオを大量に撮り、親戚や知り合いにバラまかなければならなくなったのだ。バラまきたいわけではないが、筆者の愚娘のような者の写真でも、欲しがる人はいるものだ。 ところが、写真を欲しがる人たちの大半は、PCやインターネットやデジタルカメラのことがよくわからないのだった。彼ら彼女らにとって写真は、メールで受け取ったりPCのディスプレイやTVに映したりするものではない。紙に印刷してあるものを、手渡しや郵政省メールで受け取り、アルバムや額に入れて眺めるものなのだ。 しかたなくインクジェットプリンタに自らのPCをつなぎ、フォトインクや光沢紙を補充したが、インクジェットプリンタというものに慣れていない身の悲しさ、見るに耐える写真を印刷するのにも大変な苦労をした。 筆者宅のプリンタはいまどきの製品なので、普通の人ならたいした苦労もなくきれいなプリントアウトを得られる。が、筆者は特にひどい怠け者で、プリンタのごく基本的な知識も欠いていたし、そもそも写真撮影やレタッチの腕前もひどいため、普通の人の5倍は苦労しないとまともなプリントができなかった。 さらに、プリンタがひたすらガタガタと動き続けるのにも困った。なにしろ、親戚知人のリクエストにきちんと応えようと思ったら、少なくとも1回に50枚は印刷しなければならない。何十分も印刷を続けることになる。その間、音や振動が少しく発生する。印刷している間、紙やインクの残量に気を使わなければならないのも、重度の怠け者にとってはツラい。 ●印刷はまかせた! けど
というわけで、親戚知人向けの写真の印刷は、筆者よりも怠け者でない人たちにおまかせすることにした。 町を歩けば「デジカメで撮ったらプリントしよう」という広告が写真店の店頭に貼ってあるのを、よく目にする。デジタルカメラに関わるビジネスは、この不況の中でも活況を呈している。デジタルカメラの画像をプリントするサービスもそのひとつで、日本国内外の名だたるフィルムメーカーやハードメーカーが名乗りを上げている。 デジタルカメラのプリントサービスを筆者なりに分類すると、大雑把に次の3種類になる。 (1)店頭にあるセルフプリンタを操作してプリントする
(1)はその場ですぐに、きれいにプリントできるのが魅力だ。たいていのプリントサービスでは、プリントされたものを受け取るまで数十分から1日の時間がかかるが、セルフプリンタならそんなに時間はかからない。まずはこれを利用したのだが、1枚、2枚のプリントには便利でも、1回に50枚も印刷するような用途には向かないことがわかった。セルフプリンタで50枚印刷するのはやっぱり時間がかかるのだ。店頭のプリンタの前で、10分も20分も待っているわけにはいかない。そもそも1度に50枚も印刷できない仕様の機械もあったりする。 さらにおっくうなのがメディア内の印刷したい画像を選ぶ作業で、筆者が利用したセルフプリンタはどれも、サムネールや画像の表示が遅かったり、枚数などの指定がやりにくかったりした。もっとも、これに関しては、プリントしたい画像をデジタルカメラ上で指定する「DPOF」機能を使えばだいぶ改善される。筆者はセルフプリンタを使うまで、なぜDPOFという規格があるのか、理解できなかった。 (2)は、銀塩カメラのフィルムを現像してもらうのと同じ感覚で利用できる。数十分から1日の時間を要するものの、印刷中にプリンタに張り付いている必要はない。だから、何枚でも気兼ねなく印刷できる。 が、怠け者にとっては、これも面倒なところがある。デジカメで撮影した画像は、PCに取り込み、プリントしたい画像を選んで、解像度を変えたり、色を補正するなどのレタッチを施す。これはプリントしない場合にもやらなければいけないことだからいいのだが、プリントする場合はさらにメモリカードやCD-Rなどに書き込み、写真屋さんに持っていかなければならない。ずぼらなので、せっかく用意したメディアを間違えて持っていったり、持って出ても写真屋さんに寄るのを忘れたりする。 さらに、プリント料金も問題だ。銀塩の場合と同じく、デジカメプリントでもプリント1回につき500円程度の基本料金と、L判1枚につき35~45円程度のプリント代がかかる。基本料金が不要だったり、プリント代が安い店もあるが、筆者の行動範囲にはそういう店舗がない。基本料金を浮かすために、遠くの店に持ち込むような気力は持ち合わせていない。会社に行くついでに注文し、帰りに受け取る、くらいの気軽さがほしい。 ●気軽さでネットプリントを選択
(3)は「ネットプリント」とか「オンラインプリント」と呼ばれるサービスだ。プリント会社のサーバーにプリントしたい写真をアップロードし、サイズや枚数を指定してやる。プリントされた写真は、自宅に郵送してもらうか(この場合はクレジットカード等で代金を支払う)、取扱店で代金と引き換えに受け取ることになる。Windows XPには「オンラインでのプリントの注文ウィザード」が標準で搭載されているから、これをすでに利用したことがある人もいるだろう。 ネットプリントサービスには、オンラインアルバム(写真共有サービス)と組み合わされたところもある。オンラインアルバムにアップロードした画像を、プリント注文できるわけだ。これならインターネットを使える人たちにも写真を見せることができるため、一石二鳥だ。 ネットプリントなら、安価なサービスを選んで、PCから直接、写真をアップロードすればいいだけだ。わざわざ出かける必要もなく、24時間のうち自分の好きな時間に注文できる。 料金は(2)に近い。基本料金が必要なところと不要なところがあるのは同じだが、プリント料金はだいたい1枚35円程度、安いところでは25円なんていうのもあるようだ。ただ、郵送を選ぶと200~500円程度の送料がかかる。自宅までプリントを届けてもらえるのは便利だが、自宅や勤務先の近所に取扱店があるなら、こちらで受け取ったほうが安くあがる。 ●信頼感と店舗数でパレットネットを選択
数あるネットプリントサービスの中から筆者が選んだのは、「パレットネットプリント」だ。パレットプラザというDPEショップを全国に展開している株式会社プラザクリエイトのサービスだ。すでにプリント事業を大規模に手がけている会社のサービスだし、富士写真フイルムの出力機を採用しているようなので、プリント品質は心配なさそうだ。筆者はすでに10回ほどお世話になっているが、トラブルは今のところない。 こうしたサービスでは出力側で自動的に色補正をかけてくれる。作品づくりをしたい人にはおせっかいな補正だが、撮影の腕前に自信のない筆者にはありがたい。また、補正をかけたくなければ、そのように指定することもできる。 料金はL判1枚につき35円と標準的で、基本料金は不要だ。L判(127×89mm)のほかに、デジタルカメラ画像の縦横比にあわせた「DSC」(119×89mm)というサイズも用意されていて、こちらも料金はL判と同じだ。 写真はパレットプラザで受け取れるから、送料を浮かすこともできる。すべてのパレットプラザで受け取れるわけではなく、ネットプリントの取扱店のみとなるが、それでも店舗がやたらとあるので、行動範囲内に取扱店がある確率は高いだろう。なお、郵送を頼んでも送料は150円という安さだ。筆者の場合、勤務先のすぐ近所に取扱店があったので、ここで受け取るようにした。 パレットネットには以前はオンラインアルバムサービスがあっていたようなのだが、現在はやっていない。だから、オンラインな人のためには別途、オンラインアルバムサービスを探して利用することになる。 アルバムはないが、パレットネットにはアップロードした画像をプリント後も保管しておく「焼き増しBOX」というサービスがある。その名のとおり、さらにプリントを追加したくなったら、再度アップロードする手間が省ける。ただし、保管してくれるのは14日間だ。 ●専用クライアントも選択理由に
パレットネットプリントを選択した理由はもう1つある。それは、パレットネット専用のクライアントソフトが無償で用意されていることだ。このソフトを使えば、オフラインでアップロードする画像や、プリントサイズ、枚数などを指定し、オンラインの時に指定に従って、パレットネットのサーバーへアップロードできる。 たいていのネットプリントサービスでは、ブラウザでサイトにアクセスし、フォームなどを使って枚数を指定したり、画像をアップロードするようになっている。ブラウザさえあればアップロードできるのは手軽だが、操作性に関してはどうしても専用クライアントよりも劣ってしまう。また、サイトや回線が混雑していると、フォームのレスポンスが悪くなったり、アップロードに異常に時間がかかったりして、イライラさせられることもある。
専用クライアントはエクスプローラライクなインターフェイスで、わかりやすく、操作しやすい。難点があるとすれば、「パレットネットプリント注文ソフト ラクラクネットプリント」という芸のない名前と、センスの感じられない外観くらいか。1つの画像に複数のサイズを指定できない(Aという画像を、L判と六切で2枚ずつ、といった指定ができない)、という不満もあるが、これはあらかじめその画像を複製しておくことで可能になる。 なまじエクスプローラライクなインターフェイスになっているので、画像管理ソフトのような機能も期待してしまうが、クライアント上では画像のコピーや移動、削除さえもできないし、フォトレタッチソフトとの連携もしない。完全に、オンラインプリント発注しかできないソフトになっているのだ。だから、画像管理ソフトやフォトレタッチソフトで整理した後、おもむろにクライアントを起動して発注する、という手間を踏むことになる。 慣れればどうということのない手間ではあるが、使いなれた画像管理ソフト(筆者の場合はViX)から発注できれば、この過程はもっと楽だろう。「オンラインプリントインターフェイス」のような規格を制定して、この規格に対応した画像管理ソフトやフォトレタッチソフトから直接発注できるような仕組みはできないものか。アドビシステムズのPhotoshop Albumなどはオンラインプリント発注機能を備えているが、どんなソフトからでも、好きなサービスを選べるのが理想だ。
いや、似たような仕組みは実はもうある。Windows XPの「オンラインでのプリントの注文ウィザード」だ。たいへんよくできた仕組みなのだが、対応サービスが今のところ3つにとどまっている。これにパレットネットが対応してくれるなら、筆者としてはほぼ満足なのだが。
□関連記事 (2003年7月14日) [Text by tanak-sh@impress.co.jp]
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