●Centrinoを横目に、旧マシンにてこ入れ 3月12日の発表以来、IntelのCentrinoモバイルテクノロジを搭載したノートPCの発表が相次いでいる。Centrinoに含まれる無線LAN技術の有用性(他社製と比べた場合の)、あるいは無線LAN技術にIntel純正を採用せねばならないことの是非、については議論があるところかもしれないが、無線LAN技術がノートPCに標準搭載されること自体に反対の人はいないだろう。 筆者も早速Centrinoノート、と言いたいところだが、残念ながらそうはいかない。年に数回の海外取材の時くらいしかノートPCを携帯しない筆者にとって、ノートPCに割ける予算は限られている。そう頻繁に買い換えるわけにはいかないのだ。現在、筆者が使っているノートPCは、一昨年のIDF Fallの際(2001年8月)に現地のFry's Electronicsで購入したSatellite 3005-S303。購入してからすでに1年半落ちとなったノートPCだが、もう一働きしてもらわないと困る。 そうはいっても、このSatellite 3005-S303に全く不満がないわけではない。最大の不満は、HDDへのアクセスが気に障ることだ。たとえばシステムを起動してから、カーソルが砂時計から通常の矢印に変わるまで、やたらと時間がかかるように思うし、何かとHDDが遅いように感じるのだ。搭載しているメモリは256MBだが、起動時の遅さはメモリにはあまり関係ないハズ。Pentium III 850MHzというCPUは、今となっては決して高速な部類とはいえないが、現行のノートPCに使われている超低電圧版Pentium IIIの動作クロック(866MHz~933MHz)を考えれば、時代遅れ呼ばわりするにはまだ早すぎるように思う。 そこでテコ入れとして考えたのが、HDDの換装だ。Satellite 3005-S303に使われているのは富士通のMHM2200AT。9.5mm厚で2MBのキャッシュを備えた10GB/プラッタ世代の4,200rpmスピンドルHDDである。これをデスクトップPC並みの5,400rpmスピンドルのHDDに交換すれば、とりあえず筆者の不満は解消するのではないか。さすがに3.5インチHDDよりは割高であるとはいえ、2.5インチHDDの価格もずいぶんこなれてきている。いっちょう換えてみるか、と考えたわけだ。
●Travelstar 40GNXを選択 現在、市場に出回っている5,400rpmの2.5インチHDD(9.5mm厚)は、日立グローバルストレージテクノロジ(旧IBM)のTravelstar 40GNX(20GB/40GBの2モデル)、東芝のMK4019GAX(40GB)およびMK3019GAX(30GB)、MK6022GAX(60GB)というところ。MK6022GAXを除く4種はいずれも20GB/プラッタであるのに対し、MK6022GAXのみが30GB/プラッタと記録密度が向上しているが、その分、価格も高い。おおよそ3万円というのは、今となっては決して安くはないし、60GBという容量も、20GBのHDDに安住できている(もちろんそれはノートPCがサブマシンであるからなのだが)筆者にとって、いかにもトゥマッチに思われる。 かといって今と同じ20GBも進歩がないし、というわけで、実売価格も勘案した上で、Travelstar 40GNXの40GBモデル(IC25N040ATCS05)を購入することにした。購入前に、消費電力のことが若干気になっていたのだが、少なくともスペック表を見る限り、大きな差はない。スピンドル回転数が上がった分だけ、Travelstar 40GNXの消費電力は若干上がっているが、運用中の消費電力の差は0.1W程度。いくらノートPCといえど問題になる差ではないだろう。スピンドル回転数が30%近く向上し、記録密度がおおよそ倍、キャッシュサイズは4倍の8MBになっているのだから、それなりに性能向上の効果はあるハズだ。
●HDDの移行に「Norton Ghost 2003」を使用 さて、新しいHDDを購入したところで、古いディスクのバックアップを行なう。筆者は、マシンを乗り換える際にはOSを新たにインストールする主義だが、今回はマシンはそのままでHDDだけの換装である。しかも、使用率は決して高くないから、まだソフトウェア的な意味での調子も悪くない。そこで、古いHDDの中身をそのまま新しいHDDへ移すことにしたのだ。 今回この作業に用いたのは、シマンテックの「Norton Ghost 2003」である。Ghostは、基本的に英語版のままであるため、表示が英語であるとか、メニューの論理的な構造が英文法をベースにしているといった使いにくさがあるのだが、バックアップ先にCD-Rを選べば勝手にブータブルCD-Rにしてくれるし(DVD-Rを選べばブータブルDVD-Rができる)、外付けのUSBやIEEE 1394のデバイスに対するバックアップ/レストアも可能(レストアの際に用いるDOS用のUSB/IEEE 1394ドライバが添付されている)という長所がある。 実は筆者は、Satellite 3005-S303が内蔵するコンボドライブでCD-Rを焼いたことがほとんどなかったのだが、せっかく付いているんだし、このチャンスに使ってみようと思ったわけだ。Satellite 3005-S303のCドライブの使用量は約4.6GB。データ圧縮の効果もあり、700MB CD-Rメディア5枚でバックアップが完了した。 Satellite 3005-S303のHDDは、交換可能なモジュールになっている。これは取り外しが容易である反面、HDDの外側についているモジュール部をきれいに分離できるかどうかで、作業の難易度が大きく変わることを意味する。幸いにもモジュールの根幹は2カ所のネジで止められている固定用プラスチックで、簡単に新しいHDDへ取り付けることが可能だった。もう1つ、HDD底面のシールドも新しいHDDに移す必要があるが、こちらは丁寧にはがして、新しいHDDにそのまま貼り付けた。あとは、ATAインターフェイスのピンコネクタをカードエッジコネクタに変換するアダプタ(抜き差しの容易さを踏まえた配慮だろう)を付け替えれば、準備は完了である。 Travelstar 40GNXをSatelliteにセットし、あとはNorton Ghost 2003でレストアするだけ、といきたいところだが、残念ながらNorton Ghostのブートディスクには、パーティション操作を行なうツールが含まれていない。そこで、いったんDOSのブートディスクを起動し、FDISKでパーティションを設定した。バックアップしてあるデータをCドライブに復元するだけなら、こんな必要はないのだが、一応、40GBのドライブを2分割するので、この作業が必要となる。分割した2番目のパーティションには、ちょこちょことバックアップデータを置いておき、ちょっとしたトラブルの際に、簡単に元に戻せるようにしよう、という狙いだ。本来バックアップは、リムーバブルメディアや、最低でもネットワークドライブなど、分離できる場所に書いておくべきなのだが、サブマシンゆえ、ちょっとしたトラブル(ソフトウェアをインストールしたら調子が悪い、とか)に対応できればいいと割り切っているので、これで良しとしている。 Norton Ghostは、レストア先を指定すると、それがバックアップした時のパーティションサイズと違っていようと、問答無用でレストアしてくれる。間違って、パーティションのイメージをドライブに書く(分割されたパーティションを無視して1ドライブとしてレストアする)ということも得意で、英語表示のメニューとあいまって、筆者は何回か痛い目にあっている。が、さすがにもう間違いはしない。ちゃんと古いCドライブの内容を、1番目のパーティションに書き戻すことができた。 ●起動の短縮と静粛性の向上 早速HDDからシステムをブートしてみるが、何の問題もなくシステムは起動する。どうやら移行は滞りなく完了したようだ。しかも、今までのHDDより体感的に速く感じる。そこで、システムの起動時間(電源投入してからWindowsログオンが表示されるまで)を計測してみるが、前のHDDでは1分14秒だったのに対し1分6秒とあまり変わらない。だが、パスワードを入力してから、Windowsデスクトップが表示され、タスクトレイに常駐するソフトウェアのロードが完了し、HDDのアクセスランプが消灯するまでの時間を計ると、1分20秒だったのが40秒に短縮されたことがわかった。電源を入れてから使えるようになるまでやたらと時間がかかる、という不満は大きく改善された。 もう1つ重要なのは、新しいHDDが静かなことだ。古いHDDはカラカラとうるさく、これが感覚的にHDDが遅いというイメージを増大させていたように思う。Travelstar 40GNXは流体軸受け(FDB)を採用していることもあり、無音と呼べるほどではないにせよ、格段に静かになった。これもHDDがいつまでもアクセスしているような印象を薄めるのに役立っている。今回購入したTravelstar 40GNXの市場価格は16,000円~18,000円というところだが、個人的には結構満足感が高い。手間を考えても、交換して良かったと感じているし、次にノートPCを買い換える時も(それがいつになるかは分からないが)、バッテリ駆動時間をあまり気にしない筆者は、HDDが5,400rpmのモデルをぜひ選びたいと思った。
□日立グローバルストレージテクノロジーズ (2003年4月9日)
[Text by 元麻布春男]
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