元麻布春男の週刊PCホットライン

178,000円の20.1型UXGA液晶「ThinkVision L200p」を試す



●システムベンダブランドのディスプレイの是非

 一般にシステムベンダブランドのディスプレイというのは、専業メーカーのディスプレイほど認知度が高くない。量販店の店頭でも、どちらかというと、PC本体とセット販売される付属品といった扱いで、ディスプレイ売り場にシステムベンダブランドのディスプレイが置かれていることはまずない。おのずとシステムベンダブランドのディスプレイを買うのは、PC本体といっしょに買っていくお客か、一括大量導入する企業ユーザーに限られてしまいがちだ。

 正直にいうと筆者は、システムベンダブランドのディスプレイを買ったことがない。大昔、まだPCではなくマイコンなどと呼ばれていた頃は、システムベンダブランドのディスプレイ=“高価な純正ディスプレイ”であり、少しでも安くあげたい筆者は、“サードパーティ製ディスプレイ”を選ばざるを得なかった。

 その後も、機能/性能/価格の3つを考えると、筆者の選択は、システムベンダブランドのディスプレイではなく、専業メーカーのディスプレイであり続けたのである。だが、その伝統(?)も、そう遠くない将来、変わるかもしれない。そう思わせるディスプレイがシステムベンダから登場した。しかも、ちょっと意外なところからだ。


●20.1型TFT液晶ディスプレイ「ThinkVision L200p」

ThinkVision L200p
 筆者にオッと思わせたのは、日本IBMの「ThinkVision L200p(以降“L200p”)」だ。1,600×1,200ドットのUXGAをサポートした20.1型の液晶ディスプレイであるL200pは、同社初のThinkVisionブランド製品。今後IBMでは、様々な製品やサービスをThinkで始まる名前にブランドを統一していくとのことで、ディスプレイのブランドがこのThinkVisionということになる。

 L200pは、いわばブランドのお披露目役の責を担ったことになるが、そのせいかどうか、178,000円というちょっと衝撃的な価格(正確にはL200pはオープンプライスの製品で、178,000円はIBMダイレクト価格)がつけられている。

L200pの背面。スタンドは取り外し可能で100mmピッチのVESA準拠アームの取り付けが可能。スタンドの左側に電源コネクタ、右側に入力コネクタがある
 1,600×1,200ドットで20型クラスのディスプレイというのは、筆者が常用しているCRTディスプレイ(EIZO E78F)と同じだ。だが、筆者がこのCRTディスプレイを買ったときの価格はもっと高かったと思う。言い換えれば、20型の液晶ディスプレイが、ついに筆者の購入可能圏内に入ってきたことになる。しばらく前なら考えられなかったことだ。早速購入、というわけにはいかないが、とりあえず借用してみることにした。

 届けられたL200pだが、思っていたより大きなダンボール箱に収められていたのに少しビックリ。軽量薄型というイメージの強い液晶ディスプレイだが、さすがにこの大きさになると、それなりにデカイ。もちろん、CRTに比べればはるかに軽量(重量8.35kg)だし、コンパクトであることは間違いないのだが、ついエッと思ってしまう大きさであるのも確かだ。ただし、机の上に設置してしまえば、デカイことが大きな魅力となる。20.1型の液晶ディスプレイの表示エリアは40.8×30.6cm、対角51cm(いずれも筆者による実測値)にも及ぶ。これは21型CRTの可視域を上回る広さだ。

 L200pの入力インターフェイスは、シュリンクタイプのD-Sub15ピンコネクタによるアナログ入力と、24ピンのDVI-Iコネクタによるアナログ/デジタル入力の2系統を備える。いずれもディスプレイ側にコネクタが用意されており、いわゆる「ケーブル直出し」ではない。接続するケーブルは、アナログケーブルと、DVI-Dケーブルの両方が付属する。DVI-Iコネクタ側をアナログ入力として利用したい場合のみ、ユーザーがケーブルを購入しなければならないわけだ。今回は接続するビデオカードとして、アナログ出力とDVI-I出力を備えたATIのRADEON 9700 PROを用意した(ATIブランドの純正品)。

本機の右側面にあるマスター電源スイッチ。最初気づかず、電源が入らないとあせってしまった L200pの電源コネクタ。ACアダプタ方式ではない


●まずはアナログケーブル

L200pの入力コネクタ。アナログD-Sub15ピンとDVI-Iが各1系統
 とりあえずアナログケーブルを用いてRADEON 9700 PROと接続し、実際に表示させてみたが、さすがに20.1型の液晶だけに、UXGAも余裕の表示だ。最近の液晶ディスプレイの例に漏れず、本機もスケーリング機能(推奨解像度より下の解像度の場合、推奨解像度に拡大表示する)を備えており、XGA(1,024×768ドット)やSXGA(1,280×1,024ドット)を拡大してフルスクリーン表示することが可能で、そのときの画質も悪くない。が、3Dグラフィックスの表示画質をチェックする場合など、拡大表示したくないこともある。そのような場合は、スケーリング機能をオフにして、実解像度で表示させれば良い。

 本機のようにパネルサイズが大きいと、スケーリングをオフにしても、1,024×768ドット表示が12型液晶ディスプレイ相当、1,280×1,024ドット表示が16型相当と十分な大きさで表示される。やっぱりデカイことはいいことだ。

 本機に使われているパネルのスペックは、カタログによると視野角が水平、垂直ともに170度、反応速度30ms輝度250cd/平方m、コントラスト比300:1というところだが、Windowsデスクトップだけでなく、フレームレートの高いゲームを表示させても全く違和感のない表示が得られた。ソフトウェアDVDプレイヤーを用いて動画を表示しても、下手な液晶テレビを上回るほどである。実際には輝度については筆者の好みに対して明るすぎるため、70%程度まで落としたくらいで、全く問題は感じられない。カラー表示も、特にsRGBモードなどは備えていないものの、自然な表示だ。モニタのカラープロファイルも、ディスプレイのINFインストール時にいっしょにインストールされる。調整は、RGBそれぞれの個別調整に加え、3段階の色温度調整が可能となっている。


●デジタル入力を試してみる

 では、ということで今度はDVI-Dケーブルによるデジタル接続を試みた。VGAからUXGAまで、全く問題ないのはもちろんのこと、驚いたのは予想以上に画質が向上したことだ。デジタル入力を用いた表示はクリアで、これに比べればアナログ入力の表示はにじんだような印象が否めない。デジタル入力で文字が黒くヌケて見えるとしたら、アナログ入力では文字が赤っぽく見える。その差は21型CRTディスプレイのBNCコネクタとD-Sub15ピンコネクタの比ではない。

 15型/XGAクラスの液晶では、デジタル入力がない液晶ディスプレイは珍しくないし、デジタル入力がある液晶ディスプレイでもアナログ入力とデジタル入力の差はそれほど顕著ではない。しかしUXGAともなると、その影響は無視できないようだ。アナログ入力での画質が著しく悪い、ということではないのだが、一度デジタル入力を使ってしまうと、もう戻りたくなくなる。アナログ入力を全廃するのはさすがに時期尚早だと思うが、このクラスであればDVI-Iコネクタを2系統備えたディスプレイがそろそろ欲しくなる頃かもしれない。

 いずれにしてもL200pは、システムベンダとかディスプレイ専業とか、そういったことを考える必要もない、コストパフォーマンスに優れた液晶ディスプレイだ。これを上回るコストパフォーマンスの液晶ディスプレイは、イーヤマの「AU4831D G」(19型UXGAで128,000円)くらいしかないのではないか。20型以上のディスプレイとしては破格の値付けだと思うが、まさかIBMがディスプレイのプライスリーダーになるとは思わなかった。その影響か、当初198,000円だったサムスンの「SyncMaster 210T」も、L200pと同じ178,000円に価格改定されたほどだ。今後登場するであろうThinkVisionブランドのディスプレイも要注目である。

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【3月5日】日本IBM、20.1型液晶ディスプレイ「ThinkVision L200p」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0305/ibm2.htm

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(2003年4月2日)

[Text by 元麻布春男]


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