買い物山脈

世界初のBS/110度CSデジタルチューナー
内蔵ハイブリッドレコーダー「DV-HRD1」の
使い勝手は? (後編)


品名シャープ「DV-HRD1」
購入価格124,000円(税別)
購入日2002年12月27日
使用期間約3カ月

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。


●衛星ダウンロードで機能や使い勝手が向上

 前回の記事( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0303/kai21.htm )から約1カ月も経ってしまったが、シャープのBS/110度CSデジタルチューナー内蔵ハイブリッドレコーダー「DV-HRD1」のレビュー後編をお届けする。

 こんなに間があいてしまったのは、3月下旬に開始された衛星ダウンロードによるバージョンアップを待っていたためである。前回の記事でも、衛星ダウンロードによるファームウェアのバージョンアップについて触れたが、3月以前のバージョンアップは不具合修正のためのマイナーバージョンアップであり、その詳しい内容も公開されていなかった。それに対し、3月下旬(実際には3月31日から開始されたようだ)のバージョンアップは、シャープのWebサイトで、前もってバージョンアップの時期と内容が告知( http://www.sharp.co.jp/support/anounce/dvhrd1.html )されたことからもわかるように、かなり大規模なものである。

 このバージョンアップの告知は3月7日にされたのだが、その前日には、DV-HRD1の上位モデル「DV-HRD10」が発表されている。DV-HRD10は、HDD容量が180GBに増やされており、BSデジタルのデジタルハイビジョン放送を約16時間録画することができる。HDD容量が80GBのDV-HRD1では約7時間しか録画できないので、HDDのやり繰りに困ったものだが、DV-HRD10ならそうした不満もかなり解消される。また、i.LINK(MPEG-TS)端子周りの機能が強化され、i.LINK経由で接続したD-VHSデッキなどの予約録画・再生操作が可能になっている(ただし、内蔵HDDに録画した番組をi.LINK経由で出力することや、逆にi.LINK対応機器からの入力を内蔵HDDやDVD-R/RWに録画することはできない)。DV-HRD10は、標準価格がDVD-HRD1よりも47,000円高い230,000円となっており、DVD-HRD1も併売されていくようだ。

 それ以外の基本的な機能はDVD-HRD1とほぼ同等であるが、HDD録画・再生時にカウンター表示ができるようになっていることなど、細かな点が改良されている。

 DVD-HRD1の今回のバージョンアップの内容は、次に挙げる3点である。

  1. i.LINK(MPEG-TS)接続機能の強化
  2. 操作性の改善
  3. 画質の改善

 1.については、前述した通り、i.LINK経由で接続したD-VHSデッキなどの予約録画・再生操作に対応した。筆者はD-VHSデッキを所有していないので、この点については検証していないが、D-VHSデッキと連携させたいと思っていた人には朗報であろう。ただし、内蔵HDDに録画した番組をD-VHSデッキにダビングすることや、その逆はできない。

 2.は全ユーザーにとって有用な改善点である。HDD録画・再生時にカウンター表示が可能になったほか(従来はDVD-R/RWメディアの録画・再生時にしかカウンターが表示されなかった)、スタートメニューに「録画先選択」アイコンが追加され、録画先(HDDまたはDVD)をワンタッチで切り替えられるようになるなど、使い勝手が向上している。また、予約録画実行中に電源ボタンを押すと、予約録画が終了した後に自動的に電源が切れるようになったり、予約録画実行中に停止ボタンを2度押ししないと録画が解除されないようになるなど、細かな点も改良されている。

 3.は、MPEG-2エンコードのアルゴリズムが改善され、FINE/SP/LP/EPモード録画時の色再現性と精細感が向上したほか、LP/EPモード録画時については、斜め輪郭の再現性も向上しているという。BSデジタル放送や110度CSデジタル放送の録画は、放送データをそのまま記録するビットストリーム録画なので、今回のバージョンアップによって画質が向上するわけではないが、地上波アナログ放送のHDDやDVD-R/RWメディアへの録画時や、HDDに録画したBSデジタル放送の番組をDVD-R/RWメディアにダビングする際には、画質の向上が期待できる。筆者は、地上波アナログ放送はSPまたはFINEで録画しているが、バージョンアップ前に録画したものと比べて、画像のS/N比が向上し、より美しくなったという印象を受けた。

 なお、これらのバージョンアップによる機能強化は、DVD-HRD10で実現されているものと同じである。つまり、今回のバージョンアップによって、HDD容量以外は、DVD-HRD10と同等の機能を実現できるようになるわけだ。残念ながら、HDD容量のアップグレードサービスなどは行なわれていないが、ファームウェアのバージョンアップによって機能強化がなされたことは評価できる。また、今回のバージョンアップによって、録画予約などの操作手順が一部変更されたが、その部分のマニュアルがPDF形式で公開されているのもありがたい。

バージョンアップが完了すると、お知らせメニューにメッセージが表示される バージョンアップ前のスタートメニュー。右下が空いている バージョンアップ後のスタートメニュー。右下に録画先選択アイコンが追加された


●DVD-R/RWへのダビングは等速のみ

 前回レビューしたように、筆者は主にデジタルWOWOWで放送されている番組の録画に本製品を利用している。BSデジタル放送の録画はビットストリーム記録のみとなるので、直接DVD-RメディアやDVD-RWメディアに記録することはできないが、一旦HDDに録画した番組をDVD-RメディアやDVD-RWメディアに、ダビングすることは可能である(地上波なら直接DVD-RメディアやDVD-RWメディアに録画できる)。

 最近は、記録型DVDメディアへの高速ダビングをウリにしたハイブリッドレコーダーも登場しているが、DVD-HRD1では等速のダビングしかできない。つまり、2時間の番組をダビングするには、2時間かかるわけだ。また、ダビング中には他の操作が一切できなくなる。その代わり、その場ですぐダビングを実行するだけでなく、ダビング開始時刻を予約することができるので、昼間出かけている間や寝ている間にダビングさせておくことはできる。

 HDDに記録したBSデジタル放送をダビングする場合は、ビットストリーム記録ではなく、MPEG-2形式でスタンダード放送画質に再エンコードされて記録される。録画モードはFINE、SP、LP、EPの4種類から選択でき、メディア1枚あたりの録画時間は、それぞれ約1時間、約2時間、約4時間、約6時間となる。DVD-HRD1では、DVD-Videoと互換性のあるビデオモードと、編集に向いたVRモードの2種類の録画方式をサポートしているが、メディアによって利用できる録画方式は異なる(表参照)。また、デジタルWOWOWでは、ほとんどの番組がコピーワンス制限がかかっているが、コピーワンス制限のかかった番組をDVDメディアにダビングする場合は、CPRM対応のDVD-RWメディアが必要になる(いわゆる録画用DVD-RWメディア)。コピーワンス番組は、VRモードでのみダビング可能で、DVDメディアへダビングすると同時にHDDからその番組が消去されることになる(つまり、ダビングではなく、移動という概念になる)。

【記録メディアと録画方式の関係】
メディアの種類 録画方式 コピーワンス番組のダビング
VRモード ビデオモード
DVD-RW ver1.0 × ×
DVD-RW ver1.1 ×
DVD-RW ver1.1(CPRM対応) ○(VRモードのみ)
DVD-R × ×

 ビデオモードで記録したメディアは、ファイナライズすれば通常のDVDプレーヤーやPCのDVD-ROMドライブで再生が可能になる。しかし、VRモードで記録したメディアは、ファイナライズをしても、DVD-RWのVRモードに対応したDVDプレイヤーでないと再生はできない。手元にあったThinkPad i Series 1400内蔵DVD-ROMドライブとMebius PC-MV1-C1W内蔵コンボドライブで試してみたところ、ビデオモードで記録したメディアは、DVD-HRD1でファイナライズすることで、DVD-RメディアでもDVD-RWメディアでも再生できたが、VRモードで記録したDVD-RWメディアはファイナライズをしても、再生できなかった(ファイル自体が読み込めない)。

ビデオモードで記録したメディアは、ファイナライズすれば通常のDVDプレイヤーやDVD-ROMドライブなどでの再生が可能になる ビデオモードで記録したメディアにファイナライズすると、シンプルなタイトルメニューが表示されるようになる

 DVD-HRD1を使えば、デジタルWOWOWで放送された番組をDVD-RWメディアに移動して、PCで再生することができると思っていたのだが、残念ながらそうしたことはできなかった(あくまで筆者が所有のノートPCで再生できなかったというだけで、PCによっては再生できる可能性もある)。ただし、地上波や通常の民放系BSデジタル放送(NHKのBSデジタル放送も含む)では、コピーワンス制限がかかっていないので、ビデオモードで録画あるいはダビングしてファイナライズすれば、PCで再生可能になる。ビデオモードで録画あるいはダビングする場合、デフォルトでは自動的に3分ごとにチャプターが区切られるようになっているが、チャプターを区切る間隔は10分/15分/30分/なしに変更できる。

 また、バージョンアップによって、DVDメディアに記録する際の画質も向上したため、スタンダード放送であれば、SPモードでダビングしても、画質的には大きな不満はない。もちろん、ハイビジョン放送はFINEモードでダビングしても、解像度自体が落ちてしまい、ハイビジョン放送の精細感は楽しめなくなるため、基本的にHDDから再生するようにしているが(見終わったら消去する)、スタンダード放送で放映されているアメリカの連続テレビドラマなどは、HDDから再生せずに、いきなりDVD-RWメディアにSPモードで移動して、あとでまとめて見るようにしている。なお、1枚のメディアに入りきらない場合は、複数枚に分けてダビングすることも可能だ。

 なお、VRモードではVBRで記録されるが、ビデオモードではCBRとなる。そのため、同じ録画モードでもDVD-RWメディアにVRモードで記録したほうが画質的には有利である。


●編集機能の使い勝手はいまいち

 HDDレコーダーやハイブリッドレコーダーでは、CMカットなどの編集作業を単体で気軽にできるのも魅力だ。しかし、DVD-HRD1の編集機能はそれほど使い勝手がいいとはいえない。特に気になるのが、映像の一部をカットする作業が、VRモードで記録したDVD-RWメディアでしかできないという点。HDDに記録した映像については、再生するシーンの開始点と終了点を指定して、その間だけを再生させることが可能だが、これはあくまで再生シーンの指定であり、それ以外の部分を削除することはできない。

 つまり、再生シーンを指定しても、HDDの空き容量は減らない。再生シーンは1つのタイトルにつき20区間まで指定できるので、例えば45分のテレビ番組を録画したとして、0~14分までを1つめの再生シーンに指定し、14分~16分のCMを飛ばして、16分~30分までを2つめの再生シーンに指定し、さらに30分~32分のCMを飛ばして、33分~45分までを3つめの再生シーンに指定するといったことが可能である。

 また、再生シーンを指定した番組をDVD-R/RWメディアにダビングする場合、再生シーンに指定された区間のみがダビングされるので、CMをカットしたDVD-RメディアあるいはDVD-RWメディアを作成することができる。ただし、コピーワンス制限のかかった番組に再生シーンを指定すると、ダビングはできなくなる。

DVD-RWメディアにVRモードで記録した映像については、「シーン消去」や「タイトル名変更」「チャプターマーク」などの編集作業ができる

 DVD-RWメディアにVRモードで記録した映像については、タイトル内の映像から不要なシーンを選んで消去することができる。この場合は、実際にその部分がメディアから消去されるので、空き容量も増加する(連続した約2分以上の映像を消去した場合)。地上波の番組をCMカットして保存したいのなら、再生シーンを指定してダビングするのではなく、直接DVD-RWメディアにVRモードで記録してから、不要なシーンを削除するほうが楽だ。また、VRモードで記録した映像には、好きな場面でチャプターマーク(区切り)を入れることが可能だ。VRモードで記録した映像については、ファイナライズ後の編集も可能である。フレーム単位の細かな編集はできないが、CMカット程度ならそう問題はない。

 なお、ビデオモードで記録した映像は、タイトル単位での消去やタイトル名の変更しかできない(ファイナライズ後は一切編集不可)。



●外部AACデコーダーで5.1chサラウンド音声を実現

上がヤマハのAACデコーダ「AD-100」。下が松下電器のビデオデッキ「NV-HB300」

 DV-HRD1の購入によって、高画質なデジタルハイビジョン放送を楽しめるようになったので、次にサウンド面の強化に取り組んでみた。BSデジタル放送では、AACと呼ばれる方式で音声を圧縮して放送している。通常の番組は、AAC 2ch(ステレオ)で放送されているが、映画などでは、AAC 5.1chのサラウンド音声で放送されている番組も多い。AAC 5.1chのサラウンド音声を楽しむには、AAC 5.1chに対応したデコーダーが必要になる。最近のホームシアターシステムでは、比較的低価格な製品でもドルビーデジタルとDTSに加えて、AAC 5.1chもサポートしたものが増えてきているが、筆者が所有しているヤマハの「CinemaStation S77」では、AAC 5.1chに対応していないので、AAC 5.1chの迫力あるサラウンド音声を楽しむことができない。ホームシアターシステムやデコーダ内蔵AVアンプを買い替えるという手もあるが、費用や設置場所の問題もあり、ヤマハのAACデコーダー「AD-100」も購入することにした。

 AD-100は、AAC以外のデコード機能をもたない単体AACデコーダーであり、AAC以外の信号はそのままスルーすることができる。DV-HRD1の光デジタル出力をAD-100の入力端子に接続することで、AAC 5.1chの信号が6chのアナログ出力としてデコードされる。そのアナログ出力をCinemaStation S77の6chアナログ入力端子に接続すれば、AAC 5.1chのサラウンド再生を実現できるわけだ。DVD-VideoソフトのドルビーデジタルやDTSなど、AAC以外の信号については、デジタル信号のままAD-100の光デジタル出力端子からスルーされるので、CinamaStation S77の内蔵デコーダーでデコードできる。

 これから、ホームシアターシステムを購入するのなら、AAC対応製品を選ぶべきだろうが、すでにホームシアターシステムを所有していて、AACデコード機能だけを追加したいのなら、AD-100は便利な製品である。AD-100の標準価格は29,800円だが、安いところを探せば1万円台で購入できるので、コストパフォーマンスも悪くない。


●同種の製品が他社からも登場してくることを期待

 DV-HRD1を使い始めて約3カ月が経ったが、細かな不満はあるものの、その使用感にはおおむね満足している。バージョンアップによって使い勝手や画質も向上し、実売価格も下がっているので、今が買い時かもしれない。

 ハイブリッドレコーダーは、各社から発売されているが、BS/110度CSデジタルチューナー内蔵ハイブリッドレコーダーは、現時点でもまだ他社からは登場していない。ソニーからBSデジタルチューナー内蔵のBlu-rayレコーダー「BDZ-S77」が発表されたが、BDZ-S77はHDDを内蔵していないので、メディアをどんどん消費してしまう。Blu-rayディスクの大容量をもってしても、ハイビジョンクオリティでは、1枚あたり約2時間(片面1層)しか記録できないので、なおさらである。

 そういったことから考えても、大容量HDD+記録型DVDという構成のDV-HRD1は、BSデジタル放送をタイムシフト(ここでいうタイムシフトとは、リアルタイムに番組を視聴するのではなく、一旦録画しておき、時間をずらして後から再生するという意味)で楽しむための製品としては、現実的な解といえる。こうした製品が、他社からも登場してくることを期待したい。

□製品情報
http://www.sharp.co.jp/products/dvhrd1/
□関連記事
【3月3日】世界初のBS/110度CSデジタルチューナー内蔵ハイブリッドレコーダー「DV-HRD1」の使い勝手は? (前編)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0303/kai21.htm

バックナンバー

(2003年4月7日)

[Text by 石井英男]


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