後藤弘茂のWeekly海外ニュース

Intelの対Hammer戦略と次々世代チップセット「Grantsdale」




●Intelの今後のチップセット計画

 Intelは、まだAMDの次世代CPUコア「Hammer」に対する警戒を緩めないようだ。その証拠に、対抗策である800MHz FSB版Pentium 4の投入を、4月22日のAMDのサーバー&ワークステーション用Hammer「Opteron」発表の直前に予定しているからだ。AMDがデスクトップ向けの「Athlon 64」の発表を9月にスライドしてしまったあとでも、またIntelは追撃の手を休める気配はない。

 また、IntelはOEMメーカーに対して、2004年の大きなジャンプとなるDDR2メモリとPCI Expressへの技術移行の説明をしはじめている。デスクトップでDDR2とPCI Expressに対応する次世代チップセットは「Grantsdale(グランツデール)」になる模様。

 Grantsdaleはデュアルチャネルメモリインターフェイスを備え、533MHzの転送レートの「DDR2-533」と400MHzの「DDR2-400」をサポートする。DDR2はJEDEC仕様のフル機能をサポートする。Intel 875P/865系と同様に、Grantsdaleは1チャネル当たり2DIMMをサポートし、合計で4DIMMスロットの構成が可能だ。また、Grantsdaleにはグラフィックスコア統合型も用意されているという。

 ちなみに、ワークステーション向けチップセットでは「Tumwater(タムウォータ)」が、サーバー向けではデュアルCPU向けの「Lindenhurst(リンデンハースト)」と4way向けの「Twincastle(ツインキャッスル)」がGrantsdaleと同世代となる。しかし、これらはDDR2-400までのサポートになる。これは、チャネル当たりのメモリ容量を確保するためだ。

PDF版はこちら
Intelのデスクトップ用チップセット計画

●Opteronにぶつける800MHz FSB

 IntelはAthlon登場時には、AMDを侮って大失敗をしてしまった。Pentium IIIがAthlonに追いまくられる一方、Pentium 4はRDRAMが足かせとなってAthlonに対抗できないという、すくんだ状態になってしまったのだ。だが、Intelは同じ失敗は繰り返さないつもりだったらしい。というのは、Intelが対Hammerのために、2重3重の対抗プランを組み立ててるからだ。

 Intelの最初の手は、もちろん800MHz FSB(フロントサイドバス)とデュアルチャネルDDR400メモリの導入と、Hyper-Threadingの一気普及計画だ。もともとの667MHz FSBとデュアルDDR333の計画から、800MHz/DDR400へとブーストさせ、Hammerの出鼻をくじこうという戦略だ。現在もこのプランに沿ってIntelはHyper-Threading普及を計画している。

 昨秋にIntelが800MHz FSBの導入を決定した時は、OEMに対しては第2四半期の遅い時期の導入になると説明していた。だが、Intelはその計画を繰り上げてOpteronに対抗する。OEMメーカーによると、Opteronの直前には発表されるだろうという。

 これが、Intelにとってもきついスケジュールなのは、製品計画を見るとよくわかる。例えば、Opteronに対抗して発表されるのは3GHz版の800MHz FSB対応Pentium 4だけで、高速な3.2GHz版は1カ月以上ずれ込みそうだ。もともとの、第2四半期の後半というスケジュールは、おそらくこの3.2GHz版が出荷できるタイミングを元に計画されていたと思われる。

 つまり、現在Intelは、3.2GHzが採れるようになるのも待たずに、800MHz FSBを導入しようとしているわけだ。また、800MHz FSBの3GHz版は、533MHz FSB 3.06GHz版とほぼ同レベルの価格で投入される。つまり、800MHz FSBはほぼタダで提供される。

 また、Intelは、800MHz FSB対応チップセットを複数用意するが、最初に発表されるのはハイエンド向けの「Intel 875P(Canterwood:カンターウッド)」だけ。普及版のチップセットである「Intel 865PE(Springdale-PE:スプリングデール)」とグラフィックス統合チップセット「Intel 865G(Springdale-G:スプリングデール)」は、やや遅くなる。つまり、Opteronの発表に合わせて、急きょ3GHz版Pentium 4とIntel 875Pだけを前倒しにした格好だ。

 こうした積み残しの多くが揃うのは5月の連休以降になる。つまり、廉価な2.4/2.6/2.8GHz版の800MHz FSB対応Pentium 4と、Intel 865系チップセットが登場するのは約3週間遅れる見込みだ。

●二重三重のバックアッププラン

 現在のこのプランでは、Intelは今後、800MHz FSB版Pentium 4でしかHyper-Threadingをサポートしない(3.06GHzは例外)ことになっている。だが、Intelは内部的には533MHz FSB版Pentium 4でも、Hyper-Threadingをサポートするバックアッププランを持っていた(いる?)らしい。これは、Hyper-Threadingと800MHz FSBの組み合わせに対するOEMの抵抗が強すぎた場合に備えてだと思われる。

 もうひとつのバックアッププランは、笠原一輝氏がレポートした1MB L3キャッシュ版Pentium 4の投入。これは、実際にはマルチプロセッササーバー向けの「Gallatin(ガラティン)」コアを使う計画だと思われる。Intelがこんなプランを持っていたのは、もちろん、当初はAMDが1MB L2キャッシュ版のAthlon 64を3~4月に投入する計画を立てていたからだ。AMDのプランは、サーバー&ワークステーション用のコアを、デスクトップに投入するというものだった。それなら、Intelも1MBキャッシュのコアをサーバー用に持っているのだから、対抗のために同等プランを準備したとしても不思議ではない。

 しかし、こうしたバックアッププランも、結局は日の目を見ることなく終わりそうだ。AMDがAthlon 64のスケジュールを後退させてしまったからだ。Intelの警戒は空振りに終わってしまうことになる。

●メモリは2004年にはDDR2-533に

 プラットフォームレベルでは800MHz FSBはIntelのDDR400のコミットという重要な要素を持つ。もっとも、DRAMベンダー側はDDR400を100%のスピード派生では採れない、つまり、全チップが400MHz以上の転送レートで動作できるわけではなく、333MHz以下のチップがどうしても発生してしまう(実際にはDDR400の方がかなり少ない)。そのため、2003年はDDR333/400ミックスの年になる。主流はDDR266からDDR333へと徐々に移り、ハイエンドがDDR400で、しばらくはDDR266も残るという形になると見られる。

 しかし、2004年のDDR2では、DDRへの移行と同様に、再び大きなジャンプとなる。GrantsdaleはDDR2-533/400でスタートするが、各DRAMベンダーはDDR2では533MHzをかなり高い歩留まりで採れると主張する。例えば、エルピーダメモリなどDDR2開発で先行していたベンダーは、DDR2-533を100%のスピード派生で生産できるという。つまり、DDR2が普及すれば、メインストリームパソコンもDDR333からDDR2-533へと移行していくことになる。

 また、この段階でパソコンの搭載メモリ容量も上がる。現在デスクトップ向けDRAMは256Mbitチップが主流だが、DDR2では各社とも512Mbitチップを主力に据えている。そのため、デュアルチャネルでは最低メモリ容量が512MBに達する。これは、128bitのメモリインターフェイスに対して、メモリチップは最低8個(x16の場合)必要になるからだ。

 つまり、512Mbit DRAMチップが主流になるなら512MB以下のメモリ容量のパフォーマンスデスクトップはなくなってしまうことになる。もっとも、ここへ来て、一部のDRAMベンダーがDDR2でも256Mbit品を開発する意向を示しているため、完全に512MBへ移行が進むかどうかはわからない。

 これも思惑は想像できる。デュアルチャネルメモリがパフォーマンスデスクトップのローエンドまで浸透すると、512MBでは多すぎるとなる可能性が出てくるからだ。ただでさえ、2モジュールになるため、コストは上がる。それなら、256Mbitチップでシステムのメモリを256MBに抑えて、システムコストを安くしたいというニーズが出てくる可能性がある。つまり、256Mbit DRAMと512Mbit DRAMのbitクロス(bit当たりの単価が交差する)が来ても、256Mbit DRAMで256MBにした方が、512Mbit DRAMで512MB構成にするより、安く上がるという考え方だ。

 いずれにせよ、DDR2とPCI Expressでプラットフォームが大きく変わるのは2004年。今年は、まだその前哨戦に過ぎない。

□関連記事
【2月21日】【海外】IntelがAGP 8X後継のグラフィックスバス「PCI Express x16」を説明
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0221/kaigai01.htm
【2002年11月27日】【海外】Intelのロードマップ変更は対Hammer戦略
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1127/kaigai01.htm

バックナンバー

(2003年3月4日)

[Reported by 後藤 弘茂]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp 個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved.