槻ノ木隆のPC実験室

FSB 333MHz/DDR400対応の
SiS746搭載マザー「ECS L7S7A2」



 ECSから登場した「L7S7A2」は、本来であればFSB 266MHz、DDR333までの対応であるSiS746を搭載しつつ、ECSが独自にFSB 333MHz、DDR400への対応をうたった製品である。今回は、このL7S7A2とFSB 333MHz、PC3200 DDR SDRAMを利用してパフォーマンスをチェックしてみよう。


●SiS746チップセットでFSB 333MHz/DDR400に対応

【写真1】190×305mm(幅×高さ)と幅が狭いATXマザー。サウスブリッジとFDDコネクタの位置がかなり特徴的である
 L7S7A2はSilicon Integrated Systems(SiS)のAMDプラットフォーム向けチップセットであるSiS746を搭載したマザーボード。SiS746自体は、FSB 200/266MHzのAthlon XP/Duronをサポートし、メモリは最大1GBまでのDDR266/333に対応するチップセットである。

 さて、そのSiS746はノースブリッジとサウスブリッジの2チップ構成となっており、ノースブリッジであるSiS746と、サウスブリッジであるSiS963Lとは、1GB/SecのMuTIOLで接続される。ちなみにSiS963Lとは、SiS963からIEEE 1394ポートを取り除いた廉価モデルである。

 ちなみにSiSでは、このSiS746の後継チップセットあるSiS746FXをすでに発表しており、こちらではFSB 333MHz、DDR400も公式にサポートしているが、本製品のチップセットはSiS746の無印である。

 本製品は、本来ならば対応していないはずのFSB 333MHz、DDR400サポートをうたった製品であり、本当に期待どおりのパフォーマンスがでるか、そもそも正常にFSB 333MHzやDDR400メモリが動作するのかなど、気になる部分が多い製品なのである。

 ちなみにDDR400メモリに関しては、正式に対応したチップセットですら相性の問題が叫ばれているが、本製品では同社で動作確認したメモリモジュールを公開している。

【写真2】ノースブリッジには間違いなくSiS746が鎮座していた 【写真3】サウスブリッジに利用されているSiS963L。ヒートシンクが必要、というほど発熱していなかった気もするが


●FSBは1MHz単位で設定可能

【写真4】付属のメモリカードリーダ。マザーボードはUSB 2.0にも対応するが、カードリーダ自体はUSB 1.1接続となる
 では、本製品の基本的な機能を確認してみよう。まず付属品だが、ドライバCD-ROMや「クイックインストールガイド」という日本語マニュアルが付属する。このクイックインストールガイドでは、ピンアサインやBIOSの基本的な設定個所などがわかりやすく解説されており、自作初心者にもやさしい作りとなっている。

 このほか、3.5インチベイに搭載できるメモリカードリーダが付属している。このカードリーダは6種類(CF/Microdrive/スマートメディア/メモリースティック/SDメモリーカード/MMC)のメモリカードに対応するリーダーで、USB1.1 接続となる。

 なお、このメモリカードリーダはマザーボード上に専用のコネクタに接続するが、これを利用するときは背面のUSBポート×4のうち、2つが利用できなくなるという制限がある。

 BIOSはAMI BIOSが採用されており、CPUクロックは133~200MHzまで1MHz単位での設定が可能。また、メモリクロックもFSBクロックとの比率を変更することができ、[1:1]の同期を含めると16通りから設定可能である。

 そのほか、CPUコア電圧やメモリ電圧も調整が可能であり、オーバークロック用途にも十分耐えうる仕様となっている。

【写真5】FSBは133~200MHz。メモリクロックはFSBとの比率で設定し、そのパターンは同期を含めて16通り 【写真6】CPUコア電圧の設定。規定および、規定+1/3/5%から選択可能 【写真7】メモリ電圧も上昇させる設定が用意されている。こちらは規定、規定+0.8/2.7/3.5%から選択


●VIA KT400とパフォーマンスは互角

  SiS746 VIA KT400
マザーボード ECS「L7S7A2」 ASUS「A7V8X」
BIOS Revision 01/02/2003 1006
ドライバ AGP:Ver.1.12
IDE:Ver.2.02
Hyperion v4.45
CPU Athlon XP 2700+
メモリ PC3200 DDR SDRAM 512MB×1
HDD Seagate BarracudaATA IV(ST380081A)
ビデオカード RADEON 9700 Pro搭載ビデオカード
OS Windows XP Professional(英語版)
【表1】テスト環境

 それでは、気になるパフォーマンスチェックを行なっていこう。今回はFSB 333MHzのAthlon XP 2700+と、SAMSUNGチップを搭載したPC3200 DDR SDRAMを用意、VIA KT400搭載マザーを比較対象としてチェックを行なった。なお、詳しいテスト環境は表1のとおりである。

【グラフ1】SYSmark2002
 まずはSYSmark2002の結果である(グラフ1)。Internet Content CreationではSiS746が上回り、Office ProductivityではKT400が上回る結果となった。全体的にはKT400が上回る結果となったが大きな差はなく、多少の得手不得手がある程度と考えてよさそうだ。

【グラフ2】PCMark2002 CPUテスト
 続いてはPCMark2002の結果を見てみよう。まずはCPUテストである(グラフ2)。CPUは同じAthlon XP 2700+を使っているので結果に大きな差がないのは当然ともいえるが、本来はFSB 333MHzに対応していないSiS746を搭載したL7S7A2が、KT400と同等の性能を引き出せている点は評価してもよいだろう。

【グラフ3】PCMark2002 メモリテスト
 次はメモリテストの結果だ(グラフ3)。書き込み/読み込みについて異なるサイズのデータを転送した結果が表されるが、6KBと48KBのテストはCPUのキャッシュに収まる範囲である。ここは両チップセットとも大きな差はない。

 ポイントはそれ以上のサイズ、つまり実メモリへの転送がテストされる部分だ。ここでの結果を見ると、読み込みはKT400がやや高速、逆に書き込みはSiS746が高速といった結果になった。このあたりはBIOSのチューニング次第の部分でもあるので、チップセットの一般的な特性とは言い難いが、少なくとも今回テストしたマザーボードではこうしたクセを読み取ることができる。

 ここで3Dのテストも行なっておこう。両製品ともAGP 8Xに対応しており、グラフィックスの性能もチェックしておく必要があるからだ。

【グラフ4】3DMark2001 Second Edition Build330
 まずは定番の3DMark2001 Second EditionにBuild330のパッチを適用してテストした(グラフ4)。ハードウェアT&L、ソフトウェアT&Lともに結果がほとんど変わらないが、ハードウェアT&LはKT400、ソフトウェアT&LはSiS746が若干ながら優れた性能を出している。もっともグラフからもわかる通り、ほぼ同一といっても差し支えない程度だ。

【グラフ5】Commanche4 Demo
 もう1つ、ハードウェアT&Lを用いたゲームベンチとして、NovaLogicのCommanche4 Demoもテストしたが(グラフ5)、こちらはKT400が若干ながら良い結果を出している。

 この3Dに関するテストは、いずれの結果も誤差と呼べる範囲のもので、両製品のパフォーマンスにはほとんど差がないといえる。


●コストパフォーマンスではかなり魅力的

 ちなみに本製品は、既に出荷されており、僚誌AKIBA PC Hotline!(2月22日調査時点)によると9,000~10,000円前後で販売されている。この価格で、1万円強の価格付けがなされているKT400搭載マザーと同等のパフォーマンスを発揮するのだから、魅力を感じるユーザーもいるだろう。

 加えて、メモリカードリーダーやオーバークロックにも耐えうるBIOS設定が用意されているなどの付加価値も見逃せない。性能的にもそう悪くない(KT400とほぼ同等)わけで、コストパフォーマンスに優れたマザーボードとして注目するに値する製品だ。

□ECSのホームページ(英文)
http://www.ecs.com.tw/
□関連記事
【1月7日】SiS、FSB 333MHz対応Athlon用チップセット「SiS746FX」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0107/sis.htm
【2月22日】今週見つけた主な新製品(AKIBA)
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20030222/newitem.html#l7s7a2

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(2003年2月28日)

[Reported by 槻ノ木隆]


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