以前紹介した「ScanSnap! fi-4110EOX2」は、筆者のように書類の山に埋もれる者にとって、非常に使い勝手の良い製品だったが、昨年11月にフラットベッドタイプの「fi-4010CU」が追加された。この製品を、前回触れたfi-4110EOX2の使い勝手と比べつつ紹介していこう。 ■フラットベッドスキャナとしても使えるScanSnap! 今回紹介するfi-4010CUは、ASF(Auto Sheet Feeder)付きのフラットベッドスキャナという形態になっている。前回紹介したfi-4110EOX2はあくまでシートフィードスキャナだったから、扱える対象はどうしても定型の紙に限られる。これに対しfi-4010CUは、フラットベッドスキャナをベースにしている分、利用の幅は広がることになる。 Webでは既に、すでに実際に購入した個人ユーザーの使用感がいくつか掲載されている。なかでも同人誌などをバラしてASFにかけるという使い方は、本製品のニーズに非常にマッチしているだろう。バラしても構わないものはASFで、バラしたくない本などはフラットベッドでスキャンする、ということも本製品なら実現出来るわけだ。fi-4110EOX2では無条件でバラさざるを得ないわけで、このあたりが嬉しい人は少なくないだろう。 ちなみに、同社の直販サイトでの販売価格も、fi-4110EOX2の49,800円に対し、fi-4010CUは42,800円とお買い得感も高くなっている。もちろん「Adobe Acrobat 5.0」や「名刺ファイリングOCR V1.0」を添付して、この価格である。 ただ仕様にはfi-4110EOX2に比べて劣る部分もある。詳しくは両製品の仕様表( http://www.pfu.co.jp/sales/snap/file/spec.html)を参照して欲しいが、ウィークポイントになりそうな部分は、
といったところである。これらのポイントに注目しつつ、さっそく本製品を試用してみよう。 ■ベースとなるフラットベッドスキャナはかなり大ぶり 先ほど、ASF付きフラッドベッドスキャナという紹介のしかたをしたが、ベースがフラットベッドのため、本体サイズは445×304×179(W×D×H)mm(公称値)と、かなり大ぶりである。A4サイズ以上のスペースを確保しなければならないから当然といえば当然であるが、正直なところ「それにしても大き過ぎないか?」というのが第一印象である。A4サイズスキャナは激戦区とあって、最近ではA4サイズぎりぎりで薄型の製品も珍しくない。そうした中で、本製品の大きさはかなりインパクトがある。 写真1はASF用のガイドなどを一切取り付けてない、いわば素の状態の本製品だが、かなり分厚く感じると思う。しかも重い(約5kg)。ASF付きという本製品の性格上、ドキュメントを手早くデジタルデータ化したいというニーズに答えなければならない。となると常時設置しておきたい製品であり、サイズの小型化が望まれるところだ。ちなみにASFはフラットベッドスキャナのふた部分に一体化しており、取り外す事はできない。 ASFを利用するときは、ASFの入り口に用紙サポート、用紙受けにストッパーを取り付けることになる(写真2、3)。ちなみに前述の高さ179mmという値は、この用紙サポートの下側の部分(白いプラスチック製の、用紙幅を調整する部分。用紙ガイドという表現が適切かも知れない)までの高さである。その上部の透明のプラスチック部分を含めると、270mm程度の高さとなる。
フラットベッドスキャナの原稿台は、とくに珍しいところはない(写真4)。用紙サイズは公式にはA4/B5/A5/B6/A6/はがき/名刺となっているが、実際にはレターサイズまでは利用可能で、刻印もある。なお透過原稿には対応していない。 インタフェース類は背部にまとめられており、電源スイッチも搭載している(写真5)。ちなみに写真5に伸びているケーブルはASF制御のためのケーブルで、AC電源コネクタの左脇にある専用コネクタと接続して使用することになる。なお、PCとの接続はUSB 1.1のみ。パラレル接続やUSB 2.0には対応しない。
■使い勝手はまずまずも速度が気になる 本製品のドライバ類のインストールは非常に簡単。CD-ROMからドライバ、Acrobat 5.0、名刺ファイリングOCRをインストールしてから、本製品をUSBポートに接続すればOKだ。ちなみに、イメージングデバイスとして認識されるがTWAIN機器としては使えないのはfi-4110EOX2と同様である。ただし、非公式ながらTWAIN機器として使う方法が存在するので、これは後述することにする。
fi-4110EOX2と違い、本製品の本体にはスキャンボタンが存在しない。スキャンする際は、デスクトップ上に常駐するScanSnap! Monitorのアイコンから行なうことになる(写真6)。このアイコンをクリックすると、設定にしたがって自動的にスキャンが行なわれる。ちなみに、フラットベッドの原稿台に原稿が置いてある場合でも、ASFに用紙をセットしてあればそちらが優先的にスキャンされるようだ。 さて、先にも紹介したように、本製品のASFは片面スキャンのみが可能となっている。fi-4110EOX2同様、白紙ページを飛ばす機能がついてはいるものの(写真7)、片面スキャンのみにしか対応しない本製品では意味がないだろう。せめて、奇数/偶数ページをそれぞれ読み込み最終的に順番に並べてくれる、といった機能が付いているとよかったのだが、そうした機能も実装されていない。このため、表裏でそれぞれ別個にスキャンし、最後にAcrobatを使って並べ替える作業を手で行なう必要があるのはちょっと面倒である。 また、用紙サイズを設定する必要があるのも、使い込んでいくと不便に感じる。例えばB5の用紙をスキャンするなら、写真8の設定からB5を選択しておかないと、周りに余白ができたり、スキャンできない部分が発生するのである。用紙サイズが違うものを一括でスキャンすることは少ないだろうが、fi-4110EOX2に比べて一手間増えてしまうのは考え物である。 *1 追記:ScanSnap! ダウンロードページ( http://www.pfu.fujitsu.com/sales/snap/file/doc.html )で公開されたV1.1L20ドライバでは、用紙サイズの自動検出が追加された。ただし、これはfi-4110EOXにのみ対応しており、fi-4010CUには対応していない。 【お詫びと訂正】記事初出時に、V1.1L20ドライバがfi-4010CUに対応していない旨の記述が抜けておりました。お詫びして訂正させていただきます。
こうした仕様上の不満はあるものの、ASFの紙送りはわりと精度が高い。用紙サポートできっちりサポートしておけば、スキャンが斜めになることも少ないし、2枚同時に送られてしまうことも発生しなかった。fi-4110EOX2では、こうしたことが多少なりとも発生したことを考えると、精度の点では上をいっているように感じる。ちなみに、1度にセットできる用紙は、普通のコピー用紙で30枚強といったところ。30枚を超えるドキュメントというとかなり分厚い書類になると思うが、そうそうあるものでもないので、この枚数なら及第点といったところだろう。 続いて、気になる読み取り速度だがfi-4110EOX2同様、読み取りモードと圧縮率によって異なる(写真9、10)。読み取りモードと圧縮率を1/3/5に変化させて、カラー原稿1枚をスキャンした場合の結果を表にまとめてみた。ご覧のとおり、ASFを使うよりもフラットベッドで使用したほうが若干ながら速い。また、今回は圧縮率による速度の差はほとんどなく、読み取りモードによって速度が異なるという感じである。
そのほか、29枚の白黒原稿をASFにセットし、ファイン・圧縮3でスキャンするのに要した時間は3分30秒ほど。fi-4110EOX2では30枚(両面スキャンで実質49ページ)を2分ジャストでスキャンしていたことを思うと、かなり遅い。 なお、スキャンサンプルは下記からダウンロード(LZH形式で圧縮・8.26MB)して確認して欲しいが、スキャンの画質はfi-4110EOX2と大きな違いは感じられない。やはりノーマル・圧縮3かファイン・圧縮3あたりが、実用に耐える分岐点といったところで、速度重視ならノーマル・圧縮3、画質重視ならファイン・圧縮3といったチョイスが無難だと思われる。 ・出力結果サンプル(ファイル容量 8.26MB)pdf_sample.lzh (LZH形式で圧縮してある。また、各々の画像を見るためには、Adobe Acrobat Readerが必要。お持ちで無い場合、こちらから無料で入手可能だ)
■フラットベッドで広がる用途 さて、ここまでは前作のfi-4110EOX2との比較に重点を置いて紹介してきたが、最後に本製品ならでは使い方を紹介してみよう。 まず、付属の名刺ファイリングOCR V1.0の利用方法である。本製品のASFは名刺サイズに対応していないため、複数枚をASFで一気にスキャン、といった利用はできない。 だが、フラットベッドの原稿台に名刺をパラパラを並べ、バックに本製品に付属する黒い紙を敷いてスキャンすると、名刺ファイリングOCRで、各名刺を自動判別して文字列認識を行なってくれる(写真11、12)。
また、本製品に添付のドライバはTWAINインタフェースを持っておらず、ScanSnap!Monitorによるスキャンしかできないのは先にも紹介したとおり。だが、本製品のベースになっている(と思われる)富士通のfi-4010CUにはTWAIN対応ドライバが提供されており、こちら( http://imagescanner.fujitsu.com/jp/drivers/drivers.html#tb01 )からダウンロードできる。仕様的にも型番からもほぼ同じ製品であり利用できる可能性は高い。もっともこのページ( http://imagescanner.fujitsu.com/jp/fi/product/seihin_top.html )には「※ScanSnap! (fi-4110EOX2、fi-4010CU)はTWAIN非対応です。(TWAIN対応のアプリケーションから直接の起動は出来ません。)」とあって、公式にはTWAINのサポートは無い。おそらく動作するだろうが、利用条件には引っかかる可能性がある。 ただ、正直言って本製品は、TWAIN Driverまで含めて初めて1人前という印象を受ける。というのも、ScanSnap! Monitorでスキャンできるのは、PDF形式とJPEG形式のみ。しかもJPEG形式はカラー原稿に限るという制限がある。つまり、重要なカラー原稿をTIFF形式で保存したり、白黒の用紙をJPEGなどの画像形式では保存できないのである。複数枚の書類を取り込むのが一般的なASFでの利用ならともかく、1枚の原稿を取り込むのが一般的なフラットベッドスキャナでは致命的な制限である。 おそらくTWAINドライバをインストールしてもScanSnap! Monitorはそのまま普通に使えると思えるし、富士通の富士通のfi-4010CUの仕様から言って、画像管理ソフトなどからASFを利用した連続スキャンも可能なので、複数枚に渡る書類をまとめて取り扱う事も可能だ。試してはないが、スキャナをネットワークで共有するようNeTwainドライバ( http://www.aicompu.com/NET-Twain.html )などを併用すれば、小規模オフィスで複数ユーザーからシェアするといった使い方も可能になるだろう。出来ればPFUには、正式にTWAINドライバをリリースしていただきたいものである。 ■フラットベッドスキャンは便利だが中途半端な印象の製品 以上、fi-4110EOX2の比較を交えつつ本製品を試用してきたが、全体の印象として、フラットベッドスキャナとして見てもASFスキャナとして見ても中途半端な印象を受ける。 フラットベッドスキャナとして見ると、最大600dpiという解像度や、カラー150dpiで3.3枚/分というスキャン速度、RGB各8bitなど、見るべき点は余り多くない。1,200dpiクラスのスキャナが実売1万円以下で買える事を考えれば、本製品のフラットベッドスキャンにあまり多くを期待するのは無理だと理解できるだろう。 一方、ASFスキャナとしてみた場合、両面スキャンができないのは致命的な制限ともいえる。大量のドキュメントを扱いたい場合には、スキャン速度も速いほうが望ましいが、その点でもfi-4110EOX2に軍配が上がる。 つまるところ、本機のターゲットは、「それほど頻繁に使う訳ではないが、文書の電子ファイリング化を考えており、かつフラットベッドスキャナは持っていない」というあたりのユーザーになるだろう。実際価格だけを考えると、エプソンやキヤノンの家庭向けA4ハイエンドクラスのフラットベッドスキャナが、本製品より安価に購入できるという状態であり、もしフラットベッドスキャナの使用頻度が高いのであれば、こちらを買ったほうがコストパフォーマンスは遥かに良い。ただファイリングを考えるのであればASFは必須だし、そうなると競合製品はいずれも10万円を超えてしまうから、個人で買うには敷居が高すぎる。その点、PFUダイレクトの通販価格で42,800円というのは、なかなか絶妙な金額である。 ちなみに筆者はどうか、というと既にフラットベッドスキャナは所有している(数年前に購入したEPSON GT-7000U。未だ現役である)し、何しろ処理すべき書類の量が半端でないので、正直言ってfi-4110EOX2に惹かれるものを感じる。ただまぁ筆者の使い方はちょっと例外に近い。普通のユーザーには、むしろfi-4010CUの方が良いかもしれない。その場合は短所のチェックもお忘れなく。 □PFUのホームページ (2003年1月6日) [Reported by 槻ノ木隆]
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