塩田紳二のPDAレポート

ソニー クリエPEG-NZ90
ファーストインプレッション



NZ90を開いた状態。カメラ部が背面のコネクタ部に当たるため、これ以上は開かない

 今回は、2月15日に出荷が開始されたソニーのクリエPEG-NZ90である。1週間ほど前に予約したときには、生産量が少なく入荷数も未定とのことで、当日の入手があやぶまれたが、実際にはそうでもなかったようである。

 今回の入手にあたり、今まで持っていたPEG-NX70Vを手放した。PDAとしてNZ90の79,800円はやはり高価で、まともに購入していたのでは身の破滅である。というわけで、NX70Vを叩き売り、NZ90の購入資金に当てた。



●やはり気になる大きさ

 実際手にしてみて、感じるのは、その大きさである。NX70Vよりも厚くなり、本体のヒンジ近辺が後ろに飛び出している。ここは、カメラ部分とクレードルの接続部分にもなっている。かつてのウォークマンくらいの大きさ、というところだろうか。

 カメラ部分は、液晶側と一体となっており、その開閉に合わせて動く。本体を畳んだ状態だと、ニコンが作っていた液晶タブレット付きデジカメのCOOLPIX 300になんだか似てる。

 重さは、298gで、従来機種のNX70Vと比べて78g重くなっている。色が黒いせいか、よけい重く感じる。

 NX70Vより縦横が若干大きくなっているほか、全体的な厚みが増している。NX70VはCFカードスロットの部分が盛り上がっているために、手前のほうはもう少し薄くなっている。カタログ上の奥行きは22.2mmだが、飛び出している部分を除いた全体の奥行きが23.5mmあり、カメラ部分はさらに8mmほど飛び出していて、最も厚い部分は30mmぐらいの厚みになっている。ただし、本体側の側面から底面にかけては丸くしてあり、手に持ったときに、持ちやすい(角が手にあたらず、深く持てる)よう一応工夫はされているようだ。

 匡体には金属が使用されているようだが、電池室のフタなど一部にプラスティックが使われている。色は、かなり黒に近いグレーで、つや消しの金属質な表面を持つ。一部が、同じ表面の銀色となっている。全体的に高級感があるのだが、液晶部のヒンジ側にあるLEDパネルのところが、ちょっとシールっぽくて(LEDの光を透過するのでおそらくプラスティックなのだと思う)安物感が漂う。また、筆者のNZ90だけかもしれないが、液晶部分を閉じたときに下側から見て、液晶部の右側が持ち上がっており、手前右側が浮いた状態になっている。実用上問題はなさそうだが、ちょっとがっかりである。

液晶を閉じた状態(ターンスタイル)。液晶部上部にあるのは、状態表示部。反対側にも同じLEDが見えていて、液晶を開いたときも状態が確認できる サイズ比較のためにカセットテープとならべてみた。カセットが中に入ってしまいそうな大きさ 液晶を直接撮影。デジカメで撮影したのでモアレが出ているが、肉眼でみるとモアレは見えず、もう少しきれいに見える。発色などは悪くなく、写真などは鮮やかに見える

●スイッチがいっぱい

 多機能になったせいか、NZ90にはスイッチがいっぱい付いている。液晶部分の先端には、4つのアプリケーションボタン(Palm標準のアプリケーション起動用スイッチ)が用意された。このボタンは、液晶を表にして閉じたときにのみ有効になる。開いたときには、キーボード側にあるボタンが有効になって、液晶側のボタンは働かなくなる。

 回転する液晶部の根本には、電源(充電兼用)、メモリースティックアクセス、Bluetoothアクセスを表すLEDがある。これらは反対側(つまりヒンジの内側)からも見えるようになっている。

 液晶部分のヒンジ側が飛び出していて、全体はL字型になっており、ヒンジの内側にカメラ部分(レンズとフラッシュ)が装備されている。ここには、録音用のマイクも付いている。

 本体側の上面には、キーボードおよびアプリケーションボタン、上下ボタン、Felicaのリーダがある。Felicaリーダは、キーボードの下の四角いパネル部分にあり、ここにSuicaカードなどを置いて、リーダソフトを使って内容を読みとることができる。

本体左側面。写真左から、IrDA受発光窓、ジョグダイヤル、バックボタン、ボイスレコーダボタン、リセット穴。ボイスレコーダボタンとリセット穴の間にあるのは、充電可能なバックアップ用電池室のフタである。カメラ部分は、本体より数mm飛び出している 本体右側面、メイン電池室のフタを開けたところ。写真左から、シャッターボタン、ヘッドフォン/リモコン端子、ホールドスイッチ(液晶部をオフにする)、電源スイッチ。メモリカードスロット。スタイラスは、こちら側の液晶側に装着される ヒンジ部分のアップ。カメラ部分は、液晶側と一体となっており、一緒に回転する。手前のスイッチは、レンズのカバースイッチ。液晶部の根本にある穴のようなものは、電源、メモリースティックアクセス、Bluetoothの状態表示LED
キーボード部のアップ。プラスティック製のキートップで、クリック感がある。ただ、青や赤の表示がちょっと見にくい。配列はNX70Vとほとんど同じ 本体下部には、通信カードスロット(CFスロット)とメモリースティックスロットがある。メモリースティックスロットは、従来と同じようにプッシュロック/アンロック。オプションのワイヤレス通信カードは、写真のようにかなり飛び出した状態になる

 本体の底面にはスピーカーがあり、ヒンジ近くにクレードル接続用のインターフェイスがある。NZ90は接続端子が上のほうになり、クレードルに挿すというより、引っかける感じになる。ハンドストラップ用の金具も用意されている。なお、スピーカーは、NX70Vよりも少しいい音がする(ような気がする)。

 全身インターフェイスだらけという感じで、本体を掴むのに躊躇してしまう。ただ、ジョグダイヤルに親指がかかるように持つと、他の指がちょうどメインバッテリ室のフタあたりに来るので、実際には他のボタンをうっかり押してしまうことはなさそう。

 誤操作防止のためか、電源スイッチはスライド式になっていて、下側に押し下げて離すことでOn/Offできるのだが、手に持ったときに本体のかなり下側にあるために、NZ90を持っていないほうの手で操作するしかない(筆者の小指の力では電源を入れることはできなかった)。PDAは手早く電源のオンオフをしたいこともあるので、この電源スイッチはもう一工夫欲しいところ。一応、アプリケーションスイッチが液晶側にもついたので、液晶を表にしたターンスタイルでも、ボタンで電源Onとアプリケーション起動が行なえる。しかしこれも、液晶を表にして閉じた場合には下側に来るので、もう一方の手を使って操作しなければならない。

 また、重さが重さなので、ポケットに入れておくこともできないし、ということはすばやく取り出して使うわけにもいかない。ゆっくり腰を落ち着けて、カフェかなんかで使うことになるのだろう。

●Bluetooth/Felicaリーダを新たに内蔵。メモリースティックPROには非対応

 NZ90には、BluetoothとFelicaリーダ機能が装備された。Bluetoothは、従来機種では、アダプタを取り付けて利用したが、NZ90では標準でBluetooth機能を内蔵している。同じソニーのBluetooth内蔵のデジタルカメラ サイバーショットDSC-FX77を操作する機能もある(操作には、付属のRemote Cameraソフトウェアを別途インストールする必要がある)。説明書によれば、BIP(Basic Imaging Profile)を持つBluetooth対応デジタルカメラなら接続が可能らしいが、手元にそういうものがないのでこちらは試していない。

 なお標準では、Bluetooth経由のファイル転送やホットシンクが可能。また、Bluetooth搭載携帯電話と接続して通信を行なうこともできる。

 Felicaとは、ソニーが開発した非接触型のICカード。身近なところではJRのSuicaカード(定期券、イオカード)や、電子マネーのEddyが採用している。キーボードの下部分にリーダーが埋め込まれており、ここにカードをあてて内蔵ソフトウェアを実行すると、残金が表示される。Suicaの利用履歴の参照用ソフトウェアが後で提供される予定だという。

 なお、1月に発表された大容量メモリースティック「メモリースティックPRO」には、現状では対応してはいないようだ。メモリースティックPROの出荷後に、ファームウェアをアップデートして対応する予定という。

●デジタルカメラ機能

カメラ部のアップ。フラッシュの上にある4つの穴は、フラッシュ調光窓(左)とマイク用の2つ、右側は、撮影状態を示すRECランプ

 NZ90に搭載されたデジタルカメラは、200万画素、最大1,600×1,200ピクセルでの撮影が可能で、ズームレンズではないがオートフォーカス(AF)機能を持つ。またフラッシュを内蔵しているために、暗いところでの撮影もできる。レンズ部分は液晶部と一体になっているため、単独で向きを変えることはできない。またレンズカバーがあり、未使用時にレンズを保護することができる。

 本体右側にあるシャッタースイッチは、デジカメなどと同じく2段階になっており、半押しすることで、測光や焦点合わせを行なう(ただし設定によりフルタイムAFやマニュアルフォーカスも可能)。本体の電源がオフであっても、シャッタースイッチを押すことで電源が入り、ソフトウェア(静止画もしくは動画撮影ソフト)が起動する。しかしこのソフトウェアは、なぜか起動してから数秒待たされるため、それほど素早く撮影を開始できるわけではない。

 レンズカバーが閉まっているかどうかをソフトウェアで検出できるようで、レンズカバーが閉まっているときには、警告が表示される。光学ファインダーはないので、画面を見ればカバーが閉まっているかどうかは簡単にわかるから、ここまで凝らなくてもとも思うが、親切ではある。

 カメラについては、入手後あまり時間がないこともあって、ちゃんと撮影できていない。追って、きちんと撮影して報告することにしたい。

●小さい折りたたみ式クレードル

 NZ90のクレードルは、折りたたみ可能で、かなりコンパクトなもの。従来クレードルというと安定させるためにかなり重量があったのだが、NZ90のクレードルはかなり軽い。このクレードルには、充電、PC接続の機能以外に、付属のAVケーブルによるコンポジットビデオ出力、専用のAVケーブルによる音声出力の機能がある。ただしビデオ出力は、NZ90の画面が常に表示されるのではなく、CLIE Albumなど特定のソフトのみで行なえる。AV出力機能は、クレードルに回路が入っているというより、本体側にほとんどの機能が入っていて、コネクタのみクレードル側となっているようだ(接続コネクタはかなりピン数が多い)。

 前述のように接続コネクタは、NZ90のヒンジ近くにあるため、クレードルは先端のほうに接続コネクタがついている。クレードルは下の部分をツメのようなもので支持するようになっており、NZ90にワイヤレスLANアダプタなどを装着した状態のままでクレードルに載せることも可能だ。このクレードルとの接続コネクタの配置を見ると、背面に装着するオプションなども取り付けられそうな感じだ(今のところ何も発表されていないが)。

 ホットシンク用のボタンはクレードル側面の足の部分にある。ちょっと押しにくいが、この形状では仕方ないかもしれない。またNX70Vでは、付属の小型コネクタにより本体に直接USBケーブルや電源ケーブルを接続できたが、NZ90ではクレードル経由でのみ接続できる。したがって、長期出張などの場合には、クレードルを持ち歩く必要がある。

 クレードルはコンパクトだが、ACアダプタは従来機種同様かなり大きい。しかも特殊形状のコネクタでクレードルと接続するため代替がきかず、これも持ち歩くことになる。クレードルがコンパクトなだけにちょっと残念。

クレードルに載せたところ。クレードル先端にあるコネクタをNZ90背面にある端子に引っかけるようにして載せる オプションの無線カードを装着したままでもクレードルに載せることができる。クレードルの足に見える銀色の部分がHotsyncボタン
クレードル側面には、AV端子、USB端子、電源端子がある。なお、このUSB端子には、PC用のUSBケーブル(反対側がA型コネクタ)の他に、プリンタ接続用のUSBケーブル(反対側がB型コネクタ)を接続できる。いわゆるUSB On the Go機能が装備されているが、対応しているのはエプソンのプリンタ(特定機種)のみ クレードルは、支えの部分を畳んでコンパクトにすることができる。ただし、ACアダプタは、従来機種同様かなり大きいもの。バッテリの持続時間を考えると、毎日充電が必要なので、このACアダプタも持ち歩く必要がある

●PDAで全てを処理したい人向け

 ざっと使った印象としては「重量級PDA」というところか。人によっては、これをPDAと呼ぶことに抵抗を感じるかもしれない。個人的には、重いので常用して持ち歩きたくない機種である。

 機動性はないが、高性能。およそあらゆる機能が入っていて、ないのは携帯電話機能ぐらい。PDAでなんでも済ませたいという、PDAにすべてを求める人向けの製品だ。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200301/03-0127/
□製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/PEG/PEG-NZ90/index.html
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0127/sony1.htm
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【2002年10月2日】ソニー、XScaleとPalm OS 5を搭載したクリエPEG-NX60/70V
~Type 2 CFスロットも搭載
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1002/sony.htm

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(2003年2月17日)

[Text by 塩田紳二]


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