第189回
ノートPCベンダーに伝えたい気持ちを



アンケートは終了しました。ご協力ありがとうございました

 僕が学生の頃……というと、時代はナイコンからパソコンへと移り変わる時代だった。ナイコン? そう。マイコン(マイクロコンピュータ)が高価で買えず、お店や学校や友人宅でコンピュータを使う人たちの事を“ナイコン”と呼んでいた時代があった。なにしろナイコン君の方が、アルコン(というかどうか)君よりも多かったほど。

 ナイコン君と馬鹿にするなかれ。店頭でプログラムを組み、カセットテープに保存しつつデバッグを繰り返し、立派なゲームを作る強者もいたのだ。そんな時代から8bitパソコンの低価格化=アルコン君時代へ、日本のパソコン黎明期が僕の学生時代だった。

 当時のパソコン好きは、パソコンでやりたい夢がたくさんあった。それを実現するためのハードウェアをみんなで空想する時間も、なかなか楽しいもの。だがしかし、今から思えばそれらはすべて実現されてしまっている。空想は単なる空想にしか過ぎない? いや、市場からの強い声があったからこそ、今のPCも存在するのかな? などと、多少似合わないことを考えたりもする。

 今の時代、“こんなパソコンがあればいいのになぁ”と想像するなんてことは、ちょっとオタクっぽくて気恥ずかしい気もする。パソコンも立派なコモディティの仲間入りを果たしそうな今時の事情である。しかし、本当にコモディティとなって、誰も“夢のパソコン”を空想しなくなってしまえば、きっと将来のパソコンはつまらないものになってしまうに違いない。

●夢のパソコンと現実解のギャップ

 現在のPCは、その中身や業界事情に詳しくなればなるほど、夢を抱けなくなってしまっている。半導体技術の進化は数年先まで、おおよそのロードマップが決まっており、そこから生まれるプロセッサも、なんとなく想像がついてしまうと思っている人は少なくないだろう。もちろん、良い意味でも悪い意味でも、期待が裏切られることはあるのだ。

 プロセッサだけではない。磁気記録メディアにしても、グラフィックアクセラレータにしても、想像の範疇を出ない製品ばかりだと興味を失いつつある人も少なくないのでは? 「所詮パソコン」と最初から期待していない人の方が、新鮮に最新のPCに触れられるのかもしれない。

 もちろん、理想とするPCの姿と、実際にコストを抑えながら現実的な価格で作る実際の製品は異なるものだ。そこには常に小さからぬギャップが存在する。しかしエンドユーザーが、そうした現実解を最初から想像しながら欲しい製品を考えているようではダメだ。今ある製品とは別に、技術的あるいは経済的な背景を無視して「こんなPCが欲しい」という気持ちが市場にあふれてこなければ、PCがさらに良いツールとして変貌していくことはない。

 現在のPCは、一部の企業がPCトレンドを引っ張り、より魅力的な製品と思われるものへの進化を加速させながら、エンドユーザーに強くアピールする構造で前へと進んでいる。もちろん、それは決して間違った姿ではないが、一方でエンドユーザーのニーズを定期的にチェックすることも必要だ。

 そのために各ベンダーは、細かな市場調査とその分析を繰り返しながら、次の手を先手、先手で打とうとする。が、ベンダー自らによる調査には限界もある。市場全体のニーズを広く集めるのは難しくないが、新しい製品を最初に買ってくれる「アーリーアダプタ」と呼ばれる購買層の意見を汲み取るのは難しいからだ。しかも、彼らに本音で欲しい製品を語ってもらい、それを集計するのはさらに困難なこと。

 というのも、PCに詳しい人ほど「夢の」PC像を現実的なラインの手前に置いてしまう傾向が強いからだ。「どうせ無理」という気持ちが、本来は夢であるはずのPC像を内側に隠蔽してしまう。

●現実解を探すのはユーザーではない

 しかし技術的な背景をもとに、製品化のための現実解を探すのはエンドユーザーの仕事ではない。エンドユーザーは「無理だろう」なんてことを考えず、こんなものが欲しいという気持ちを外に発信することだ。そうしたニーズや夢を拾いながら、現実の製品を作るのはPCベンダーの役割である。

 もちろん、中には到底無理なことも多いだろう。しかし、代替案として開発の方向を決めるヒントになったり、無理だと思うような事が実際には可能かもしれない。どんな些細な事でも、それらの積み重ねが製品を良い方向へと前進させるエネルギーとなる。

 翻ると、エンドユーザーの一見突飛な意見をうまく製品に反映させ、より良い製品作りに役立てる能力こそ、PCベンダーに必要とされる力なのかもしれない。もちろん、本業の技術力や開発力、組織構造などは重要だが、様々な力が拮抗する中でヒット商品が生まれる背景には、必ずといっていいほど(想定していたかどうかは別として)見落とされていたニーズが存在するものだ。

 僕自身はノートPCベンダーの方々と取材や個別の会合などを通じて、自分の気持ちを伝えるチャンスがある。その中には“繰り返し伝えて良かった”と感じることもあった。しかし、どんなに強い気持ちがあっても直接PCベンダーに考えを伝えるチャンスは、業界に接点のない人にはない。

 そんなわけで、モバイル通信としてはエンドユーザーの気持ちを伝える機会を作りたいとずっと考えてきた。考えすぎて1年ほどが経過してしまったのだが、協力して頂けるベンダーも見つかり、読者アンケートとしてノートPCベンダーと読者の接点を作れることになった。

 少々調査項目の多いアンケートになってしまったが、これらは協力ベンダーから「こんな事を訊きたい」という意見を集め、それを集約したものである。一方で、自由筆記でノートPCベンダーに対する要望を記す項目も設けている。集計結果は個人情報を取り除き、データベースとして各協力ベンダーに無償で引き渡し、製品の企画担当者の手に入ることになっている。

 その代わりと言ってはなんだが、協力ベンダーにはちょっとしたノベルティグッズをプレゼントとして用意してもらった。賞品をノベルティに留めてもらったのは、あまり人気の高い豪華賞品を並べてアンケートの精度を下げたくなかったからだ。協力ベンダーには「あまり豪華じゃないものを」と僕自身がリクエストして集めたものである。

 純粋にPCベンダーに気持ちを伝えたいと思ってくれたならば、アンケートに協力してほしい。その集計結果は、この連載の中でまた紹介することにする。なお、どの賞品が当たるかは運次第となっている点、ご了承いただきたい。


アンケートは終了しました。ご協力ありがとうございました

■ 協力ベンダー(アイウエオ順)

インテル 東芝
Pentium 4ロゴと宇宙人キャラ入りUFO抱き枕 5個
(色は白・オレンジと黒・オレンジの2種類)
ロゴ入り携帯型LANケーブル、キーホルダー、ネックストラップなどノベルティセット 5セット
(写真はハンディクリーナー)
ヘッドフォン 5個
日本アイ・ビー・エム 日本電気
ThinkPad 701Cプラモデル 5個 カーボンファイバー製折り畳み傘(IT傘)ASIMOバージョン 5本 バザールでごザール・カレンダー 5部
ソニー  
VAIO銘板付きパスポートケース 5個

バックナンバー

(2003年2月5日)

[Text by 本田雅一]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp 個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved.