22日から、米国ニューヨーク市でLinuxWorld CONFERENCE & EXPO 2003が開催されている。昨日のニュース記事でお伝えした通り、IBMはPowerPCを使ったLinux PDAを発表した。 ただし、注意していただきたいのは、IBMはリファレンスデザインを作っただけで、これを自身が製品化する予定はまったくないということだ。つまり、どこかの会社がライセンスを受けてPowerPCプロセッサベースのPDAを作るためのもので、現時点では、製品が出るかどうかもまったく不明なのである。 また、同時にAMDもMIPSプロセッサコアを使ったPDAのリファレンスデザインを発表している。これは、開発ツールで有名なMetroWorksがOpenPDAというリファレンスデザインを作り、それをAMDのAlchemy Solutons Au1100をベースとしたハードウェアで実現するというもの。 Linuxディストリビューションは、IBMがMontaVista、AMDがMetroWorksを採用しているが、どちらも、Linuxカーネルの上にTrolltechのQt/Qtopiaが乗っており、画面イメージはほとんどシャープのSLシリーズと同じに見える。 結局、どれも一番上にQt/QtopiaとPersonal Javaが乗ってしまうために筐体デザインを除けば同じようにしか見えない。しかし、シャープの話などを聞くに、内部はいろいろ手を入れる必要があり、単にLinuxとQt/Qtopiaを買ってくればいいというものでもないようだ。 ●IBMのリファレンスデザイン
IBMが展示していたリファレンスデザインは、CPUに「PowerPC 405LP」を採用。同CPUは、0.18μmプロセスの銅配線で、クロックは133もしくは266MHz。メモリクロックはその半分の66もしくは133MHzとなっている。 メモリはSDRAM 32MBとフラッシュメモリ(ROM) 32MB。さらに64MBの半導体ディスクも内蔵する。また、試作機にはSDIO対応のSDカードスロットがあった。 試作機は液晶上部にステレオスピーカーが乗ったデザイン。大きさは一昔前のPocketPCぐらい。4つのボタンとカーソル/実行キーがついていた。入っていたPersonal Java(Geode)のデモを見た限り、シャープのSL-C700とそれほど大差ない感じだが、どうも、内蔵の半導体ディスク上でスワップファイルを使っているようだった。 ●AMDのリファレンスデザイン
AMDのものは「Alchemy Au1100」を採用。これは、333/400/500MHzの3種類あり、MIPS32アーキテクチャを採用している。メモリなどは製造メーカーが選択できる。試作機では、やはり32MBのRAMとフラッシュメモリが乗っているということだった。 こちらは、液晶の両側が広がっており、ゲームボーイアドバンスを思わせるデザイン。ただし、これもあくまでも参考デザインであるとのこと。MIPSチップを使ったLinux PDAとしては、最近秋葉原で安売りされたAgendaの「VR-3」があるが、こちらは、Qtではなく、X WindowとFLTKというツールキットを使っていた。 AMD、IBMともに、ライセンスを受けるメーカーを探しているところ。どこかが名乗りを上げさえすれば、Linux搭載PDAもPalmやPocketPCと同じくグループができるかもしれない。ただ、市場的には、PDA市場の成長速度が鈍っていて、ばら色の市場には見えないとこがちょっと問題だ。 奇しくもシャープ(Intelブース内にある)、IBM、AMDの展示で、XScale、PowerPC、MIPSと組み込み分野に残ったRISC系CPUがすべてPDAに採用されたことになった。 '98年のLinuxWorldで基調講演を行なったLinux創始者のLinus Torvaldsは、「これからは、PDAや組み込みなどの小さなシステムでのLinuxに注目すべき」と発言したが、これがここに来て本当に実現したことになる。 □関連記事 (2003年1月24日)
[Text by 塩田紳二]
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