デジタルカメラ付き携帯電話の勢いはすごい。なにしろ、流行にうとく、IT系の投資に関しては「ダンナより稼いでいるのに液晶に線が入ったまんまのおさがりのThinkPadをメインに使い続けている」くらいにケチな筆者の妻でさえ、NTTドコモ初のカメラ付きケータイ「SH251i」を発売日に買いに走ったほどだ(どうやら同僚だか友人だかが他キャリアのカメラ付きケータイユーザーらしい)。 そんな様子をそばで見ていれば、むらむらとカメラ付きケータイが欲しくなる。というか、実は前から欲しかった。筆者がNTTドコモの番号を維持したいから、かつ、2つのキャリアで回線を維持できるような財力がないから、手を出せなかっただけだ。 妻と外出中の娘の様子を、カメラ付きケータイで撮って送ってもらえたりしたら、あるいはその逆をやってやれたら、なかなかいいよなぁ。そんな親バカパワーが作用したのか、9月の頭にそれまで使っていたD211iがどこかに失踪(紛失とも言う)。そそくさと三菱電機製の「ムーバ D251i」に乗り換えた(わざとなくしたんじゃありません。念のため)。 さて、ここでは「散歩デジカメとしてのD251i」についてレポートする。ケータイとしてのD251iについては僚誌ケータイWatchの記事を参照していただきたい。 ■“普通の”デジカメっぽい成り立ちは散歩デジカメ向き? D251iを選んだのは、ユニークなCCDと、メモリカードスロットに興味を引かれたからだ。 CCDは富士写真フイルム製の1/7インチ スーパーCCDハニカム「MS3101」。有効17万画素ながら、同社独自のハニカム配列でVGA(640×480ドット)の出力が可能だ。メモリーカードスロットは、メモリースティックの小型バージョン「メモリースティックDUO」。スーパーCCDハニカムもメモリースティックもデジタルカメラやPCではおなじみのデバイスで、「いまどき30万画素未満のCMOSで、PCに手軽に画像を転送できないなんておもちゃデジカメ以下じゃないか」とカメラ付きケータイを蔑んでいた(ふりをして実はちょっとうらやましかった)筆者にも、とっつきやすい。メモリーカードがあればPCに画像を転送して再利用するのも簡単だろう。
そう、光学ファインダーこそないものの、D251iは普通のデジタルカメラっぽい成り立ちをしている。普通のデジカメのような用途にもそこそこ耐えそうなところが、魅力的なのだ。それに「携帯」電話というくらいだから、これにデジカメがくっついているのなら、カシオ EXILIMやソニー サイバーショットUのような「散歩デジカメ」にはもってこいに見える。 ■なかなか快適な撮影 D251iでの撮影はなかなか快適だ。すばやくカメラを起動できるし、レリーズタイムラグがほとんどない。「ぱっと開いてシャッターポン」とお気楽な撮影ができるあたりは、「最強散歩デジカメ」の素質十分といえる。 132×176ドット、26万2,144色表示可能なTFDカラー液晶は大きく鮮明で、追従性もよく、フレーミングしやすい。 手軽に撮れるのが身上のカメラだが、露出補正やコントラスト調整の機能が付いているし、画像の圧縮率やシャープネスも3種類から選べる。このへんはおもちゃデジカメでは見かけない機能だろう。 セルフタイマー機能があるのも便利だ。シャッタースピードが遅くなる状況(暗い場所など)では、どこかにD251iを置いてセルフタイマーを使うことで、手ぶれを防ぐことができる。 ただ1つ、撮影解像度の設定を記憶してくれないという欠点がある。D251iは120×120/288×352/120×160/240×320/480×640ピクセルと5つの解像度で撮影できる。最初の2つはメールで写真を送るときに使う解像度で、デフォルトは120×120に設定されている。PCで画像を再利用するのが前提のお散歩カメラマンしてはVGAを活用したいのだが、D251iはカメラを終了すると解像度の設定を忘れてしまう。カメラを起動するたびに、VGAに設定しなおさなければならないのだ。本来はメールで送信する画像を撮影するためのカメラだから、こういう仕様になっているのだろう。慣れれば1秒程度で設定を変更できるとはいえ、やはり設定を憶えてくれていたほうが便利だ。
画質に関しては、D251iが得意とするのはレンズから1m以内にある被写体のようだ。プリクラのように1人または2人の顔のアップを撮るのに最適化されているようだ。解像感はVGA相応だが、発色はきれいで、自動車のボディへの映り込みや照り返しの描写には、おっ、と思わせるものがある。 遠景の描写は独特で、たとえば建物や大きな彫刻のような物体を撮ると、立体写真を見たときのように、背景から物体や前景にある人や物が浮いて見える。まあ味があるといえばそうなのだが、風景写真として見るとかなりの違和感を感じる。
■画像の管理は工夫が必要 画像をメモリースティックDUOに記録する操作は、PCユーザーやデジタルカメラユーザーには違和感があるところだ。 撮影した画像をメモリースティックDUOに直接記録することはできず、すべていったん本体メモリに記録することになる。サムネール表示で削除やメモリースティックDUOへのコピー、移動ができるのだが、これが1枚ずつか、フォルダ内の画像すべてをいっぺんに処理するかしかない。 メモリースティックDUOへのコピーや移動は、コピー先のフォルダを指定したり、パスワードを入力したり、確認に返答したりと、手間と時間がかかるから、1枚1枚コピーしたり移動したりするのはかったるい。本体メモリ内の画像は待受け画面などにも使う。だから、撮影したものの中からとりあえず必要ないものだけを選んで、一括してメモリースティックDUOに移動、とできないのはかなり面倒だ。 すべてメモリースティックDUOに移動して、必要なものだけ戻せばよい、と思ってメモリースティックDUO内の画像を本体に書き戻そうとすると、今度はメモリースティックDUO内の画像はサムネール表示されず、撮影日時のデータだけが一覧表示され、どれを書き戻すのかがわからない。
さらに、メモリースティックDUOへ画像をコピー/移動するときにファイル名が付けられる仕様になっているらしく、一度コピーした画像をもう一度コピーすると、上書きされずに違うファイル名で書き込まれる。うっかりしていると同じ画像が何枚もメモリースティックDUOに書き込まれることになるので、画像のコピーや移動については気を使うことが多い。 とは言え、メモリースティックDUO経由でPCに画像を転送できるのはやはり便利だ。画像ファイルは素直なJPEG形式で、PC上ではほかのデジタルカメラ画像と同様に扱える。
■自分史上最強散歩デジカメ というわけで、D251iの散歩デジカメとしての能力はなかなかのものだが、結局は写真付きメールを送信する「カメラ付きケータイ」として仕上げられている。 カメラ付きケータイは写真付きメールの送受信を増やすことでキャリアの経営に寄与するためのデバイスなのだから、散歩デジカメとして少々使い勝手が悪くても文句を言えた筋合いではない。が、D251iが散歩デジカメとして高い潜在能力を秘めているだけに、少々残念ではある。人物だけでなく風景撮りもこなせ、PCとの連携がもっとラクになれば、最強散歩デジカメの名をほしいままにできるはずだ。
などと言いながら、現在のところ筆者がもっとも使うデジタルカメラはやはりD251iだ。プロやハイアマチュアのカメラマンならともかく、たいていの人はカメラを持ち出すにはそれなりの意識が必要になるが、いまや日用品を通り越して「必需品」になりつつある携帯電話は、ちょっとした外出時にも無意識に持ち出せる。「いつでもどこでも、撮りたいときにすぐに」という散歩デジカメの重要な要素は、カメラ付きケータイのほうが実現しやすい。 もう1つ、「2つ折り」というボディ形状もいい。2つ折りは現在の携帯電話でもっともメジャーな形状だが、これが液晶ディスプレイを見やすい位置でグリップしやすく、シャッターボタンも押しやすい。フィルムロールを格納しなければならない銀塩カメラの形状をひきずったままのデジタルカメラよりも、こちらのほうが実は自然な撮影姿勢がとれるように感じることさえある。 これが130万画素くらいだったら、風景がもっときれいに撮れたら……と思いつつ、お気楽にスナップ撮影を日々楽しんでいる。
□製品情報(NTTドコモ) (2002年12月9日) [Text by tanak-sh@impress.co.jp]
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