“買い物山脈”なんていう、恐ろしい名前の連載があるらしい。何しろ山脈なのだから、1つ買い物して使い倒す前に、次の買い物をしなきゃいけない。連載を書くために“買い物したいものを探す”という、実に本末転倒なライター泣かせのリレー連載にゲスト参加したときのことを思い出す。 しかし買い物山脈はレギュラー執筆陣がいないらしい。何か新しいものを買ったという話をすれば、それがすなわちお仕事のタイミング。そんなわけで、何かを買ったら投資回収のためにお世話になりたいものだ、なんて考えていると、思っていることは現実になるものだ。 というわけで、相変わらず前置きばかりが長いが、ミノルタの小型デジタルカメラ「DiMAGE Xi」を買ってみた。そのコンパクトなサイズと軽量性、それに光学3倍ズームは、日常的なスナップカメラとしてももちろん良いが、実にお仕事向きのデジタルカメラだと思ったからだ。 ■イレギュラーなニーズにも応えてくれた(?)Xi
DiMAGE Xiの基本的なプロフィールは、ベストセラーとなったDiMAGE Xとほぼ同じだから、今更説明するまでもないだろう。と言いつつ簡単に紹介すると、84.5×20×72mm(幅×奥行×高さ)、130gのコンパクトで軽量な筐体に、屈折光学系を用いたコンパクトな3倍ズームレンズを搭載。コンパクトかつ高倍率のズームレンズを搭載しつつ、ピクセルピッチの細かな1/2.7インチ320万画素CCDを活かせる高解像を実現。ってなところだろうか。 取材先でモノを撮影しなければならないことも多いから、ズーム全域でマクロ撮影可能というところにも注目。起動時間が約1.2秒というのも「あっ、このスライドをメモしておこう」と取材先で思ったときに便利。シャッターチャンスの逃しにくさは、僕らがデジタルカメラを選ぶ上での重要なポイントである。 もちろん、初代モデルのDiMAGE Xのときも「3倍ズームでこれだけコンパクトなら取材も楽だなぁ」と思ったものだが、ただ1つ、不満に思うところがあった。普通の選択基準なら、ここで「補色系フィルタの地味な発色と小判CCDの平板でノイジーな描写がイヤ」とか言うのかもしれないけど、小型カメラにはスッパリとした割り切りが必要だと思うから、それは問題なし。気に入らなかったのは、ストロボの設定を電源のオン/オフで忘れてしまうところ。 たとえば資料配付のないプレゼンを聞きながら、是非ともメモっておきたいスライドが現れたとき、すかさずDiMAGE Xiの電源を投入してパチリと一枚やる。が、デフォルトではストロボ設定はオートになっているから、暗い会場でプロジェクター画面を撮るときには、たいてい勝手にストロボが焚かれて失敗写真の一丁出来上がりとなってしまう。 これを避けるためには、毎度のこと電源をオンにするたびにストロボ設定ボタンを「イチ、ニッ、サン」と数えながら3回押さなければならない。 もっとも、ストロボ設定を忘れるかどうか、というのは、昔から議論のあるところ。僕の場合は上記の通り、憶えておいてもらった方がいい。しかし、カメラの操作に慣れていない人が使う場合は、ストロボ設定がオフになったまま写真を撮影して「なんでストロボが焚かれない??」なんてことになる。つまり初級者向けのカンタン操作を目指したカメラの場合、ストロボ設定は電源をオフにする度にデフォルトに戻す方が良いのである。 というわけで、DiMAGE Xiでもデフォルトでは「忘れる」になっているが、オプション設定で設定を憶えてくれるようになった。この設定はストロボだけでなく、撮影モード全体の設定について、リセットするか否かを選べるというもの。 僕らのような少数派の職業で望まれるニーズにも対応してくれた! とは全く思っていないが、意外に同じような悩みを持っていた人は多かったのかも。ともかく、良かった良かったということで、発売日前から注文を入れて発売日当日から使い始めてしまった。 ■狙い通りのラクチン度 発売日から軽くリハーサル。キヤノンのIXY DIGITALで使っていたキヤノンブランドのメタルネックチェーンを取り付けて毎日携帯。カメラの癖を掴んできたところで挑んだデビュー戦は、COMDEX/Fall 2002の取材だった。 こうした大きなイベントの基調講演には、EOS D60と手ぶれ補正付きの28~135mmおよび70~300mmズームを使っている。もちろん、今回もその通りにしたのだが、別途、スライドのメモなどはDiMAGE Xiを使う。そして展示会場(ほとんど行く暇がなかったのだが)や各種発表会、プライベート展示会などはDiMAGE Xiだけでカバーした。 絶対的な画質はともかくとして、長い距離をパソコンを抱えて歩きながら、さらに一眼レフデジタルカメラを持つというのは、体力的にかなりキツイ。35mmフルサイズセンサーのカメラなら28~135mm一本で済むが、焦点距離1.6倍相当のD60の場合は16~35mmも鞄に入れておかないと不安。さらに小さいモノを撮影することを考えると、三脚とマクロレンズも、なんて話になって、重量はどんどん嵩んでいく。 というわけで、最近は暗い場所でノーストロボの人物撮影や、望遠が必要になる場面以外ではCCDサイズが小さく、被写界深度の深いコンパクトデジタルカメラを愛用していた。感度アップさせたときのノイズも、速報記事などは雑誌ではなくWeb媒体が中心になってきている現状では、画像サイズを縮小すればあまり目立たなくなる。 鞄に入れず、首からぶら下げていても邪魔にならず、そのまま胸ポケットにもスッポリ入る。それでいて3倍光学ズームでいざってときにも望遠側がちょびっと伸びてくれ、起動時間の速さがシャッターチャンスを逃さないDiMAGE Xiは、狙い通りの取材用カメラとして活躍してくれた。そうそう、露出補正が左右方向キーでカンタンに行なえるのも、とても使いやすいところ。 ■やっぱ電池は小さいよね
そんなDiMAGE Xi。不満なところも、もちろんいくつかある。1つはやっぱり小さいバッテリ容量。バッテリが小さいおかげで、サイズが小さく重量も軽いのだから、さっきまで軽量コンパクトを絶賛していた人間が批判できた義理ではないが、それでもやっぱり小さい。 僕の場合、必要なとき以外はストロボを常時オフにしているため、それほど急激に減るというイメージは持っていないが、やはり予備のバッテリパックは必要。今回は記者向け説明会が主だったため、それほどショット数が多くなかったことが幸いして1日使ってバッテリパック1.5本分を消費する感じだった。しかし、展示会などでストロボを使いながらバンバン撮影していると、もしかすると2本ぐらいじゃ足りないかもしれない。 もう1つの不満は動画モードと音声モードへの切り替えが面倒なこと。この2つはなぜかドライブモードの1つとして実装されていて、1コマ撮影、連続撮影、セルフタイマーなんかを設定するメニューの中で指定しなければならない。 たとえばDiMAGE Xiで撮影しながら、急に動きを含めた記録をしたくなっても、すぐさま切り替えられない。と、これぐらいなら納得もできるが、撮影場所や被写体に関するメモを音声で記録したいのに、いちいちメニューから音声モードに切り替え、記録し終わったらまたカメラモードに戻す操作をしなきゃならない。 おそらく画像と一緒にメモ、というのではなく、純粋にボイスレコーダとして使うことを想定しているのだろうけど、画像のメモとして音声をカンタンに使えるようになってくれると、取材用に使っている僕としてはとても有り難い。
また全域マクロ撮影可能で、しかも最短撮影距離がワイド端とテレ端で同じという点は良いのだが、最短撮影距離が25cmというのはちょいと物足りない。リコーのRDCシリーズほどとは行かないまでも、10cm以下になってくれると大絶賛なんだが。テレ端25cmというと、ちょうどDiMAGE Xi自身をファインダーいっぱいに写せる距離。DiMAGE Xiをマクロ撮影時のスケールにして撮影の目安を付けると、マクロ撮影しやすい。お試しを。 あとついでだから、ヒジョーにわがままな要望をここで記させてもらおう。DiMAGE Xiは起動時間が速いから、電源がオフになっても全然気にならない。だからオートパワーオフを早めに設定したいところなのだが、ここで1つ問題がある。オートパワーオフしたあと、電源を再投入すると画角が変わってしまうのだ。これが僕の使い方では非常に不便。 たとえばプロジェクタに映るスライドを撮影するのにちょうどいい画角に設定したまま使っていたとしよう。電源を入れっぱなしだと電池がもったいないが、電源を落としてしまうと画角を再度合わせなければならない。メインスイッチでオフにした場合は、ズームをホームポジションに戻してもらってかまわないが、せめてオートパワーオフのときにはズーム位置を変えずにスリープしてくれると、とっても撮影が楽になるんだけどなぁ(昔使っていたオリンパスC-1400XLはそういう仕様になっていた)。 ■満足度90% イロイロ文句を書いているけれど、実際の満足度は90%といったところ。非常に満足である。フツーなら、画質がどうのこうのという話になるのだろうけど、1/2.7インチCCD採用の320万画素ってクラスは、昨年までの同サイズ200万画素クラスの製品よりも、総じて画質が上がっているように思う。取材用として考えると、被写界深度の深さが長所ともなり得るため、それ以上はあまり拘っていないのだ(先代モデルは所有していないので比較はご容赦を)。 というか、よく考えてみると、年末進行とCOMDEX/Fall取材の煽りで、DiMAGE Xiをプライベートでほとんど使っていないのだ。ということで、かなり偏りのあるレポートだったことをお詫びしたい。ただ1つ伝えておきたいのは、機動力命の製品なのだから、画質レベルをアレコレと突っつくよりも、その運用性の高さを評価してほしいと思うこと。僕自身、これからも首にぶら下げながら、あちこちで映像を記録していくことにしたい。
□ミノルタのホームページ (2002年12月2日) [Text by 本田雅一]
【PC Watchホームページ】
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