爆速FTTH対応ルータ
「NetGenesis SuperOPT 90」を試す



■最近のブロードバンドルータ事情

 ADSLや光ケーブルを使ったブロードバンドサービスの普及により、通信機器メーカーからブロードバンドルータの新製品が数多く発表されている。筆者も、できるだけ快適な通信環境を得るために、いろいろな製品を入手しては試している。

 最近発売されているブロードバンドルータのほとんどは、高速通信をウリにしているものが多い。

 ところが、製品のページやパッケージに記載されている通信速度は、特定の環境において計測されることが多く、実際に購入したユーザーの環境での速度とはまったく異なる場合が少なくない。残念なことではあるが、雑誌やインターネットのメディアでも、これらの製品を、実際のユーザーと同等の環境で使用したときの数値などは記載されないことが多いのが現状である。

 また、ブロードバンドルータとして最も重要な要素として、安定して通信できるかどうか、ということがあげられる。通信の安定性というものはカタログ値に現れないが、多くの人は安定して通信ができることを信じて購入するはずだ。

 しかし、実際にはブロードバンドルータを使用する環境や通信を行なうアプリケーションにより、極めて不安定な動作になってしまう製品が少なからず存在する。その原因は、ブロードバンドルータを制御するファームウェアであったり、動作中の発熱によるものだったり様々である。

 最近特に多いのが、ハードウェアの設計を原因とする、不安定な機種だ。その中でも特に多いのが、動作中に発熱し、動作が不安定になるものである。この場合には、空気がこもらない風通しの良い場所に設置するとか、最悪でも扇風機などで風をあてて冷やすといった方法で回避できないこともない。

 次に多いのが、ほかの機器からのノイズにより、ADSLモデムへの干渉が起きている場合である。このノイズの原因となっているのはACアダプタであることが多く、ブロードバンドルータの電源とADSLモデムや他の機器と電源を遠ざけて置くか、ノイズフィルターを利用すると状態が改善されることがある。

 また、ブロードバンドルータの消費電力に、ACアダプタからの電力供給が追いつかず不安定な動作になる機種も存在するようだ。使い勝手のよさから小型のACアダプタのウケが良いが、ブロードバンドルータのように長時間安定して動作することが重要な機器には、余裕をもって電力を供給できる電源回路設計を行なってもらいたいものである。



■常用中のブロードバンドルータ

 筆者宅には2つのブロードバンドラインが引き込まれている。1つはADSL、もう1つはFTTHだ。

 ADSLはNTT東日本のフレッツADSL 8Mタイプで、プロバイダはNTT-MEのWAKWAKを利用。こちらの回線にはブロードバンドルータとして、Linksysの「BEFSR41」を接続している。

 「BEFSR41」自体、数年前の製品であるが安定動作には定評がある。十分現役として使えるモデルではあるものの、多少は古臭い感じがあるのは否めない。ただ、ADSL 8Mタイプとしては十分なスループット性能であり、これまでの安定動作を考慮すると他機種に乗り換えることによるリスクのほうが大きく、新しい物好きな筆者とはいえ、他機種への乗り換えには至っていない。

 FTTHのほうは、NTT東日本のBフレッツ べーシックタイプで、プロバイダはぷららを利用している。こちらの回線には、センチュリーシステムズのXR-300/TX2を利用している。

 このブロードバンドルータも極めて安定して動作するもの。PPPoEで同時に複数箇所へ接続できるため、ぷららとフレッツスクェアに常時接続している。フレッススクェアのコンテンツを楽しみながら、メールの送受信もできるのは非常に便利である。

 PPPoE接続時のスループットも30Mbps以上で、業務用途での使用にも十分耐えうる高性能、高信頼性を備えている。ただ、UPnPに対応していないのが、唯一残念な点である。

 筆者としては、この2製品を非常に気に入っている。しかし、ここ数カ月の間に何機種ものブロードバンドルータの新製品が発売され、それらの中にも気になる製品が出てきた。

 これらの新製品を何機種か試す機会があったが、PPPoE接続になるとパッケージに表示してある数値の12~13%程度に落ちてしまうものや、長時間動作させると動作が不安定になる機種が存在した。現時点で新しいファームウェアが公開され、改善されている機種もあるが、まだまだ不具合が見られるという状況だ。

 しかし、新製品の中には、なかなか良い製品もある。そんな中から、今回はマイクロ総合研究所の「NetGenesis SuperOPT90」を紹介しよう。



■NetGenesis SuperOPT90

NetGenesis SuperOPT90

 ブロードバンドルータという言葉が存在しない時代から、個人向けに通信機器を発売していたのがマイクロ総合研究所だ。筆者が初めて触れた製品はアナログモデムだったように記憶している。

 同社はその後、モデムやTAを利用したダイヤルアップルータを発売し、当時筆者宅でも自宅のLANに外出先から接続するためのアクセスポイントとして利用していた。筆者宅にFTTHが引かれた当初、その高速性を生かすために選択したルータも同社の「NetGenesis OPT」であった。振り返ってみると、幾度となくマイクロ総合研究所の製品を選択していたことが分かる。

 そして、今回紹介するブロードバンドルータは、マイクロ総合研究所の最新ブロードバンドルータ「NetGenesis SuperOPT90」(以下、OPT90)である。

 8月初旬に製品レビューのため試作機に触れる機会があったのだが、気に入ってしまい、発売と同時に購入した。カタログスペックは同社の製品ページ( http://www.mrl.co.jp/catalog/nw/mr-nwgopt90.htm )を参照してもらうことにして、ここでは実際に2週間ほど使った結果をレポートしたい。

NetGenesis SuoerOPT90の正面。樹脂製の本体は、落ち着いたブラックメタリックカラー。前面にはWAN、LANの各ポート、電源の状態を示すLEDが装備されている NetGenesis SuperOPT90の背面。電源コネクタ、アース、WANポート、4つのLANポートが装備される。LANポートはストレート/クロスケーブルを自動認識するため接続が原因の単純なトラブルを回避することができる

 OPT90は、なんといってもスループットの高さが特徴だ。フレッツユーザーなら必ず必要となるPPPoEを利用した状態でも、メーカー公称値では67Mbpsのスループットを実現できることになっている。

 PPPoEは一種のプロトコル変換であり、非常に負荷のかかる処理である。そのため、単なるルーティングであれば70~90Mbpsといったスループットを実現できるルータでも、PPPoEを利用した途端に数十パーセントもスループットが落ちてしまうことがほとんどで、製品によっては数分の一にまで落ち込むものも存在する。

 このOPT90の場合でもフレームサイズが1KBを超える場合、公称値ではワイヤースピードの100Mbpsに限りなく近い98Mbps強を実現することになっているが、PPPoEを利用した場合には67Mbpsにまで落ち込むということになっている。ただ、落ち込むとはいえ、67MbpsというスループットはPPPoEを利用するFTTHサービスのBフレッツユーザーにとって十分な速度だろう。

内部基板表。手前の大きなチップがCPUの日立SH-4高速版 240MHz 内部基板裏にはPCカードスロットが増設できるようなパターンが残されている



■PPPoEの実効速度は70Mbps以上

フレッツスクエアの速度確認ページで計測した速度

 では、筆者の環境で実際にOPT90を試した結果を見ていこう。計測に利用したのは、筆者がメインで利用している自作PCである。CPUはPentium 4 2.26MHz、メモリはDDR SDRAM 1GB、NICはIntel PRO/100VEといった内容で、OSはWindows XP Professionalである。通信環境は、NTT東日本のBフレッツ・ベーシックタイプ。プロバイダは、ぷららを利用。

 OPT90の設定としては、DHCPサーバー機能を利用せず、DNSリレーとSNTPサーバー機能は有効、NetBIOS関連のフィルタリングを行なうといった内容だ。

 PPPoEを利用したスループットを計測するために利用したのは、フレッツスクェアの速度確認ページである。

 何度か計測したが、ほとんどは70Mbpsを超える結果となった。フレッツスクェアの値が信用できるものとすれば、メーカーが提示している67Mbpsという値は控えめな数字であることになる。

 また、PPPoE接続にルータのPPPoE機能を使わず、Windows XP付属のPPPoEツールを利用してフレッツスクェアで速度を計測してみると、60Mbps弱の値に低下する。これはWindows XP上でのPPPoEの処理が重いためである。

 PPPoEをOPT90のような高速なブロードバンドルータで利用する場合は、ブロードバンドルータがボトルネックになることはなく、Windows XP上で処理するより快適に通信が行なえるということだ。

 プロバイダ経由の通信でも、「Studio Radish」のホームページ( http://www.studio-radish.com/index.html )で色々な時間帯で測定したところ、状態が良ければ下りで50Mbps強、上りで40Mbps強といった結果が確認できた。

 このようにスループットに関しては、個人で購入できるブロードバンドルータとして、OPT90は文句なしにトップレベルの性能を持っているといっても良いだろう。



■多少のトラブルはあったが安定して動作

 ブロードバンドルータは単にスループットが高速だといっても、安定した動作が伴わなければ意味がない。ルータの安定性とは、長時間の連続稼動に耐えること、負荷のかかる通信でも問題なく行なえるということだ。

 現在発売されている製品の中には、前述したように、連続稼動をすると発熱などの問題でハングアップしてしまったり、負荷のかかる通信を行なうとルータ自体の動作がおかしくなるものが存在する。あまり雑誌の記事などでは触れられていないが、ブロードバンドルータを評価するときには、動作の安定性という要素は欠かせないものだ。

 OPT90を2週間ほど24時間連続稼動させてみたところ、一度だけ通信ができなくなる現象がみられた。原因は不明だが、OPT90のログを見たところ非常に短い間隔でインターネット上のNTPサーバーにアクセスしている形跡があった。

 OPT90ではSNTPサーバー機能があり、インターネット上のNTPサーバーにアクセスし時刻を自動設定できる。デフォルトでは10分間隔で時刻合わせを行なう設定になっていたが、ログには一秒以下の間隔でアクセスしている記録があった。

 ただ、OPT90の電源を切って再起動したところ、それ以降は安定して動作している。再現性がないのと再発していないことから問題とする現象ではないのだが、筆者の環境で起こった事例として、とりあえず報告しておきたい。

 この2週間、ケーブル配線作業のために十秒程度電源を切ったことはあったが、24時間稼動といってもいい状態で運用してきた。セッション数の多いもの、通信量の多いアプリなども使用したが、上記のトラブル以外はまったく不安定な動作は見られなかった。

 本体やACアダプタの発熱も少なく、廃熱にはそれほど気をつけなくともいいだろう。この2週間の結果を見ると、これまでのNetGenesisシリーズ同様にOPT90も非常に動作が安定しているブロードバンドルータだといえるだろう。



■一通りの機能は備えるが、UPnPには未対応

様々な接続方法に対応している

 OPT90は高速性と安定性を高い次元で実現しているが、次は機能面を見ていこう。

 OPT90には、ブロードバンドルータとして必要な、PPPoE接続機能、DHCPサーバ機能、ポート番号でのフォワード機能、ポート番号によるフィルタリング、スタティックルーティング、DMZ機能、ログ機能といった基本的な機能は揃っている。

 そのほかに、SNTPサーバー機能、SYSLOG機能、RIP/RIP2対応のほか、OPT90の設定画面でhost名とIPアドレスを登録できる簡易DNSサーバー機能を備える。

 最近発売されるブロードバンドルータとしてOPT90に足りないものはUPnP機能だ。しかし、マイクロ総合研究所からは、将来UPnPに対応する意向があることは確認がとれているので、時期は未定ながらUPnP対応ファームが公開される可能性は残されている。

 これらの各機能の中で気になるものがいくつか存在したので、軽く触れてみたい。

 まずはDMZ機能である。DMZ機能とは、インターネット側からルータにアクセスがあると、その通信をLAN側の特定の機器にフォワードするものだ。

 OPT90では「DMZホスト機能」と呼ばれるものであるが、TCP、UDP、ICMP以外のパケットはフォワードされない。これがどれだけの影響を与えるのかは筆者も予想できないが、DMZホスト機能を期待してOPT90を購入するかたのために記述しておく。

 また、DMZ機能に関しては、PPPoE関連の設定画面で「DMZホスト機能」を利用する設定をして、その設定を反映するために再起動を行なったあと、DMZホスト制御の設定画面で、機能を有効にしなくてばならない。DMZホスト機能を有効にしていても、再起動後に無効になってしまうのだ。

 OPT90は、設定を行なうとその結果を反映するため、比較的再起動を行なう機会が多いが、DMZホスト機能を利用するには、そのたびに設定画面を開いて有効にしなければならない。安易にDMZホスト機能を利用すると、セキュリティに問題が起こることがあるため、起動のつど有効にする方法をとっているのだろうと思われるが、ユーザーの利用環境によっては面倒な仕様に感じるかもしれない。

 次に気になったのがPPPoEでの接続を手動でON/OFFできないところだ。PPPoEの設定をして、再起動を行なうと、いきなりPPPoEでの接続が開始される。ユーザーが何かの理由でPPPoEでの通信を切断したいと思っても、WAN側のケーブルを抜くか、OPT90の電源を切るといった物理的な強制切断しか手段がない。

 ポートフォワードやDMZ機能を使っていない場合でも、LAN側からインターネットに対して通信を行なっていないときには、PPPoEの接続は切ってもらいたいと思うのは筆者だけだろうか。

 他社のブロードバンドルータには、接続/切断ボタンが用意されていたり、自動接続/切断機能が実装されているものが多い。OPT90でも手動や自動でPPPoEの接続/切断ができるようになると、ユーザーの選択肢が増えるという意味だけでも、ありがたいのではないだろうか。

 高速なルータを選択する際に、必ず候補にあがるのがNetGenesisシリーズの製品だろう。しかし、NetGenesisは高速性や安定性に関しては評判がいいのだが、一点だけ、マイナスポイントとして必ず指摘されてきたところがある。それは、ルータの設定ツールに関してである。

 これまでNetGenesisシリーズのほとんどは、専用の設定ツールを使わないと設定ができなかったのだ。しかし、OPT90では、一般的なブロードバンドルータと同様にWebブラウザがあれば設定を行なうことができるようになっている。

 専用ツールを使うことでセキュリティ面で有利であるという意見もあるが、ネットワークゲームをはじめとして、さまざまなネットワークアプリケーションを利用するユーザーの中には、頻繁に設定を変更する必要がある場合もあり、Webブラウザだけで素早く設定が変更できるようになったのは、メリットと判断していいだろう。

 ただ、設定周りで気になる点もあった。PPPoEの接続を簡単に設定することができる「フレッツ(PPPoE)簡単設定」で、画面にあるリンクをクリックしただけで既存の設定が初期化されてしまうのである。これには筆者も困った。

 画面には確かに初期化されるという注意書きがあるが、間違ってクリックしてしまうこともあるだろう。せめて「設定を初期化します (Yes/No)」といった選択肢を入れて、いきなり設定が初期化されるのを防いでもらいたいものだ。

 また、PPPoEの接続先が複数登録できるブロードバンドルータが多いなか、OPT90では一件しか登録できない点も気になったところだ。



■100Mサービスで速度を追求するならOPT90で決まり!

 OPT90は、高速性・安定性といったところでは、文句のない仕上がりになっている。FTTHサービスを受けているユーザーで通信速度を追求するのであれば、OPT90をお勧めしたい。

 いくつか気になった点はあるものの、ここで述べたものは高速性、安定性といったOPT90の魅力に比べれば小さなものである。ただ、UPnPをすぐに必要とする人や、OPT90のDMZホスト機能の仕様では不都合がある人には、満足する結果は得られない場合もあるだろう。

 また、ADSLなどのFTTH以外のブロードバンドサービスを受けているユーザーには、OPT90ほどのスループット性能は必要ないと思うが、今後FTTHへの乗り換えを予定されているユーザーは購入を検討してもいいだろう。

 OPT90はブロードバンドルータの基本的な機能がしっかりしている製品だ。筆者の立場で気になった部分を取り上げる結果となったが、優秀な製品だといえるだろう。また、発売して間もない製品なので、今後のファームウェアの更新にも期待したい。特に、UPnP対応のファームが早い時期に公開してほしいところだ。



■最後に:ルータの相性問題?

 最後に余談になるが、ルータのWAN/LANのポートとNICやADSLモデム、ONUをLANケーブルで接続するときに、いわゆる相性問題が起こることがあることをご存知だろうか。

 100Base-TX/全2重で通信ができる機器間の通信でも、なぜか10BASE-Tモードになってしまったり、半2重で接続されることがあるのだ。ボトルネックとなっているブロードバンドルータを高速なものに取り替えたのに、逆にスループットが落ちてしまった、といった現象の原因には、この相性問題が起こっていることが少なくない。

 筆者は、この手の相性問題を回避するために、ネットワーク機器を接続するときには、必ず間にSwitching Hubを入れることにしている。Switching Hubと最近のネットワーク機器の間で、相性問題が発生することは稀なので、接続でのトラブルを回避することができるわけだ。原因がわからないスループット低下などのトラブルに遭遇したら、機器間の相性問題を疑ってみることをお勧めする。

 余談ついでに、Windowsマシンでルータを利用するときに、セキュリティを考えて、ポート137/138/139番のパケットを遮断する設定をしている方も多いと思うが、Windows 2000/XPでは、これらのポート番号以外にもポート445番もフィルタリングしておいたほうがいいだろう。

 ポート番号445はダイレクト・ホスティングSMBサービスで利用されており、これを遮断しないとパソコンの設定によってはポート137~139番のパケットをフィルタリングしていても、簡単にファイルにアクセスされる危険性があるためだ。


バックナンバー

(2002年10月1日)

[Text by 一ヶ谷兼乃]



【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp 個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2002 Impress Corporation All rights reserved.