8月20日と21日の2日間、Microsoftは次世代のサーバーOS製品であるWindows .NET Serverファミリ製品に関するプレス向けワークショップを開催した。ワークショップは、Windows .NET Serverの向上したセキュリティや性能(特にIIS 6.0)ならびに信頼性、改良されたActive Directoryやストレージ管理、さらにシステムの高速なバックアップとリストアを実現するボリュームシャドウコピー/リストアなどの新機能を紹介するもの。
参加者にはWindows .NET ServerのRC1が配布された。正式な発売日はまだ明らかにされていないが、RC1のタイミングからいって、年末から2003年早々というところから始まるのではないかと思われる(.NET Serverには後述のように複数のバージョンがあるが、すべてが同時発売になるとは限らない)。
ここでは、RC1と同時に配布されたレビュアーズガイドから、.NET Serverのスペックについてまとめておくことにしたい。このスペックから、逆にサーバーハードウェアの定義づけが見えてくるからだ。
●.NET Serverの4種のパッケージ
まず.NET Serverのパッケージだが、下位から順にWeb Server、Standard Server、Enterprise Server、Datacenter Serverの4種類で構成される(OS単体のパッケージ。ほかにStandard Serverをベースに小規模事業所向けに電子メールやデータベースを統合したパッケージとしてSmall Business Serverがリリースされる予定)。Standard ServerはWindows 2000 Server、Enterprise ServerはWindows 2000 Advanced Serverのそれぞれ後継に該当する製品で、Datacenter Serverのみは名称がそのまま。
Web Serverは.NET Serverから新設されたパッケージで、Webページの提供とホスティングに最適化されたものとなっている。いわゆるブレードサーバー向けのパッケージ、と見ることもできるかもしれない。
以上4種類の製品パッケージの概要をまとめたのが表だ。この表は、RC1時点でのスペックであり、最終製品版では変更される可能性があるものの、ガラリと変わることはないハズだ(それではベータテストがやり直しとなり、RC1の意味がなくなってしまう)。.NET Standard Serverがサポート可能なプロセッサ数が2CPUまでと、Windows 2000 Serverの4に比べて減少している以外は、おおむね仕様は拡張されている。
Web Server | Standard Server | Enterprise Server | Datacenter Server | |
64bitサポート | なし | なし | あり (IA-64のみ) | あり (IA-64のみ) |
最低CPUクロック | 133MHz以上 | 133MHz以上 | 133MHz以上 | 400MHz以上 |
推奨CPUクロック | 550MHz | 550MHz | 733MHz | 733MHz |
最低RAM | 128MB | 128MB | 128MB | 512MB |
推奨RAM | 256MB | 256MB | 256MB | 1GB |
最大RAM | 2GB | 4GB | 32GB/64GB (IA-64) | 64GB/128GB (IA-64) |
NUMAサポート | なし | なし | あり | あり |
マルチプロセッササポート | 1 or 2 CPU | 1 or 2 CPU | Max 8 CPU | 8~32 CPU (最低8CPU) |
HyperThreadingサポート | あり | あり | あり | あり |
最小ディスク容量 | 1.5GB | 1.5GB | 1.5GB/2.0GB (IA-64) | 1.5GB/2.0GB (IA-64) |
クラスタノード | サポートなし | サポートなし | Max 8台 | Max 8台 |
●64bitサポートはEnterprise Server以上
この表から分かることの1つは、.NET Serverの64bitサポートがEnterprise Server以上に限定されることだ。
発売日とともに価格はまだ公表されていないが、Enterprise Serverの現行バージョンであるAdvanced Serverの販売価格がおおよそ45万円前後(価格は基本的にオープンプライスだし、添付されるクライアントライセンスの数によっても変動する。この価格はあくまでも目安)、Datacenter Serverともなるとパッケージとして売られているのを見たことがない。(もちろん、パッケージ販売されるような量と販路で売られてはいない)。
そんなOSに対応するハードウェアなのだから、Itanium/Itanium 2搭載サーバーがどれくらいのクラスをターゲットにしているか分かろうというもの。特にDatacenter Serverでは「最低」プロセッサ数が8個となっていることからして、本気でメインフレームクラスを狙っていることが分かる。
●まだサポートされないx86-64
また、.NET Serverでサポートされる64bitプロセッサはIA-64だけのようだ。言い換えれば、AMDのx86-64は.NET Serverではサポートされない。x86-64のサポートは、おそらく次のLonghornサーバーまで持ち越されることになるだろう(Microsoftがx86-64をサポートすることは確認されているが、「いつ」についてはこれまで明らかにされていない)。
IA-64と異なる64bitアーキテクチャを採用したx86-64をサポートしたOSは、デバイスドライバを含め、全く新規に開発しなければならない(たとえその作業がAMDが言うように、どんなにラクだったとしても)。それは、OS上で動くアプリケーションレベルの互換性とは全く別の問題であり、Service Pack等で簡単に追加できるものではない。仮に追加できたとしても、上記のようにEnterprise Server以上でのサポートでは、これからサーバー市場に本格参入しようというAMDには荷が重かろう。
というわけで、x86-64のサポートはLonghornサーバーからと考えるのが順当だ。おそらく、Longhornサーバーでは、Standard Serverでも64bitのサポート(少なくともx86-64のサポート)が加わるのではなかろうか。現実的には、Longhornサーバーの前に、まずクライアント版のLonghornでx86-64がサポートされそうなものだが、今回はサーバーOSのワークショップであるため、こちらについては全く触れられなかった。
●64bitサポートのクライアントはいつ?
クライアントOSといえば、IA-64をサポートしたWindowsがどうなるかも分からない。.NET Serverでサポートされたということは、Windows XPのコードベースでIA-64のサポートが可能になる、ということだと思うのだが、IA-64のサポートがService Pack等で加わるとも思えない。かといって、IA-64専用に既存のWindows XPと別のパッケージを用意することも考えにくい(Itanium/Itanium 2に対応したワークステーション用のOSが、別パッケージで売るほどバンバン売れるとも思えない)。
一応、HPが100万円前後のItanium 2ワークステーションをリリースしているのだが、当面OSはHP-UXとLinuxの2本立てと思われる。
【お詫びと訂正】初出時に、IA-64版がまったくサポートされていないという記載がありましたが誤りです。ご教示いただいた皆様に感謝いたします。Windows XP 64bit版の現状については、http://www.microsoft.com/WindowsXP/64bit/default.asp をごらんください。x86-64のサポートは、Longhornから、ということになるのだろう。そのLonghornは、当初は2003年にWindows XPのリフレッシュとしてリリースされるといわれていたが、いつの間にやらWindows XPの次のメジャーアップグレードになってしまったため、リリースは2004年以降と考えられる。実際には、Longhornの前にWindows XP Service Pack 1の拡張としてのTablet PCと、Freestyle改めWindows XP Media Center Editionのリリースを控えていることを考えると、スケジュールはさらに遅れる可能性がある。
Tablet PCやFreestyleは、既存のPCとは異なるジャンルのハードウェアをサポートするOSであり、これはすなわちMicrosoftにとって、提供ライセンス数を大きく伸ばす可能性(あくまでも可能性だが)を秘めたプロダクトということになる。かなり力が入っているハズだ。そのあおりを受けてクライアント版Longhornのリリースが、2005年になったとしても不思議ではない。
●64bitサーバーではAMD不利?
今回、Windows XPでクライアントOSのリリースからサーバー版まで1年かかったことを考えると、Longhornサーバーのリリースは、早めに見積もっても2005年。ひょっとすると2006年以降にズレ込む可能性もある。
x86-64のサーバー版であるOpteronは2003年にもリリースされるハズだが、64bit OSにこだわる限り、OSについて2年くらいは全面的にLinuxに依存することさえありうる(今のところHP-UXのような商用UNIXのサポートはない)。そうなる前に、IA-64で提供されているようなLimited Editionが、ベータテストの意味も含めてとりあえず提供されるのではないかとも思うが、長い道のりになることは間違いないだろう。
クライアントについては、アプリケーションやドライバの問題もあり、当面32bit版OSで戦うことになる(32bit OS上の32bitアプリケーションの性能で、Intel製プロセッサに勝てればAMDの勝ち)だろうが、サーバー(Opteron)については当面は厳しい戦いになるかもしれない。
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【8月20日】マイクロソフト、.NET Serverに関するカンファレンスを開催
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0820/ms.htm
【8月5日】マイクロソフト、Windows .NET Server日本語版RC1
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0805/ms.htm
(2002年8月23日)
[Text by 元麻布春男]