AGP 8X/USB 2.0対応のP4X400搭載マザー「P4PB400-L」
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P4PB400-L |
VIA Technologiesが、Pentium 4用チップセットであるP4X266Aの後継としてCeBITで発表したのがP4X333だが、その後、結局P4X400と製品名を変えて登場した。
P4X400では、新たにAGP 8Xモードに対応したほか、サウスブリッジが最新のVT8235に変更されたことにより、USB 2.0対応機能も追加されている。今回は秋葉原などで販売が開始された、P4X400を搭載したVIAのVPSDプログラム(VIA純正マザーボード部門)によるP4PB400-Lを利用し、P4X400のパフォーマンスに迫っていきたい。
●P4X400はDDR400に未対応。現時点ではDDR400は動作しない
“P4X400”、および“P4PB400-L”という製品名からは、DDR400(データレートが400MHzのDDR SDRAM)に対応しているように思えるかもしれない。だが、実のところ、それは正しくない。というのも、P4X400は、“現時点では”DDR400には正式対応していないからだ。実際、VIAのP4X400に関するWebサイト( http://www.via.com.tw/en/apollo/p4x400.jsp )で確認してみると、メモリバスの設定として266/333/400MHzには対応しているものの、サポートするメモリタイプとしてはDDR400はサポート対象外となっているからだ。
P4X400のノースブリッジ |
これについてVIAのマーケティング担当者に確認したところ「P4X400の400はDDR400を意味しておらず、P4X400は公式にはDDR400をサポートしていない。動作が確認できたDDR400のモジュールが登場すれば、VPSDのページで公開していきたい」と将来のサポートに関しては可能性があるようだが、現時点ではサポートされていない、これがVIAの公式見解だ。
実際、筆者の手元にあった2つのDDR400搭載モジュール(PC3200)で試してみたが、起動しなかった。試したのは、SamsungのPC3200(メモリチップにはK4H560838D-ICC4搭載)、KINGMAXのPC3200(同KDL684T4AA)で、いずれも起動時にエラーを示すブザーが鳴り起動しなかった。
P4PB400-LではPC3200を挿した場合でも駆動電圧が2.5Vに設定されてしまう(SamsungのPC3200は2.6V駆動)ため、BIOSセットアッププログラムにおいて2.6Vや2.7Vなどに設定してみたが、やはり起動しなかった。こうしたことから考えて、少なくとも現在販売されているPC3200を利用してDDR400の設定で動かすことはかなり難しそうだ。
だが、DDR333を搭載したPC2700に関しては(当たり前だが)問題なく利用することができた。このため、P4PB400-Lに関してはPC2700対応のマザーボードと考えた方が良さそうだ。それでも、従来製品となるP4X266Aを搭載したP4PAはDDR266を搭載したPC2100までの対応だったので、PC2700にあがったことでパフォーマンスアップは期待できそうだ(それでもやっとSiSに追いついただけという話はあるが)。
●AGP 8Xに対応しXabreとの組み合わせで初のAGP 8X動作が可能
システムバスに関してはP4X266Aを搭載したVPSDマザーボードのP4PAでもBIOSをアップデートすることで、533MHzに対応していたが、P4X400ももちろん533MHzに対応しており、533MHzに対応したPentium 4が利用可能だ。
DDR400に未対応となってしまったことで、P4X400の最も大きな特徴となったのが、AGP 8Xへの対応だ。AGP 8Xとは、AGPのデータレートを4Xモードの266MHz(66MHzの4X)から、533MHz(66MHzの8X)へと引き上げることで、帯域幅を従来の1.06GB/secから2.1GB/secへと引き上げたもので、まもなくリリースされるAGP Specification 3.0においてサポートされる予定となっている。
P4PB400-LにXabre400を挿して、BIOSセットアップでAGPの設定を見たところ。“8X”という表示がされている | P4PB400-LとXabre400の組み合わせで3DMark2001 Second EditionのプロパティでAGP 8xの動作を確認したところ |
既にSiSがAGP 8Xに対応したXabreを発売しているほか、今月にはATIからRADEON 9700というAGP 8Xに対応したVPU(Visual Processing Unit)が発表になるなど、徐々にグラフィックスチップ側は対応環境が整いつつあるが、これまでマザーボード側でAGP 8Xをサポートしたものは発売されていなかったのだ。
【グラフ1】AGP 4XとAGP 8Xの比較。P4X266A+Xabre400のAGP 4xの組み合わせに比べて、P4X400+Xabre400というAGP 8X組み合わせの差はほとんど無い。テスト環境は、Pentium 4 2.40B GHz、PC2100(256MB)、IBM DTLA-307030、Windows XP Professional |
そこで、今回はSiSのXabreとP4X400を利用してAGP 8X環境を構築してみた。Xabreを挿して起動し、BIOSセットアッププログラムで確認してみると、確かにAGPの項目が“8X”となっているのがわかる。さらに、Windows XPをインストールし、VIAがVPSDのWebサイト( http://www.viavpsd.com/ )で配布している、AGP 8Xのβ版ドライバ(バージョン4.30β)をインストールし、3DMark2001 Second Editionのプロパティで確認してみると、確かにAGP 8Xモードになっていることが確認できる。
実際に、3DMark2001 Second Editionを実行し、ビデオカードとチップセット以外は同じ環境となるP4X266Aの環境と比較してみると、高解像度やFSAAオンなど負荷がかかっている環境では若干P4X400+Xabreの方が上回っているものの、その差はわずかで、誤差の範囲内であり、ほぼ同等であると言ってよい。
こうした結果がでた理由は、現在のようなアプリケーションではAGPのバス帯域幅が飽和していないためだ。現在の3DアプリケーションではAGPの帯域幅よりも、ビデオメモリの帯域幅がボトルネックとなってしまっており、AGPの帯域幅が上がっても性能にはあまり影響しないのだ。
だが、近い将来には、DOOM IIIのようなテクスチャサイズが非常に大きなタイプのゲームが登場し、AGPにかかる負荷は上昇していくと言われている。そうしたことを考えると、将来への備えとしては大きな意味を持ってくるだろう。
●サウスブリッジはUSB 2.0に対応したVT8235へ変更
サウスブリッジはUSB 2.0に対応したVT8235へ変更された。ノースブリッジとの接続も、前世代となるVT8233Aでは8bit/266MHzで266MB/secのV-Linkで接続されていたが、VT8235では8bit/533MHzで533MB/secの帯域幅を実現するV-Link 8Xへと変更された。
内蔵されているUSBコントローラはUSB 2.0のEHCIコントローラ×1、USB 1.1対応のOHCIコントローラ×3で、合計で6ポートの利用が可能になっている。
このほか、Ultra ATA/133のIDEが2チャネル、AC-Link、VIAのMAC内蔵といったスペックはVT8233Aと同等であり、基本的にはV-Link 8X、そしてUSB 2.0が新機能となっている。P4PB400-Lでは、内蔵のMACは使われず、オンボードで搭載されているVIAのMAC+PHYであるVT6105Mが搭載されている。
さらに、P4PB400-Lでは、オンボードにVIAのAC'97対応コーデックのVT1616を搭載し、オーディオ機能の他、S/PDIF出力が標準で付属しており、ドルビーデジタルデコーダなどを接続して5.1チャネルによる音声などを楽しむことも可能だ。
サウスブリッジのVT8235 | P4PB400-Lに付属のオーディオブラケット。S/PDIF出力の他、サブウーハ/センタースピーカー出力、リアスピーカー出力を備える |
●DDR333対応でSiS645DXを上回りPC800にも匹敵するパフォーマンス
それでは、ベンチマークプログラムを利用して、P4X400のパフォーマンスに迫っていこう。ベンチマークに利用したのは、前回記事で利用したベンチマークと同様で、比較用として前回のベンチマーク結果をあわせて紹介する。
また、既に述べたように、P4X400ではPC3200は利用することができなかったので、PC2700(2.5-3-3)にてテストしている。テスト環境は以下の通りで、結果はグラフ2~グラフ6の通りだ。
【グラフ2】 |
グラフ2はメモリの帯域幅を計測するStream for DOS(以下StreamD)の結果で、P4X400+PC2700はIntel 850E+PC800を上回る優秀な結果を示している。
従来モデルとなるP4X266Aに比べると大幅なパフォーマンスアップで、メモリがPC2700に変更されたことと、メモリコントローラが大幅に改良されていることが大きな効果を発揮していることがわかる。
P4X400は、同じPC2700を利用するIntel 845G+PC2700やSiS645DX+PC2700を上回っており、メモリコントローラ周りの性能ではPC2700を利用するチップセットでは最も優秀となっている(それだけにDDR400が使えないのが実に残念だ)。
【グラフ3】 |
グラフ3、グラフ4はアプリケーションベンチマークであるSYSmark2002のOffice Productivity(グラフ3)、Internet Contents Creation(グラフ4)の結果だ。Office Productivityではやや低いスコアとなっているが、Internet Contents CreationではPC800よりやや劣る程度のスコアとなっている。
【グラフ4】 |
【グラフ5】 |
グラフ5、グラフ6はいずれも3D系のアプリケーションベンチマークで、MadOnion.comの3DMark2001 Second Edition(Build330)とid Software Quake III Arenaの結果だ。いずれもIntel 850E+PC800/RIMM3200に匹敵する結果を出しており、SiS645DX+PC2700を大きく上回っている。
【グラフ6】 |
●DDR400未対応だがDDR333でも十分なパフォーマンスを発揮するP4X400
以上のように、P4X400はパフォーマンスにおいて、同じくPC2700(DDR333搭載)を利用可能なSiS645DXを大きく引き離し、2-2-2のPC2100を利用したIntel 845Gをやや引き離し、さらにベンチマークによっては800MHzのDirect RDRAMを利用するPC800の2チャネルやRIMM3200にも匹敵するようなパフォーマンスを発揮することがわかる。
1066MHzのDirect RDRAMを利用したPC1066やRIMM4200にはやや及ばないが、Pentium 4用のチップセットとしてそれなりに高いパフォーマンスを発揮していることがわかる。
さらに、AGP 8Xへの対応、USB 2.0コントローラの内蔵、S/PDIF出力などの付加価値を備えており、これだけのスペック、パフォーマンスながら、価格が1万円台半ばというのはコストパフォーマンスに優れているということができるだろう。
確かに、DDR400が未サポートというのは、期待が大きかっただけにやや失望感があるが、ベンチマークの結果からもわかるようにDDR333でも十分なパフォーマンスを発揮しており、それに関してはあまり気にしなくてもいいだろう。
結論として、P4X400を搭載したP4PB400-Lは、AGP 8X、USB 2.0などの最新テクノロジーを必要としており、かつコストパフォーマンスも追求したいという欲張りなユーザーにお勧めな製品だと言うことができるだろう。
□バックナンバー(2002年7月30日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]